2026年9月18日金曜日

ハイブリッド型バーチャル在宅医療

 Bravata DM, Perkins AJ, Schwartzkopf AL, Myers LJ, Zhang Y, Damush TM, et al. Evaluation of Hybrid-Virtual Home Visits for Comprehensive Geriatric Management: A Quality Improvement Project. J Gen Intern Med. 2026. doi:10.1007/s11606-026-10580-7. https://link.springer.com/article/10.1007/s11606-026-10580-7?utm_source=chatgpt.com


背景

高齢者に対する在宅訪問はアウトカムを改善することが知られている。しかし、高齢者に多い身体的・認知的・技術的な障壁や、人員不足などの施設側の制約によって、老年医学的な在宅医療プログラムの対象を拡大することには限界がある。


目的

ハイブリッド型のバーチャル在宅訪問モデル(TeleGRACE)の有効性を評価すること。


デザイン

傾向スコアによる重み付けを用いた観察コホート型の質改善(quality improvement)プロジェクト。


対象

米国退役軍人省(VA)の1施設において、入院または救急外来(ED)受診後の老年症候群を有する地域在住高齢者。


介入

患者宅にはtelehealth technicianが訪問し、看護師とソーシャルワーカーからなる老年医学チームが遠隔から参加するハイブリッド型の在宅訪問を実施した。


主な評価項目

TeleGRACEへの登録後90日および1年以内の、全死亡、ナーシングホームへの入所、再入院、救急外来受診。


主な結果

TeleGRACE群76人、通常ケア群319人を比較した。TeleGRACE群では、通常ケア群と比較して、90日以内にさまざまな臨床サービスを受ける割合が高かった。例えば、補助具の提供は78.7%対18.9%であった(p<0.001)。傾向スコアによる逆確率重み付け(IPW)解析では、1年間のナーシングホーム入所リスクはTeleGRACE群で低かった(HR 0.20、95% CI 0.07–0.53)。一方、ED受診リスクは90日(HR 1.32、95% CI 1.02–1.72)および1年(HR 1.28、95% CI 1.04–1.76)でTeleGRACE群の方が高かった。入院および死亡については、両群間に差は認められなかった。


結論

ハイリスクの地域在住高齢者に対して、ハイブリッド型の在宅訪問モデルは、ケアやアウトカムを改善する可能性がある。特にナーシングホームへの入所を減らす効果については、今後の研究による検証が必要である。


感想

この結果を受けての結論が「ケアやアウトカムを改善する可能性がある」は少し言い過ぎではないかという気がします。ただ、ED受診の回数が増えるのは、決してネガティブな結果ではないというのは、確かになぁと思うところではあります。こうやってちゃんと活動をpaperにするのは素晴らしいことだと思います。

2026年9月17日木曜日

知的/発達障害者の予防医療の不公正

 Santra R, Pulukuri S, Sharma N. Inequities in preventive care for adults with intellectual and/or developmental disability in the USA: a narrative review. J Gen Intern Med. 2026. doi:10.1007/s11606-026-10807-7. https://doi.org/10.1007/s11606-026-10807-7


