2021年1月17日日曜日

医学教育研究は学際的なのか

Albert M, Rowland P, Friesen F, Laberge S. Interdisciplinarity in medical education research: myth and reality. Adv Health Sci Educ Theory Pract. 2020 Dec;25(5):1243-1253. doi: 10.1007/s10459-020-09977-8. Epub 2020 Jun 24. PMID: 32583329

https://link.springer.com/article/10.1007/s10459-020-09977-8

医学教育研究コミュニティの特徴は複数の分野および研究領域(例:社会学、人類学、教育学、人文科学、心理学)からの洞察、方法、知識を活用していることにある。医学教育研究に対するこの共通の見解は、主要な医学教育の学科や研究センターが、自分たちの活動を「学際的」と表現することによって,増幅・補強されている。

計量書誌学Bibliometricsとは、どのような知識が評価され、認識され、利用されているかを同定するために、学術コミュニケーションを調査する効果的な方法を提供する。本論文では,医学教育研究における知識生産が,複数の分野や研究領域から得られたものなのか、それとも主に医学教育研究の分野の内部で生成された知識に基づいているのかを実証的に検証することで、医学教育研究を特徴を「学際的」と表現することは実際に基づくものなのかを探る。

上位5誌の医学教育研究誌に2017年に掲載された研究論文から抽出された引用文献1412件の分析を行った。6つの知識クラスター類型が帰納的に形成された。その結果、医学教育研究分野は、主に2つの知識クラスターから構成されていることがわかった.参考文献の41%を占める応用健康研究クラスター(臨床研究および医療サービス研究で構成)と、参考文献の40%を占める医学教育研究クラスターである。この 2 つのクラスターが全文献の 81%を占めており、残りの 19%は他の知識クラスター(教育研究、特定の学問分野における研究、学際的研究、トピック中心の研究)に分散していた。

応用健康研究と医学教育研究のクラスターが準覇権的な立場にあるため,他の知識源は医学教育研究分野において周辺的な役割を果たすにとどまっている。我々の調査結果から、医学教育研究が学際的な分野であるという仮定は、実証データによって説得力を持って裏付けされるものではなく、医学教育学に入ってくる知識はほとんどが健康研究の領域から来ていることを示唆している。

感想:「研究の研究」という印象を受ける論文.学際的とは名ばかりで,実際は決まった分野から知的財産を引っ張り出しているのだという現実を突きつけたという意味で,価値ある論文.まあでもたしかにそうだよなという感じはする.これが研究になること自体が,医学教育学が学際的であることの証のような気もする.新しいトピックに新しい視点を導入する研究をしたい.