2021年1月5日火曜日

継続的な教育の質改善に資する文化とは

Bendermacher GWG, De Grave WS, Wolfhagen IHAP, Dolmans DHJM, Oude Egbrink MGA. Shaping a Culture for Continuous Quality Improvement in Undergraduate Medical Education. Acad Med. 2020 Dec;95(12):1913-1920.

目的

本研究では、組織の品質文化(quality culture: より良いサービスを提供するための態度/信念/行動のこと)の主要な特徴を特定し、それらの特徴が卒前医学教育の継続的な品質向上にどのように貢献しているかを探ることを目的とした。

方法

2018年7月から12月にかけて、オランダのマーストリヒト大学の研究者が、6つの教育品質諮問委員会を対象に多施設フォーカスグループ研究を実施した。参加者は、オランダの6つの医学部に所属する教員22名と学生代表18名であった。グループインタビューでは、教育の開発、実施、評価、および(さらなる)改善の最適化に関連した品質文化の特徴に焦点を当てた。データの分析には、段階的なテーマ分析であるテンプレート分析を適用した。

結果

継続的な教育改善に資する,品質文化の構成要素に類似した 5 つの主要なテーマが明らかになった。(1) 開かれたシステムの視点の醸成、(2) 教育デザイン/リデザインへのステークホルダーの関与、(3) 教育と学習の重視、(4) オーナーシップとアカウンタビリティの間のナビゲート、(5) 統合的なリーダーシップの構築による,最初の 4 つのテーマに内在する緊張関係の克服。支持的なコミュニケーションの風土(これは組織のリーダーが推進できるものである)は、最初の4つのテーマに貢献するものであり,最終的には統合されるものである。

結論

本研究の結果は、管理と説明責任を重視した静的な品質管理アプローチから、継続的な品質改善のための文化の5つのテーマに焦点を当てた、より柔軟で開発指向のアプローチへのシフトを求めるものである。本研究は、継続的な品質改善に関する理論と実践の橋渡しに新たな知見を与えるものである。具体的には、品質マネジメントのシステムや構造に加えて、教員の専門的自律性(professional autonomy)、仲間や学生との協働、教育・学習の価値観を増幅させる必要がある。

用語確認

Template analysis(テンプレート分析):テーマ分析の一種.https://research.hud.ac.uk/research-subjects/human-health/template-analysis/what-is-template-analysis/ より引用.

テンプレート分析では、コーディング「テンプレート」の開発を行う.データセットの中で重要なものとして研究者が特定したテーマを要約し、有意義かつ有用な方法で整理する。階層的なコーディングが強調され、「病気への対応」のような広範なテーマを用いて、「変化した関係」や「医療専門家との変化した関係」のような、より狭く具体的なテーマを次々と取り込んでいく。

分析の多くはa prioriなコードから始まる.それらのコードは,分析に関連していると強く予想されるテーマを特定するものである。しかし、これらのコードが有用でないとわかったり,調査した実際のデータに適していなかったりする場合には、修正・削除がなされる。a prioriなテーマを決めた後の,分析の最初のステップは、データを読み込み、リサーチクエスチョンに関連する何かを研究者に伝えているようにみえる部分すべてに何らかの形で印をつけることである。そのようなセグメントがa prioriなテーマに対応する場合は、そのテーマをコードする。それ以外の場合は、関連する資料を含むように新しいテーマを定め、初期テンプレートに組み入れる。初期テンプレートは通常、データのサブセットの初期コーディング(例:15のトランスプリプトがあるうちの最初の3つをまず読み込んでコーディングする)の後に行われる。

この初期テンプレートは、その後、データセット全体に適用され、各トランスクリプトを慎重に検討することで修正される。最終版を作成し、すべてのトランスクリプトがコーディングされると、そのテンプレートは,研究者がデータセットを解釈あるいは説明したり、発見したものを書き上げたりするための基礎となる。

感想

製薬会社などでよくつかわれるquality cultureを,医学教育に落とし込んで,継続的な教育改善を行うために必要なテーマを割り出した研究.すでに他分野でquality cultureの研究は盛んになされているので,その知見をa prioriなテーマとしてテンプレート分析を行っているものと思われる.学際的な研究で,自分の得意分野を持ち込むことで新たな切り口で医学教育を眺めるような内容で,とても面白い.