2023年9月26日火曜日

今月号のAFM


今月号のAnnals of Family Medicineが、良い論文ばかりだったので、簡単に紹介します。

質的研究が多い号でした。やはり自分の興味関心と合っている研究手法なのだと思います。


Transgender People’s Experiences Sharing Information With Clinicians: A Focus Group–Based Qualitative Study

トランスジェンダーの患者が受診時に自分の情報を医療者に共有するという経験を探った質的研究。

結論にある、"Transgender people often must choose between stigma and potentially suboptimal care."(トランスジェンダーはたいていの場合、スティグマを貼られるのか、最適ではないケアをうけるのかの選択を迫られる)という言葉が重いです。

SOGIアライな診療空間を作らなくてはいけません。いま自分が最もしなくてはならないこと。


Declining Participation in Primary Care Quality Improvement Research: A Qualitative Study

QIプロジェクトに参加しなかった(←ここ大事)診療所に連絡し、どうして参加しなかったのかを聞いた研究。こういう研究とであう喜びがあります。


Acute Gastroenteritis: A Qualitative Study of Parental Motivations, Expectations, and Experiences During Out-of-Hours Primary Care

急性胃腸炎の子どもを時間外に連れてきた親に、受診後3週間以内に電話で連絡を取り、研究に参加してもらったという、質的研究。親がどうして時間外を受診したのかについて調べてます。とても良い研究。さすがAnn Fam Med。


Patient Communication Preferences for Prostate Cancer Screening Discussions: A Scoping Review

前立腺がんスクリーニングに関する患者とのコミュニケーションについてのスコーピングレビュー

2023年7月17日月曜日

Professionally-driven ZPSDとはなにか


Landry JT. Current models of shared decision-making are insufficient: The "Professionally-Driven Zone of Patient or Surrogate Discretion" offers a defensible way forward. Patient Educ Couns. 2023 Jul 8;115:107892. doi: 10.1016/j.pec.2023.107892. Epub ahead of print. PMID: 37454477.


なんだかとても重要そうなレビューがでましたよ。


既存のshared decision makingのモデルでは、誰が患者のために決定を下すかによって、異なる有害閾値が必要であることが認識されていない、患者が要求する治療が医学的に必要でない場合には結局患者に治療を提供しないという選択しかない、という点をうまく説明できなかった、と筆者は述べています。


筆者が提案する"Professionally-Driven Zone of Patient or Surrogate Discretion"は、参加者の役割の範囲を明確に定義し、倫理的に可能な選択肢から選ばれた治療・介入を行うことを説明できる、とのことです。


ざっくりいえば、医療者がありうる選択肢において想定される害について考え、その害が許容できる範囲内で、本人や代理人の希望と、許容できる害とのバランスを考えて意思決定を行う、というものです。正確な表現ではないと思いますが、ひとまず私はそう理解しました。


私自身、SDMについて「メニューを並べて好きなものを選んでね」ではいけない、と思っていたので、とても興味深く論文を読みました。

professionally-driven ZPSD の考え方は、私が普段していることに近いのかもしれません。

もう少し掘り下げて学習してみます。


2023年7月10日月曜日

総合診療医の成長について(レクチャー資料)


年度初めに、専攻医対象に行ったプレゼンテーションの概要について
参照用資料として、簡潔にしたものをこのブログに転記します。


総合診療医は、その地域で起こる様々な健康事象に対応します。
そして、日本の総合診療医は、多様なセッティングで働きます。

総合診療医は、よく出会う健康問題に通暁している一方で、
毎日、今まで出会ったことのない問題に出会います。

では、総合診療医ができることは何でしょうか?

例えば外来で。
  • 慢性心不全、慢性腎障害、慢性肝障害、糖尿病をかかえた中年男性におこるさまざまな健康問題に対応します
  • 寝ているときに再々トイレに行くという高齢女性の訴えに、適切な非薬物的療法を行います
  • 膝が痛くてゴミ出しができないという独り暮らし高齢者の悩みを解決するために複数の手段を想起し対応します
  • 時々胸が痛くなるという高校生の訴えに、適切なマネジメントを行います
  • 急に手が動かなくなったという主訴から甲状腺機能亢進症を診断し、治療のマネジメント行います
  • 2年続く腹痛という主訴から胸椎ヘルニアを診断し、疼痛緩和のために様々な専門家と協働します
  • 「健康」な70歳女性をみて、健康増進の方略を5つ以上提案します
  • 一見認知機能が保たれているように見える80歳女性の冷蔵庫に腐った食物が満載であることに気づき、生活を安定化させるために多職種と協働します。

