2026年10月29日木曜日

高齢者施設での排便管理の困難

 Fukuyama Y, Furushima C, Ito S, Akiyama A. Factors associated with care workers' perceived difficulty in collaborating with nurses on bowel care in dementia group homes: A nationwide survey in Japan. J Gen Fam Med. Published online October 14, 2026. doi:10.1002/jgf2.70189.


背景

本探索的研究は、日本の認知症高齢者グループホームにおいて、排便ケアに関する看護師との協働について、介護職員が感じる困難と関連する要因を明らかにすることを目的とした。


方法

2025年7月から10月にかけて、全国横断調査を実施した。国の公開データに掲載された14,202施設のうち、層化無作為抽出法により2,000施設に質問票を郵送した。437件(回収率21.9%)の回答のうち、介護職員からの423件を解析対象とした。

協働の困難感は0〜10点の数値評価尺度で測定し、6〜10点を「困難あり」、0〜5点を「困難なし」と二分した。群間比較と多変量二項ロジスティック回帰分析を実施した。共変量の欠測値は多重代入法で補完した。また、困難感を連続変数として扱う感度分析を行った。


結果

評価項目に有効な回答があった417人のうち、182人(43.6%)が困難を感じていた。困難感と有意に関連する要因は4つあった。

年齢が高いこと(調整オッズ比[aOR]=1.044、95%信頼区間[CI]:1.020–1.069)、腹部を温めることの重要性を強く信じていること(aOR=1.222、95% CI:1.077–1.386)、排便に関する懸念をいつ看護師に報告すべきかについて不確かさが大きいこと(aOR=1.282、95% CI:1.175–1.398)は、困難感が高いことと関連していた。

一方、介護経験が長いこと(aOR=0.939、95% CI:0.906–0.973)は、困難感が高いことと関連するオッズの低下に関連していた。感度分析でも同様の結果が得られた。


結論

看護師との協働に関する困難感は、年齢が高いこと、介護経験が短いこと、看護師に相談する適切なタイミングがわからないことと関連していた。介護職員がどのような場合に看護師の助言を求めるべきかを明確にすることで、排便ケアにおけるより効果的な協働を支援できる可能性がある。


感想

排便の管理は難しいですよね。本文でも温罨法との関連の原因についてはよくわからないとあります。温罨法に拘泥するとうまくいかないのでしょうか。

2026年10月28日水曜日

脊椎関節症(AFP)

 Kim AR, Van Weezep J, Silva TW. Spondyloarthropathies. Am Fam Physician. 2026;114(3):262-270.


脊椎関節症は、強直性脊椎炎、反応性関節炎、炎症性腸疾患に伴う関節炎、乾癬性関節炎、分類不能の脊椎関節症などを含む炎症性疾患群である。それぞれの病型では、脊椎などの体軸に関わる症状と末梢の症状の両方がみられることがある。これらの疾患には、共通する遺伝的素因や臨床所見があり、炎症性腰痛、末梢関節炎、指趾炎、付着部炎などが含まれる。そのほか、眼病変、皮膚・粘膜病変、炎症性腸疾患を伴うこともある。診断は主に病歴と身体診察に基づいて行うが、画像検査やHLA-B27遺伝子検査も実施する。治療は病型によって異なり、通常は非ステロイド性抗炎症薬、理学療法、生物学的製剤(腫瘍壊死因子阻害薬など)を組み合わせて行う。家庭医の役割は、初期の徴候や症状を認識して適切な治療を開始し、患者の生活の質を高めるとともに、疾患の進行を最小限に抑えることである。


