Lee RY, Modes ME, Sathitratanacheewin S, Engelberg RA, Curtis JR, Kross EK. Conflicting Orders in Physician Orders for Life-Sustaining Treatment Forms. J Am Geriatr Soc. 2020 Dec;68(12):2903-2908. doi: 10.1111/jgs.16828. Epub 2020 Sep 16. PMID: 32936447.
https://agsjournals.onlinelibrary.wiley.com/doi/abs/10.1111/jgs.16828?af=R
背景/目的
慢性疾患を持つ高齢者の多くは、緊急治療に関する携帯可能な医学的指示を文書化するために、「生命維持治療に関する医師による指示書」(Physician Orders for Life‐Sustaining Treatment:POLST)を使用している。しかし、POLSTの中には、一貫した治療プランに翻訳できない指示の組み合わせが書かれているものもある(例:心肺蘇生はするが集中治療は行わない,集中治療はするが抗菌薬は用いない)。本研究では、指示が競合するPOLSTの存在割合とその予測因子を明らかにする。
デザイン
後方視的コホート研究。
設定
大規模な大学病院のシステム
参加者
命に関わる慢性疾患があるPOLST利用者のうち,2010年から2015年の間に死亡した3,123人(平均年齢=69.7歳)。
測定方法
参加者の電子カルテ内のすべてのPOLSTを後方視的にレビューし、心停止や医学的介入の指示が競合するPOLSTの存在割合を記述したうえで、clustered ロジスティック回帰を用いて指示競合の潜在的な予測因子を評価した。また、抗菌薬および人工栄養剤に対するPOLSTの指示と,心停止または医学的介入の指示との間に競合がある割合を調べた。
結果
3,123人の死亡者につけられた完全なPOLST 3,924件のうち、209件(5.3%)のPOLSTには、「心肺蘇生を試みる」指示に,「限定的介入」または「緩和的処置のみ」の指示が付加されていた.745件/3169件(23.5%)のPOLSTには、抗菌薬を制限する指示に、積極的に治療介入を行う指示が組み合わされていた.170件/3098件(5.5%)のPOLSTには、人工栄養を控える指示と、心肺蘇生または集中治療を行う指示とが組み合わされていた。集中治療を行わない指示があるPOLSTのうち、心肺蘇生を試みる指示がある可能性は,患者の疾患経過の早い時期にPOLSTが完成している場合に高かった(調整後オッズ比:POLSTから死亡までの日数が2倍に増加するごとに1.27.95%信頼区間=1.18-1.36.P<0.001)。
結論
ほとんどのPOLSTは臨床医が実行可能なものであるが、5%の患者では心停止と医学的介入の指示が競合し、24%の患者では心停止、医学的介入、抗菌薬、人工栄養の指示が1つ以上競合していた。このような矛盾した指示は、急性期医療の現場の臨床医にとってPOLSTの実施を困難にしている。
感想
ACPは早すぎてもだめ,という従来の知見を指示する結果だと思われる.いざその時に何をしてほしいかを,すべての患者があらかじめ十分理解して指示できるわけではないというのは,当たり前なことなのですが,案外忘れがちになってしまう点でもあります.ちなみに,私は終末期治療についてはpaternalisticな意見を持っていることを自覚しているので,できるだけpaternalisticにならないようにふるまおうとしています.