たとえば訪問診療で。
  • がん・非がん問わず、終末期のケアを提供します
  • 急な発熱に対し、往診をして、病歴と身体診察だけで軽症の憩室炎だと診断し、在宅で治療を完遂します
  • 夜中にSpO2 60%の心不全増悪を起こした患者が、入院をどうしてもしたくないという場合、在宅でできる限りの治療を行い状態を安定化させます。
  • 80歳代の妻は寝たきり、神経因性膀胱、認知症で気ままに家族を支配している、夫が家の切り盛りや介護をすべてしていたが突然前立腺がん末期となりADL急激に低下し血便でている、娘は生活能力ないが在宅サービスの利用を拒否している、という複雑な状況にいる家族に対し、問題を切り分けて整理し、多職種と協働します。

例えば救急で。
  • 熱がない意識障害の患者に対し、バイタルと身体診察から敗血症性ショックと判断し、熱源として髄膜炎を想起し迅速な検査治療を行います
  • 父親と遊んでいたら首が傾いたまま動かなくなったという幼稚園児の診断とマネジメントをします
  • 風呂掃除をしていたら立ち上がれなくなったという高齢救急患者に、速やかに心電図を撮り、心筋梗塞と判断します
  • 寝ていると「動悸」をして不安だという患者の解釈モデルを聴き、適切な対応をします

例えば病棟で。
  • 誤嚥性肺炎の治療を行いながら可逆的な原因を検索し、本人・家族と話し合い今後の生活のプランを立てます。
  • 5か所の医療機関から計20種類の内服薬を処方されている患者に減薬のプランを提示します
  • 1か月続く発熱患者を、成人発症スティル病だと診断します
  • 退院後の生活のために必要な介入を、入院する前から考えだします

ところで、地域におけるコモンディジーズとは何でしょうか。
例1:目も耳も聞こえない元・左官の男性。
人の気配がすると「お茶とミカンを買ってくださいやー」といってお金を差し出すような生活。
家で尿便まみれでうごけなくなっているところを発見され、入院。さて、どうする?
 
例2:統合失調症がある若年女性。
胸痛が心配と受診した。
母と二人暮らしで、2人とも肥満あり。採血するとどちらもHbA1c 10以上の糖尿病。さて、どうする?

このように、未分化な問題が複雑に絡み合っていることこそが、地域におけるコモンディジーズです。

では、総合診療医はどのように成長するのでしょうか。
もっとも大事なこと:「総合診療医の成長は個人では達成できない」
総合診療医は、常にチームで診療を行います。
孤高の天才は、総合診療医には存在しません。

ありとあらゆる経験が、成長につながります。
子育てや介護の経験、躓いたこと、悲しかったこと、すべてがキャリアになります。
いついかなるときも、多様性は私たちの味方です。

総合診療医の学習は一生涯続きます。
肩書、資格、●●専門医…ぶっちゃけどうでもいいです。
どうせ一生勉強するのですから。
患者・地域に必要とされていれば、それでいいでしょう。
私たちの学びの場は、常に開かれています。

早くゴールを目指す必要はありません。そもそもゴールなんてありませんので。
どこまでも終わらない旅路を楽しむ気持ちでいましょう。


2023年6月20日火曜日

忙しいERにおける効率的な臨床推論

 

忙しくて、じっくり考える暇のないER(2次救急で6時間30人を医師一人で回す、入院指示も時間内にすべて出す、くらいの忙しさをイメージしています)では、ある程度思考を自動化して、乗り切っています。


腹痛を例にすると、しょっちゅう作動する自動化思考はこんな感じです。

・本人が強く痛がっているのに所見が大したことない腹痛は、血管由来を疑う

・すべての嘔吐下痢患者で、虫垂炎のフィジカルをとる。特に、嘔気より腹痛が先に来る場合。(虫垂炎に限らず。先日これでカンピロバクタを見つけました)

