2026年10月6日火曜日

台湾でのHospital at Homeのアウトカム

 Wang YC, Liao JY, Yang FC, et al. Hospital-Level Acute Care at Home via Direct Home Admission in Taiwan: A Non-randomized Controlled Pilot Trial Before National Implementation. J Gen Intern Med. 2026 Sep 30. doi: 10.1007/s11606-026-10828-2. https://link.springer.com/article/10.1007/s11606-026-10828-2


背景

Hospital-at-home(HaH)は世界的に広がりつつあるが、台湾のIntegrated Home-Based Medical Care(統合在宅医療)の仕組みの中で、地域から直接自宅に入院させる direct home admission(DHA) 型のHaHについては、十分なエビデンスがない。本研究では、DHAを中心としたHaHモデルについて、臨床アウトカム、患者・介護者の経験、および実施可能性を評価することを目的とした。なお、一部の患者については救急外来を経由して自宅での治療を開始する経路も含まれた。


方法

2022年10月から2023年7月にかけて、前向き非ランダム化比較パイロット試験を実施した。急性感染症のため病院レベルの治療を必要とする、在宅生活中の高齢者144人を対象とし、5病院・13地域診療所から登録した。83人がHaH群、61人が通常の病院入院群となった。対象者は概してフレイルで、慢性疾患を有し、日常生活機能が低下していた。

HaH群では、多職種による訪問診療、静脈内薬物療法、point-of-care検査、遠隔患者モニタリングを実施した。対照群では通常の入院診療を行った。

主要評価項目は、寛解・治療完遂、病院への搬送を必要とする臨床的エスカレーション、治療期間中の死亡、30日死亡率とした。副次評価項目として、在院期間(length of stay:LOS)、QOL、患者・介護者の満足度を評価した。


結果

治療完遂は両群の大多数で達成され、HaH群86.7%、通常入院群95.1%であった(p=0.153)。治療期間中の死亡率は低く、それぞれ2.4%、3.3%であった(p=1.000)。HaH群では、9人(10.8%)が臨床的エスカレーションを必要とし、病院への移行が必要となった。

一方、HaH群では在院期間が通常入院群より有意に短く、9.72日 vs. 11.85日(p=0.035)であった。また、HaH群では、患者・介護者の満足度、利便性、および「次回もこのモデルを選びたい」という意思が有意に高かった(いずれもp<0.05)。


結論

本研究は、台湾におけるdirect home admissionを利用したHaHモデルを評価した初めての研究であり、フレイル高齢者に対する地域起点の病院レベル急性期在宅医療(acute care at home:ACAH)が、実施可能かつ患者・介護者に受け入れられる可能性を示した。これらの結果は、既存の台湾の在宅医療インフラに病院レベルの急性期医療を統合することを支持するものであり、その後の台湾全国ACAHプログラムの開発にもつながった。


感想

これもHaHの研究。HaHでコストがどれだけかかったのか知りたいところ。

2026年10月5日月曜日

在宅医療が立ち向かう健康格差

 Baim-Lance A, Perez S, Gorbenko K, Nnemnbeng JF, Hart J, Howard B, et al. Leadership Perspectives on Hospital at Home and Equity: Broadening Access, Removing Enrollment Barriers, and Adding Value by Addressing Disparities. J Gen Intern Med. 2026 Oct 1. doi: 10.1007/s11606-026-10841-5. https://link.springer.com/article/10.1007/s11606-026-10841-5


背景 Hospital at Home(HaH)は、従来の入院医療に代わり、患者の自宅で安全かつ質の高い急性期病院レベルの医療を提供する仕組みである。米国でHaHが拡大する一方、プログラムのリーダーが医療の公平性をどのように捉え、公平な医療提供に影響する運用上の課題にどう対応しているかは、十分に明らかになっていない。本研究では、HaHにおける公平性の定義、実現を妨げる障壁、およびその克服に向けた戦略を明らかにすることを目的とした。


方法 規模、地理的条件、セーフティネット病院としての位置づけが多様なHaHプログラムを目的抽出法によって選定した。半構造化インタビューを実施し、インタビュー後の振り返り用テンプレートと要約を用いた迅速な質的分析を行った。その後、焦点を絞ったコーディングによってテーマを抽出し、フレーム分析の枠組みで整理した。


