2026年9月29日火曜日

チームでの疼痛管理の効果

 Seal KH, Morasco BJ, Martin AM, Reddy KP, Van Iseghem TM, Bolton RE, et al; wHOPE Study Group. The Veterans Affairs' Whole Health Approach for Chronic Pain Management: The wHOPE Randomized Clinical Trial. JAMA. 2026;335(20):1774-1786. doi:10.1001/jama.2026.5006. https://jamanetwork.com/journals/jama/article-abstract/2848379


重要性

米国退役軍人省(US Department of Veterans Affairs: VA)のWhole Healthアプローチは、VA病院で診療を受ける慢性疼痛患者に対して、2016年に議会によって導入が義務付けられた。しかし、これまで、その有効性をランダム化臨床試験で検証した研究はなかった。


目的

VAで慢性疼痛を有する患者を対象として、Whole Health Teamによる介入の有効性を、認知行動療法(CBT)および通常診療と比較して評価すること。また、長期的な疼痛による生活への支障の軽減について、CBTと通常診療を比較すること。


研究デザイン、設定、対象者

米国の6つのVA医療システムで実施されたランダム化臨床試験である。参加者の登録は2020年9月18日から2024年1月19日まで行われ、最終追跡は2025年1月27日に実施された。解析は2025年4月1日から2026年2月3日まで行われた。対象は、VAのプライマリケアを受診している慢性疼痛患者であった。


介入

慢性疼痛患者を11:11:2の割合で無作為に、Whole Health Team介入群:343人、慢性疼痛に対するCBTのグループセッション:339人、通常診療:82人の3群に割り付け、12か月間介入した。

Whole Health Teamは、プライマリケア医またはナースプラクティショナー、非薬物療法またはintegrative pain careを提供するsecond clinician(注:非薬物療法またはintegrative pain careを実際に提供する臨床職。PT、鍼灸師、カイロプラクターなど)、コーチ(注:Whole Healthに基づく目標設定やセルフマネジメントを支援)から構成された。

このチームは、VA Whole Healthモデルに沿って、多職種による個別化されたケアを提供し、患者自身の価値観や人生の目標と一致した個人的な健康目標の達成を支援した。


主要評価項目

主要アウトカムは、12か月時点におけるBrief Pain Inventory interference(BPI-I)サブスケールのスコアであった。BPI-Iは0~10点で評価され、点数が高いほど疼痛による生活への支障が大きいことを示す。最小臨床的重要差(minimal clinically important difference: MCID)は1.0点と設定された。


結果

12か月時点で、Whole Health Team群では、疼痛による生活への支障がCBT群および通常診療群よりも大きく改善した。

BPI-Iの平均差は、Whole Health Team vs CBT:−0.58点、Whole Health Team vs usual care:−0.77点であった。

一方、CBT群と通常診療群の比較では、平均差は−0.19点(99% CI −0.89~0.50、P=.46)であり、有意差は認められなかった。

なお、Whole Health Teamによる改善は統計学的には有意であったものの、MCIDとして設定された1.0点には達していなかった。


結論と意義

これらの結果は、慢性疼痛を有するVA患者において、Whole Health Teamアプローチを使用することで、疼痛による生活への支障を統計学的に有意ではあるものの、小幅に改善できることを支持する。


感想

手間とコストをかけてもあまり変わらないような印象を受けました。疼痛管理はやはり難しいですね。

2026年9月28日月曜日

家庭医療レジデンシーのQIカリキュラム

 Harriett LE, Wright KM, Anderson L, Wheat S, Harrison L, Rowland K, et al. Quality Improvement in Residency: Training, Projects, and Outcomes. Ann Fam Med. 2026;24(5):431-436. doi:10.1370/afm.250717. https://www.annfammed.org/content/24/5/431


背景

Quality improvement(QI)は家庭医学レジデンシー教育の中心的な要素であり、医師がシステムレベルの変革を主導し、価値に基づく医療を提供するための能力を育成する。しかし、レジデンシーにおけるQIプロジェクトの成功を評価するための標準化されたカリキュラムや指標は存在せず、卒後医学教育におけるQI教育・評価のベストプラクティスについてもコンセンサスがない。本研究では、米国の家庭医学レジデンシーにおけるQIカリキュラムの現状を明らかにすることを目的とし、教育方法、プロジェクトの要件、指導教員の役割、成功の指標として認識されているもの、障壁などを調査した。