・全身状態が悪くないのに呼吸数が早い心窩部痛~腹部全体痛は、胸膜痛(感染症、気胸、肺塞栓)を疑う。

・浣腸して排便がでた便秘患者がまだ腹痛を訴えていたら、虚血性腸炎を疑う。

・姿勢を変えるときに痛みが出る慢性腹痛は、脊椎由来を疑う。

・下痢の患者がショックだったら、原因は腸管外にあることが多い。


こういう自分なりのルールに頼って診療しています。ほかにも…

・比較的全身状態がよいのに高熱を呈している高齢者では、パンツ、ズボン、靴下をすべて脱がす。(もちろん、いつでも全身診察すべきなのですが…)

・発熱と感冒症状を訴えるが咽頭所見に乏しい若年患者では、こちらから頭痛の有無を聞く。副鼻腔炎患者が自ら頭痛を報告することは少ない。

・家で熱が高かったので、布団をかぶって震えていたら、汗をかいてすっとして熱が下がった、と話す高齢患者は、敗血症の進行する過程をみている可能性が高い。


こういう自動化思考を言語化して書き出して、その妥当性を問う、ということをすると

診療の質の向上に寄与するかもしれないなと思います。

研修医と一緒に診療すると、言語化が促されるので、いい感じです。



2023年5月29日月曜日

疼痛とサルコペニア/社会的ニーズのスクリーニング/継続性と終末期ケア


Lin T, Huang X, Guo D, Zhao Y, Song Q, Liang R, Jiang T, Tu X, Deng C, Yue J. Pain as a risk factor for incident sarcopenia in community-dwelling older adults: A 1-year prospective cohort study. J Am Geriatr Soc. 2023 Feb;71(2):546-552. doi: 10.1111/jgs.18118. Epub 2022 Nov 4. PMID: 36330882.


疼痛のある高齢者は、サルコペニア発症リスクが有意に高い。

疼痛が強いほど、また疼痛部位が特定されているほど、サルコペニア発症のリスクが有意に蓄積される。


Russell LE, Cohen AJ, Chrzas S, Halladay CW, Kennedy MA, Mitchell K, Moy E, Lehmann LS. Implementing a Social Needs Screening and Referral Program Among Veterans: Assessing Circumstances & Offering Resources for Needs (ACORN). J Gen Intern Med. 2023 May 10:1–8. doi: 10.1007/s11606-023-08181-9. Epub ahead of print. PMID: 37165261; PMCID: PMC10171907.

社会的ニーズのスクリーニング。

半数は一項目以上が陽性。患者の受け入れは良好。

実践上の問題は、スクリーニングされた問題に対し提示されたリソースにアクセスした患者が一人もいなかったことです。

スクリーニングして、じゃあここに連絡してね、はい終わり、というのは、有効に機能しないだろうなと思っています。短期的アウトカムは無理だろうと。

そうじゃなくて、医療者側が患者さんのことを理解し、その結果医療者の関わり方が変わり、互いが互いを大事な存在と認識し、長い時間をかけて状況が変わっていく、というプロセスがうまれることが重要であると思っています。


ElMokhallalati Y, Chapman E, Relton SD, Bennett MI, Ziegler L. Characteristics of good home-based end-of-life care: analysis of 5-year data from a nationwide mortality follow-back survey in England. Br J Gen Pract. 2023 May 25;73(731):e443-e450. doi: 10.3399/BJGP.2022.0315. PMID: 37012076; PMCID: PMC10098834.


最近BJGPは、継続性についての量的研究をたくさん載せている印象があります。

継続性の高い患者で、終末期ケアの家族報告アウトカムが高かったという内容です。

2023年5月3日水曜日

2022年のTop20エビデンス


American Family Physicianに、プライマリケア医のための2022年top20エビデンスがまとめられていました。


【予防医学】

1. スタチンによるLDLコレステロール低下の一次予防効果は僅少。

3-6年間以上の治療による絶対リスク低下は、死亡で0.8%、心筋梗塞で1.3%、脳梗塞で0.4%

LDL-Cを強力に下げてアウトカムはあまりかわらない。

(私見)

私は、一次予防はあまり積極的に提案しておらず、糖尿病がある場合、家族性が疑われる場合などに限っています。腎障害がある場合も、まあLDL-C下げたほうがいいよな、とは思っています。一方、二次予防(脳梗塞、心筋梗塞)は漏らさず行うようにしています。