結果 15の病院ベースのHaHプログラムと3つの民間事業者のプログラムを代表する28人のリーダーに対し、18件のインタビューを実施した。参加者のおよそ半数はセーフティネット病院に所属していた。HaHにおける公平性を捉えるための、相互に関連する3つのフレームが明らかになった。

HaHへのアクセスを広げる(Broaden HaH Access):プログラムの設立を妨げたり可能にしたりする要因に注目し、農村地域なども含め、より広い人々にHaHを届けることを目指す。

HaHへの登録・利用開始を妨げる障壁を取り除く(Remove Barriers to HaH Enrollment):保険の種類、地理的条件、自宅の安全性、患者や介護者の希望など、患者が実際にプログラムを利用できるかどうかに影響する社会人口学的要因に注目する。保険の対象範囲を広げるなど、それぞれの障壁に対応する戦略が報告された。

格差に対処することでHaHの価値を高める(Add Value by Addressing Disparities):既存の健康上・社会的な課題を軽減し、長期的なアウトカムの改善につなげるために、HaHを積極的に活用するという考え方である。


考察 これら3つのフレームは相互に補完的であり、排他的なものではない。それぞれのフレームにおいて、HaHのリーダーたちは公平性に関する課題や障壁を認識し、公平な医療提供を促進するための具体的な戦略を示していた。こうした取り組みは、医療システム全体の目標に対するHaHの価値を高めることにもつながる。


結論 HaHにおける公平性を考える際のフレームを明確にし、それらを整合させたうえで、各フレームに対応する改善策を個別にも横断的にも実施することが重要である。これにより、HaHが拡大するなかで、包括的で公平な医療を提供する能力を高められる可能性がある。


感想

あくまでリーダーへのインタビューではありますが、在宅医療が如何にして健康格差に立ち向かうのかがよくまとまっています。

①サービス自体を幅広い地域に届ける、②利用資格があっても利用できない人の障壁を取り除く、③既存の健康格差そのものを縮小する、という3つのアプローチが組み合わさるということですね。

2026年10月4日日曜日

若手女性家庭医の経験するマイクロアグレッション

 Byrd M, Filippi MK, Siddiqi A, Fleischer SE, Bazemore AW, Koempel A. The Impact of Biases for Early-Career Women in Medicine: “It’s the Little Day-to-Day Microaggressions”. J Am Board Fam Med. 2026;39(1):167190. doi:10.3122/jabfm.2025.250291R2. https://www.jabfm.org/content/39/1/167190


背景

女性医師は、臨床現場において、心身の健康を損なうさまざまな制度的・社会的バイアスに直面している。性別に基づく差別を経験したと報告した女性医師の割合は、キャリア初期では76%、中期では57%、後期では36%であった。これらの傾向は、キャリアを重ねるにつれてバイアスが減少する可能性を示唆しているものの、バイアスは女性医師のキャリアを通じて持続する負担となっている。本研究は、職場のバイアスに関する質的研究で十分に取り上げられてこなかった、キャリア初期の女性家庭医に焦点を当てた点に特徴がある。特に、女性医師が臨床現場で経験するマイクロアグレッションを取り上げ、直面するバイアスをより深く理解することを目指した。


方法

2021~2023年のAmerican Board of Family Medicine National Graduate Surveyに回答した、地理的・人種的に多様なキャリア初期の女性医師25名を、電子メールを通じて募集した。研修医から臨床現場で働く医師へと移行する時期の経験を理解するため、ライフヒストリー・アプローチに基づいた半構造化インタビューガイドを作成した。インタビューを逐語録にし、データを整理したうえで、NVivoを用いて帰納的内容分析を行った。分析は質的研究者によって実施された。


結果

データから、主に3つのテーマが特定された。

1. 臨床現場における偏見を含むコミュニケーション:臨床現場でのコミュニケーションに、性別に基づくバイアスのパターンが表れていた。

2. 外見や他者の認識による、医師としての立場の否定:患者が、女性医師の外見や自分自身の認識に基づいて、その医師の立場や専門性を認めない経験がみられた。

3. 感情的・心理的な労働への対処:女性医師は、職業上および社会的に求められる期待に応えるなかで、感情的・心理的な負担を抱え、それに対処していた。


結論

プライマリ・ケアの現場では、マイクロアグレッションに対して、直接的かつ意図的な介入が必要である。こうした経験に対処しなければ、公平性と医療従事者の持続可能な就労環境が損なわれるおそれがある。組織のリーダーには、個々の医師を支援するだけでなく、組織文化やプライマリ・ケア全体の使命を強化するために、マイクロアグレッションを認識し、それを中断させ、適切に対応する能力が求められる。こうした取り組みは、医療における公平性の実現という、より広い社会的要請にも関わるものである。