40代の女性姉妹を2人とも診療しているプライマリ・ケア医を想像してみたい。1人はDown症候群があり、もう1人にはない。Down症候群のない姉妹は、国内のガイドラインに従って子宮頸がん検診(Pap smear)を定期的に受けていた。一方、Down症候群のある姉妹については、「検査に容易には耐えられないだろう」という思い込みから、検診が繰り返し延期されていた。子宮頸がんのリスクを心配した姉妹は、障害のある人への診療を専門とする婦人科クリニックに妹を連れて行った。そこでは、写真を用いた説明や、慎重に配慮した抗不安薬の使用といった簡単な工夫が行われた。その結果、妹は推奨されていた時期から20年遅れて、初めてPap smearを受けることができた。幸いにも、HPVおよび子宮頸部異形成は陰性であった。この患者レベルでの実例は、集団レベルでも広く存在する問題、すなわち知的障害および/または発達障害(intellectual and/or developmental disabilities: IDD)を持つ人々における予防医療の不平等を示している。これまでの研究から、IDDのある人々では、ワクチン接種や、乳がん・子宮頸がん・大腸がんの検診といった一次予防・二次予防の実施率が、一般人口より低いことが示されている。しかし、こうした人々が予防医療を必要とする程度は一般人口と同等、あるいはそれ以上である。実際、これらのがんでは、より進行した段階で診断され、死亡率も高いことが報告されている。本ナラティブレビューでは、米国のIDD成人における予防医療の利用格差について検討し、患者、臨床医、医療システムという3つのレベルにおける障壁について記述する。さらに、代替的なスクリーニング方法や、医療提供モデルなど、アクセスを拡大するための可能な戦略について検討する。修正可能な障壁を認識し、それらに対処することは、この集団における予防可能な罹患および死亡を減らすために不可欠である。


感想

本文の要点は以下の通り。

IDDのある成人では、ワクチン接種や乳がん・子宮頸がん・大腸がん検診などの予防医療を受ける割合が、一般人口より明らかに低い。

その結果、IDDのある人では予防可能な疾患による死亡や、より進行した段階でのがん診断が多い。乳がん・大腸がんでは、診断時に転移している割合やがん死亡率も高い。

障壁は患者側だけではない。感覚過敏、コミュニケーション困難、移動・費用・介護者の負担に加え、医療者の知識不足や「この患者には検査は難しいだろう」という思い込みが、予防医療へのアクセスを妨げている。

対策として、写真や絵を使った説明、長めの診療時間、静かな環境、鎮静など、患者に合わせた合理的配慮が重要。標準的な検査が困難な場合には、FIT、乳房超音波、スペキュラムを使わないPap smearなどの代替手段も検討できる。ただし、代替検査は感度・特異度を犠牲にする場合があり、標準検査が本当に困難な場合に限定して考えるべきとされている。

医療者側では、IDDに関する教育を医学教育・研修医教育に組み込み、障害者差別や診断の思い込みを減らす必要がある。同時に、IDD診療に必要な追加時間・労力に見合う診療報酬など、制度的支援も必要。

個々の医師の努力だけでは限界があり、IDDを対象とした定期的な包括的健康チェックを制度化することが有効な可能性がある。カナダや英国では、標準化されたannual health checkによって、がん検診や慢性疾患スクリーニングの実施率が改善している。

さらに、在宅プライマリ・ケア、地域での予防医療、個別化された予防接種環境など、患者が医療システムに合わせるのではなく、医療システムを患者に合わせるモデルが紹介されている。


制度面を改革する必要があります。最近成人のDown syndromの方のフォローが増えたのですが、採血一つとってもなかなか大変だと痛感しております。

2026年9月16日水曜日

コミュニティハブのケアの効果

 Bailey JE, Ogunsanmi DO, Mahmud S, Kabir UY, Boykins AM, Butterworth SW, et al. The Neighborhood Health Hub Model: Extending Primary Care into Medically Underserved Neighborhoods to Improve Health Equity. J Gen Intern Med. 2026 Sep 8. doi:10.1007/s11606-026-10764-1. https://link.springer.com/article/10.1007/s11606-026-10764-1


背景

医療サービスが十分に行き届いていない地域(medically underserved neighborhoods)にプライマリ・ケアを拡張するために、health coachを配置することの実現可能性については、十分な研究がなされていない。


目的

重要な予防医療サービスを住民が便利に利用できるようにする、革新的で、患者中心で、場所を基盤とした(place-based)、近隣地域レベル(neighborhood-level)で提供するアプローチである「Neighborhood Health Hub Model」を実施した初期経験を評価すること。