最近は、目標値管理ではなく、できるだけ高力価なスタチンをできるだけ使う、という風潮があります。わたしは、二次予防ではロスバスタチンをできるだけ使って、LDL-Cの値をみて必要なら増量するという、折衷案を採用しています。一次予防は、できるだけ低力価で目標値達成できたらいいなという気持ちでしています。このあたりが現時点での落としどころかな、という気持ちでいます。このあたり、推奨があまりにコロコロ変わるので、もう細かいことはどっちでもいいや、という気持ちでいます。


2. VitD補充は骨折リスクを減少させない。

骨折既往がある患者や、ベースラインのVItD値が低い患者でも、効果はない。

(私見)

以前は、転倒も減らすと評価されてきたVitDですが、最近のレビューでは有害無益ということになっています。今年に入ってから、私は外来患者のVitD製剤を中止する方向で診療しています。高齢者は高Ca血症のリスクも出てきてしまうので。

ビスホスホネート製剤を使って低Ca血症になる(なりそう)な場合にのみ新規開始するようになりました。逆に、若年女性の骨密度低下(妊娠出産後やアスリートなど)ではよく使っています。


【行動医学】

3. 抗うつ薬の中断は再燃を招きやすい。

プライマリ・ケアで抗うつ薬を中止すると、1年間でうつが再発しやすくなる(NNH 6)。

調子のいい時に抗うつ薬をやめて、そのまま元気でいられる患者は、44%。

(私見)

自分がSSRIなどの抗うつ薬を出さざるを得ないときというのはまあまああります。安易に中止しないように。


4. 単剤で治療反応のない急性重度抑うつでは、SSRI, SNRI, TCAなどの多剤治療が望ましい。

(私見)

こうなってくるとプライマリケアが治療を行う範囲外で、できる限り精神科に紹介することが求められると思います。知識としては知っておくか気があるかなと思います。・


5. パニック障害の第一選択薬はSSRI。

(私見)

今の診療を継続すればいいなと確認しました。


6. 成人の不眠症で、薬剤治療はセカンドライン。

睡眠薬は効果と副作用のトレードオフ。最もバランスが良いのはルネスタとデエビゴ。

(私見)

どちらも薬価が高いのがネックですが、ルネスタのジェネリックならそこまででもないです。ルネスタ(エスゾピクロン)は非ベンゾの入眠薬ですが、そこまで依存形成しないようですね。とはいえ、安易に処方すべきではないのは変わらないとは思います。

私は、睡眠薬が必要と思われる患者(もちろん非薬物的治療は十分行ったうえで)には、いままではベルソムラをよく出していましたが、一包化OKですし、若干安いので、これからは新規処方はデエビゴが増えるかもしれません。ただ、デエビゴのほうが傾眠がおおくなるかもです(半減期が長いため)。悪夢はベルソムラのほうがやや多いようです(悪夢のためにベルソムラ飲めない人はそこそこ出会います)が、デエビゴでも悪夢の副作用はあります。(作用機序同じなので当たり前)


【喘息】

7. 中等度~重度の喘息では、アルブテロール・ブデソニドのレスキュー吸入が増悪の頻度を下げる。

(私見)

シムビコートのSMART療法ですね。喘息は様々な吸入デバイスがあって混乱しますが、わたしは、一部の軽症間欠型を除いてシムビコートを使用しています。薬価が高いのがネックですが。定期も屯用も同じデバイスを使えるのは便利です。喘息増悪の一番の要因はアドヒアランスですので、使い勝手の良さは大事です。


8. 喘息のレリーバーはSABA単独ではなく、ステロイドを追加。

(私見)

上述の通り、シムビコートのSMART療法で対応できると思います。


【消化器】

9. PPIは胃がんのリスクをわずかに上げる(10年間でNNH 1191)

(私見)

さすがにNNHが大きすぎて、このリスクは無視していいと思います。ただ、PPI自体はほかのリスクもあるので、漫然長期処方はさけるべきだとは思います。


10. GERDに対するPPI8週間で治療が成功していれば、休薬を試す。

(私見)

上述の通りです。


11. IBSの第一選択は運動と水溶性食物線維の漸増。

(私見)

