2019年3月4日月曜日

プライマリケアにおける診断(part last)



Donner-Banzhoff N. Solving the Diagnostic Challenge: A Patient-Centered Approach.
Ann Fam Med. 2018 Jul;16(4):353-358.

かなり手ごわい論文ですが,病院から診療所勤務になって,診断があわないと悩んでいるときなどには,非常に有用な内容が含まれています.


結論:患者中心は割に合う!

 患者中心が良質な家庭医療に不可欠な特徴であるとの主張は説得力があり,特にWcWhinney,Stewartとその同僚の言説がとりわけ有名である.(32,33)しかし,患者中心が人口に膾炙しているとは言えず,傾聴の欠如は医師の行動に対する批判の的として最もよくある部類のものだ.(34-36)効果的な関係性を構築することと診断を下すこととはお互い無関係のスキルだと思われがちであるが,この2つのタスクは相乗的なものであると強調したい.効果的な診断を患者との協働なしに達成するのは非常に困難である.診断的探究が行われるたびに,臨床上の問題空間内で新たな協働的適応が起こる.自らの利益となり,最終的に時間の節約にもなることが分かれば,プライマリケア医はみな問題探究の早期に患者を巻き込むようになるはずであり,このような診断戦略が私と同僚が帰納的渉猟と呼ぶものである.如何に医師が診断にたどり着くのかについての以上の説明は,プライマリケア診療に活気を与える以下のキーメッセージとして要約できる(表1).


表1:プライマリケアでの診断プロセスに関するキーメッセージ

・総合診療医のセッティングでは,存在しうる問題(診断)の問題空間はほぼ無限である.
・最近の研究が示唆する通り,すでに確立した描写やモデルは医師が診断にたどり着くために行っていることを十分に反映していない.
・帰納的渉猟と誘発されるルーチンによる問題空間の探索は,総合診療医のセッティングに適合可能な診断戦略として提唱されている.
・患者は上記の協働的プロセスにおいて中心的役割を担っている.