2015年9月26日土曜日

リウマチ性多発筋痛症に関する推奨



リウマチ性多発筋痛症(PMR)の治療に難渋しているケースに出会ったので。


PMRの2015年版ガイドラインがA European League Against RheumatismとAmerican College of Rheumatologyの合同で出されました。

原文は以下から全文読めます。
Arthritis & Rheumatology 67(10):2569–2580

9つの推奨がなされているので、簡単に書きます。


①NSAIDsではなくてステロイドを使用する。
ただし、変形性関節症などが併存しているときに短期に併用するのはあり。

②ステロイド使用は、個々人に合わせて、必要最小限の期間にとどめる。

③初回治療ではプレドニゾン換算で12.5-25mg/dayを投与する。多すぎ、少なすぎは良くない。
糖尿病、骨粗鬆症、緑内障などの併存疾患がある場合は、上記範囲の中で少なめの用量にする。

④病勢、データ、有害事象をみながら個々人次合わせた投与計画を立てる。
A. まず4-8週以内に経口プレドニゾン10mg/dayにtaperingする
B. 再燃した場合は、滓年前の用量に戻して、4-8週かけて徐々に再燃時の量にする
C. 寛解が得られたら、4週ごとに1mg/dayずつ減らしていく。再燃したらBの通り。
 (1T1.25mgだと、10mg/dayと7.5mg/dayを交互にするなどして調整をする)

⑤経口ステロイドのかわりに筋注メチルプレドニゾロンを用いても良い

⑥ステロイドは分1で用いる。夜中になると痛いなど特別な場合はその限りではない。

⑦再発の可能性が高いときや有害事象の危険性が高いときは、ステロイドにくわえメトトレキサートの早めの導入を検討する。
メトトレキサートの用量は7.5-10mg/wk

⑧TNFα阻害薬は使用しない。

⑨筋量と機能の維持、転倒防止のため、運動プログラムを行う。


へぇーと思うことばかりでした。

American College of Rheumatologyはcommonな疾患のガイドラインをpublishしているので、機会があれば他の疾患についても勉強してみようと思います。


男性介護者の特徴



男性の介護者の特徴として
「細かいことまで没頭してしまい、他人の助けを足りない」
という方が一定数いらっしゃるなという感覚が学生時代からありました。


P. B. Harrisが1993年に発表した論文(The Gerontologist 33(4):551-556)で
男性の介護者を4つに類型化しています。
読んでいて、なるほどと思ったのでまとめてみます。
(以下の記述は、立命館産業社会論集45(1):171-188を参考にしています。)

①the worker
介護を仕事の延長線上に捉え、合理的にそつなくこなしていくタイプです。
家事や身の回りの世話など、従来のジェンダーとしては女性の役割とみなされる介護を
男性的に行うタイプであり、どちらかというとうまくいきやすいかたちです。

②the labor of love
愛情をもって介護者に接するがあまり、あらゆる時間とエネルギーを注ぎ込むタイプです。
社会的孤立が深まりやすく、言い方は不適切ですが自分で自分の首を絞めかねないです。
僕が抱いていたイメージはこのタイプですね。

③the sense of duty
介護を義務としてとらえ、可能な限り介護と自分の生活を分けようとするタイプです。
訪問診療に行っても自分の部屋から出てこない介護者とかはこのタイプですね。

④at the crossroad
介護という「予期せぬキャリア」により、自分の役割とアイデンティティをマネジメントできず、人生の方向性を失っているタイプです。
まさにライフサイクルの「岐路に立って」いる状態です。
上のタイプと比較しても、早急なサポートが必要だとされています。


2006年の日本の調査では、男性介護者の年代は70歳代が最も多く、(平均69.3歳)57.3%が通院しているため、介護と自らの健康という二重の負担がかかっている方が多いです。

また、74%が定職についていませんが、そのうちの21.6%が介護を理由に仕事を辞めています。
介護と仕事の両立が難しく経済的に困窮する危険性があるのに加えて、上記の④at the crossroadに陥りやすい方が一定数いるということです。

また、非常に変な話なのですが、同居家族がいるとヘルパーは生活援助できないことになっているため、今まで家事をしてこなかった男性介護者にもすべての家事の負担がかかってしまうことになります。


