2021年1月10日日曜日

思いやりのあるケアはカリキュラムに位置づけられているか

 Chen AY, Kuper A, Whitehead CR. Competent to provide compassionate care? A critical discourse analysis of accreditation standards. Med Educ. 2020 Dec 7. doi: 10.1111/medu.14428. Epub ahead of print. PMID: 33283303.

https://onlinelibrary.wiley.com/doi/abs/10.1111/medu.14428?af=R

背景

医学部の認定は、医学博士(MD)の学位につながるプログラムの重要な品質管理プロセスだと国際的に認識されている。認定基準は認定プロセスを管理し、ゆえに教育目標を推進するものである。このような基準がカリキュラムの中で何が評価されるようになるかを形作る力を持つことから、専門職の中核となる価値観や理想がしっかり基準に組み込まれるようにすることが不可欠である。思いやりのあるケアの提供は、これまで長い間、医療の中心的な価値観でありつづけており、この価値観はMDプログラムの認定基準に明確に明記されるべきである。

方法

1957年より北米の医学部を統括する学部医学教育認定基準の中で、思いやりのあるケアについて批判的談話分析を行った。本研究では、認定基準の文言に思いやりのあるケアがどのように、またどの程度盛り込まれているかを探った。

結果

学部医学教育認定基準における思いやりのあるケアへの言及はほとんどなかった。歴史的には、米国医科大学協会(AAMC)が発行した「The Objectives of Undergraduate Medical Education(学部医学教育の目的)」が1957年に初めて言及しており、かつこれが唯一の言及である。そこでは、思いやりのあるケアが提供できるといった属性を発達させることをを学部医学教育の基本的な目的として記述している。その後、この価値について言及されることはほとんどなかった。思いやりのあるケアの側面に関与しうる用語が特定されたが、それらは思いやりとの関連性を限定した方法で説明されていた。その代わりに、「ケア」という用語はますます道具的に使われるようになっている(急性期のケア、慢性期のケアなど)。

結論

思いやりのあるケアは良い医療に不可欠であるため、認定基準に思いやりのあるケアに関する言葉が相対的に欠如していることは問題である。この欠如は、コンピテンシーに基づいた研修が花盛りな現在において特に重要であり、本質的な価値観や実践が意図せずして失われないように、すべての重要なカリキュラム目標を明確にしなければならない。

用語確認

批判的談話分析:日本語での解説は以下を参照.内容の精度については判断できませんでした.

https://discourseguides.com/kougi_hihan/

感想

批判的談話研究というものがあることを初めて知った.とにかくいまは獲得目標は明示すべき,という流れの中で,「思いやり」が明示されていないことへの問題提起だが,はたして明記していればよいのか,という根源的な疑問は残ります.研究自体は良いものだと思います.