セッティング

米国テネシー州メンフィス/シェルビー郡。


参加者

2022年1月から2024年6月までにNeighborhood Health Hubの施設を利用した成人。


プログラムの概要

Health Hubには、地域から採用されたlay health coachが配置され、動機づけ面接の訓練を受け、遠隔医療で接続された医療専門職の監督を受けた。

提供されたサービスには以下が含まれた。

肥満、高血圧、糖尿病、社会的決定要因のスクリーニング

慢性疾患管理のための個別およびグループでのhealth coaching

医療、行動・心理面、社会的ニーズに対する紹介


プログラム評価

合計1,252人の利用者がサービスを受け、そのうち1,151人がhealth coachingを受けた。383人(31%)は2回以上のcoaching sessionに参加し、合計3,367回のcoaching sessionと2,951回のgroup visitが実施された。

肥満のある利用者では、平均体重変化は−3.32ポンド(95% CI −5.72~−0.92)であった。

高血圧のある利用者では、収縮期血圧の平均変化は−15.17 mmHg(95% CI −19.64~−10.69)であった。

また、health coachingのセッション数が多いほど、体重減少が大きいことと有意に関連していた。


考察

Neighborhood Health Hub Modelを広く普及させることで、全米のhealth equityの改善につながる可能性がある。


感想

改善したというだけでは、平均への回帰(使い方あってるかなぁ。数字が悪い人がHubに行くから何もしなくても再度計測すれば少し良くなって見える)ではという気もしますが、セッション数に依存して体重が減少することも示しているので、確かに効果あるのだなとわかります。費用対効果を知りたいところですね。普通に家庭医かNPが一人いればOK、ではないことを知りたいと思いました。

2026年9月15日火曜日

電子カルテをデザインするだけでは不十分

 Owens-Jasey C, Gunn R, Cook N, Fein HL, Pisciotta M, Fee C, et al. Community Health Center Adoption of Enabling Technologies to Address Contextual Drivers of Health for Care-Managed Patients: Formative Evaluation. J Gen Intern Med. 2026 Sep 10. doi:10.1007/s11606-026-10735-6. https://link.springer.com/article/10.1007/s11606-026-10735-6


背景

ケアマネジメント・プログラムでは、食料、住居、交通など、健康に影響を与えるcontextual driversに対応するための新たな戦略が検討されている。電子カルテ(EHR)を基盤としたケアマネジメントツールは、こうした要因のスクリーニングや、特定されたニーズへの対応のための紹介を支援することができる。しかし、地域医療センター(community health centers: CHCs)のケアマネジャーが、このような支援技術をどのように導入し、活用することができるのかについては、十分に明らかになっていない。


目的

CHCのケアマネジメント担当者が、患者のcontextual driversに対応するために、統合型モジュールを含むEHRツールを現在どのように利用しているかを明らかにすること。得られた結果を、こうしたツールの導入を促進するための実装戦略の開発に活用することを目的とした。開発された戦略は、今後、試行・改良された後、無作為化試験で評価される予定である。


研究デザイン

人間中心設計の原則に基づく形成的評価


参加者

複数州にまたがるヘルスセンター・ネットワークから、ケアマネジメント担当者11名および専門家5名。


アプローチ

半構造化インタビューを実施し、その後、rapid qualitative analysisを用いて、EHRツールを利用してcontextual driversに関連するケアを調整する際の、文脈的要因、障壁、実装戦略について検討した。


主な結果

一部のEHR機能(例えば、スクリーニング用フローシートやアラート)は、スクリーニング結果の記録に利用されていた。

一方、contextual driversに関連するケアの調整にケアマネジメント・モジュールを利用する際には、いくつかの課題があった。例えば、紹介内容を記録するための構造化された入力欄がEHRにないなど、EHRツール自体の限界があった。また、患者を適切なサービスへ紹介し、その後のフォローアップを行うための十分なトレーニングも不足していた。

参加者は、こうしたツールを効果的に活用するためには、組織のリーダーシップによる支援、実践的なトレーニング、そしてヘルスセンターが提供するサービスやケアマネジメントに対する報酬要件に合わせたケアプランのカスタマイズが必要であると強調した。