男性介護者に出会ったときに、上記のどのタイプなのだろうと考えることで
より適切な対処が取れる可能性が上がるとおもいます。


2015年9月24日木曜日

ねこひっかき病について



ねこひっかき病の患者さんがいらしたので勉強してみました。


猫による外傷部位に発赤が生じ、2週間ほどで局所のリンパ節腫脹が生じます。
主な原因菌はBartonella henselaeです。
診断は臨床的に行います。抗体検査もないことはないようですが信頼性に乏しいです。

多くは対症療法で良いそうです。自然と症状は消失します。
発熱はあるときもないときもあります。

重症例では以下のように抗菌薬を用いることもあります。
・AZM 初日500mg/day→2~5日目は250mg/day
・CAM 400mg/day 分2

局所の発赤は長いと数週間持続し、リンパ節腫脹の改善には数カ月かかることもあるため
症状がなくなるまで治療ということにはならないです。


ごくまれに、中枢神経、眼、肝臓、脾臓に感染が広がることがあります。

中枢神経系では、脳炎、脊髄炎、小脳性運動失調などが起こります。
肝脾腫を呈する場合では、末梢リンパ節腫脹は生じないため、不明熱となります。

眼病変では以下の症状が起こります。
・Parinaud眼腺症候群
 片側性肉芽腫性結膜炎+同側の著明なリンパ節腫脹

・視神経網膜炎
 急性の視力障害、視神経の浮腫、黄斑部の滲出性変化


B. henselaeは、HIV患者に感染すると、細菌性血管腫や感染性心内膜炎を生じることがあります。
USMLEの問題ではよく問われる知識ですが、やはりHIV患者が多いのでしょうか。


参考:レジデントのための感染症診療マニュアル 第3版


外傷時の破傷風予防



外傷の際には破傷風ワクチンの接種を考慮します。
細かい回数や年数までは覚えていなかったので、備忘録がてら書いておきます。


まず基礎免疫について。
DPTワクチンまたは破傷風トキソイドを3回以上摂取すると、基礎免疫が獲得できる。
その後は定期的な破傷風トキソイド接種によりブースター効果で免疫が保たれる。


【Clean wound(鋭利で清潔な刃物による切創)以外の外傷】

・基礎免疫が獲得されていない又は不明な場合
 →テタノブリン筋注に加え破傷風トキソイド3回接種

・基礎免疫が獲得されている場合
 →ブースターから5年以上経過している:破傷風トキソイド1回接種
  5年未満:必要なし


【Clean wound】破傷風予防接種の好機であるととらえる。

・基礎免疫が獲得されていない又は不明な場合
 →破傷風トキソイド3回接種

・基礎免疫が獲得されている場合
 →ブースターから10年以上経過している:破傷風トキソイド1回接種
  10年未満:必要なし


参考:ここから始めよう! みんなのワクチンプラクティス ケアネットDVD 2014


2015年9月16日水曜日

甲状腺機能亢進症の症状


本日のPrimary Care Lecture Seriesのケースシェアリングカンファランスが
主訴が頻尿で、頸部痛があり亜急性甲状腺炎と診断したケースでした。

甲状腺機能亢進症で頻尿がでることを初めて知りました。
また、病棟でも甲状腺の問題が併存している方にたくさん出会います。
甲状腺結節を偶然発見→ホルモンは異常なし→エコーで結節が多発していると判明→euthyroid multinodular goiterだから安心だね(Washington Manual pp.895-896)、という流れはしばしば経験するところです。


総花的ですが、甲状腺機能亢進症のマイナーな症状についてまとめてみます。

・Plummer's nail
Plummerが記述した甲状腺機能亢進症患者の爪の変化です。
爪甲剥離、縦溝、扁平化がみられます(Ann Intern Med. 1958;49(1):102-8)。
画像はEndocrine Practice 2008;14(1):132 でみてください。

・血球異常
貧血が、女性で18%、男性で28%の割合であり、多くは正球性貧血ですが、悪性貧血が全体の1.9%でみられたという報告(Q J Med. 1978;47(185):35-47)があります。

