2023年1月18日水曜日

SDHの聴取項目HEALTH+Pの策定


原著論文がSTFMの雑誌PRiMERから出版されました。


Assessing Social Circumstances in Primary Care: Expert Consensus via Delphi Technique


以前より、社会的バイタルサインという考え方を用いて、患者の社会的背景の聴取、評価をしてみてはどうか、という提案を各媒体でしております。

その際に、「HEALTH+P」という略語を使って、聴取すべき項目を提案しておりました。ですが、この項目は臨床上の経験をもとに定めたもので、科学的な妥当性がないことが課題になっていました。

そこで、デルファイ法という方法を用いて、当事者を含む多様な意見を集約し、新しいHEALTH +Pを策定しました。


新しい項目は以下の通りです。

Human network and relationships 人間関係

Economic condition and Employment 経済状況、仕事

Access to health care and other service ヘルスケア、その他サービスへのアクセス

Living a daily life and Leisure time 日常生活、余暇、楽しみ

Total physiological needs, Tool and Technology 衣食住、車や携帯電話などの生活ツール

History of the patient's life 生活史(小児期の経験や教育環境を含む)

Patient's Preference and values 価値観


すでに旧来のHEALTH+Pを臨床でお使いいただいている場合は、そのままで問題ないと思います。そもそも、完全なSDHスクリーニングは原理上ありえませんので。

もし、新たに項目を使った診療を考えていたり、論文等で使用したりするときには、こちらを利用していただくこともできるかと思います。



2023年1月2日月曜日

プライマリケアでの「糖尿病教育」


Baker KM, Nassar CM, Baral N, Magee MF. The current diabetes education experience: Findings of a cross-sectional survey of adults with type 2 diabetes. Patient Educ Couns. 2022 Dec 22;108:107615. doi: 10.1016/j.pec.2022.107615. Epub ahead of print. PMID: 36584557.


プライマリケアセッティングで、成人二型糖尿病患者498人を調査し、「糖尿病教育」を受けた経験について調査しています。

「糖尿病教育を受けたことがある」と回答したのは全体の半数でした。

受けたことがあると回答した人のうち44%は、教育を1回しか受けていませんでした。

糖尿病教育の70%は1対1のセッションでした。栄養士からが68%、医師からが51%でした。「病気のときに糖尿病の薬についてどうするか」といった、日常生活とは関係のないトピックに関する教育を受けた経験は少ないことが分かりました。


この論文を読んで、糖尿病について多岐にわたる話し合いを患者をすべきですし、それを繰り返すことがよいのかなと思いました。

食事や運動についてももちろんですが、最近はSGLT-2iのように経口薬でもsick day ruleをしっかりしていないと重篤な有害事象を招く可能性のある薬もありますし、しっかり説明しなければいけませんね。

医師、看護師、栄養士、薬剤師のチームを作るのが理想的かなと思いますし、薬剤についてはパンフレットを作るのもいいかなと思いました。