感想

具体的なテーマの説明は以下の通り。

1. 臨床現場における偏見を含むコミュニケーション:女性医師を、専門職としてではなく、性別に基づく役割や期待によって捉える言動。

採用時の質問: 男性面接官2名から、将来の出産・子育ての計画について質問された。

日常的な発言: 妊娠中の同僚が分娩シミュレーション用の骨盤模型を購入しようとした際、男性の責任者から「巣作り(nesting)をしているんだね」と言われた。

職場での関係: 男性の前任者とは意見が一致していたと繰り返し述べる上司との関係において、若さや性別が意見の対立に影響しているのではないかと感じた。

こうした何気ない発言が日常的に積み重なり、女性医師の専門性や能力を軽視する環境を形成している。


2. 外見に基づく医師としての立場の否定:若さ、性別、人種などに基づく患者の思い込みによって、医師としての専門性や立場を認めてもらえない経験。

医師であることへの疑念: 若く見える女性医師が、患者から「あなたが医師なの?」と疑うように尋ねられた。

医師であることを示す工夫: 医師であることを明記した名札をつけていても、「医師はどこにいるの?」と尋ねられた。

私生活への立ち入り: 患者から子どもの有無や次の出産予定について質問されたり、外見から話せる言語を決めつけられたりした。

こうした経験は、医師としての役割を否定するだけでなく、患者との専門的な関係や適切な境界を損なっている。


3. 臨床現場や社会の期待に伴う感情的・心理的労働:周囲の感情に配慮し、人間関係を円滑に保ち、ジェンダーや人種に基づく期待に対処するために、追加の心理的負担を引き受けること。

話し方への要求: 男性医師よりも女性医師のほうが、スタッフから話し方や言葉遣い、丁寧さを厳しく求められると感じていた。

社会的な性役割: 女性は医師として働いていても、家事や育児を担うべきだという社会的期待が残っていると語られた。

人種との交差: 黒人女性医師は、黒人患者を診療する際、白人男性医師には生じにくい感情的負担を経験していた。文化的配慮を意図した同僚の発言が、かえって不快感を与える場合にも、その状況に対処しなければならなかった。

過剰な警戒: 過去の経験から、将来も障壁に直面することを予期し、常に備えておかなければならないと感じていた。また、少数派の同僚に負担をかけたくないと考え、支援を求めることを控えた参加者もいた。

差別的な出来事そのものだけでなく、それを予測し、感情を調整し、周囲との関係を維持するために継続的な努力を求められる


非常に具体的かつ明確に記述されており、日本でも同様の現象は起こっているだろうと思いました。日本での追検証が必要だと思います。

2026年10月3日土曜日

コンサルテーションの文章で診断プロセスを分析する

 Kawamura R, Harada Y, Shimizu T. Diagnostic Reasoning in General Internal Medicine Consultations: A Text Mining Analysis of Consultation Requests. J Gen Fam Med. 2026 Sep 13;27(5):e70176. doi: 10.1002/jgf2.70176


背景

診断推論は、その多くが内的な思考過程であるため評価することが難しく、診療の質と関連する言語的特徴については十分に明らかになっていない。コンサルテーション依頼文は、医師がその時点で行っている診断的思考を捉えるための有用な手がかりとなる可能性がある。本研究では、総合内科へのコンサルテーション依頼文における言語が、診断推論をどのように反映しているのかをテキストマイニングによって検討した。


方法

日本の大学病院の総合診療・総合内科部門において、2021年に行われた診断目的のコンサルテーション依頼を対象とした、単施設後ろ向き観察研究を実施した。コンサルテーションは、最初に依頼した専門診療科が最終的に正しい診断を確定したかを中心とした、アウトカムに基づく操作的定義によって適切と不適切に分類した。さらに、特定の診断が強く疑われていた場合には、最終診断との一致も分類基準に加えた。

