2018年11月26日月曜日

家庭医療に対する疑問と回答(part 1)


Kozakowski SM et al. Responses to Medical Students' Frequently Asked Questions About Family Medicine. Am Fam Physician. 2016 Feb 1;93(3):Online. (PMID: 26926619)

家庭医療について医学生が抱きがちな疑問にたいして,Q & Aでまとめています.
日本でも米国でもこの辺りの事情はあまり変わらないですね.

回答は当然米国の状況を反映しているものですが,読んでいて非常に面白いです,
何回かに分けて訳します.


家庭医療について医学生がよく抱く疑問とその回答

この記事では、家庭医療という専攻について医学生がよく抱く数多くの疑問に回答していく。そのなかで、家庭医の大事な役割について以下の事項を触れる。ヘルスケアの環境をどう充実していくか、診療の射程はどうか、いかに多様なキャリアを得る機会があるか、家庭医を教育し訓練するとは何か、家庭医療のキャリアは実際のところ経済的にどうなのか、なぜ家庭医療の未来はこんなに輝かしいのか、なぜ家庭医は自分の仕事に熱意を持っているのか。


 家庭医は、あらゆる年齢の、あらゆる健康状態にある患者のかかりつけ医である。家庭医は、これまでにも増して、米国のヘルスケアシステムを変革していくのに不可欠な役割を持つようになっている。医学生は、家庭医という専攻について多くの疑問を抱いている。この記事を読めば、答えがわかるはずだ。

 家庭医の数は、ほかのどの専門の内科医よりも多い。(内科医全体をあわせると家庭医より数が多くなるが、内科医には様々なサブスペシャリティがあり、一つひとつの専攻医の数は家庭医より少なくなる。) 家庭医療のレジデンシープログラムは内科より多く全体で一位だが、レジデントの数をみると2番目になる。米国での家庭医の数は内科系勤務医の13%を占めるが、救急治療の25%は家庭医が行っており、外来診療もどの専攻医よりも数多く行っている。加えて、家庭医は2次医療、3次医療にも深くかかわっており、HIV感染患者など特別な集団に対する治療から集中治療まで診療の幅も広い。


2018年11月19日月曜日

グループホームの褥瘡患者にどう対応するか


訪問診療の一コマ

グループホーム入所中のMultimorbodityかつBed-riddenの患者に褥瘡が発生.
職員の方も頑張っていただいているが進行し真皮を超えている.
さて,どうするか.

適切な処置とアドバイスは勿論ですが,
やはりここは各種サービスを上手に使うべきです.

グループホームに訪問看護は原則入れない(介護サービスの重複になる)が,
特別訪問看護指示があれば,訪問看護は医療保険の扱いとなり,入ることができる.
しかも,週4回以上入れる(逆に言えば,週3回以下はダメ)

特別訪問看護指示の期間は交付日(=診療日)から14日まで.
通常は月1回のみだが,気管カニューレがある時と真皮を超える褥瘡があるときは月2回指示を出すことができる.

つまり,冒頭の場面では訪問診療を最低2週間毎行い,診察後に特別訪問看護指示を出せば,褥瘡が改善するまではグループホームでも訪問看護を使うことができる,ということですね.

帰りの往診車のなかで上記を思いつくことができたので,スムーズにサービス調整ができました.

ケアマネ任せ,看護師任せにせずに(連携を取るのはもちろん大事ですが)
使えそうな知識はしっかり押さえておかなくてはいけないと痛感しました.





2018年11月12日月曜日

咳喘息について


咳喘息(cough variant asthma)
自分が罹患した(暫定診断,本日よりICSで診断的治療開始)ため,基礎知識をまとめます.

・可逆性のある気道閉塞は見られることもあれば見られないこともある
・逆に咳喘息でない咳嗽患者で気道可逆性が見られることもある
・スパイロメトリーは33%の患者で偽陽性,メサコリン負荷試験は22%で偽陽性(PMID: 19121405)
・ゆえに最も確実な診断法はICS(吸入ステロイド)による診断的治療
・経過中に成人で30%程度が気管支喘息に移行
(以上,UpToDate: Evaluation of subacute and chronic cough in adultsより)

日本の診療ガイドラインをみても,やはり第一選択はICSですね.


アトピー咳嗽とどのように区別してよいのかいまいちよくわかっていません.
病態が違うことは理解できる(咳喘息は気管支平滑筋収縮,アトピー咳嗽は咳受容体感受性亢進:上述のガイドラインによる)のですが,どっちもICSが効きます.
鑑別点はβ刺激薬の効果の有無だとおもうのですが,診断的治療をICSでするなら鑑別しようがないのではと思ってしまいます.
ICSを2週間使って効果がいまいちならH1 blocker併用というので良いのでしょうか.余り腑に落ちていないです.
それとも,典型的な症状(のどのあたりがいがいが,ぞわぞわする)があればH1 blockerから開始,とするのでしょうか.

UpToDateにはnonashmatic eosinophilic bronchitisについての記述がありますが,これもICSが効きます.


細かい鑑別を追求するより,見逃してはいけない肺がんと結核をしっかり除外する方にエネルギーを割いたほうが良いのかもしれません.

気管支拡張症は…CTを撮らない限り診断は難しいのではと思ってしまいます.
膿性痰がずっと出ているような場合で考慮するのでよいのでしょうか.
喀痰抗酸菌培養で肺MAC症を診断した場合は,アジスロマイシン・リファンピン・エタンブトールを喀痰培養12か月間確認するまで投与です.薬剤副作用に注意ですね.
(UpToDate: Treatment of Mycobacterium avium complex lung infection)