2021年1月17日日曜日

本当にNSAIDsは腎臓に悪いのか

Amatruda JG, Katz R, Peralta CA, Estrella MM, Sarathy H, Fried LF, Newman AB, Parikh CR, Ix JH, Sarnak MJ, Shlipak MG; Health ABC Study. Association of Non-Steroidal Anti-Inflammatory Drugs with Kidney Health in Ambulatory Older Adults. J Am Geriatr Soc. 2020 Dec 10. doi: 10.1111/jgs.16961. Epub ahead of print. PMID: 33305369.

https://agsjournals.onlinelibrary.wiley.com/doi/abs/10.1111/jgs.16961?af=R

背景・目的

非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)は、特に高齢者において腎障害を引き起こす可能性がある。しかし、これまでに報告されたNSAID使用と腎臓の健康アウトカムとの関連は一貫性がなく、血清クレアチニンに基づくGFR推定値に依存している点で知見は限定的である。本解析では、複数の腎機能指標を用いて、NSAIDs使用と高齢者の腎障害との関連を調査した。

デザイン

横断分析と縦断分析。

設定

多施設共同、地域基盤型コホート。

参加者

Health ABC Studyに参加した2,999人の高齢者。追加のバイオマーカー測定のために、サブコホート(n = 500)が無作為に選択された。

曝露

処方薬と市販のNSAIDsの使用については、自己申告で確認した。

測定方法

2,999人の参加者を対象に、シスタチンC(cysC)による推定糸球体濾過率(eGFR)、尿中アルブミン対クレアチニン比(ACR)、腎障害分子(KIM-1)、およびインターロイキン-18(IL-18)のベースライン値を測定した。α-1マイクログロブリン(α1m)、好中球ゲル化酵素関連リポカリン(NGAL)、プロペプチドIII型プロコラーゲン(PIIINP)、およびウロモデュリン(UMOD)は500人の参加者を対象に測定した。GFRは10年間で3回推定し、1年あたりの変化率で表した。

結果

参加者の平均年齢は74歳で,51%が女性、41%がアフリカ系アメリカ人であった。ベースライン時のeGFRは、NSAID使用者(n = 655)と非使用者(n = 2,344)の間で差は認められなかった(両群とも72ml/min/1.73m2)。非使用者と比較して、NSAIDs使用者ではACRが30mg/gを超える調整オッズが低く(0.67;95%信頼区間(CI)=0.51-0.89)、ベースライン時の平均尿中IL-18濃度が低かった(-11%;95%CI=-4%~-18%)が、平均KIM-1濃度は同程度(5%;95%CI=-5%~-14%)であった。残りの尿バイオマーカーのベースライン濃度には有意差は認められなかった。NSAID使用者と非使用者では、eGFRの低下率に有意差はなかった(1年あたり-2.2% vs. -2.3%)。

結論

自己申告によるNSAIDの使用は、複数の尺度に基づく腎機能低下や腎障害とは関連しておらず、外来高齢者における腎障害を伴わないNSAIDsの使用の可能性が示唆された。NSAIDsの安全な服用パターンを定義するためには、さらなる研究が必要である。

感想

家庭医療っぽい研究ではないが,リアルではどうなっているかを複数の指標を用いて検証しているという意味で,家庭医にとって価値ある論文だと思う.NSAIDs使用が自己申告なのでその点に注意.