2023年6月20日火曜日

忙しいERにおける効率的な臨床推論

 

忙しくて、じっくり考える暇のないER(2次救急で6時間30人を医師一人で回す、入院指示も時間内にすべて出す、くらいの忙しさをイメージしています)では、ある程度思考を自動化して、乗り切っています。


腹痛を例にすると、しょっちゅう作動する自動化思考はこんな感じです。

・本人が強く痛がっているのに所見が大したことない腹痛は、血管由来を疑う

・すべての嘔吐下痢患者で、虫垂炎のフィジカルをとる。特に、嘔気より腹痛が先に来る場合。(虫垂炎に限らず。先日これでカンピロバクタを見つけました)

・全身状態が悪くないのに呼吸数が早い心窩部痛~腹部全体痛は、胸膜痛(感染症、気胸、肺塞栓)を疑う。

・浣腸して排便がでた便秘患者がまだ腹痛を訴えていたら、虚血性腸炎を疑う。

・姿勢を変えるときに痛みが出る慢性腹痛は、脊椎由来を疑う。

・下痢の患者がショックだったら、原因は腸管外にあることが多い。


こういう自分なりのルールに頼って診療しています。ほかにも…

・比較的全身状態がよいのに高熱を呈している高齢者では、パンツ、ズボン、靴下をすべて脱がす。(もちろん、いつでも全身診察すべきなのですが…)

・発熱と感冒症状を訴えるが咽頭所見に乏しい若年患者では、こちらから頭痛の有無を聞く。副鼻腔炎患者が自ら頭痛を報告することは少ない。

・家で熱が高かったので、布団をかぶって震えていたら、汗をかいてすっとして熱が下がった、と話す高齢患者は、敗血症の進行する過程をみている可能性が高い。


こういう自動化思考を言語化して書き出して、その妥当性を問う、ということをすると

診療の質の向上に寄与するかもしれないなと思います。

研修医と一緒に診療すると、言語化が促されるので、いい感じです。