2021年1月6日水曜日

フレイルを電子カルテデータから同定できるか

Ravensbergen WM, Blom JW, Evers AW, Numans ME, de Waal MW, Gussekloo J. Measuring daily functioning in older persons using a frailty index: a cohort study based on routine primary care data. Br J Gen Pract. 2020 Nov 26;70(701):e866-e873.

https://bjgp.org/content/70/701/e866.short?rss=1

背景

電子カルテの研究への活用が進んでいるが、日常生活機能のような多要素のアウトカム指標を容易に抽出することはできない。

目的

地域にすむ高齢者(75歳以上)を対象とした研究において、ルーチンのプライマリケアデータに基づくelectronic frailty index(電子カルテにおける虚弱指数)が日常生活機能の指標として利用できるかどうかを評価する。

デザインおよびセッティング

「高齢者のための統合的な全身ケア(ISCOPE)」試験の参加者を対象としたコホート研究(対象者:11,476人、観察コホート:7285人、症例組み入れ:3141人)。

方法

ベースライン(T0)および12ヵ月後(T12)に、Groningen Activities Restriction Scale(GARS、範囲18~72)を用いて日常機能を測定した。T0およびT12時点のelectronic frailty indexスコア(範囲0~1)を電子カルテから算出した。electronic frailty indexの反応性を測定し、日常生活機能のgold standardであるGARSと比較した。

結果

総計で、電子カルテとフォローアップのデータが完全にそろっている1390人の参加者が選ばれた(31.4%が男性、年齢中央値=81歳、中間値範囲=78-85)。electronic frailty indexは年齢とともに上昇し、女性では高く、パートナーと同居している参加者では低かった。急性の大きな医療イベントの後にスコアに反応がみられた.しかしながら、T0時のelectronic frailty indexとGARSとの間の相関は限られていた。

結論

electronic frailty indexは日常生活機能を反映していないため,電子カルテが高齢者を対象とした研究のための有用なデータソースとなるためには,日常生活機能を日常的なケアデータ(例えば他の代理変数)で測定する新しい方法についてのさらなる研究が必要である.

感想

家庭医療学の基礎研究というべき研究.例えば,高齢者のフレイルと何か(例:処方薬剤の種類)の関連について調べたいと思ったときに,どのようにフレイルを測定すればいいのか,という問題に突き当たります.通常は,妥当性の確認された質問紙を用いて測定をするわけですが,これだと手間もお金もかかってしまうわけで,それが日常診療の電子カルテデータを用いて評価できたら嬉しいということです.それで,特に研究を意識せずに日常診療で集めた情報だけが載っている電子カルテデータを用いて妥当なフレイルの測定ができないかなとやってみたけど,うまくできなかった,という結果になりました,という論文です.こういう論文はめちゃ大事です.