方法

本研究は、2025 Council of Academic Family Medicine Educational Research Alliance(CERA)による家庭医学レジデンシープログラム・ディレクターを対象とした横断的調査の一部として実施された。調査項目には、QI教育、プロジェクトの運営方法、プロジェクトの特徴およびアウトカムに関する質問が含まれた。記述統計およびχ²検定を用いてデータを分析した。


結果

回答率は44.2%(321/726)であった。

QIカリキュラムについては、38.8%のプログラムがレジデンシー独自に開発したカリキュラムを使用し、46.8%が独自開発と外部リソースを組み合わせたハイブリッド型カリキュラムを使用していた。

QIプロジェクトの監督は、54.2%のプログラムでコア・ファカルティが担当していた。

QIに必要なデータへのアクセスは、44.6%で「limited」、27.6%で「full」とされていた。

QIプロジェクトは45.2%でレジデントのチームによって実施されていた。

レジデンシー修了者のQI能力は、63.5%のプログラムで「intermediate」と評価されていた。

卒業時のQI能力が高いことは、ハイブリッド型カリキュラム、データアクセス上の障壁が少ないこと、プロジェクトの継続性、およびプロジェクトの成果をより広く普及・実装していることと有意に関連していた(いずれもP<.05)。


結論

レジデントのQI能力や臨床実践の変化と関連する教育・プロジェクトの特徴は、家庭医学レジデンシーにおいて、より標準化された長期的なQI教育アプローチが必要であることを示している。


感想

実際のclinical practice changeと関連していたプロジェクトの特徴は、

レジデントが個人ではなくチームで取り組む

次のresident classにプロジェクトが引き継がれる

結果を発表・出版する

であり、専攻医がやりっぱなしではなく継続して取り組まれるようにするのがいいのでしょうね。


専攻医のQIの能力をどのように評価しているのか気になったのですが、Program DirectorにBasic、Intermediate、Advanced/Expertの3段階で評価をきいているだけで、さすがにいまいちだなと思いました。

総じて、面白さを感じ取ることはできるけど、雑な研究だなと思ってしまいました。

2026年9月27日日曜日

VitB12の投与経路

 Debone D, Azeredo da Silva A, Cordenonssi J et al. Comparative efficacy of vitamin B12 supplementation routes in adults with replacement indication: a systematic review. eClinicalMedicine, 2026; 100 https://www.thelancet.com/journals/eclinm/article/PIIS2589-5370(26)00467-0/fulltext


背景

ビタミンB12欠乏症は一般的であり、重篤な合併症を予防するために長期的な補充療法が必要となることが多い。しかし、経口、舌下、筋肉内という異なる投与経路の有効性を比較した場合、その違いについては不明確な点が残されている。本システマティックレビューでは、補充療法が適応となる成人において、異なるビタミンB12補充経路の有効性を評価した。


方法

PubMed、Embase、Cochrane CENTRALを、言語や発表年による制限を設けず、各データベースの開始時点から2025年7月18日まで検索し、2026年7月13日に更新した。PRISMA 2020に従って報告した。

対象は、補充療法が適応となる成人を対象とし、経口、舌下、または筋肉内によるビタミンB12補充を比較したランダム化試験および観察コホート研究とした。小児を対象とした研究および比較を行っていない研究は除外した。

バイアスのリスクは、ランダム化試験についてRoB 2.0、コホート研究についてROBINS-Iを用いて評価した。主要アウトカムは、血清ビタミンB12値または臨床的反応とした。

本システマティックレビューはPROSPERO(CRD420251126832)に登録された。


結果

13研究が適格基準を満たした。その内訳は、ランダム化比較試験7件、観察コホート研究3件、学会抄録2件、research letter 1件であった。研究はアジア、ヨーロッパ、北米、南米、オセアニアの10か国で実施され、単施設研究と多施設研究の両方が含まれていた。

