2026年9月10日木曜日

アルコール使用障害入院患者を外来につなげる

 Bernstein EY, Hills-Dunlap K, Challapalli A, Bero L, Calcaterra SL, et al. Interventions to improve outpatient follow-up for hospitalized patients with alcohol use disorder: a systematic review. Ann Intern Med. 2026 Sep 8. doi:10.7326/ANNALS-26-01312. https://www.acpjournals.org/doi/10.7326/ANNALS-26-01312


背景

アルコール使用障害(alcohol use disorder: AUD)による入院は多く、重大な健康上の問題と関連している。退院後の外来フォローアップは重要であるが、入院中にどのような介入を行えば、退院後に外来治療へつなげられるのかについては明らかになっていない。


目的

AUDで入院した患者に対して、退院後の外来フォローアップを改善することを目的として、病院で実施される介入の有効性を評価すること。


情報源

複数の電子データベースを検索し、AUDで入院した患者の退院後の外来フォローアップを改善するための介入を評価した研究を検索した。


研究選択

AUDによる入院後の外来フォローアップを改善することを目的とした、病院ベースの介入を評価した研究を対象とした。


データ抽出・統合

研究の特徴、介入内容、比較対象、フォローアップのアウトカムおよび研究の限界についてデータを抽出した。介入内容とアウトカムには大きな異質性が認められたため、結果を定量的に統合することには限界があった。


結果

17研究、合計12,000人以上の患者を対象とし、21種類の介入を評価した。17研究のうち、12研究はランダム化比較試験、3研究は非ランダム化試験、2研究はコホート研究であった。

介入の多くは、複数の要素を組み合わせたものであり、例えば、

行動カウンセリング

ケア・コーディネーション

AUDに対する薬物療法

社会的支援

電話による退院後のフォローアップ

予約のリマインダー

外来医療へのナビゲーション

などが含まれていた。

21種類の介入のうち、8種類では退院後の外来治療へのフォローアップを改善する効果が認められた。一方で、研究間で介入内容や評価方法が大きく異なっており、効果の大きさも一貫していなかった。

また、ランダム化比較試験の12研究のうち10研究は、バイアスのリスクが高いと評価された。全体として、エビデンスの確実性は非常に低かった。


限界

研究間で、対象患者、介入内容、アウトカムの定義、研究方法が大きく異なっていた。また、多くの研究でバイアスのリスクが高く、どの介入が最も有効なのかを明確に判断することは困難であった。


結論

AUDで入院した患者の退院後の外来フォローアップを改善するための病院ベースの介入については、現在のエビデンスは限定的である。いくつかの介入では外来治療へのつながりを改善する可能性が示されたものの、研究間の異質性が大きく、エビデンスの確実性も非常に低かった。今後は、どのような介入の構成要素が退院後の外来治療への移行を効果的に促進するのかを明らかにするため、より大規模で質の高い臨床試験が必要である。


感想

効果の合った介入をまとめると、退院時に単に『外来へ紹介する』だけでは不十分で、患者の動機づけ・家族/peer支援・薬物療法と、退院後の具体的なケアコーディネーションを組み合わせることで、外来治療への接続が改善する可能性がある、と結論できそうです。単独では効果が立証されていないものが多く、組み合わせないといけないようですね。手間暇がかかります。

2026年9月9日水曜日

肺がん検診を促すシステム

 Wernli KJ, Anderson ML, Palazzo L, Luce C, Bezman N, Rogers K, et al. Health communication and stepped reminders interventions for lung cancer screening: a randomized clinical trial. JAMA Intern Med. 2026 Aug 10. doi:10.1001/jamainternmed.2026.3666. https://jamanetwork.com/journals/jamainternalmedicine/article-abstract/2852476


Key Points

問い:複数のレベルに存在する障壁に対処する介入によって、毎年の肺がん検診の受診率は改善するのか?


