2026年11月1日日曜日

ACP、ホスピスと主介護者との関係

 Dong Y, Lum HD. Caregiving relationships, advance care planning, and hospice use in later life. J Am Geriatr Soc. 2026 Oct 19. doi:10.1111/jgs.70791.


背景

高齢期において、主たる介護者との関係性が、ホスピスの利用やアドバンス・ケア・プランニング(ACP)と関連しているかどうかについては、ほとんど明らかになっていない。本研究では、主たる介護者との関係性によって、ホスピスの利用およびACPにどのような違いがあるかを検討した。


方法

Gateway Harmonized Health and Retirement Studyの終末期データを用い、第12波以降のデータを分析対象とした。対象者は、60歳以上で死亡した3,952人であった。

介護者のカテゴリーは、主たる介護者の関係性に基づき、配偶者・パートナー、子ども・孫、その他の親族、親族以外のインフォーマルな介護者に分類した。これらに加えて、フォーマルな介護サービスのみを利用している場合、および特定の介護者が確認されない場合も、独立したカテゴリーとして設定した。

ホスピス利用については多変量ロジスティック回帰分析を用いて推定した。また、4つのインフォーマルな主介護者カテゴリー間の全体的な差を共同Wald検定によって評価し、ACPを介した間接的な関連については、確率尺度による分解分析を行った。


結果

インフォーマルな主介護者が特定されていた死亡者において、ホスピス利用には、介護者との関係性による全体的な差は認められなかった。

配偶者・パートナーが主介護者である場合と比較すると、介護者が特定されていない場合(OR 0.46)、およびフォーマルな介護サービスのみを利用していた場合(OR 0.62)には、ホスピス利用が少なかった。

一方、子ども・孫が主介護者であることは、ACPが行われる確率の3.87パーセントポイントの上昇と関連していた。ただし、子ども・孫が主介護者であることとホスピス利用との関連において、ACPを介した間接的な関連は小さく、0.39パーセントポイントであった。


結論

ホスピス利用は、特定のインフォーマルな主介護者との関係性に集中しているわけではなかった。一方、ACPについては、介護者との関係性による違いがより明確に認められた。これらの結果は、事前のケア計画と、最終的なサービス利用との間には違いがあることを示している。また、介護者との続柄だけでなく、介護者の存在や、より広い介護を取り巻く状況を考慮することの重要性を示唆している。


Key points

インフォーマルな主介護者が特定されている高齢死亡者では、配偶者・パートナー、子ども・孫、その他の親族、親族以外の介護者という4つのカテゴリー間で、ホスピス利用に全体的な差は認められなかった。

子ども・孫が主介護者であることは、ACPの実施率の高さと関連していたが、ホスピス利用の増加とは関連していなかった。このことは、ケアの事前計画と最終的なサービス利用との間に違いがあることを示している。

介護者との関係性は、最終的に誰がホスピスを利用するかを区別するよりも、終末期のケア計画がどのように行われるかを理解するうえで、より有用な情報となる可能性がある。


感想

続柄だけから介護支援の有無を推測するのではなく、誰が介護に関わっているのかを具体的に把握する方が良い、ということかなと思い亜mした。

2026年10月31日土曜日

誤嚥性肺炎予防のための入院時スクリーニングプロトコル

 Yamauchi T, Ikebuchi M, Toyoda H,  et al. Admission dysphagia screening and hospital-acquired aspiration pneumonia in general wards: a retrospective cohort study. J Gen Intern Med. 2026 Oct 26. doi:10.1007/s11606-026-10770-3.


背景

高齢化に伴い、誤嚥性肺炎の発生率は増加している。誤嚥性肺炎は予防できる可能性があるため、入院時に系統的な嚥下評価を行うことで、誤嚥性肺炎のリスクが高い患者を特定できる可能性がある。当院では一般病棟において、看護師主導の嚥下障害スクリーニングプロトコルを導入した。このプロトコルでは、摂食評価ツール10(EAT-10)に続いて、反復唾液嚥下テスト(RSST)および食事場面の観察を実施する。


