2021年1月18日月曜日

共感の成長軌跡

Piumatti G, Abbiati M, Baroffio A, Gerbase MW. Empathy trajectories throughout medical school: relationships with personality and motives for studying medicine. Adv Health Sci Educ Theory Pract. 2020 Dec;25(5):1227-1242. doi: 10.1007/s10459-020-09965-y. Epub 2020 Feb 24. PMID: 32095990.

https://link.springer.com/article/10.1007/s10459-020-09965-y

共感性は、医学教育研究において常に広く議論されているテーマである。医学生の共感性の変化に関する研究は結論がまちまちであり、共感性が低下する場合もあれば、安定している場合もあれば、上昇する場合もある。共感性の変化における個人間の変動性、すなわち共感性の縦断的な軌跡には様々なものがあるのかについては、ほとんど研究が行われていない。また、共感性の軌跡と,性格や医学を学ぶ動機との関連性についてのエビデンスも乏しい。

本研究では,潜在成長モデル(latent growth modeling)を用いて、201人の医学生(念帝の中央値:20.74、女性が57%)の共感性(Jefferson Scale of Empathyで測定)を、入学時(1年目)と臨床に出たての2年間(4年目と5年目)という3つの時期に評価を行った。共感の軌跡、1年目における医学生の性格、4年目と5年目のそれぞれにおける医学を学ぶ動機との関連性が検証された。

共感性の軌跡は、低値かつ減少しているグループ(n=59、29%)と、高値かつ安定しているグループ(n=142、71%)の2つに分けられた。回帰分析では、1年目の評価時に高い開放性がある学生ほど、より高く安定したグループに属する確率が高くなることが示された(1年目における動機についてコントロールを行っている)。開放性がおよぼす効果は,4年目と5年目における動機をコントロールすると消失したが、患者への思いやり(4年目と5年目)と利他主義(4年目)は、高値かつ安定したグループに属する可能性に正の関連をしめした。

要約すると、共感性はほとんどの医学生で安定しているが、少数の医学生では低下していた.医学学習に対し開放的で患者志向の医学生は,共感性が高値かつ安定していることがわかった。医学生の患者志向の動機を臨床実習期間を通して臨床に出る前から促すことで、共感性の低下を防ぐことができるかもしれない。

用語解説:潜在成長モデリング latent growth modelling

成長の軌跡を推定するために構造方程式モデリング( structural equation modeling:SEM)フレームワークで使用される統計的手法であり,一定期間の成長を推定するための縦断的な分析手法である。潜在成長曲線分析(latent growth curve analysis)とも呼ばれる。(Wikipediaより)

感想:①共感性はもとから低くてさらに低くなるグループと,もとから高くて安定しているグループがある,②開放的かつ患者志向の学生は高値安定の流れになりやすい.という2点が明らかになった.SEMはまだ詳しく勉強していないし,私にできる気はしないが,とても面白くわかりやすい論文だと思った.