知見:1,837人を対象としたランダム化臨床試験において、shared decision-makingに加えて健康情報を提供する介入を行っても、肺がん検診の継続受診率は改善しなかった。

一方、プライマリ・ケア医と患者の双方を対象としたシステムレベルのリマインダーによって、肺がん検診の受診率は向上した。特に、現在喫煙している患者でその効果が大きかった。


意味:プライマリ・ケア医が主体となって肺がん検診を実施するプログラムでは、適切なタイミングで、

プライマリ・ケア医には「低線量CTをオーダーするよう」リマインドする

患者には「低線量CTを予約するよう」リマインドする

という多層的なリマインダーを提供することが、毎年の肺がん検診の受診継続率を改善するうえで有効だった。


重要性

米国予防医学専門委員会(US Preventive Services Task Force: USPSTF)は10年以上にわたり、毎年の肺がん検診を推奨している。しかし、毎年の検診を継続して受ける割合は依然として低い。


目的

ガイドラインに沿った毎年の肺がん検診の継続受診率を高めるため、患者中心の多層的な介入を2種類実施し、その効果を検証すること。


研究デザイン、実施場所、対象者

Kaiser Permanente Washingtonにおいて、プラグマティックな2×2要因ランダム化臨床試験を実施した。

2022年11月21日から2024年4月5日までに、肺がん検診を受け、画像上正常所見であった患者を対象とした。最終フォローアップ日は2025年7月4日であった。データ解析は2025年7月から12月に行われた。


介入

4群を設定した。

通常診療群

Health Communication群

Stepped Reminders群

両方の介入を行う群


Health Communication介入では、印刷物および動画による情報提供を行い、患者が肺がん検診について十分な知識を持っていないことによる障壁に対応した。

Stepped Reminders介入では、プライマリ・ケア医が肺がん検診の画像検査をオーダーできるようにするとともに、患者に検査の予約を促すアウトリーチを行った。

両方の介入は、電子健康記録のレジストリを利用するシステムレベルの肺がん検診コーディネーターによって実施された。


主要評価項目

主要評価項目は、基準となる低線量CT検査の9~15か月後に、肺がん検診として低線量CT検査または胸部CTを完了したかどうかであった。

毎年の検診対象となったすべての参加者をmodified intention-to-treat解析に含めた。肺がんと診断された場合、死亡した場合、予定より早くLDCTまたは胸部CTを受けた場合、または健康保険から脱退した場合には、その時点で追跡を打ち切った。


結果

1,837人が試験に参加した。平均年齢は66.3歳(SD 6.5)で、897人(48.8%)が女性、940人(51.2%)が男性であった。現在喫煙していた人は875人(47.6%)であった。

参加者は、

通常診療群:459人

Health Communication群:460人

Stepped Reminders群:460人

両介入群:458人

に無作為に割り付けられた。


年間肺がん検診の受診率は、Health Communication介入を受けた群では59.2%(804人中476人)であり、介入を受けなかった群の63.3%(815人中516人)より4.7ポイント低かった。相対リスクは0.93(95% CI, 0.86–1.00、P=0.04)であり、Health Communication介入による受診率の改善は認められなかった。

一方、Stepped Reminders介入を受けた群の年間検診受診率は75.5%(800人中604人)で、介入を受けなかった群の47.4%(819人中388人)より27.7ポイント高かった。相対リスクは1.59(95% CI, 1.47–1.72、P<0.001)であった。


さらに、Stepped Remindersの効果は現在喫煙している患者で特に大きかった。

現在喫煙者:介入あり73.0% vs 介入なし41.2% リスク差:32.3ポイント(95% CI, 25.9–38.8)

過去喫煙者:介入あり77.8% vs 介入なし52.9% リスク差:24.1ポイント(95% CI, 18.1–30.0)

この効果の違いは統計学的にも有意であった(P for interaction=0.03)。


結論・意義

このランダム化臨床試験では、適切なタイミングで、PCPにはLDCTをオーダーするよう、患者には検査を予約するよう促す多層的なリマインダーを提供することが、毎年の肺がん検診の受診継続率を改善するうえで有効であった。

特に、プライマリ・ケア医が主体となって肺がん検診を実施するプログラムにおいて、このような介入は有効である可能性が示された。


感想

患者要因だけではなく医療者要因にも介入することの有用性を示した研究だと思います。

2026年9月8日火曜日

Teach-backの有効性

 Vick JB, Pace R, Klimek-Johnson P, Rushton S, Roberts M, Lewinski A, et al. Teach-back in clinical communication: a systematic review and meta-analysis. J Gen Intern Med. 2026 Sep 3. doi:10.1007/s11606-026-10678-y. https://link.springer.com/article/10.1007/s11606-026-10678-y