目的

入院時の嚥下障害スクリーニングと、入院後に発症する誤嚥性肺炎(HA-AP)の発生率との関連を評価すること。


研究デザイン

後ろ向きコホート研究。


対象

2022年3月から2023年2月までに一般病棟へ入院した成人患者12,374人。内訳は、プロトコル遵守群10,947人、非遵守群1,427人であった。


主要評価項目・測定方法

HA-APは、まず、日本の通常診療において診療報酬請求目的で記録されたICD-10コードJ69.0~J69.9に基づいて特定した。その後、特定されたすべての症例について、研究者が診療録を確認し、該当することを検証した。年齢、性別、BMI、嚥下障害に関連する併存疾患、悪性腫瘍、手術、内視鏡処置、放射線治療、化学療法、および入院月で調整した上で、修正ポアソン回帰分析を用いてリスク比(RR)を推定した。


主な結果

HA-APの発生率は、プロトコル遵守群で非遵守群よりも低かった(0.8%対2.1%)。脳血管疾患、認知症、呼吸器疾患は、HA-APの発生率上昇と関連していた。多変量調整後も、プロトコルの遵守はHA-APリスクの低下と独立して関連していた(RR 0.424、95%信頼区間 0.272–0.663、p<0.001)。このリスク低下との関連は、疾患カテゴリー全般で認められ、特に悪性腫瘍を有していない患者および手術を受けた患者で顕著であった。


結論

一般病棟において、入院時の嚥下障害スクリーニングプロトコルを遵守することは、入院後誤嚥性肺炎のリスクが有意に低いことと関連していた。入院時に系統的な嚥下評価を実施することは、入院後誤嚥性肺炎の予防を目的とした取り組みの有用な構成要素となる可能性がある。


感想

具体的なスクリーニングは以下の三段階だそうです。

  1. EAT-10(摂食評価ツール10):入院時に質問紙を用いて嚥下障害のリスクを評価する。
  2. RSST(反復唾液嚥下テスト)
  3. 食事場面の観察:実際の食事中の様子を観察し、嚥下障害の徴候を確認する。


実際の体制としては

  • 看護師主導で実施する。
  • 入院後24時間以内にスクリーニングを完了する。
  • 結果に基づいて嚥下リスクを判定し、必要に応じて専門職への紹介や適切な対応につなげる。
  • 多職種間の情報共有や食事場面の継続的な観察も、想定される重要な要素である。


著者らは、スクリーニングによる早期リスク把握に加え、以下のような一連のケアプロセスが効果に寄与した可能性を指摘しています。

  • 多職種間の情報共有
  • 食事場面の注意深い観察
  • 必要な専門職への迅速な紹介
  • 患者の状態に応じた適切な管理


単にスクリーニングしたから効果が出たというものではないのでしょう。しっかりと多職種連携してリソース割いてやらないといけないのでしょう。

2026年10月30日金曜日

認知症患者の不安・抑うつ

 Nimmons D, Aboughdir M, Walters K, Cooper C, Renukanthan A, Chew-Graham CA, et al. Identification of anxiety and depression in community-dwelling people with dementia: a multiperspective qualitative study. Br J Gen Pract. 2026 Oct 26. doi:10.3399/BJGP.2025.0639.


背景

認知症のある人では不安や抑うつの症状がよくみられる。しかし、これらの症状をほかの症状と区別することは難しく、見逃されたり、適切に認識されなかったりすることがある。


目的

地域で生活する認知症のある人において、不安や抑うつの症状がどのように認識され、理解されているのかについて、本人、介護者、医療・福祉専門職それぞれの視点から明らかにすること。


研究デザイン・対象

英国の地域で生活する認知症のある人のうち、不安や抑うつを経験している人、その介護者、およびプライマリ・ケアに従事する医療・福祉専門職を対象とした質的研究。


方法

56人の参加者を対象に、対面、電話、ビデオ通話による半構造化インタビューおよびグループインタビューを実施した。インタビューを録音・文字起こしし、リフレクシブ・テーマ分析によってデータを分析した。


結果

2つのテーマと6つのサブテーマが抽出された。

第1のテーマは「認識と診断に影響する要因」であった。不安や抑うつ、認知機能障害の症状には類似性があり、これによって認知症の診断が遅れる可能性があると、すべての参加者群が考えていた。医療・福祉専門職と介護者は、認知症が進行するにつれて生じる行動や感情反応の経時的な変化が、不安や抑うつの認識に役立つと考えていた。