テキストマイニングにはKH Coderを使用し、共起ネットワーク分析、対応分析、キーワード・イン・コンテクスト(KWIC)分析を行った。


結果

352件のコンサルテーションのうち、適切なのは229件、不適切なのは123件であった。適切なコンサルテーションでは、明確な異常所見や疾患の進行を示す言葉が特徴的にみられた。一方、不適切なコンサルテーションでは、「不明」「陰性」など、診断の方向性が限定的であることを示唆する言葉が関連していた。

特に興味深い結果として、KWIC分析では「陰性」という言葉が、少なくとも2つの異なる診断推論を表していた:検査結果が陰性だったことを受けて、鑑別診断を修正する;陰性な検査結果があっても、なお特定の診断を疑い続ける。つまり、同じ「陰性」という言葉でも、診断推論上の意味は一様ではなかった。

また、不適切なコンサルテーションでは、こうした表現が、評価や診療記録の不十分さ、および診断的不確実性を伴っていた。


結論

コンサルテーション依頼文のテキストマイニングによって、コンサルテーションの適切性と関連する言語的特徴を明らかにすることができた。また、「陰性」という言葉が、異なる診断推論上の行動を反映していることも明らかになった。コンサルテーション依頼文は、診断推論を評価するための、拡張可能な窓口となる可能性があり、診断コミュニケーションやコンサルテーションの質を改善する機会を特定するためにも利用できる可能性がある。


感想

総合診療科から他科へのコンサルテーションの文章を用いた分析で、着眼点がとても面白いです。ここでいう「適切」はコンサルテーション文章に最終診断が含まれていることを意味しています(ざっくりとした説明ですが)。診断プロセスや診断エラーの研究は表に現れないプロセスを扱うので難しいですが、確かにコンサルテーションの文章に着目するというのは可能性がかなりありそうですね。こういう着想で研究するのは素晴らしいことだと思います。

2026年10月2日金曜日

介護者は診療同伴で何をしているか、そしてそれはvirtual careに移行可能か

 Ward K, Wang H, Chacty V, Lau AY. Carer involvement in GP-patient consultations and translatability to virtual care: a multi-methods study. BJGP Open. 2026 Aug 11:BJGPO.2025.0114. doi: 10.3399/BJGPO.2025.0114. https://bjgpopen.org/content/early/2026/08/09/BJGPO.2025.0114


背景

介護者は、患者が医療にアクセスし、良好な医療経験を得るうえで重要な役割を果たしている。介護者はしばしば患者に付き添って診療を受け、その際に精神的・身体的な支援を提供している。しかし、これまでのところ、診療中に介護者が具体的にどのような活動に関わっているのか、また、それらの活動をオンライン・遠隔診療にどの程度移行できるのかを明らかにした研究は限られている。


目的

本研究の目的は、患者がGPの診察を受ける際に、介護者がどのような活動に関与しているのかを明らかにし、記述すること、そして、それらの活動をvirtual careによる診療にどの程度移行できるのかを評価することであった。


研究デザイン・セッティング

英国の8つのGP診療所で実施された対面でのGP診療のビデオ281件をスクリーニングし、そのうち39件を分析対象とした。


方法

対面で行われたGP診療の二次分析を行い、介護者が関与している活動を抽出した。それぞれの活動について、著者らが開発したエビデンスに基づく新しいスコアリングシステムを用いて評価し、その介護者の活動がvirtual careにおいて実施可能である可能性を判定した。


結果

介護者が関与する39の活動が同定され、7つのカテゴリーに分類された。

健康情報の共有 10 25.6%

精神的・身体的支援 9 23.1%

病歴聴取 8 20.5%

自宅での健康関連活動 5 12.8%

ロジスティクス 3 7.7%

関係性の構築 3 7.7%

その他 1 2.6%

39の活動について、virtual careへの移行可能性を評価したところ、平均スコアは15点満点中13点であった。


結論

介護者が関与するすべての活動について、virtual careへの移行可能、または移行可能性があると評価された。今後の研究では、virtual careにおける介護者の役割と、介護者をその役割の中でどのように支援できるかについて検討する必要がある。