背景

Teach-backは、医療者が患者に伝えた情報を患者自身に説明し返してもらうことで理解度を確認する、臨床コミュニケーションの方法である。本研究では、臨床コミュニケーションにおけるteach-backの有効性に関する既存研究を統合し、特に患者の知識、自己効力感、健康行動へのアドヒアランスに及ぼす影響を検討した。

方法

teach-backの有効性を検討したランダム化比較試験を対象として、系統的レビューおよびメタ解析を実施した。18件のランダム化比較試験を含め、teach-backが患者の知識獲得、自己効力感、健康行動へのアドヒアランスなどに及ぼす影響を評価した。

結果

teach-backによって患者の知識獲得が明確に改善するというエビデンスは得られなかった。一方、teach-backは自己効力感および健康行動へのアドヒアランスを有意に改善することが示された。ただし、これらのエビデンスの確実性は低かった。

結論

Teach-backは、患者の知識獲得を改善する効果については明確ではないものの、自己効力感や推奨される健康行動へのアドヒアランスを改善する可能性がある。今後は、teach-backを日常診療に効果的かつ持続的に導入するための方法や、どのような臨床場面・患者において最も有用なのかを明らかにする研究が必要である。


感想

teach-backを臨床でしたことはないです。どうやって良好なコミュニケーションをとりながらteach-backできるかのイメージがわかないです。知識を伝授するという診療スタイルではないからかもしれません。ですが、口頭で受けた専門的な説明を患者さんがいつも理解できているとは当然思っておらず、認識の齟齬をどのように確認したらいいのかについては考えなくてはならないなと思っています。

2026年9月7日月曜日

一人暮らし高齢者の食事

 Noh HY, Seo KI, Kim KH. Differences and determinants of dietary intake according to living arrangements in older adults: a cross-sectional study using the 2019, 2021, and 2023 Korea National Health and Nutrition Examination Surveys. Korean J Fam Med. 2026 Jun 26. doi:10.4082/kjfm.25.0331. https://kjfm.or.kr/journal/view.php?number=4893


背景

高齢者の栄養状態は、居住形態と密接に関連しており、社会的支援や食料へのアクセスを反映している。本研究では、独居高齢者と他者と同居している高齢者の食事摂取量を比較するとともに、栄養素摂取量に影響を及ぼす主要な社会経済的、行動的、心理社会的要因を明らかにすることを目的とした。


方法

2019年、2021年、2023年の韓国国民健康栄養調査(Korea National Health and Nutrition Examination Survey: KNHANES)のデータを用いた。65歳以上の高齢者を、居住形態に基づいて「独居」と「他者との同居」に分類した。食事摂取量は24時間食事思い出し法(24-hour dietary recall)によって評価した。1日のエネルギーおよび栄養素摂取量について、年齢で調整した共分散分析(analysis of covariance)を用いて群間比較を行った。また、居住形態別に、エネルギーおよび栄養素摂取量と関連する要因を検討した。


結果

独居高齢者では、他者と同居している高齢者と比較して、1日のエネルギー、炭水化物、タンパク質、脂質、カルシウムの摂取量が有意に低かった(すべてP<0.05)。

非独居群では、喫煙状況、QOL、食料の豊富さ(food abundance)がエネルギーおよび栄養素摂取量の主要な決定因子であった。一方、独居高齢者では、経済活動、喫煙状況、食料の豊富さが最も影響の大きい要因であった。


結論

居住形態は、韓国の高齢者の食事摂取量に影響を及ぼす重要な文脈的要因である。 食料へのアクセス・食料安全保障を改善し、社会参加を促進する栄養支援プログラムによって、こうした格差を軽減し、健康的な加齢を支援できる可能性がある。


感想

重要な疫学的調査だと思います。

2026年9月6日日曜日

英国の終末期ケアのフレームワークをブルネイに適用する

 Chong JX, Teo SP, Husaini A, Venkatasalu MR. Gold Standards Framework to identify palliative care needs in primary care: a qualitative study of implementation in Brunei Darussalam. Korean J Fam Med. 2026 Aug 25. doi:10.4082/kjfm.26.0170. https://kjfm.or.kr/journal/view.php?number=4905


