2021年1月25日月曜日

大腸がんの診断

Högberg C, Gunnarsson U, Jansson S, Thulesius H, Cronberg O, Lilja M. Diagnosing colorectal cancer in primary care: cohort study in Sweden of qualitative faecal immunochemical tests, haemoglobin levels, and platelet counts. Br J Gen Pract. 2020 Nov 26;70(701):e843-e851. doi: 10.3399/bjgp20X713465. PMID: 33139332;

https://bjgp.org/content/70/701/e843.short?rss=1

背景

大腸がんの診断はプライマリケアにおける課題であり、信頼性の高い診断補助検査が望まれている。スウェーデンでは2000年代半ばから便免疫化学検査(FIT)が大腸がんの疑いがある場合に使用されているが、その有効性に関するエビデンスは乏しい。貧血と血小板増多症はともに大腸がんと関連している。

目的

プライマリケアで症状のある患者に依頼された定性FITが、単独で、あるいは貧血や血小板増多症の所見と組み合わせて、大腸がんの診断に有用であるかどうかを評価する。

デザインと設定

スウェーデンの5つの地域を対象に、電子カルテとスウェーデンがん登録簿のデータを使用した人口ベースのコホート研究。

方法

2015年1月1日から2015年12月31日までにプライマリケア医によりFITを提出された5地域の18歳以上の患者を同定した。FITと血液検査のデータを登録し、2年以内に行われたすべての大腸がん診断を検索した。診断測定値を算出した。

結果

合計で15,789人の患者がFIT(試薬は4種類)を受けた.うち304人が後に大腸がんと診断された。ヘモグロビン値は13,863人、血小板数は10,973人の患者で確認できた。それぞれの試薬のみで計算した場合、大腸がんに対する感度は81.6%~100%、特異度は65.7%~79.5%、陽性的中率は4.7%~8.1%、陰性的中率は99.5%~100%であった。FITが陽性または貧血がある場合の感度は88.9~100%であった。血小板増多症を追加しても、診断性能のさらなる向上は見られなかった。

結論

プライマリケアでの定性FITは、大腸がんが疑われる場合に紹介するためのルールイン検査として有用であると思われる。FITが陰性で貧血がなければ大腸がんのリスクは低い。

感想

「大腸がんを疑って提出した」便潜血検査の感度は80-100%,特異度は65-80%で,貧血を含めると感度はやや上がり,血小板増多は関係ない,という結論.大腸がんをどうして疑ったのかについてのデータはない.自分のプラクティスとしては,スクリーニング対象者には年1回の便潜血→便潜血陽性で大腸カメラ陰性なら後はカメラでスクリーニングであり,何らかの理由で大腸がんを疑ったら(カメラへのアクセスにバリアがない限り)便潜血を飛ばしてカメラを行うのですが,疑い患者で陰性予測値99.5%なら便潜血で除外してもいいのかなという気になりました.