最も多かった比較は経口投与と筋肉内投与で、8研究がこれを比較していた。複数の研究では、経口投与は筋肉内投与と同等、あるいはそれ以上の生化学的反応を示唆していた。

舌下投与については研究数が少なく、5研究のみであったが、短期的な生化学的有効性は他の投与経路と同等またはそれ以上であった。

3つの投与経路はいずれも血清ビタミンB12値を上昇させた。

7件のランダム化比較試験はすべて、バイアスのリスクについて「some concerns」と判断された。主な問題は、ランダム化手順の限界と、アウトカム報告の選択性であった。

3件の観察研究はすべて「serious risk of bias」と判断され、主な理由は交絡因子の調整が不十分であったことであった。残る3研究(学会抄録2件、research letter 1件)はバイアス評価の対象外とした。


解釈

投与経路の選択では、患者の希望、忍容性、アクセスのしやすさを考慮すべきである。

特に舌下投与についてはエビデンスが限られているが、現在得られている研究からは、選択された患者にとって非侵襲的な代替手段となる可能性が示唆される。

今後は、症状の改善、治療アドヒアランス、患者の選好など、患者中心のアウトカムを評価する、十分な検出力を持った比較研究が必要である。


感想

特に新たな知見というわけではなさそうでした。ただ評価はあくまでVitB12検査値であり、臨床的なアウトカムではないことに注意が必要です。

2026年9月26日土曜日

小規模チーム制のプライマリケアは費用が少しかかるが、全体の医療費は削減される

 Wong SKW, Tan KB, Pang J, Wong V, Ng DWL, Tan DHY, Lim Z, Sundram M, Ng KMY, Lew YJ, Chong PN. Assessing 5-year outcomes of a teamlet care model in Singapore polyclinics: a matched difference-in-difference analysis. Ann Fam Med. 2026 Sep;24(5):405-412. doi:10.1370/afm.250635.


背景

シンガポールのポリクリニックでは、慢性疾患患者に対するケアの継続性と包括性を向上させるため、2014年に新しいteamlet(小規模チーム)型ケアモデルが導入された。患者は、家庭医2名、看護師1名、ケアコーディネーター1名からなる小規模チームに登録され、連携したチームベースのケアを受けた。本研究では、このモデル導入後5年間のアウトカムについて、臨床指標、ケアの遵守、医療サービス利用、経済的影響に焦点を当てて評価した。


方法

2014~2016年にteamletプログラムに登録された、糖尿病、高血圧、または高脂血症の患者を対象とした後ろ向きマッチドコホート研究を実施した。アウトカムを、通常診療を受けていたマッチングされた対照患者と比較した。シンガポール保健省のデータベースを用い、個人およびコホート・時点による固定効果を調整した差の差分析を行った。


結果

teamletモデルでは、臨床指標に小幅な改善が認められた。登録前にHbA1cが上昇していなかったサブグループでは、HbA1cが0.1%低下した。

収縮期血圧は0.65 mmHg低下した。LDLコレステロールは0.03 mmol/L低下した。一方、糖尿病スクリーニングの遵守率は改善し、対照群と比較して、足のスクリーニングが16%増加、眼のスクリーニングが6%増加した。医療サービスの利用はプライマリ・ケア側へシフトし、高コストの医療サービス利用が減少した。

入院:1人あたりSGD 2,432の費用削減

専門医外来:1人あたりSGD 130の費用削減

救急外来:1人あたりSGD 49の費用削減

一方、ポリクリニック利用費は1人あたりSGD 479増加した。

これらを合わせると、1人あたりの総費用はSGD 2,186削減された。


結論

ポリクリニックの人員配置を、より小規模で協働的なチームへ再編することで、ケアプロセスが改善し、高コストの医療サービス利用が減少した。これらの結果は、患者数の多いプライマリ・ケア環境においてチームベースのケアモデルを拡大することが、医療システム全体の効率性向上と費用削減につながる可能性を示している。


感想

チームベースのケアが費用対効果に優れていることを明確に示していると思います。プライマリ・ケアにかかるコストが少し増えても、全体として医療費は下がる、というのが素晴らしいですね。プライマリ・ケアに手厚く予算を配分したほうがいいですよと主張する根拠になります。こういうエビデンスがアジア圏からでるのは素晴らしいことだと思います。

2026年9月25日金曜日

継続性と効率性

 McDonald T, Lethebe BC, Green LA. Cost savings from primary care clinic continuity among patients with chronic disease in Alberta, Canada: a retrospective population-level cross-sectional study. Br J Gen Pract. 2026 Sep 21. doi:10.3399/BJGP.2026.0085. https://bjgp.org/content/early/2026/09/21/BJGP.2026.0085