結論

EHRを用いたケアマネジメントツールには、contextual driversに関連するケアの調整を支援する可能性がある。しかし現在は、こうしたツールを効果的に利用することを妨げる障壁が存在している。対象を絞った実装支援によって、これらの障壁を取り除き、ツールの導入・活用を促進できる可能性がある。


感想

カルテのシステムを作るだけではダメとのことですね。最終的にはそれができる人を育成する必要があります。

2026年9月14日月曜日

関節リウマチ(JAMA review)

 Smolen JS, Kerschbaumer A, Aletaha D, Robinson WH. Rheumatoid Arthritis in Adults: A Review. JAMA. 2026 Sep 10. doi: 10.1001/jama.2026.15455. 


重要性

関節リウマチ(RA)は、軟骨および隣接する骨に炎症と破壊を引き起こす慢性自己免疫疾患であり、不可逆的な身体障害につながる可能性がある。関節リウマチは世界の成人の0.53%、米国成人の0.74%にみられる。


観察

関節リウマチは男性より女性に多く、男女比は約2:1であり、発症のピークは55~75歳である。RAはすべての滑膜関節に生じる可能性があり、関節外病変としてリウマチ結節、血管炎、リウマチ肺疾患などを認めることがある。

診断時には、約40~60%の患者で自己抗体(リウマトイド因子および/または抗シトルリン化ペプチド抗体)が認められる。RAには正式な診断基準は存在せず、臨床経過、近位指節間関節・中手指節関節・手関節などの特徴的な関節腫脹、自己抗体の存在、C反応性蛋白(CRP)上昇などをもとに診断する。

早期診断、理想的には症状発現から6週間以内に診断することで、疾患修飾性抗リウマチ薬(DMARD)による治療を速やかに開始でき、炎症を抑制して関節破壊のリスクを低下させることができる。

治療目標は、3か月までに疾患活動性を少なくとも50%改善させ、6か月までに寛解または低疾患活動性を達成することであり、Clinical Disease Activity Index(CDAI)などの妥当性が確認された指標を用いて評価する。

European Alliance of Associations for Rheumatology(EULAR)は、メトトレキサートを開始し、7.5~10 mg/週から4~8週間かけて20~25 mg/週まで増量することを推奨している。また、短期間の糖質コルチコイド(例:プレドニゾン5~7.5 mg/日)を追加し、3か月以内に漸減・中止すること、あるいはデポ型メチルプレドニゾロン80~160 mgの筋肉内投与を検討することを推奨している。

メトトレキサートが禁忌の場合には、スルファサラジン(2~4 g/日)またはレフルノミド(20 mg/日)が推奨される。

治療により、新たに診断されたRA患者の約40%が6か月以内にCDAI寛解を達成する。初回DMARD治療で寛解に至らない患者には、生物学的DMARD(腫瘍壊死因子α阻害薬、共刺激阻害薬、インターロイキン6受容体阻害薬、B細胞を標的とする抗CD20薬など)、または血栓塞栓症、心血管疾患、悪性腫瘍のリスクが高くない患者ではJAK阻害薬を追加する。これにより、寛解または低疾患活動性を達成する患者の割合は全体で約80%まで上昇する。


結論と関連性

関節リウマチは関節破壊を引き起こす慢性自己免疫疾患である。初期治療の第一選択薬はメトトレキサートであり、糖質コルチコイドの追加を検討する。初期治療で寛解に至らない患者では、生物学的DMARDまたはJAK阻害薬を追加することで、寛解または低疾患活動性を達成する割合は約80%に上昇する。


感想

つい最近、抗体陰性だけどどう考えてもRAという方を専門家に紹介しました。やはりRAとして治療が開始されていました。

RAでは自己抗体が存在する患者は約40~60%で、CRP陰性でも否定できないとのことで、このレビューでは、特定の検査に依存せず臨床的に炎症性関節炎を捉えなさいと主張しています。

