2021年1月27日水曜日

臨床での教育的会話は,研修医から指導医が学ぶ場でもある

Lisanne S. Welink, Esther de Groot, Marie-Louise E. L. Bartelink, Kaatje Van Roy, Roger A. M. J. Damoiseaux & Peter Pype (2020) Learning Conversations with Trainees: An Undervalued but Useful EBM Learning Opportunity for Clinical Supervisors, Teaching and Learning in Medicine, DOI: 10.1080/10401334.2020.1854766

https://www.tandfonline.com/doi/full/10.1080/10401334.2020.1854766?af=R

現象

指導医と研修医は、お互いの強みを活かしつつ,協調と交流により、エビデンスに基づく医療に関連するスキルを互いに学びあうことができる。本研究では、指導医が研修医と学習的な会話をすることで、現在どのようにエビデンスに基づく医療を学んでいるのかについて、指導医の認識を探る。

アプローチ

オランダとベルギーの総合診療指導医22名を対象に、ビデオ刺激により誘発される半構造化面接を実施した。指導医には、ビデオに記録された自身の学習会話の断片を見せ、省察を促した。記録されたインタビューは、グラウンデッドセオリーに基づくアプローチを用いて分析された。

所見

指導医は,職場での学習会話を、研修医からエビデンスに基づく医療を学ぶ機会と直ちに認識することはなかった。ほとんどの指導医は、これらの会話を研修医にとっての学習の機会であり、自分たちの診療の中でケアの質を維持する機会であると考えていた。それにもかかわらず、インタビューの中で、指導医は学習会話により自分たちが最新の知識や検索スキルを身につけることができたり、自身の知識や知識ギャップについてより多くの気づきを得ることができることを認めた。学習成果として認識されなかったのは、エビデンスに臨床経験や患者の好みを組み合わせることで,臨床の中でエビデンスに基づく医療をどのように適用するか,ということであった。

洞察

指導医は、研修医との学習会話を通じてエビデンスに基づく医療の3つの側面の要素を学んでいることを認めているが、現在のところ、これは研修生の学習プロセスの二次的なものであると考えている。双方向の学習の機会を強調することで、職場での学習会話の中でエビデンスに基づく医療の学びが改善される可能性がある。

感想

臨床の場での教育的な会話は,研修医から指導医が学ぶ場でもあるという点を強調した論文.とても良い視点であるし,確かにそうだと思う.EBMに限らず,学習者から学ぶという姿勢は大事だし,そのような姿勢から何が得られるのかについてさらに研究が必要だと思う.