背景


プライマリ・ケア医(PCP)とのケアの継続性は、患者の健康状態を改善し、医療サービス利用(HSU)を減少させ、医療費を低下させることが知られている。一方、チーム医療や共同診療モデルに関連する「診療所レベルでの継続性」がどのような影響をもたらすかについては、十分に明らかになっていない。このようなモデルの費用への影響を明らかにすることは、医療提供体制や報酬制度の設計に重要である。


目的


慢性疾患患者を、継続性の低い・中程度のプライマリ・ケア診療所から、継続性の高い診療所へ移行した場合に、医療サービス利用にかかる費用をどの程度削減できるかを推定すること。


デザイン・セッティング


カナダ・アルバータ州において、慢性疾患患者約50万人のコホートからマッチングされた約7万人を対象とした、3年間の後ろ向き人口ベース横断研究。すべての出来高払い(fee-for-service)のプライマリ・ケア医を対象とした。


方法


診療所レベルの継続性を、Usual Provider of Care(UPC)Indexを改変して算出した。医療サービス利用にかかる費用は、Canadian Institute of Health Informationの費用算定方法を用いて推定した。


結果


継続性と急性期医療費との関連から、継続性が高い診療所(UPC 80–100%)をすべての患者に適用した場合、現在それ未満の継続性の診療所でケアを受けている約19万5000人について、3年間で8億9800万ポンドを超える費用削減が理論的に可能と推定された。


1人あたりの費用削減効果は、医学的に複雑な患者ほど大きかった。


結論


一般的な慢性疾患をもつ患者において、診療所レベルのケアの継続性は、患者の複雑性の程度にかかわらず、医療費の削減と関連していた。高い継続性を重視するプライマリ・ケア診療所に患者のケアを集約することで、大幅な費用削減が実現できる可能性がある。


感想

これはまたすごいエビデンスが出ました。継続性はどんどんエビデンスが出てきますね。

2026年9月24日木曜日

複雑系における多疾患併存

 Arakelyan S, Guthrie B, Anand A, Lone N, Mercer SW, Tooman T. Clinical empathy and relational continuity mitigate care fragmentation for patients with multiple long-term conditions: a qualitative study. Br J Gen Pract. 2026 Sep 21. doi:10.3399/BJGP.2026.0171. https://bjgp.org/content/early/2026/09/21/BJGP.2026.0171


背景

多疾患併存(multiple long-term conditions: MLTC)をもつ患者への医療サービスは、断片化し、十分に連携されていないシステムの中で提供されている。しかし、サービスの変化やシステムの複雑化に応じて、患者のケアに対する経験、認識、行動がどのように形成され、変化していくのかは十分に理解されていない。


目的

複雑適応系(complex adaptive care system)の中で、MLTC患者とその介護者のケアに対する経験や認識がどのように形成・変化するのかを明らかにし、より良いケアにつながる機会を特定すること。


デザイン・セッティング

スコットランドの4つの統合型保健・社会福祉パートナーシップにおいて、MLTC患者および介護者28人を対象に、6つのフォーカスグループを実施した質的研究。


方法

2024年2月から5月にデータを収集した。複雑適応系の視点に基づくアブダクティブ分析を行った。


結果

MLTC患者へのケアは、患者、介護者、医療専門職、組織構造の間の動的かつ相互的な相互作用によって形成されていた。増加する医療需要に対応するために導入されたサービス変更は、患者の複雑なニーズと一致していないと認識されることが多く、その結果、患者や介護者はアクセス上の障壁を乗り越えるために自身の行動を変化させていた。

ケアの経験は予測困難であり、小さな個人的な相互作用が、信頼や医療への関与に不釣り合いに大きな影響を与える強化型フィードバックループによって形作られていた。また、システムの不足を埋めるためにインフォーマルケアが拡大し、家族がケアの調整や患者の権利擁護を担うようになっていた。

その一方で、臨床的共感(clinical empathy)とケアの関係性の継続性(relational continuity)は、断片化したケアシステムの中で重要な安定化要因として機能していた。