専門家はエコーをよく使っていますよね。初期病変の描出に優れており、多疾患との鑑別にも有用だと理解していますが、本レビューでもEULARでも、エコーでの異常所見は必須ではなく、あくまで臨床判断だということになっています。とはいえ、エコーは診断だけでなくマネジメントにも有用であるとのことです。http://www.elsevier.es/en/linksolver/pdf/pii/S1699-258X(16)30106-1


MTXがキードラッグなのは言うまでもなく、

MTXが使えない(禁忌・早期忍容性不良)ならスルファサラジンorレフルノミド

MTXは使えるが治療目標未達ならbiologic DMARDまたはJAK inhibitorを追加

という整理がなされています。

日本リウマチ学会の診療ガイドラインhttps://academic.oup.com/mr/article/29/1/31/6299805?utm_source=chatgpt.com&login=false によると、妊娠、MTX過敏症、重症感染症、重度の血液・肝・腎・呼吸器障害などが禁忌で、さらに日本人の多くは16mg/wに耐えられないとのことです。


私の診療圏だと、近くにリウマチセンターがあるので、疑えば紹介、少なくとも治療の導入はお願いする、というのが多いです。

一方、特にADLの低下した高齢者や在宅患者で、移動の制限等で紹介できず自分で治療を開始せざるを得ない場合があり、必然的に複雑事例のマネジメントを行わなくてはならないということがあります。close follow-upで少量ずつ薬を試すしかないですし、一般的なケースとは治療による達成目標が変わる点を注意しています。

2026年9月13日日曜日

正常結果を患者が受け止める際の医師の有能さと温かさ

 Kube T, Seewald A. Influence of Physician Behaviors on How Patients Interpret Normal Test Results. Ann Fam Med. 2026 Sep;250671. doi:10.1370/afm.250671. https://www.annfammed.org/content/early/2026/08/21/afm.250671


目的

「重大な問題はありません」と患者を安心させることは、家庭医療において最も一般的な介入の一つである。しかし、医学的な安心づけがうまく機能しないこともあり、その際に医師の行動がどのような役割を果たすのかは、まだ明らかではない。本研究では、医師の「温かさ(warmth)」と「能力(competence)」が、診断検査で正常な結果が示された際の患者の反応に、それぞれ独立して有意な影響を与えるという、事前登録された仮説を検証した。


方法

中程度の身体症状負担を報告したオンラインの便宜的サンプル(N=349、平均年齢29.9歳、女性79%)を対象に、実験的アナログ研究を実施した。参加者はまず症状に関するビネットを提示され、その後、医師が診断検査の結果を説明する場面を撮影した動画を視聴した。医師は「異常は確認されなかった」と説明した。診断情報そのものはすべて同一とした一方で、医師の行動については、温かさ(高 vs 低)と能力(高 vs 低)が異なるように操作した。


結果

医師が高い温かさと高い能力を示した場合、参加者は「重大な疾患である可能性」を有意に低く評価した。さらに、高い温かさと能力は、「別の医師の意見を聞きたい」「追加の検査を受けたい」という希望が低下するなど、その他のアウトカムの改善にもつながった。媒介分析では、温かさと能力の効果は、参加者が診断情報をどの程度、認知的に価値づける(あるいは価値を下げる)かによって調整されることが示された。


結論

患者にとって、診断情報はそれ自体だけで意味を持つわけではない。医師の行動が、患者がその情報をどのように受け止め、統合するかを決定するうえで重要な役割を果たしている。高い温かさと能力を示すことは、患者が医師を信頼し、それに応じて自身の病気に対する認識を適切に更新することを助ける可能性がある。


感想

面白いテーマで、研究デザインは発想としては自然ですね。

primary outcomeである、「重大な疾患である可能性」をみても、医師の能力でCohen's d=0.439、温かさでCohen's d=0.281であり、相乗効果は見られておりません。「優しい医師」であることより、「有能で信頼できそうな医師」であることの方が、正常検査結果を受け入れることに強く影響したということですね。その他のアウトカムを診ると、温かさは貫して患者の反応に影響しており、有能さは特に「診断情報を信頼する」「追加検査を求めない」に強く影響しています。