背景

プライマリ・ケアにおいて、緩和的アプローチから恩恵を受ける可能性のある患者を早期に特定することは、依然として困難である。Gold Standards Framework(GSF)は、人生の最終段階に近づいている可能性のある患者を特定するための体系的なアプローチを提供する。しかし、英国以外のプライマリ・ケアの現場においてGSFがどのように実装されているかについては、十分に明らかになっていない。

本研究では、ブルネイ・ダルサラームのプライマリ・ケアにおいて、GPがGSFの予後指標ガイダンスを用いて緩和ケアニーズのある患者を特定した経験を明らかにすることを目的とした。


方法

本研究は、プライマリ・ケアにおけるGSFの使用を評価した、より大規模な混合研究法プロジェクトの一部として実施された質的研究である。

構造化された研修ワークショップを受講した後、日常診療でGSFを適用したGPを対象として、フォーカスグループディスカッションおよび少人数グループでのインタビューを実施した。データは録音し、逐語録を作成したうえで、帰納的アプローチによるテーマ分析を行った。


結果

10名のGPが研究に参加した。以下の4つの包括的テーマが明らかになった。

GSFをプライマリ・ケアの診療に適応させること

プライマリ・ケアにおける構造的制約

予後の不確実性と役割に対する戸惑い

緩和的アプローチを統合するためのシステム上の促進要因

GSFは有用な枠組みとして認識されていた一方で、その実際の適用には地域・診療環境に応じた調整(contextual adaptation)が必要であり、医療者レベルとシステムレベルの双方の要因から影響を受けていた。


結論

GSFは、プライマリ・ケアにおいて緩和ケアのニーズを有する患者を特定することを支援できる。しかし、効果的に実装するためには、地域の診療ワークフローとの整合、診療の継続性の改善、そしてシステムレベルでの支援が必要である。特に、明確な紹介経路(referral pathways)と統合されたケア・プランニング(integrated care planning)が重要である。


感想

GSFは、Surprise Question → general indicators → disease-specific indicatorsの3段階で、「この患者は今後、緩和的アプローチを考えるべき状態にあるか」を臨床的に判断するためのフレームワークです。

英国で開発されたGSFをブルネイで使用する際にどのような調整が必要かを議論しています。

まず、取り扱われている疾病と指標がブルネイでは合わないという点があるようで、特にCOPD、喘息、フレイル、多疾患併存、複雑な糖尿病などがブルネイではより重視されるべきだとのことです、

また、ブルネイでは患者が毎回同じGPを受診するとは限らず、GPが患者の長期的な病状の経過を把握しにくいため、英国のような「長期的に患者を知っているGPが、少しずつ悪化している患者を認識する」は必ずしも成り立たず、そのため電子カルテの活用や情報共有の必要性が高いとのことです。

あわせて、進行患者の管理が病院、スペシャリスト中心となっているため、ブルネイのGPは「自分が予後を判断して緩和ケアを開始してよいのか?」と感じており、referral pathwayやshared-care systemを整える必要があるとのことです。


英国のGSFをブルネイに導入するにあたり、コンテキスト上の様々な差異はどこにあるのか、それをどのように調整したらいいのかを明らかにしており、とても実践的で家庭医らしい研究だなと思いました。日本の現状もどちらかというと英国よりブルネイに近いように思います。日本でも、横のものを縦にして満足するだけでなく、コンテキストに合わせた調整をどうするかを考える必要があると感じました。

2026年9月5日土曜日

献血における黒人差別

 Cénat JM, Dalexis RD, Darius WP, Pakhalé S. “Our blood is not pure enough”: a qualitative study to understand systemic racial barriers to blood donation for Black people in Canada. CMAJ. 2026:198(29):E1143-E1152; DOI: https://doi.org/10.1503/cmaj.250123


背景

献血は重要な医療を支えるために不可欠である。しかし、カナダでは黒人が献血を行う際に複数の障壁に直面している。本研究では、これらの障壁を明らかにし、献血者の多様性と公平な医療へのアクセスを向上させる方法について理解を深めることを目的とした。


方法

カナダに居住する黒人成人を対象に、半構造化された詳細なインタビューによる質的研究を実施した。参加者はソーシャルメディアおよび地域のコミュニティ組織を通じて募集した。インタビューを逐語録に起こし、NVivoソフトウェアを用いてコード化・テーマ分析を行った。データの分析には、文化的感受性を確保しながら、BraunとClarkeによる6段階のテーマ分析を用いた。


