Natt N, Dekhtyar M, Park YS, Shinkai K, Carney PA, Fancher TL, Lawson L, Leep Hunderfund AN. Promoting Value Through Patient-Centered Communication: A Multisite Validity Study of Third-Year Medical Students. Acad Med. 2020 Dec;95(12):1900-1907.
https://journals.lww.com/academicmedicine/Abstract/2020/12000/Promoting_Value_Through_Patient_Centered.40.aspx
目的
医学生が患者中心のコミュニケーションを用いて価値を促進することができるかを評価する標準患者(SP)シナリオ(不要な検査を要求する患者への対応)の妥当性の証拠を検討し,様々な実装およびカリキュラム上の要因が学生の点数に与える潜在的な影響を調べる.
方法
米国の5つの医学部の3年生(N = 516)が、larger OSCEの一環として、2014年から2017年の間にコミュニケーションシナリオを受けた。中央にいる評価者が,11項目のチェックリストを用いてパフォーマンスを評価した。著者らは複数の情報源から妥当性の証拠を収集した。
結果
チェックリストの平均スコアは0.85(標準偏差0.09)であった。チェックリストスコアの評価者間信頼性は良好であった(0.87、95%信頼区間=0.78~0.93)。G係数およびφ係数はそれぞれ0.65および0.57であった.OSCEステーションの数が増えるにつれてスコアは減少し(r = -0.15, P = 0.001)、総括的評価目的で使用されるとスコアは増加した(r = 0.26, P < 0.001)。スコアは、高価値医療(high-value care)にどれだけカリキュラムの時間を費やしたかには関連しておらず(r = 0.02、P = 0.67)、評価前に多くの臨床研修を修了している場合には低下した(r = -0.12、P = 0.006)。
結論
この多施設共同研究では、医学生が患者中心のコミュニケーションを用いて臨床場面で価値を促進できるかを評価するためにシナリオスコアを用いることを支持する妥当性の証拠が得られた。OSCEの構造と目的が学生のパフォーマンスに及ぼす潜在的な影響が明らかになり、クラークシップの学習経験が、学生が高価値医療に関する正規カリキュラムで教えられたことをさらに確認するような働きをしていない可能性があることが示唆された。このトピックに時間を割いても、この侵食に対抗するには不十分であるように思われる。
感想
患者が不要な検査を要求したときに,医学生が適切に対応できるかどうかを評価してみると,①high-value careの講義を受けているとうまくできるはずだけど,実際は関連がない,②臨床研修を経験しているほど適切に対応できていない(患者の言いなりになる指導医の姿をみているからか?).また,③ステーションの数が増えるとスコアは低下し,④総括的評価目的だとスコアは高くなることがわかった.①②がカリキュラム上の要因,③④が実装上の要因ということだろう.
また,あわせて評価の妥当性についても考察しているが,G係数,φ係数ともに十分な値であり,妥当性は高そうだということが分かる.
…というのが私なりの要約です.
確かに,講義で理想を教えられても(例:風邪に抗菌薬は処方しません!),実際現場で医者がそのようにしていない(患者が抗菌薬出せといったらほいほい出してしまう)のをみて,良くないやり方をまねしてしまう(hidden curriculumですね)ということは,一般的にみられることだろうと思います.「医学生が臨床実習で医師の悪いところをまねして身に着けてしまう」ということをOSCEを使って実証しているというのが個人的には最大の面白ポイントでした.
コミュニケーション技法を教えようと思ったら,講義の力は限定的で,実際に現場の医師がちゃんとやっている姿を学生に見せるほかないのでしょう.