媒介変数としてCognitive immunization(自分の病気に関する元々の信念と矛盾する診断情報を、価値の低い情報として退ける傾向)を仮定、つまり、正常検査結果→でもこの検査は信用できないのでは?→正常結果を受け入れない、というパスを仮定し、Cognitive Immunization against Medical Reassurance scaleというスケールで測定しています。媒介分析で、有能さと温かさのどちらにおいても媒介が有意に検出されています。

その他、実際に患者の知覚した有能さ、温かさでの分析(温かく見える医師は有能にも見えてしまうというspilloverが観測されています。これは結果の解釈において重要な点)をしたり、ベイズ解析を行ったりしており、統計解析をかなりrobustに行っています。AFMに採用されるpaperはここまでするのだなととても参考になりました。

2026年9月12日土曜日

持続血糖モニタリングの医療格差

 Milosavljevic J, Schechter C, Fazzari M, Mathias P, Mathew J, Agarwal S. Inequity in continuous glucose monitor (CGM) prescribing behaviors in primary care. J Gen Intern Med. 2026 Jan 13. doi:10.1007/s11606-025-09923-7. https://link.springer.com/article/10.1007/s11606-025-09923-7


背景

持続血糖モニタリング(continuous glucose monitoring:CGM)は糖尿病管理の標準的な治療手段となっているが、糖尿病患者の大部分を診療するプライマリ・ケアにおいて、その導入は依然として限定的である。プライマリ・ケアにおけるCGM処方に関連する要因を検討することで、糖尿病診療全体の健康アウトカムを改善するための新たな介入標的を特定できる可能性がある。


目的

11,000人以上のインスリン治療中2型糖尿病患者を診療するセーフティネット型プライマリ・ケア診療ネットワークにおいて、プライマリ・ケア医(PCP)によるCGM処方に関連する要因を明らかにすること。


方法

後ろ向きコホート研究を実施した。対象は、ニューヨーク州ブロンクスのセーフティネット型プライマリ・ケア診療ネットワークにおいて、2020年7月31日から2023年7月31日の間に少なくとも1回プライマリ・ケアを受診した、インスリン治療中の2型糖尿病成人患者とした。主要アウトカムは、PCPによる初回CGM処方とした。多変量解析には原因別Cox回帰を用い、死亡および内分泌科によるCGM処方を打ち切りイベントとして扱った。


結果

インスリン治療中の患者11,037人(平均年齢61±14歳、女性56%、ヒスパニック系44%、非ヒスパニック系黒人39%)のうち、17%がプライマリ・ケアで初回CGM処方を受けた。月あたりの新規CGM処方率の中央値は3.1%(2.8–3.3%)であった。高齢患者、スペイン語話者、公的医療保険加入者では、CGMが処方される可能性が低かった。一方、HbA1c値が高い患者、より強化されたインスリン治療を受けている患者、および診療経験年数の長い医療者から診療を受けている患者では、人種・民族にかかわらずCGMが処方される可能性が高かった。


結論

プライマリ・ケアにおけるCGM処方率は依然として低く、若年、英語話者、民間医療保険加入者、および経験年数の長い医療者による診療を受ける患者に有利な不公平が認められた。CGM処方を増加させるためには、診療ワークフローの効率化、言語や年齢に応じたトレーニング支援、研修医教育における課題に取り組む必要がある。CGM処方における不公平に対処することは、プライマリ・ケアにおける糖尿病診療の質を高め、十分な医療を受けにくい糖尿病患者におけるアウトカムの格差が連鎖することを防ぐための重要な第一歩である。


感想

CGMは格差を助長するのではないかと疑問に思っており、自分で小規模な研究をしようかなと思っていたのですが、大規模な研究が出ましたね。どうやったら必要な患者に必要なケアが届くかという命題は常に考えなければなりません。