結論

ケアの効率化を目的としたサービス変更は、意図せずケアを不安定化させ、MLTC患者や介護者に負担を転嫁する可能性がある。その結果、患者が感じるケアの質や、医療者との関係性の継続性にも影響を及ぼしうる。医療者と患者の相互作用や関係性の質が、患者のケアに対する認識と、その後の医療への関与を形作る。


感想

多疾患併存に対する王道の質的研究だと思いました。

  • MLTC患者にとって、医療は「複数の疾患別サービスの寄せ集め」になりやすい


  • 患者・家族は、断片化したシステムに「適応」していた。システムの問題を患者・家族自身が補っていた。つまり、自分で予約を取る、医療機関を使い分ける、救急を利用する、家族が調整役になる、といった行動が生じていた。


  • 医療者との小さな相互作用が、信頼やその後の受療行動に大きな影響を与えた。良い経験は信頼・継続的な受療を促進する一方、些細に見える対応の悪さが不信や受療中断につながることがあった。


  • clinical empathyとrelational continuityが、断片化を「安定化」する。自分の病歴を理解してくれる医療者、共感的に話を聞いてくれる医療者、他のサービスとの調整をしてくれる医療者の存在が、患者・家族の負担や不確実性を軽減していた。


というのがこの研究の論旨だと思います。


システム改善が必ずしも患者にとって改善になるとは限らず、効率化のためのデジタル化・標準化が、MLTC患者にはむしろ新たな適応を要求していること、逆に、「ちょっとした共感」「顔の見える継続的な関係」といった小さな相互作用が、システム全体の経験を大きく変えるというのが、まさに複雑系という感じです。

2026年9月23日水曜日

Greener practiceの実装

 Twohig H, Geddes O, Dale J, Dahlmann F, Earle J, Eccles A, Gregg M, Nunes AR, Spencer R, Karaba F, Thomas N, Atherton H. Factors influencing implementation of decarbonisation actions in general practice: longitudinal multi-centre case-study. Br J Gen Pract. 2026 Sep 22. doi:10.3399/BJGP.2026.0143. https://bjgp.org/content/early/2026/09/22/BJGP.2026.0143

背景

 英国国民保健サービス(NHS)は2040年までにネットゼロを達成することを目指している。家庭医療診療所はその実現に重要な役割を担うと認識されているものの、脱炭素化の取り組みがどのように実装され、またその進展をどのように支援できるのかについては、十分に明らかになっていない。

目的


家庭医療診療所における脱炭素化の取り組みの実装に影響を与える、制度的、組織的、専門職上の要因を、時間経過とともに明らかにすること。


デザイン・セッティング

イングランドの12の家庭医療診療所を対象とした縦断的質的ケーススタディ。


方法

各診療所が、12か月間に実施する3~5個の測定可能な行動からなるGreen Action Plan(GAP)を作成した。ベースライン時のワークショップ、3か月ごとのフォローアップ「check-in」ディスカッション、最終フォーカスグループを通じて質的データを収集した。Normalisation Process TheoryおよびTheoretical Domains Frameworkに基づいてトピックガイドを段階的に作成し、Framework analysisを行った。


結果

 脱炭素化に影響を与える要因として、以下の5つのテーマが明らかになった。

制度的障壁(systemic barriers)

組織文化とコミュニケーション(culture and communication)

キャパシティと競合する業務(capacity and competing demands)

「実際に機能させること」(‘making it work’)

行動、態度、感情(behaviour, attitudes and feelings)

NHSのより広範な優先課題と整合する取り組みや、時間・費用の効率化につながる取り組みは、日常業務に組み込みやすかった。一方、個人の行動変容を必要とする取り組みや、外部システムに依存する取り組みは、実装がより困難であった。また、政策面での調整不足や、施設・インフラに対する診療所の管理権限の限界が、進展を妨げていた。


結論

診療所レベルでは、日常業務に組み込むことができ、効率化にもつながる取り組みが、最も実施しやすい。持続的な変化を支えるためには、国レベルでの指示的な政策と、システムレベルで調整された支援が必要である。すでに多くの業務上のプレッシャーが存在する中では、個人の行動変容は困難であるが、支援的な組織文化とチームでの協働が、その進展を促進しうる。


感想

Greener practiceの実践よりの研究で面白いです。実装をどうするかというのはいかなる時も課題ですね。