・凝固能異常
凝固因子の異常をきたすことがあります(Eur J Endocrinol. 2001;145(4):391-6.)。
最近だと、甲状腺機能亢進症以外のリスク因子のないDVT発生の2例報告(Neth J Med. 2014;72(4):242-4.)や、甲状腺中毒症の脳静脈洞血栓症の報告(BMJ Case Rep. 2013;5:2013)があります。

・頻尿
UpToDateには、"Urinary frequency and nocturia are common in hyperthyroidism, although the mechanism is uncertain."とあります。また、小児の夜尿症については、"Enuresis is common in children."とあります。
女性尿失禁の罹患率が、甲状腺機能亢進症患者では1.60%、コントロールでは1.04%とHR1.30-1.83で有意に異なるという研究(Clin Endocrinol (Oxf). 2011;75(5):704-8.)があります。
尿意切迫、頻尿、夜尿は訴えづらい症状のため過小評価されており、甲状腺機能亢進症の治療で改善するとの論文(Postgrad Med. 1988;84(8):117-8.)もあります。


以前、亜急性発症の認知機能変動の原因として、甲状腺ホルモン正常だが各種抗体陽性で橋本脳症と診断されたケースを勉強しました。
rare presentations of common diseasesをしっかり把握しておきましょう。

参考:UpToDate Overview of the clinical manifestations of hyperthyroidism in adults


2015年9月14日月曜日

ギランバレー症候群の亜型


ここ2週間で、Bickerstaff型脳炎についての記載を続けてみたので
理解を深める機会だと思いまとめてみます。

ギランバレー症候群にはさまざまな亜型があります。

圧倒的に多いのがAcute inflammatory demyelinating polyradiculoneuropathy(AIDP)で、一般的にギランバレー症候群といったらこれを意味します。
進行性・対称性の筋力低下に加え、腱反射消失がみられます。

Acute motor axonal neuropathyは、AIDPと似ているところも多いですが、特徴は腱反射が消失しないこと、感覚神経が障害されないこと、運動神経が選択的に障害されること、生理検査で脱髄障害ではなくて軸索障害のパターンをとることです。
日本の若者で多く、大抵の場合はC. jejuniの感染が先行します。
進行すると、Acute motor and sensory axonal neuropathyとなります。

Miller Fisher syndromeは、外眼筋麻痺、失調、腱反射消失を三徴とします。
Bickerstaff encephalitisはMiller Fisher syndrome + 脳症を伴う脳幹炎 + 腱反射亢進です。
Pharyngeal-cervical-brachial weaknessは、口咽頭、頸部、肩の筋力が急性に低下し、嚥下困難を伴います。下肢筋力や下肢腱反射は保たれています。
この3つは、GQ1b抗体が陽性となり、IVIGが有効となります。


臨床では当然、ギランバレー症候群とそれ以外の疾患の鑑別のほうが大事だとは思うのですが
少なくともAIDPとAcute motor axonal neuropathyのイメージは持っておいた方がいいと感じました。


参考:UpToDate Clinical features and diagnosis of Guillain-Barré syndrome in adults


呼吸困難感を細分化して考える


労作時呼吸困難感で受診し、完全房室ブロックの診断となったケースを受け持ちました。
詳しく聞いたら「運動して数分で、どれだけ息を吸っても酸素が体に入っていかない感じになる」とのことでした。

心不全やCOPDの時の労作時呼吸困難感とはちがう訴えだなと思ったので、考察してみます。


そもそも、呼吸困難感とはなにか。
American thoracic societyでは、dyspneaをこのように定義しています。

“a subjective experience of breathing discomfort that consists of qualitatively distinct sensations that vary in intensity”(Am J Respir Crit Care Med 159:321–40)

大事なのは呼吸困難感は主観的な症状に過ぎない、
言い換えれば、呼吸困難感とは、末梢から呼吸感覚中枢に「もっと呼吸しなさい」という情報が異常に入力されることである、というところです。


というわけで、脳に情報を送る末梢の受容体毎に考えます。

①頸動脈小体や延髄に存在する化学受容体
動脈中の酸素・二酸化炭素・pHを感知する

低酸素血症や高二酸化炭素血症、アシドーシスで異常を感知
Air hunger(「もっと息がしたい」「酸素が足りない」)


