2022年6月27日月曜日

研修医指導:プレゼンテーション指導と胸部X線

 

週のうち半日、研修医指導をしております。

カンファでのプレゼンテーションの指導は、最初が肝心だと思っており、1例1時間くらいかけてみっちりやります。

(本当はずっと継続してしたいのですが、カリキュラムの内容が多すぎて数回しかプレゼン指導はできないのです。)


プレゼンの練習をすることで、自分の思考過程とアセスメントを振り返ることができます。

ただ「全身が痛い」だけではなくて、それはどこが痛いのか、関節か、付着部か、筋か、自動時と他動時で違いはあるのか、など、細かくチェックします。

また、いわゆるプライマリケアを担う医療機関で指導しているので、illness scriptが完成する前に受診される場合も多く、ファーストタッチの限られた情報からなにを考えてどのように動けばよいのかを考えてもらう機会となっています。


また、時間外にはなりますが、週1回くらいのペースで、胸部X線読影カンファをしています。

私自身、読影は苦手意識があるのですが、研修医と一緒に勉強しています。

教科書ではあまり扱われない、normal variantやarchifactについて、これは病的意義があるのかないのかについて、詳しく検討します。

何回か繰り返すと、みるみる読影できるようになっていくのを実感して、指導側としても楽しいです。


2022年6月23日木曜日

「総合診療」に寄稿しました


雑誌「総合診療」の6月号

「特集 総合診療外来に“実装”したい最新エビデンス My Best 3」

に拙稿が掲載されました。


https://www.igaku-shoin.co.jp/journal/detail/111059#tab2


健康の社会的決定要因に関する最新エビデンスについて

プライマリケア診療への実装を念頭に解説しております。


もしよければお読みいただけますと幸いです。



2022年6月20日月曜日

新参者が辿る医学部生活


Sims, Lillian R.  Into the Unknown: Experiences of Social Newcomers Entering Medical Education, Academic Medicine: June 01, 2022 - Volume - Issue - 10.1097/ACM.0000000000004762

doi: 10.1097/ACM.0000000000004762 


ぎゃー。しびれる論文に出会いました。


医師の子弟であるなど、もとから医療とかかわりがあった学生(この論文ではinsiderと呼称しています)ではない、もともと医療にかかわりがなかった医学部入学生(=newcomer)が医学部生活で何を体験するのかについて探った研究です。


まず、newcomerは、入学直後にoutsiderとして結構しんどい思いをするようです。

outsiderとしての経験には、地方出身、低所得といった社会的背景も影響します。

そんなnewcomerも、自分の持つ多様な背景をもとに、自分なりのやりかたで医療に向き合っていきます。


私自身、医師の子弟でなく、地方出身であるなどといった様々な背景が重なり、大学生活ではoutsiderとして、まあまあしんどい経験はあったなと思います。

同級生がみな文化的資本力に満ち溢れていて、愕然としたこともありました。

学内での社会的資本は明確に不足していました。

ですが、結局は地元の小病院で研修して家庭医になるという、私がいた大学の中では明らかに異質な道を歩みましたし、それにより多大な利益を得たと思っております。

ですので、まさに私のことを書いた論文だ、という感じました。


そして、恐ろしいことに、単独著者です。世の中にはすごい人がいるのですね…



2022年6月16日木曜日

認知症のある高齢者に赤ちゃん言葉で話しかけるとケアの拒否が増える

Shaw CA, Ward C, Gordon J, Williams KN, Herr K. Elderspeak communication and pain severity as modifiable factors to rejection of care in hospital dementia care. J Am Geriatr Soc. 2022 Jun 1. doi: 10.1111/jgs.17910. Epub ahead of print. PMID: 35642656.

elderspeakとは、簡単に言えば、高齢者にたいして、赤ちゃんかのように話しかけてしまうことです。

私としては、できるだけしないようにとは思っていますが、ついついelderspeakになってしまうことがあり、あとで反省することも多いです。


痛みを緩和しelderspeakを控えることで、rejection of care(ケアの拒否)が減る、という研究です。

認知症患者と看護師との間に行われた会話の大半(96.6%)が何らかの形でelderspeakを含んでいました。

また、半数近く(48.9%)の看護職員がケアの拒否を経験していました。

elderspeakが10%減少すると、ケアの拒否のオッズは77%減少し、ケアの拒否の強さは16%減少しました。また、痛みの重症度が1単位下がると、ケアの拒否のオッズは73%減少し、強さも28%減少しました。