医療・福祉専門職と介護者は、不安や抑うつの症状を認知症そのものに起因すると捉えることが多かった。しかし、ほかの併存疾患も症状に影響する可能性があるため、別の原因についても検討する必要がある。すべての参加者群が、性格などの状況的要因によって、不安や抑うつの現れ方が異なる可能性を指摘した。

第2のテーマは「援助を求めることへのスティグマ」であった。すべての参加者群が、文化的背景(民族性など)、症状の否認、症状を隠すことなどが、援助を求める行動に影響すると考えていた。


結論

認知症のある人における不安や抑うつの認識は複雑である。行動の変化、併存疾患、文化的背景、スティグマなどの要因を考慮することで、症状をより適切に認識できる可能性がある。


感想

N集めて労作だなと思う一方で、結果は何一つ新しいことがなく、つまらない研究だなと思ってしまいました。

2026年10月29日木曜日

高齢者施設での排便管理の困難

 Fukuyama Y, Furushima C, Ito S, Akiyama A. Factors associated with care workers' perceived difficulty in collaborating with nurses on bowel care in dementia group homes: A nationwide survey in Japan. J Gen Fam Med. Published online October 14, 2026. doi:10.1002/jgf2.70189.


背景

本探索的研究は、日本の認知症高齢者グループホームにおいて、排便ケアに関する看護師との協働について、介護職員が感じる困難と関連する要因を明らかにすることを目的とした。


方法

2025年7月から10月にかけて、全国横断調査を実施した。国の公開データに掲載された14,202施設のうち、層化無作為抽出法により2,000施設に質問票を郵送した。437件(回収率21.9%)の回答のうち、介護職員からの423件を解析対象とした。

協働の困難感は0〜10点の数値評価尺度で測定し、6〜10点を「困難あり」、0〜5点を「困難なし」と二分した。群間比較と多変量二項ロジスティック回帰分析を実施した。共変量の欠測値は多重代入法で補完した。また、困難感を連続変数として扱う感度分析を行った。


結果

評価項目に有効な回答があった417人のうち、182人(43.6%)が困難を感じていた。困難感と有意に関連する要因は4つあった。

年齢が高いこと(調整オッズ比[aOR]=1.044、95%信頼区間[CI]:1.020–1.069)、腹部を温めることの重要性を強く信じていること(aOR=1.222、95% CI:1.077–1.386)、排便に関する懸念をいつ看護師に報告すべきかについて不確かさが大きいこと(aOR=1.282、95% CI:1.175–1.398)は、困難感が高いことと関連していた。

一方、介護経験が長いこと(aOR=0.939、95% CI:0.906–0.973)は、困難感が高いことと関連するオッズの低下に関連していた。感度分析でも同様の結果が得られた。


結論

看護師との協働に関する困難感は、年齢が高いこと、介護経験が短いこと、看護師に相談する適切なタイミングがわからないことと関連していた。介護職員がどのような場合に看護師の助言を求めるべきかを明確にすることで、排便ケアにおけるより効果的な協働を支援できる可能性がある。


感想

排便の管理は難しいですよね。本文でも温罨法との関連の原因についてはよくわからないとあります。温罨法に拘泥するとうまくいかないのでしょうか。

2026年10月28日水曜日

脊椎関節症(AFP)

 Kim AR, Van Weezep J, Silva TW. Spondyloarthropathies. Am Fam Physician. 2026;114(3):262-270.


脊椎関節症は、強直性脊椎炎、反応性関節炎、炎症性腸疾患に伴う関節炎、乾癬性関節炎、分類不能の脊椎関節症などを含む炎症性疾患群である。それぞれの病型では、脊椎などの体軸に関わる症状と末梢の症状の両方がみられることがある。これらの疾患には、共通する遺伝的素因や臨床所見があり、炎症性腰痛、末梢関節炎、指趾炎、付着部炎などが含まれる。そのほか、眼病変、皮膚・粘膜病変、炎症性腸疾患を伴うこともある。診断は主に病歴と身体診察に基づいて行うが、画像検査やHLA-B27遺伝子検査も実施する。治療は病型によって異なり、通常は非ステロイド性抗炎症薬、理学療法、生物学的製剤(腫瘍壊死因子阻害薬など)を組み合わせて行う。家庭医の役割は、初期の徴候や症状を認識して適切な治療を開始し、患者の生活の質を高めるとともに、疾患の進行を最小限に抑えることである。