感想

この前疑い事例があったので、ちょうどよかったので読みました。


  • 診断の基本は、病歴、身体診察、画像所見の組み合わせ。単独で確定診断できる特異的な検査はない。
  • 45歳未満で発症した慢性腰痛、運動による改善、安静で改善しない痛み、夜間痛、30分以上の朝のこわばりなどは、体軸性脊椎関節症を疑う手がかりとなる。
  • 単純X線検査を行う。X線検査が正常でも疑いが強い場合は、仙腸関節のMRIを検討する。
  • HLA-B27検査は診断を支持するが、陽性だけで疾患とは診断できない。赤沈やCRPも補助的な指標であり、正常値でも疾患を否定できない。
  • 関節症状だけでなく、乾癬、爪病変、ぶどう膜炎、消化器症状、先行感染などを系統的に確認する。
  • 診断までに時間がかかることがあり、体軸性脊椎関節症では症状出現から診断まで平均約7年と報告されている。


今まで通りの疑い方でいいのかなと確認できました。

2026年10月27日火曜日

短期間型不眠症行動療法の研修と実装支援

 Bramoweth AD, Ulmer CS, Klingaman EA, O’Brien EM, Deininger CJ, Boudreaux-Kelly MY, et al. Delivery of behavioral insomnia care in VA primary care mental health integration clinics: sustainment outcomes of a hybrid type 3 trial. J Gen Intern Med. 2026 Oct 23. https://doi.org/10.1007/s11606-026-10950-1


背景

不眠症は一般的な疾患であり、健康状態や日常生活機能に重大な悪影響を及ぼす。慢性不眠症に対しては、不眠症の認知行動療法などの行動療法が推奨されており、そのための研修も行われている。しかし、多くの患者にとって治療へのアクセスは依然として困難である。


目的

米国退役軍人省(VA)のプライマリ・ケア精神保健統合診療部門において、実装を促進するための支援を終了した後、短時間型不眠症行動療法の提供状況がどのように変化するかを評価すること。


研究デザイン

ステップドウェッジ型のハイブリッド・タイプ3試験の定着段階において、実装支援を終了する前後を比較した分析。


対象者

4か所のVA医療センターにおけるプライマリ・ケアおよびプライマリ・ケア精神保健統合診療部門を利用する退役軍人。


介入

VAのプライマリ・ケア精神保健統合診療部門において、短時間型不眠症行動療法の提供を改善するための実装戦略と支援を導入し、その後終了した。


主要評価項目

プライマリ・ケア精神保健統合診療部門における短時間型不眠症行動療法、不眠症の認知行動療法、および両者を合わせた行動療法の提供状況と、プライマリ・ケア部門における睡眠薬の処方状況。


主な結果

4施設すべてにおいて、実装段階の第3期から定着段階の第4期にかけて、実装支援が終了した後も、プライマリ・ケア精神保健統合診療部門における短時間型不眠症行動療法の提供割合は、不眠症のある退役軍人の20.2%から32.7%へと12.5パーセントポイント上昇した(オッズ比1.9、p<0.001)。

短時間型不眠症行動療法と通常の不眠症の認知行動療法を合わせた行動療法全体の提供割合も、25.5%から37.9%へ上昇した(オッズ比1.8、p<0.001)。一方、通常の不眠症の認知行動療法の提供状況には、この期間中に有意な変化は認められなかった(p=0.8)。

プライマリ・ケア部門における睡眠薬の処方も0.8パーセントポイント減少した(対象数2,158、オッズ比0.9、p<0.001)。


結論

4か所のVA医療センターにおいて、短時間型不眠症行動療法の研修と実装支援は、その療法の提供を増加させた。また、実装支援を終了した定着段階においても、短時間型不眠症行動療法および行動療法全体の提供増加が維持されていた。行動療法による不眠症ケアへのアクセスの改善は、特に短時間型不眠症行動療法の導入を通じて、睡眠薬の処方減少とも関連していた。プライマリ・ケア精神保健統合診療部門における短時間型不眠症行動療法の研修と実装支援は、行動療法による不眠症ケアへのアクセスを改善し、VAと米国国防総省の不眠症診療ガイドラインを推進するうえで有用である。


感想

短期間型不眠症行動療法の研修と実装支援によりアウトカムの改善が長期的にも残っていたという研究で、ちゃんと長期アウトカムを評価しているのは好感が持てます。確かに、行動療法は効果があることはわかってはいるものの、実際に家庭医外来に取り入れるにはハードルがあることがありますから、RQの立て方としても非常に妥当だと思います。


