2019年8月26日月曜日

Hoagland sign



(以下の事例は,経験を元に大幅に脚色したものです)

若い大学生.微熱があり近医を受診したところ,炎症反応上昇に加え,CK高値とミオパチーがあった.
橋本病が発覚し,ホルモン補充療法を受けたが,そのころから全身倦怠感が増悪.
微熱も続いていたが,初診から2週間後に,高熱,全身リンパ節腫大,肝障害,白血球増多が出現したため,紹介受診.

橋本病に何らかの炎症性疾患が合併したのか?
そう思って診察室に入ってきた顔を見ると…一発診断!


(画像はPMID: 24071946より引用)

どうやら,微熱がでた2週間前から,両眼瞼の浮腫も出現していた様子.
白血球分画を調べると異型リンパ球が増加しており,
ウイルス抗体価はEBV初感染パターン.

おそらく,EBV感染→初期のまだ症状が弱いときに医療機関受診
→もともとあった橋本病に気づかれる
→橋本病の治療を始めたころにEBVの症状が強くなる
→診断困難例として紹介

というストーリーだったのでしょう.

眼瞼浮腫は伝染性単核症のまれな初期症状です.(PMID:13184396)
自身の経験では,Hoagland signが診断のきっかけとなったのはこれで3例目.

EBV感染の臨床像の幅広さを,今一度認識しておきたいものです.


2019年8月11日日曜日

大病院総合診療科での外来の役割


家庭医療後期研修内での内科研修のため,半年間大病院の総合診療科で勤務しています.

いままで,小病院,在宅,診療所が自分のフィールドだったので
日々新しい経験をしています.

いままで,比較的セレクションのかかっていない集団に対し
その人の生活,人生をできる限り視野に納めて
非選択的なプライマリケアを行っていましたが,

大病院の総合診療科では
「診断がつかないから診てほしい,後のことはこっちでするから」という
紹介が多く,その点ではライフコースや社会的背景を意識することは少なくなりました.

当然,心理社会的な側面を探求する必要に迫られることはありますが,
それは診断・治療のためという側面が大きく,
家庭医療を実践するため,というわけではないという感覚です.

患者のセレクションもいままでと比べるととてもかかっているため
たとえば心理社会的に複雑なケースを担当することもめっきり減りました.

もちろん,大病院総合診療科でしか学べないことがあり,
そちらに関しては思う存分学べているので,
とても満足はしているのですが.

その中で,自分の得意分野というか,
これなら他人とは違う自分の能力を発揮でき,
患者のために,病院のために力に慣れるぞ,という領域が
少し見えてきました.

それは「外来患者の良性疾患に診断をつける」というもの.

「悪いところはないですね」「検査で異常はないです」
とだけいって患者を帰宅させる
ということは絶対にしない,ということです.

勿論診断がつかないことはありますが,それでも
つぎの道筋をしめした,患者が途方にくれないようにする
というのを意識しています.

そして,大抵の診断困難例では,検査は十分おこなわれており,
もう検査することなんてないよ,という段階でこちらに紹介されることが多いので,
試されるのは問診と身体診察というシンプルなスキルに集約されます.

これが自分としてはとても面白く,
また,本当に問診と身体診察だけで診断がつくことが多いので,
患者も満足するし,自分もうれしくなります.

非当番日に外来からよばれた,原因不明の足首痛を
問診と身体所見,靴の裏の所見から診断し
POCUSで確認,というのが最近のbest practiceでした.

こういう浮かれた時に重大な誤診や失敗をしでかすものなので
今一度気を引き締めて,一人ひとり丁寧にみていきたいです.