Gilmore S, Doherty AS, Moriarty F, et al. Prescribing cascades, associated patient characteristics, and health-care utilisation in older community-dwelling adults in Ireland: a retrospective, observational cohort study. Lancet Prim Care. 2026 Sep 14;2(9):100206. doi:10.1016/j.lanprc.2026.100206.
背景
ある薬剤の副作用を治療するために別の薬剤が処方される「処方カスケード」については、研究が限られており、問題のあるポリファーマシーに及ぼす影響も十分に検討されていない。この問題は、処方の大部分が行われ、処方カスケードが見過ごされる可能性のあるプライマリ・ケアにおいて、特に重要である。本研究では、一般診療所を受診する高齢者を対象に、処方カスケードの発生率、関連する患者特性、およびその後の医療利用との関連を検討した。
方法
本研究は、後ろ向き観察コホート研究である。アイルランドのダブリンにあるRCSI医科健康科学大学が保有する、Health Research Board(HRB)プライマリ・ケア研究センターの一般診療所コホートの電子診療録データを用いた。2011年1月1日から2016年6月30日までに、アイルランドの参加一般診療所44施設で得られたデータを用い、ThinkCascadesで定義された薬剤の組み合わせ(dyads)に基づいて処方カスケードの発生率を調べた。対象は、65歳以上で、少なくとも2年間のデータが利用可能な成人とした。
主要アウトカムの分析には、以下の条件を満たす患者を組み入れた。
- 薬剤A(ThinkCascadesで定義された薬剤ペアのうち、最初に処方される薬剤)を新規に処方されていること。
- 診療所に継続的に通院している患者であること。
- 薬剤Aの初回処方日から少なくとも1年間の追跡データがあること。
一方、指標日(薬剤Aの初回処方日)前の365日間に薬剤B(薬剤ペアの2番目の薬剤)が処方されていた患者、または薬剤Aの開始時点以前に薬剤Bによる治療の適応となる疾患の診断が記録されていた患者は除外した。
各ThinkCascades薬剤ペアについて、追跡開始後60日、180日、365日以内に薬剤Bが新たに処方されることを主要アウトカムとし、95%信頼区間(CI)を伴う累積発生率として報告した。
また、処方カスケードの累積発生率(1つ以上の処方カスケードが発生した場合と、発生しなかった場合)と患者特性との関連を、ロジスティック回帰モデルで検討し、オッズ比(OR)と95%信頼区間を算出した。
結果
HRBプライマリ・ケア研究センターの一般診療所コホートにおいて、65歳以上でデータが利用可能だった32,424人を研究対象として評価し、そのうち12,864人が組み入れ基準を満たした。対象者の平均年齢は71.8歳(標準偏差7.9)で、女性は7,303人(56.8%)、男性は5,558人(43.2%)、性別データが欠損していた人は3人(0.1%未満)だった。
365日以内に、ThinkCascadesで定義された薬剤ペアのいずれかで処方カスケードが発生した割合は3.2%(12,864人中416人)だった。分析対象となった8種類の薬剤ペアで、365日間に発生した373件の処方カスケードのうち、252件(67.6%)は180日以内に発生していた。
高齢であることは、処方カスケードの発生と関連していた(12,841人中416件、調整OR 1.02、95% CI 1.01–1.04、p=0.0013)。一方、性別、医療保障の種類、多疾患併存、および使用した薬剤の種類数と、処方カスケードの発生との間には有意な関連は認められなかった。
解釈
2011~2016年にアイルランドの一般診療所を受診した高齢者において、処方カスケードの発生は比較的まれだった。しかし、高齢者における回避可能な問題のあるポリファーマシーの一因となり得る。プライマリ・ケアを受診した高齢者に新たな症状が認められた場合、特に新規薬剤の開始後には、鑑別診断の一つとして薬剤有害反応を考慮すべきである。処方カスケードの多くは初回処方から6か月以内に発生していたため、この時期は、不要となった可能性のある薬剤を特定し、適切な場合には減薬・中止を行うことで、高齢者の薬物療法を最適化する機会となる。
感想
処方カスケードは、多剤併用の薬剤数だけを見ていてもわからないという点と、約3分の2が初回処方後6か月以内に発生している点が、重要なポイントだなと思いました。