Okuhara T, Okada H, Yokota R, Kagawa Y. Medical invalidation and life validation in individuals with Crohn's disease in Japan: A qualitative study. Patient Educ Couns. 2026 Jun 10;150:109741. doi: 10.1016/j.pec.2026.109741. Epub ahead of print. PMID: 42284740.
奥原先生の研究グループからでた論文が、家庭医療を実践するうえで非常に重要な概念を提供しているので、紹介します。必読です。
症状や障害が目に見えない疾患(線維筋痛症やリウマチなど。今回の研究トピックであるクローン病も同様)は、その辛さが周囲の人に過小評価されることが多いです。診断されるまで信じてもらえない、「そんなに具合が悪そうには見えない」と言われる、という感じですね。認めてもらえないのです。
医療的無効化medical invalidationとは、病いと自律性に対する個人の理解を損なうコミュニケーション行動と自己信念として定義されており、(1) 理解の欠如、(2) 軽視、疎外、および無力化、(3) 病理化、(4) 内面化された自己無効化という 4 つの属性によって特徴付けられています。医療者から理解されず、そのことで患者自身が自己疎外を起こしてしまう、というプロセスですね。本研究では、このmedical invalidationが、患者の社会的存在にまで影響を与えることを明らかにしています。例えば、「あなたの仕事はそれほど重要ではない」や「こんなに頻繁に来る必要はない」といった医療者の発言は、患者の社会的自己を蝕みます。また、診断の不確実性や、医療情報の患者との共有ができていないことで、患者は自分自身を証明する義務を負わされ、社会生活を阻害します。
一方で、いままで患者の症状が確かにそうであることを認めるというvalidationの概念を、患者の人生への希望をみとめ、それを起点として治療や活動を共同で再設計することにまで広げることを本研究は提唱しています。これをlife validation(人生の肯定)と名付けています。
医療的無効化を避け、患者の人生の希望を承認し新たな人生を共に歩むサポートをする「人生の肯定」をするというのは、家庭医の役割の大きなものの一つと位置づけられると思います。