②肺内に存在する迷走神経受容体
肺組織の膨張や収縮・肺血管のうっ血などを感知する

気管支狭窄、心不全などで異常を感知
Tightness(「息が詰まる」「胸が締め付けられる」)


③胸郭に存在する機械受容体
張力や振動を感知

COPDなど呼吸仕事量の増加で異常を感知
Work/Effort(「呼吸がつかれる」「息が切れる」)


以上のように、患者の訴える表現により呼吸困難感の原因をある程度追究できるみたいです(Chronic Respiratory Disease 3:117-22)。
もちろんそれだけに頼るのではなく、増悪因子や身体所見を総合的に判断するわけです。

「息が苦しい」→「じゃあSpO2を測ろう」→「正常値だね、気のせいだよ」というmalpracticeをしないためにも
しっかり患者さんの言葉を聞いて、SpO2に反映されない異常を感知していきたいです。


参考:JIM Vol.23 No.9 2013 「息苦しい」が主訴の時


2015年9月13日日曜日

多発性骨髄腫をいつ疑うか


貧血の精査を行い、多発性骨髄腫と診断する機会がありました。
骨髄障害であることはすぐわかったのですが、高齢でありかつ、骨痛やCa高値がなかったため、骨髄穿刺をするまで全く鑑別に上がりませんでした。

多発性骨髄腫の症状の頻度は以下の通り

貧血:73%
骨痛:58%
Cre上昇:48%
倦怠感:32%
高カルシウム血症:28%
体重減少:24%、うち半数は9kg以上減少

一つひとつの症状はそこまで頻度が高くないですね。
「貧血の精査で多発性骨髄腫」という今回のケースは十分にあり得るわけです。

貧血はもちろん正球性となることが多いですが、大球性貧血が全体の9%で見られています。
そのうち53%がVitB12<200ng/lであり、機序は明らかではないですがVitB12欠乏を一定割合で合併するみたいです。
VitB12欠乏性貧血かなと思ったら、しっかりその原因(悪性貧血など)まで追求しなくてはいけませんね。

腎障害が最初の症状となることもあるみたいです。
私の経験したケースでも、貧血進行の前に腎障害が出現していました。

上記にないものとしては、繰り返す感染症に注意です。
インフルエンザワクチンと肺炎球菌ワクチンが推奨されています。


多発性骨髄腫の定義は以下の通りです。

【必須】骨髄で形質細胞が10%以上または髄外形質細胞腫
これに加え以下のうち1つ以上当てはまれば確定。

①血清Ca>11mg/dl
②腎障害:Creクリアランス<40ml/minまたは血清Cre>2mg/dl
③Hb<10g/dl
④骨融解像
⑤骨髄内形質細胞60%以上
⑥血清free軽鎖比>100
⑦MRIで病変あり


なお、M蛋白が3g/dl以上または骨髄で形質細胞が10-60%にも関わらず、臓器障害がない状態を、くすぶり型多発性骨髄腫といいます。
年率10%で多発性骨髄腫またはALアミロイド―シスに移行するので、緊密なフォローアップが必要です。この時点では化学療法の適応にはなりません。


多発性骨髄腫はヘテロな病態の集合体であると考えられているそうで、その理由としては、化学治療をしても進行していく場合もあれば、長年経過観察しても良い場合もあるということです。

なので、ステージングが大事になるのですが、これには染色体検査などが必要になります。
非専門医では、International Staging System(ISS)を押さえておけばいいと思います。

Stage 1:β2ミクログロブリン<3.5mg/lかつ血清Alb>3.5g/dl 余命中央値62ヶ月
Stage 2:1でも3でもない 余命中央値44ヶ月
Stage 3:β2ミクログロブリン<5.5mg/l 余命中央値29ヶ月


参考:UpToDate
Clinical features, laboratory manifestations, and diagnosis of multiple myeloma
Staging and prognostic studies in multiple myeloma


2015年9月6日日曜日

悪性症候群とセロトニン症候群


救急外来で鑑別診断としてよく出てくるけどまだホンモノには出会っていないです。
起因薬剤を飲んでいる方にはよく出会うので、そのうち遭遇するかもしれません。


悪性症候群は、抗精神病薬を代表とするドパミン遮断薬を投与している患者でおこります。
初回投与でも起こりうるし、同一の薬剤を長年飲んでいても起こることがあります。
用量が少ないから起こらないというものでもありません。

