2021年1月13日水曜日

EPAを前方視的に評価する際の課題

Postmes L, Tammer F, Posthumus I, Wijnen-Meijer M, van der Schaaf M, Ten Cate O. EPA-based assessment: Clinical teachers' challenges when transitioning to a prospective entrustment-supervision scale. Med Teach. 2020 Dec 11:1-14. doi: 10.1080/0142159X.2020.1853688. Epub ahead of print. PMID: 33305676.

https://www.tandfonline.com/doi/full/10.1080/0142159X.2020.1853688?af=R

背景

本研究では、Entrustable Professional Activity(EPA)に基づくカリキュラムで,初めて前方視的ES(entrustment-supervision)尺度を使用する際に、臨床指導医が直面する課題について探求した。前方視的ES尺度は、学生がある臨床問題への対応をこれから行うとしたときに,どのレベルの監督下で活動を行う準備ができているかを推定することを目的としている。

方法

我々は、EPA に基づく新しい卒前カリキュラムと, 前方視的ES尺度を用いたEPA に基づく評価が導入された直後に、合目的的に選定した12 名の臨床指導医を対象に半構造化面接を実施し、クラークシップにおける医学生の前方視的評価への移行について調査した。

結果

正しい解釈を示した臨床教員は一定数いたものの,評価戦略はクラークシップ終了時の目標監督レベルの影響を受けているようであった。また、将来どの監督レベルで活動を行う準備ができているかを推定するための指示は必ずしも理解されていなかった。さらに,教員の尺度アンカーの解釈はフレーズに大きく依存していた。

考察

前方視的評価では、観察されたパフォーマンスの報告から将来の監督レベルを推定する判断過程において、臨床指導医に推論のステップを追加で踏むよう求めている。このことは、後方視的でパフォーマンス志向型の評価手法、すなわち観察されたことを報告する手法から発想を転換させることを必要としている。本研究で得られた知見は、ES 尺度の文言を最適化し、ファカルティ・ディベロップメントを改善することを推奨するものである。

用語解説:ES評価尺度

本文中の解説をそのまま引用する.

EPA の枠組みは、ES評価尺度を示唆している。この尺度のアンカーは,ある一定の監督の程度や水準のための準備を記述する点で従来の評価尺度とは異なる。この尺度では、特定の活動に対する臨床指導医の学生への信頼が反映され、全体的に採点される。ES尺度は、後方視的尺度(過去に焦点を当てる)と前方視的尺度(未来に焦点を当てる)に分類できる。後方視的 ES 尺度が,学生が特定の活動(観察された行動)を行っている間に実際に行われた監督の水準を報告するのに対し、前方視的ES 尺度では、将来のパフォーマンスに焦点を当てて、指定されたレベルの監督で活動を行う準備ができているかの推定が必要である。後方視的に策定された尺度アンカーを含むES尺度の例として、外科教育のために設計されたOスコアがある。監督者は、「念のために部屋にいる必要があった」など,実際の場で提供しなければならなかった監督の量をスコア化する。一方,付随記述を用いた前方視的ES尺度の例は以下の通りである。「今日の観察に基づいて、この研修生はこの EPA に対し,次回のレビューの後に監督レベル X で実施する準備ができているであろうと推定する」

感想

EPAの評価手法であるES尺度という言葉を初めて知った.前方視的/後方視的という修飾語は本論文独自のものであるみたいだが,「実際にこれこれをやってもらったときに,このくらいの監督が必要だったよね」が後方視的評価であり,「ということは,次はこのくらいの監督があればできるよね」が前方視的評価である,という解釈でよいと思う.前方視的評価を導入したときに,実際に評価する人がちゃんとできていたか,思ったように評価できていないなら何が問題だったのかを分析した研究であり,新しいプログラムを導入するにあたってこのように綿密に実装を評価して改善点を見つけているのは素晴らしい取り組みだと思う.