具体的なやり方は以下の通り。

4週間・全4回

  1. 対面、~45分 睡眠の仕組みと不眠の原因を説明し、睡眠行動を調整する
  2. 電話、<20分 睡眠日誌や実践状況を確認し、継続を妨げる問題を解決する
  3. 対面、~30分 睡眠状況に基づき、床上時間を15分単位で調整する
  4. 電話、<20分 床上時間を再調整し、改善状況と再発予防を確認する


患者が実践する4つのルール

  • 毎日、同じ時刻に起床する。
  • 床上時間を短くする。
  • 眠気を感じてから就床する。
  • 眠れないままベッドに居続けない。


床上時間の調整方法

  • 睡眠日誌があれば、それをもとに調整
  • 睡眠日誌がない場合は30/30ルール:入眠までの時間と夜間に目が覚めている時間の両方がほぼ毎晩30分未満なら床上時間を15分延長し、30分を超える状態が続くなら15分短縮する。


まあまあ大変そうな介入ではあります。集団でやるなどの効率化が必要そうですね。

2026年10月26日月曜日

慢性疼痛患者への社会的支援

 Ko HJ, Jackson JLN, Thompson-Lastad A, Wennik J, Swedlow P, Chao MT. Social support in group medical visits for chronic pain in primary care. Ann Fam Med. 2026;24(5):422-430. doi:10.1370/afm.250684. https://www.annfammed.org/content/24/5/422


目的

社会的支援は、慢性疼痛を抱える人々の健康アウトカムの改善と関連しており、生物心理社会的な疼痛ケアにおいて重要である。しかし、その役割については十分に研究されていない。本研究では、プライマリ・ケアで慢性疼痛を抱える患者を対象に、グループ診療が4種類の社会的支援、すなわち情緒的支援、評価的支援、情報的支援、道具的支援をどのように促進するのかを明らかにすることを目的とした。


方法

慢性疼痛に対する統合的グループ診療のランダム化試験の一環として、質的データを収集した。グループ診療群に割り付けられた、英語を話す患者の2つのコホートを対象とした。データは、16回のグループ診療の観察、2回のフォーカスグループ、12件の半構造化インタビューから収集した。介入では、臨床ケア、疼痛に関する教育、マインドフルネス瞑想、身体を動かす治療的活動、進行役による話し合いを組み合わせた週1回、計12回のセッションを実施した。データ分析には、研究チームによる柔軟なコーディングと、コードブックを用いたテーマ分析を採用した。


結果

参加した26人の患者の多くは低所得者であり、80.8%の世帯年収は5万米ドル未満であった。人種・民族については、50.0%が黒人またはアフリカ系アメリカ人、15.4%がヒスパニックまたはラティーノ系、23.1%が白人と回答した。平均疼痛強度は10点満点中7.7点であり、参加者は総じて強い疼痛を抱えていた。

4種類すべての社会的支援が、プログラムの構造化された要素、すなわちカリキュラム、進行役の働きかけ、プログラムの構成を通じて生じていた。また、参加者同士、および参加者と進行役との相互作用を通じても促進されていた。

  • 情緒的支援:帰属意識を育み、孤立感やスティグマに対抗する働きをしていた。
  • 評価的支援:患者が抱える困難を特別なものではないと捉え直すことを促し、自分自身への思いやりを育んでいた。
  • 情報的支援:双方向型の教育と、患者同士の知識や経験の共有が組み合わさっていた。
  • 道具的支援:具体的かつ実際的な援助を提供していた。


結論

本研究の結果から、慢性疼痛に対するグループ診療では、相互に結びつき、互いを強化する4種類の社会的支援が、治療の中核的なプロセスとして機能していることが示された。また、グループ診療は、プライマリ・ケアにおける慢性疼痛の生物心理社会的なマネジメントを実践するための有望なモデルとなる可能性がある。