以下の4症状のうち2つ以上当てはまれば悪性症候群を強く疑います。
なお、ほぼ全患者で最低でも1つあてはまります。

・精神症状(82%)
興奮・錯乱状態が多いですが、緊張病・緘黙状態となることもあります。

・筋強直
鉛管様強直~歯車様強直となったり、震戦・筋緊張亢進・後弓反張・咬痙・舞踏運動などの不随意運動が出ます。ドパミン遮断状態ですから納得です。

・高体温
38℃以上が87%、40℃以上が40%を占めます。

・心機能異常
頻脈(88%)、血圧不安定もしくは高血圧(61-77%)、頻呼吸(73%)などです。
不整脈や発汗が出ることも。


悪性症候群との鑑別が問われるのがセロトニン症候群です。
原因となる薬剤が異なるのと、症状も微妙に違います。

Hunter criteriaによると、SSRIなどセロトニン系薬剤を服用していて、以下の1つでも当てはまると診断となります。

・自発的なクローヌス
・誘発クローヌスに加え興奮または発汗
・眼球クローヌスに加え興奮または発汗
・震戦と腱反射亢進
・筋緊張亢進
・38℃以上に加え眼球クローヌスまたは誘発クローヌス


筋がこわばるのが悪性症候群
筋が過敏になるのがセロトニン症候群
というイメージですかね。


参考:UpToDate Neuroleptic malignant syndrome, Serotonin syndrome


高アンモニア血症にどう気づくか



ウレアーゼ産生菌の尿路感染症による高アンモニア血症の報告を最近よく目にする気がするので、纏めてみました。


意識障害をきたす高アンモニア血症の原因としては、やはり第1に肝性脳症が挙げられます。
他には、先天性の尿路回路酵素欠損(OTC欠損症など)ウレアーゼ産生菌感染薬剤(バルブロ酸など)があります。


肝性脳症の診断にアンモニア測定は必要ありません。
血清アンモニア値は様々な要因の影響を受けるため、変動が強いためです。
あえて言うなら、正常値の2倍以上となってはじめて診断的価値があるみたいです。

基本的には臨床診断です。
文献上の肝性脳症の定義は、"the development of clinically overt neuropsychiatric symptoms in patients with cirrhosis"とあり、肝硬変患者に神経精神症状が出れば肝性脳症です。
アルゴリズムでは、MMSEで24点未満ならその時点で肝性脳症として扱うことになっています。

肝性脳症の症状は、以下の図がすごくわかりやすいので掲載します。






問題は、肝硬変のない患者の高アンモニア血症にどう気づくかです。
特にウレアーゼ産生菌の尿路感染の場合、感染症そのものでも意識障害が起こりえます。

感染症の治療をすれば当然高アンモニア血症も是正されるので
臨床上どうしても鑑別したいというものではないのかもしれませんが
やはり目の前の意識障害患者の原因が分かっているとこちらとしても気持ちが楽です。

思いつきで恐縮ですが、呼吸性アルカローシスがあるときにアンモニアを測定する、というのは銅でしょうか。

UpToDate: Urea cycle disorder: Clinical features and diagnosisには以下の記載があります。
"Hyperventilation is thought to result from cerebral edema caused by the accumulation of ammonia and other metabolites."

感染症(特に尿路感染)が疑わしくて意識障害がある場合、とくに呼吸数20/min以上の場合は
全例血液ガスをとると思いますので、あながち無理のないプラクティスかとも思います。

尿路感染症の場合は、アルカリ尿や尿中結石の存在も傍証になると考えられます。
アルカリ尿がもっともわかりやすい所見でしょう。


参考:UpToDate: Hepatic encephalopathy in adults: Clinical manifestations and diagnosis

~Clinical Pealrs~

意識障害のある尿路感染患者で、呼吸性アルカローシスまたはアルカリ尿をみたら、血清アンモニア値を調べてもいいかもしれない。

肝性脳症の診断は臨床所見に基づいて行う。