結果

42人(女性57.1%)にインタビューを行った。カナダにおける黒人の献血を妨げる障壁として、14の主要テーマを特定し、それらを5つのクラスターに分類した。

最も頻繁に言及されたのは、制度・政策上の障壁であり、Canadian Blood ServicesおよびHéma-Québecが採用している制限的な献血政策、制度的人種差別、そして歴史的な反黒人人種差別などが含まれた。

知識・認識に関する障壁としては、情報不足、黒人献血者から提供された血液が十分に活用されていないという認識、黒人コミュニティを十分に対象としないアウトリーチ活動などが挙げられた。

アクセス・実務上の障壁には、献血センターへのアクセスのしにくさや経済的制約が含まれた。

社会的・文化的障壁として、スティグマ、スタッフにおける黒人の代表性の不足、歓迎されていないと感じる環境が挙げられた。

さらに、心理的障壁として、注射針への恐怖や、医療・献血システムに対する不信感が認められた。この不信感は参加者の間に広くみられた。


解釈

本研究の結果は、カナダにおいて黒人の献血を困難にする制限的な政策が現在も存在していることを明らかにした。また、過去および現在の人種差別によって、医療システムおよび献血システムに対する深い不信感が形成されていることを示した。信頼を改善するためには、政策改革、包摂的なコミュニケーション、そして医療機関と黒人コミュニティとの協働が必要である。


感想

献血を切り口に人種差別の構造をあぶりだした研究であり、これぞ質的研究という感じの素晴らしい論文です。CMAJはよい質的研究を出版しますね。

2026年9月4日金曜日

心不全診断後にフェリチンを測定しているか

 Maharajan V, Jones NR, Bankhead C, Erone I, Haynes S, Katumba AM, et al. Iron deficiency testing among people with incident heart failure in primary care. BJGP Open. 2026 Jul 31. doi:10.3399/BJGPO.2026.0086.https://bjgpopen.org/content/early/2026/07/31/BJGPO.2026.0086


背景

心不全患者のおよそ50%には何らかの鉄欠乏が認められるため、各種ガイドラインでは鉄欠乏のスクリーニングが推奨されている。しかし、プライマリ・ケアにおいて実際にどの程度検査が行われているのか、また検査が公平に実施されているのかは明らかではない。


目的

新たに心不全と診断された患者のうち、診断後12か月以内にフェリチン検査を受けた患者の割合を明らかにすること。


研究デザイン・セッティング

2016~2021年のClinical Practice Research Datalink(CPRD)Aurumのデータを用いた、プライマリ・ケアにおける後ろ向きコホート研究。


方法

新たに心不全と診断された成人患者について、診断後12か月以内にフェリチン検査を受けた割合を算出した。さらに、多変量ロジスティック回帰分析を用いて、主要な人口統計学的因子および併存疾患による検査実施オッズの違いを検討した。


結果

新たに心不全と診断された105,749人(平均年齢71.6歳、SD 14.3)のうち、診断後1年以内にフェリチン検査を受けたのは35,688人(33.7%)にとどまった。

検査を受けるオッズは、年齢が高いほど高く、10歳年齢が上がるごとにOR 1.25(95% CI 1.24–1.27)であった。また、女性でも検査を受ける可能性が高く、男性のORは0.86(95% CI 0.84–0.89)であった。さらに、アジア系の患者では検査を受けるオッズが高かった(OR 1.70、95% CI 1.59–1.80)。

併存疾患では、セリアック病(OR 1.86、95% CI 1.58–2.21)、1型糖尿病(OR 1.82、95% CI 1.51–2.19)、肝硬変(OR 1.64、95% CI 1.43–1.87)が、フェリチン検査を受けることと関連していた。

また、患者背景を調整した後も、地域によって検査実施率に差が認められた。


結論

大規模なプライマリ・ケアデータベースを用いた本研究では、新たに心不全と診断された患者の約3分の2が、診断後1年以内に鉄欠乏を評価するためのフェリチン検査を受けていなかった。これは現在の診療における明らかなギャップを示しており、鉄欠乏の検査をプライマリ・ケアでより適切に実施するための診療体制改善の機会があることを示唆している。


感想

まずい、心不全管理でフェリチンを測定するという意識はありませんでした。今後気を付けようと思います。