海外では、サイリウム(オオバコ)の粉末を溶かしてゼリー状にして飲用する健康食品が売られています。

食事で摂取する場合は、野菜や果物、海藻になります。

日本でもサイリウムは買えますので、症状がつらい人には試してみるのもありだなと思いました。


【糖尿病】

12. 60歳以上の糖尿病予備軍の大半は糖尿病にならない

(私見)

60歳以上であれば、糖尿病予備軍であっても、あまり気にしなくてよい、というエビデンスだと思います。treatment burdenを考えると、とても大事な知見です。


13. 糖尿病予備軍の治療は長期アウトカムを変えない。

強度の高いライフスタイル改善やメトホルミンは心血管アウトカムの長期リスクを変えない

(私見)

しゃにむに頑張る必要はない、ということですかね。マイルドな食事運動療法はよいかと思いますが。


14. 高齢者施設でのフレイル高齢者の75%で、薬剤性低血糖が2週間のうちに発生した。

重篤な低血糖は50%で見られた。

(私見)

フレイル高齢者では厳格な血糖治療はやめましょう。


15. 糖尿病性神経痛の治療は単剤より併用がよい。

使う薬剤はアミトリプチリン、デュロキセチン、プレガバリンなど

(私見)

まず単剤で治療して、効果乏しければ他の薬剤を追加する、というのが現実的かなと思います。最初はどの薬剤で始めてもいいようです。


【その他】

16. 患者にリスクを伝えるときは、言葉じゃなくて数字で。


17. 禁煙治療は12週間のバレニクリンで。


18. CBD(カンナビジオール)は様々な薬剤と相互作用を起こす

(私見)

CBDは、大麻由来のリラックス効果をうたう物質で、欧米では結構人気のようです。

大麻取締法上の「大麻」には相当しません。

今後日本で人気になった際に、問診で注意する必要が出てきそうです。


19. 急性腰痛症のNSAIDSは、薬剤間の差はない。


20. 尋常性痤瘡の第一選択は、adapalene/benzoyl peroxideで、次いでclindamycin/benzoyl peroxide、adapalene単剤。

adapalene/benzoyl peroxideは商品名エピデュオです。ひりひりとした痛みの副作用が強いので、注意です。肌にあわない場合は、adapalene単剤(ディフェリン)を使うことができます。(にきびの治療は経験が少なく、初めて知りました)



2023年4月25日火曜日

CTによる肺がんスクリーニングの候補者をどう洗い出すか

 

Thuppal S, Hendren JR, Colle J, Sapra A, Bhandari P, Rahman R, Krus-Johnston A, Hoffman MR, Foray N, Hazelrigg S, Crabtree T. 

Proactive Recruitment Strategy for Patient Identification for Lung Cancer Screening.

Ann Fam Med. 2023 Mar-Apr;21(2):119-124. 

doi: 10.1370/afm.2905. PMID: 36973046; PMCID: PMC10042567.


Low-dose CTによる肺がんスクリーニングの適格者を看護師が見つけ出して、必要な患者にはCTを撮ってもらいましょう、という介入の前後比較の論文です。


55 ~ 80 歳であり、現喫煙者/元喫煙者である451 人をまず特定しました。

2019 年 3 月~8 月の診療録を後方視的にレビューすると、結果は以下の通りでした。

CTを受けるべき           …184 人 (40.8%) 

CTを受けなくてよい         …104 人 (23.1%) 

喫煙歴が分からないから判断できない  …163 人 (36.1%) 


184人のうち、過去一年間でCTを撮影された人は34人(18.5%)しかいませんでした。


2020年に、看護師による介入が開始されました。

まず、喫煙歴が不完全だった患者から情報を得ました。その結果、追加で 56/451 (12.4%) 人が適格であると特定しました。

前年度でCTを撮っていなかった150人とあわせて、合計206人の適格者がこれで特定されました。

これらの患者は、看護師から連絡を受け、適格性と事前スクリーニングについて話し合われました。

その結果、122 人 (59.2%) がスクリーニングに口頭で同意し、94 人 (45.6%) が医師に会い、42 人 (20.4%) が LDCT の撮影を受けました。


スクリーニングは多職種総出で頑張る!という研究ですね。

とても家庭医らしくでいい研究だと思います。