感想

4種類の社会的支援が、診療の構造や医療者の働きかけ、患者同士の交流を通じて生まれ、相互に強化されていたことを報告した質的研究です。

それぞれの支援を詳しく見ていくと…

① 情緒的支援

自分の経験や苦しみを理解してもらい、受け入れてもらうこと。

患者同士が共感し、孤立感や「自分だけが苦しんでいる」という感覚を和らげる。

遅刻や欠席、発言しないことを責めないルールや、守秘義務の共有が、安心して参加できる環境を支えていた。

悲嘆やつらい経験を語った際に、他の参加者や進行役が耳を傾け、気持ちを受け止めていた。


② 評価的支援

自分の経験を肯定的に捉え直し、自己理解や自己評価を深めるための支援。

他の患者の困難を知ることで、自分の苦しみを特別なもの、あるいは自分の弱さのせいだと考えにくくなる。

医療者も自身の困難や対処経験を共有し、完璧でなくてもよいことを示していた。

小さな進歩を認め合うことで、自己批判を和らげ、自分自身への思いやりを育んでいた。


③ 情報的支援

疼痛の仕組み、セルフマネジメント、運動、ストレス対処などについて知識や技術を得ること。

医療者が一方的に教えるのではなく、患者の質問や生活状況に応じて内容を調整していた。

患者同士が、身体的制約に合わせた運動方法や、医療・福祉サービスの利用方法などを共有していた。

日常生活で実際に使える知識が、患者の自己管理能力を支えていた。


④ 道具的支援

移動、生活、医療へのアクセスなどに関する具体的な援助。

参加者同士の送迎、車椅子への移乗の補助、食事の準備などが行われていた。

進行役が、カウンセリングやマッサージ、社会福祉サービスなどの資源につないでいた。

緊急事態では、医療者と他の参加者が協力し、問題解決を助けていた。


これらが相互に作用すると論じられています。

例えば、患者が自分の疼痛や生活上の困難を安心して話せるようになると、他の患者から経験に基づく助言を受けやすくなる。そこで得た知識を実践しようとしても、経済的な問題や移動手段の不足が障壁になることがある。患者同士の送迎や医療・福祉資源への紹介は、その障壁を取り除く助けになる。

さらに、具体的な援助を受けた経験は、「自分のことを気にかけてくれる人がいる」という感覚を強め、グループへの信頼や帰属意識を高める。


さらに、社会的不利やスティグマについても描かれています。参加者の多くは低所得で、慢性疼痛に加えて経済的な困難や医療へのアクセス上の障壁を抱えており、人種差別、外国人排斥、障害に対する偏見、慢性疼痛への偏見など、複数の不利益が重なり合う経験が語られています。グループ内では、こうした経験を個人の問題として片づけず、社会的な偏見や不平等との関係も含めて語ることができていたようです。さらに、医療者からの情報提供だけでは解決しにくい問題に対して、患者同士の経験共有や具体的な援助が役立っていました。患者を一方的に支援される立場ではなく、他者に知識や援助を提供できる主体として位置づけているのがこの論文の特徴だと思いました。


具体的な実践的示唆ですが、

  • 心理的に安全な場をつくる:守秘義務、尊重し合うルール、発言を強制しない姿勢を共有する。
  • 参加の柔軟性を確保する:遅刻や欠席、身体的制約などを理由に患者が排除されないようにする。
  • 患者の経験知を重視する:患者同士が知識や対処方法を教え合えるようにする。
  • 医療者も人間的な側面を示す:自身の経験や限界を適切に共有し、相互理解を促す。
  • 実際的な障壁に対応する:移動、経済的困難、社会福祉サービスへのアクセスなどにも目を向ける。
  • 多様な背景を尊重する:患者の人種、文化、障害、社会経済的状況などを踏まえた柔軟な進行を行う。グループ診療の価値は、患者を一か所に集めること自体ではなく、安心して参加でき、相互に学び合い、必要な援助を得られる関係性を意図的につくることにある。

といったところかなと思います。

2026年10月25日日曜日

妊婦のベンゾジアゼピン曝露

 Fung K, Sujan AC, Bateman BT, Straub L, Hernandez-Diaz S, Brill G, et al. Benzodiazepine use early in pregnancy and risk for congenital malformations. Ann Intern Med. 2026 Oct 13. doi:10.7326/ANNALS-25-05148.