感想

この前疑い事例があったので、ちょうどよかったので読みました。


  • 診断の基本は、病歴、身体診察、画像所見の組み合わせ。単独で確定診断できる特異的な検査はない。
  • 45歳未満で発症した慢性腰痛、運動による改善、安静で改善しない痛み、夜間痛、30分以上の朝のこわばりなどは、体軸性脊椎関節症を疑う手がかりとなる。
  • 単純X線検査を行う。X線検査が正常でも疑いが強い場合は、仙腸関節のMRIを検討する。
  • HLA-B27検査は診断を支持するが、陽性だけで疾患とは診断できない。赤沈やCRPも補助的な指標であり、正常値でも疾患を否定できない。
  • 関節症状だけでなく、乾癬、爪病変、ぶどう膜炎、消化器症状、先行感染などを系統的に確認する。
  • 診断までに時間がかかることがあり、体軸性脊椎関節症では症状出現から診断まで平均約7年と報告されている。


今まで通りの疑い方でいいのかなと確認できました。

2026年10月27日火曜日

短期間型不眠症行動療法の研修と実装支援

 Bramoweth AD, Ulmer CS, Klingaman EA, O’Brien EM, Deininger CJ, Boudreaux-Kelly MY, et al. Delivery of behavioral insomnia care in VA primary care mental health integration clinics: sustainment outcomes of a hybrid type 3 trial. J Gen Intern Med. 2026 Oct 23. https://doi.org/10.1007/s11606-026-10950-1


背景

不眠症は一般的な疾患であり、健康状態や日常生活機能に重大な悪影響を及ぼす。慢性不眠症に対しては、不眠症の認知行動療法などの行動療法が推奨されており、そのための研修も行われている。しかし、多くの患者にとって治療へのアクセスは依然として困難である。


目的

米国退役軍人省(VA)のプライマリ・ケア精神保健統合診療部門において、実装を促進するための支援を終了した後、短時間型不眠症行動療法の提供状況がどのように変化するかを評価すること。


研究デザイン

ステップドウェッジ型のハイブリッド・タイプ3試験の定着段階において、実装支援を終了する前後を比較した分析。


対象者

4か所のVA医療センターにおけるプライマリ・ケアおよびプライマリ・ケア精神保健統合診療部門を利用する退役軍人。


介入

VAのプライマリ・ケア精神保健統合診療部門において、短時間型不眠症行動療法の提供を改善するための実装戦略と支援を導入し、その後終了した。


主要評価項目

プライマリ・ケア精神保健統合診療部門における短時間型不眠症行動療法、不眠症の認知行動療法、および両者を合わせた行動療法の提供状況と、プライマリ・ケア部門における睡眠薬の処方状況。


主な結果

4施設すべてにおいて、実装段階の第3期から定着段階の第4期にかけて、実装支援が終了した後も、プライマリ・ケア精神保健統合診療部門における短時間型不眠症行動療法の提供割合は、不眠症のある退役軍人の20.2%から32.7%へと12.5パーセントポイント上昇した(オッズ比1.9、p<0.001)。

短時間型不眠症行動療法と通常の不眠症の認知行動療法を合わせた行動療法全体の提供割合も、25.5%から37.9%へ上昇した(オッズ比1.8、p<0.001)。一方、通常の不眠症の認知行動療法の提供状況には、この期間中に有意な変化は認められなかった(p=0.8)。

プライマリ・ケア部門における睡眠薬の処方も0.8パーセントポイント減少した(対象数2,158、オッズ比0.9、p<0.001)。


結論

4か所のVA医療センターにおいて、短時間型不眠症行動療法の研修と実装支援は、その療法の提供を増加させた。また、実装支援を終了した定着段階においても、短時間型不眠症行動療法および行動療法全体の提供増加が維持されていた。行動療法による不眠症ケアへのアクセスの改善は、特に短時間型不眠症行動療法の導入を通じて、睡眠薬の処方減少とも関連していた。プライマリ・ケア精神保健統合診療部門における短時間型不眠症行動療法の研修と実装支援は、行動療法による不眠症ケアへのアクセスを改善し、VAと米国国防総省の不眠症診療ガイドラインを推進するうえで有用である。


