2021年1月3日日曜日

運動障害者ががんになると…

Agaronnik ND, El-Jawahri A, Iezzoni LI. Perspectives of Patients with Pre-existing Mobility Disability on the Process of Diagnosing Their Cancer. J Gen Intern Med. 2020 Nov 17.

背景
運動障害(mobility disability)は、成人の米国人において最も一般的な障害であり、米国人口の13.7%と推定されている。がんの有病割合は一般集団に比べて運動障害のある人で高いが、障害者はがん検診と治療における格差を経験している。目的
運動障害者ががんと診断されるプロセスで経験したことを探求する。デザイン
オープンエンドの個人面接を,データが飽和状態に達するまで行った。インタビュー内容はは逐語的に書き起こ,伝統的な内容分析をおこなった.参加者
我々は、装具の使用または日常生活動作の支援を必要とする運動障害があり,その後にがん(黒色腫を除く)と診断された20人の参加者にインタビューを行った。主な結果
懸念は5つの大まかなカテゴリーに集約された:がん診断のプロセスに影響を及ぼす医学的診断機器へのアクセス困難、障害に対する臨床スタッフの態度、がんの徴候や症状を慢性的な健康状態に対する感情的な反応として却下すること、がんの徴候や症状を基礎となる障害と誤認すること、および標準以下のケアに対する法的措置を追求することに関する態度である。参加者は、臨床医の誤った思い込みや偏った態度ががん診断のプロセスを妨げ、時には不十分な検査や診断の遅れの一因となった例を提示した。結論
身体的および態度的障壁は、運動障害者におけるがん診断のプロセスに影響を及ぼす。運動障害者はたしかに臨床的に複雑かもしれないが、臨床家は診断のovershadowing(すなわち、がんの徴候/症状を基礎となる障害に誤って帰属させること)や、がん診断の適時性およびケアの質に影響を及ぼす可能性のあるその他の誤った仮定の危険性に注意すべきである。この集団のがん診断のプロセスを改善するために、障害者のケアにおける課題について臨床家を教育することを含め、さらなる努力が検討されるべきである。感想
障害があるというだけで,適切な診断や治療が得られなくなることがあることを示し,その要因は何かというところまで踏み込んだ研究.がんの症状を,もとからある障害のせいにしてしまうというのは,とても身につまされる話.明日からの診療が変わる,いい論文だと思います.