背景

妊娠中のベンゾジアゼピン系薬剤の使用と先天奇形との関連について、これまでの研究結果は一致していない。


目的

妊娠第1三半期にベンゾジアゼピン系薬剤に曝露した場合の、主要な先天奇形のリスクを評価すること。


研究デザイン

米国における集団ベースのコホート研究。


研究セッティング

Medicaid(2000~2018年)およびMerative MarketScan(2003~2020年)のデータベース。


対象者

妊娠前90日から分娩後30日まで保険に加入していた妊婦と、出生後90日間保険に加入していた生児。


評価項目

曝露は、妊娠第1三半期にベンゾジアゼピン系薬剤を少なくとも1回調剤されたことと定義した。

主要評価項目は、すべての主要な先天奇形、および過去の研究でベンゾジアゼピン系薬剤への曝露との関連が報告されている臓器別の先天奇形とした。

交絡因子を調整するため、傾向スコアの細分化層別化に基づく重み付けを用い、薬剤曝露群と非曝露群を比較して相対リスクを推定した。相対リスク1.3以上を、臨床的に重要なリスク上昇と事前に定義した。


結果

公的医療保険加入者では2,478,434件の妊娠のうち51,339件(2.1%)、民間医療保険加入者では1,750,721件の妊娠のうち27,779件(1.6%)で、ベンゾジアゼピン系薬剤への曝露が認められた。

先天奇形全体の調整後絶対リスクは、曝露群と非曝露群の比較で、公的医療保険加入者ではそれぞれ4.0%と4.1%、民間医療保険加入者ではそれぞれ4.9%と4.8%であった。

両データベースを統合した調整後相対リスクは0.99(95%信頼区間0.96~1.03)であった。

臓器別の先天奇形との関連は、感度分析では一貫して認められず、用量反応関係も認められなかった。ベンゾジアゼピン系薬剤の種類別に解析した結果も、同様であった。

一部の解析では、ベンゾジアゼピン系薬剤と他の向精神薬を併用した場合、特定の臓器別先天奇形のリスク上昇が認められた。しかし、一貫した傾向は確認されなかった。


研究の限界

曝露およびアウトカムの誤分類が、非差別的に生じている可能性がある。また、解析対象は出生時に認められる先天奇形に限定されていた。


結論

複数のデータソースを通じて、先天奇形のリスクが大幅に上昇するという一貫した証拠は認められなかった。

他の薬剤との併用に関する解析結果は一貫しておらず、さらなる研究が必要である。


感想

限界はもちろんありつつも、おそらくリスクはないだろうということで、重要な研究だと思います。

2026年10月24日土曜日

乳がん早期死亡とプライマリケアアクセス

 Thomas P, Carter B, Earle CC, et al. Factors associated with early death from de novo metastatic breast cancer in Ontario, Canada. CMAJ. 2026;198(36):E1392-E1403. doi:10.1503/cmaj.260156.


背景

女性の乳がんによる早期死亡には、疾患の生物学的特性に加え、年齢、社会的周縁化、社会経済的地位、居住地域の農村性、プライマリ・ケアへのアクセスなどの要因が影響する。本研究の目的は、初診時に遠隔転移を認めることで定義される、初診時転移性乳がんと診断された患者において、早期死亡と関連する要因を明らかにすることである。


方法

カナダ・オンタリオ州の2010~2019年の医療行政データを連結して用い、集団ベースの後ろ向きコホート研究を実施した。オンタリオ州がん登録を用いて、初診時転移性乳がんと診断された成人患者を特定した。主要アウトカムは早期死亡の頻度とし、がん診断から6か月以内の死亡を早期死亡と定義した。早期死亡と関連する患者、がん、および医療提供者の特性を明らかにするため、多変量ロジスティック回帰分析を行った。