感想

短期間型不眠症行動療法の研修と実装支援によりアウトカムの改善が長期的にも残っていたという研究で、ちゃんと長期アウトカムを評価しているのは好感が持てます。確かに、行動療法は効果があることはわかってはいるものの、実際に家庭医外来に取り入れるにはハードルがあることがありますから、RQの立て方としても非常に妥当だと思います。


具体的なやり方は以下の通り。

4週間・全4回

  1. 対面、~45分 睡眠の仕組みと不眠の原因を説明し、睡眠行動を調整する
  2. 電話、<20分 睡眠日誌や実践状況を確認し、継続を妨げる問題を解決する
  3. 対面、~30分 睡眠状況に基づき、床上時間を15分単位で調整する
  4. 電話、<20分 床上時間を再調整し、改善状況と再発予防を確認する


患者が実践する4つのルール

  • 毎日、同じ時刻に起床する。
  • 床上時間を短くする。
  • 眠気を感じてから就床する。
  • 眠れないままベッドに居続けない。


床上時間の調整方法

  • 睡眠日誌があれば、それをもとに調整
  • 睡眠日誌がない場合は30/30ルール:入眠までの時間と夜間に目が覚めている時間の両方がほぼ毎晩30分未満なら床上時間を15分延長し、30分を超える状態が続くなら15分短縮する。


まあまあ大変そうな介入ではあります。集団でやるなどの効率化が必要そうですね。

2026年10月26日月曜日

慢性疼痛患者への社会的支援

 Ko HJ, Jackson JLN, Thompson-Lastad A, Wennik J, Swedlow P, Chao MT. Social support in group medical visits for chronic pain in primary care. Ann Fam Med. 2026;24(5):422-430. doi:10.1370/afm.250684. https://www.annfammed.org/content/24/5/422


目的

社会的支援は、慢性疼痛を抱える人々の健康アウトカムの改善と関連しており、生物心理社会的な疼痛ケアにおいて重要である。しかし、その役割については十分に研究されていない。本研究では、プライマリ・ケアで慢性疼痛を抱える患者を対象に、グループ診療が4種類の社会的支援、すなわち情緒的支援、評価的支援、情報的支援、道具的支援をどのように促進するのかを明らかにすることを目的とした。


方法

慢性疼痛に対する統合的グループ診療のランダム化試験の一環として、質的データを収集した。グループ診療群に割り付けられた、英語を話す患者の2つのコホートを対象とした。データは、16回のグループ診療の観察、2回のフォーカスグループ、12件の半構造化インタビューから収集した。介入では、臨床ケア、疼痛に関する教育、マインドフルネス瞑想、身体を動かす治療的活動、進行役による話し合いを組み合わせた週1回、計12回のセッションを実施した。データ分析には、研究チームによる柔軟なコーディングと、コードブックを用いたテーマ分析を採用した。


結果

参加した26人の患者の多くは低所得者であり、80.8%の世帯年収は5万米ドル未満であった。人種・民族については、50.0%が黒人またはアフリカ系アメリカ人、15.4%がヒスパニックまたはラティーノ系、23.1%が白人と回答した。平均疼痛強度は10点満点中7.7点であり、参加者は総じて強い疼痛を抱えていた。

4種類すべての社会的支援が、プログラムの構造化された要素、すなわちカリキュラム、進行役の働きかけ、プログラムの構成を通じて生じていた。また、参加者同士、および参加者と進行役との相互作用を通じても促進されていた。

  • 情緒的支援:帰属意識を育み、孤立感やスティグマに対抗する働きをしていた。
  • 評価的支援:患者が抱える困難を特別なものではないと捉え直すことを促し、自分自身への思いやりを育んでいた。
  • 情報的支援:双方向型の教育と、患者同士の知識や経験の共有が組み合わさっていた。
  • 道具的支援:具体的かつ実際的な援助を提供していた。