結果

初診時転移性乳がんと診断された4,004人の患者のうち、22.9%(918人)が早期死亡を経験した。

オンタリオ州社会的周縁化指数のうち、世帯・住居および物質的資源の領域におけるスコアが高いことは、早期死亡と有意に関連していた。それぞれのオッズ比は1.27(95%信頼区間1.04~1.55)および1.21(95%信頼区間1.00~1.46)であった。

プライマリ・ケア医に登録していることは、早期死亡のオッズの有意な低下と関連していた(オッズ比0.74、95%信頼区間0.62~0.88)。

また、早期死亡の頻度には地理的地域によるばらつきが認められた。さらに、全身療法の開始後には、農村部に居住する患者で早期死亡が増加していた。


解釈

オンタリオ州において、初診時転移性乳がんと診断された患者の早期死亡には、社会的周縁化、プライマリ・ケア医へのアクセス、および地理的要因が関与している。プライマリ・ケア提供者へのアクセスを改善することは、これらの患者の早期死亡を減らすうえで有用である可能性がある。


感想

プライマリケアへのアクセスが予後を改善するというエビデンスの一つですね。

2026年10月23日金曜日

成人ADHD(NEJM review)

 Buitelaar JK, Newcorn JH. Adult attention deficit–hyperactivity disorder. N Engl J Med. 2026;395(15):1519-1528. doi:10.1056/NEJMcp2516040.


ADHD(注意欠如・多動症)は、世界の成人の約2.5%に認められる医学的疾患であり、生涯を通じてさまざまな形で症状が現れる。成人ADHDの患者には、不安症、気分障害、睡眠障害、物質使用障害、パーソナリティ障害などの精神疾患が併存することが多い。また、肥満、心血管疾患、脳血管疾患、1型・2型糖尿病、免疫・炎症性疾患などの身体疾患も併存しやすい。そのため、成人ADHDの患者は、精神疾患から身体疾患まで、幅広い健康問題を診療する医療者を受診する可能性がある。しかし、成人ADHDは、現在でも多くの患者で認識されず、診断に至っていない。評価にあたっては、ADHDの中核症状、併存疾患、およびそれらが日常生活の機能に及ぼす影響について、患者への面接を行う必要がある。標準化された評価尺度を活用することで、評価をより体系的に進めることができる。治療の主な要素は、心理教育と、精神刺激薬または非刺激薬による薬物療法である。多くの場合、心理社会的介入や生活習慣に関する助言を組み合わせて治療を行う。


感想

成人ADHDは、典型的な多動を主訴に受診するとは限らない、というのがポイントかなと。仕事の不調や不安、不眠などをきっかけに発見されるものだと理解しておく必要があります。

本文中には気づくきっかけとして以下の項目がありました。

仕事・学業上の問題: 先延ばし、締め切りを守れない、仕事を最後まで終えられない、計画や整理が苦手。

日常生活上の問題: 忘れ物、時間管理の困難、家事や育児の段取りが苦手。

対人関係上の問題: 相手の話を遮る、衝動的な発言や行動、感情のコントロールの難しさ。

精神症状を主訴とする場合: 不安症、抑うつ、睡眠障害、物質使用の問題など。


特に、治療抵抗性のうつ病ではADHDの併存を検討し、仕事、家庭、対人関係など複数の生活領域に支障が生じていないかを確認する必要があります。

とりわけ女性では症状が見過ごされやすいようです。

パートナーや親などから情報を得ることも大事なようです。小児期の症状を正確に思い出せないからということですが、そりゃあそうですね。


一見関係ない症状(精神症状だけでなく、糖尿病や肥満、動脈硬化性疾患など)からADHDを疑い、不注意、時間管理の困難、先延ばしなどが、複数の生活領域に影響していないかを確認せよ、ということだと理解しました。

治療は専門家との協働になるかと思います。特に慢性疾患管理の際には、特性を理解するだけでもかなり対応が変わりそうではありますね。