結論

本研究の結果から、慢性疼痛に対するグループ診療では、相互に結びつき、互いを強化する4種類の社会的支援が、治療の中核的なプロセスとして機能していることが示された。また、グループ診療は、プライマリ・ケアにおける慢性疼痛の生物心理社会的なマネジメントを実践するための有望なモデルとなる可能性がある。


感想

4種類の社会的支援が、診療の構造や医療者の働きかけ、患者同士の交流を通じて生まれ、相互に強化されていたことを報告した質的研究です。

それぞれの支援を詳しく見ていくと…

① 情緒的支援

自分の経験や苦しみを理解してもらい、受け入れてもらうこと。

患者同士が共感し、孤立感や「自分だけが苦しんでいる」という感覚を和らげる。

遅刻や欠席、発言しないことを責めないルールや、守秘義務の共有が、安心して参加できる環境を支えていた。

悲嘆やつらい経験を語った際に、他の参加者や進行役が耳を傾け、気持ちを受け止めていた。


② 評価的支援

自分の経験を肯定的に捉え直し、自己理解や自己評価を深めるための支援。

他の患者の困難を知ることで、自分の苦しみを特別なもの、あるいは自分の弱さのせいだと考えにくくなる。

医療者も自身の困難や対処経験を共有し、完璧でなくてもよいことを示していた。

小さな進歩を認め合うことで、自己批判を和らげ、自分自身への思いやりを育んでいた。


③ 情報的支援

疼痛の仕組み、セルフマネジメント、運動、ストレス対処などについて知識や技術を得ること。

医療者が一方的に教えるのではなく、患者の質問や生活状況に応じて内容を調整していた。

患者同士が、身体的制約に合わせた運動方法や、医療・福祉サービスの利用方法などを共有していた。

日常生活で実際に使える知識が、患者の自己管理能力を支えていた。


④ 道具的支援

移動、生活、医療へのアクセスなどに関する具体的な援助。

参加者同士の送迎、車椅子への移乗の補助、食事の準備などが行われていた。

進行役が、カウンセリングやマッサージ、社会福祉サービスなどの資源につないでいた。

緊急事態では、医療者と他の参加者が協力し、問題解決を助けていた。


これらが相互に作用すると論じられています。

例えば、患者が自分の疼痛や生活上の困難を安心して話せるようになると、他の患者から経験に基づく助言を受けやすくなる。そこで得た知識を実践しようとしても、経済的な問題や移動手段の不足が障壁になることがある。患者同士の送迎や医療・福祉資源への紹介は、その障壁を取り除く助けになる。

さらに、具体的な援助を受けた経験は、「自分のことを気にかけてくれる人がいる」という感覚を強め、グループへの信頼や帰属意識を高める。


さらに、社会的不利やスティグマについても描かれています。参加者の多くは低所得で、慢性疼痛に加えて経済的な困難や医療へのアクセス上の障壁を抱えており、人種差別、外国人排斥、障害に対する偏見、慢性疼痛への偏見など、複数の不利益が重なり合う経験が語られています。グループ内では、こうした経験を個人の問題として片づけず、社会的な偏見や不平等との関係も含めて語ることができていたようです。さらに、医療者からの情報提供だけでは解決しにくい問題に対して、患者同士の経験共有や具体的な援助が役立っていました。患者を一方的に支援される立場ではなく、他者に知識や援助を提供できる主体として位置づけているのがこの論文の特徴だと思いました。


具体的な実践的示唆ですが、

  • 心理的に安全な場をつくる:守秘義務、尊重し合うルール、発言を強制しない姿勢を共有する。
  • 参加の柔軟性を確保する:遅刻や欠席、身体的制約などを理由に患者が排除されないようにする。
  • 患者の経験知を重視する:患者同士が知識や対処方法を教え合えるようにする。
  • 医療者も人間的な側面を示す:自身の経験や限界を適切に共有し、相互理解を促す。
  • 実際的な障壁に対応する:移動、経済的困難、社会福祉サービスへのアクセスなどにも目を向ける。
  • 多様な背景を尊重する:患者の人種、文化、障害、社会経済的状況などを踏まえた柔軟な進行を行う。グループ診療の価値は、患者を一か所に集めること自体ではなく、安心して参加でき、相互に学び合い、必要な援助を得られる関係性を意図的につくることにある。

といったところかなと思います。