感想

面白い研究。介護者が何をしているのかを測定するだけでも面白いのに、それをvirtualに移行できるかどうかの評価までしています。すばらしい。そしてこんなにおもしろくてもopenに回るのですね。最近、論文の質がAnn Fam MedよりBJGP Openのほうが高い気がします。


virtual careへの移行を評価するシステムに工夫があります。筆者たちの先行研究をもとにしているとありますが、つまるところ筆者たちが勝手に作ったスコアリングです。

Clinical endorsement、Physical artefacts / physical interaction、Type of carer support requiredの3項目をそれぞれ1~5点で評価し、合計15点満点にしています。


Clinical endorsement score:その活動を行うために、どの程度medical/clinical expertiseや医療者による確認が必要か

1 対面での臨床専門知識が必要

2 対面の臨床専門知識が望ましいが、遠隔で代替できる可能性あり

3 自宅で測定できるが、結果の解釈に医療者のclinical endorsementが必要

4 医療者による確認は必要だが、特別な機器なしにvirtual careで実施しやすい

5 医療専門知識が必ずしも必要ない


注射・ワクチン → 1

聴診・触診 → 2

血圧、体温、SpO₂測定 → 3

targeted history taking → 4

印刷など → 5


Physical artefacts / physical interaction:物理的な機器や身体的接触がどの程度必要か

1 virtual careでは代替困難な機器・身体診察が必要

2 機器・身体診察が必要だが、遠隔化の可能性あり

3 薬局などで簡単に購入できる機器が必要

4 自宅にある可能性の高い機器が必要

5 機器・身体的接触が不要


swab / smear → 1

聴診器による聴診 → 2

体温・血圧測定 → 3

computer / printer / weighing scale → 4

電話で服薬について話す → 5


Type of carer support required:その活動を患者が行うために、carerがどの程度の支援を必要とするか

1 非常に複雑。専門的な対面ケアが必要

2 複雑。clinical guidanceを伴う身体的・会話的支援が必要

3 重要な役割。ある程度の身体的支援または複雑な会話的支援が必要

4 比較的単純な支援。clinical knowledgeはほとんど不要

5 carerの支援は基本的に不要、または存在するだけでもよい


1:複雑な身体診察、高いリスクを伴う複数疾患、高度なclinical expertiseが必要な活動

2:複雑な診療情報の整理、multidisciplinary teamとの調整、複雑な在宅検査

3:診察時の衣服の着脱を手伝う、書類を準備する、患者に代わって病歴を説明する

4:患者を落ち着かせる、手を握る、会話を補足する、診察予約を手伝う

5:単に同席する、一般的な質問をする

2026年10月1日木曜日

高齢クィアのニーズを医療者教育に組み込む共同創造

 Hall S, Code D, Dyck D, Rabari D, Hubbard Murdoch N. What Healthcare Professionals Need to Understand About Queer Older Adult Care Experiences: A Double Diamond Design Study. J Gen Intern Med. 2026 Sep 25. doi: 10.1007/s11606-026-10800-0. https://link.springer.com/article/10.1007/s11606-026-10800-0


背景

two-spirit、レズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダー、クィア(2SLGBTQ+)の人々が高齢化するなか、多くの人々が異性愛規範的(heteronormative)な医療システムへのアクセスにおいて困難に直面している。医療専門職(HCP)は、包摂的で、アイデンティティを肯定するケアを提供するための、対象を明確にした教育を必要としている。本研究の目的は、クィアな高齢者へのケアにおけるHCPの能力向上を目的とした教育ツールキットに含めるべき主要な内容領域を明らかにすることであった。


方法

Double Diamondデザインモデルは、4つの段階――discover(発見)、define(定義)、develop(開発)、deliver(提供)――からなる人間中心設計(human-centred design)の枠組みである。

本研究ではDouble Diamondデザインモデルを用い、カナダ・サスカチュワン州において、クィアな高齢者とHCPを対象とした2回の共同創造ワークショップを実施した。ワークショップでは、ストーリーテリング、障壁の特定、解決策の創出といった活動を行った。逐語録、フィールドノート、参加者が作成した資料のデータを帰納的に分析し、その後、コードを先行研究で記述されている現象と関連づけ、既存の用語に沿うように名称を変更した。


結果

3つのテーマが同定された。

Relational ontologies(関係の中で浮かび上がる存在):クィアな高齢者の健康経験が、人間関係、包摂的な言語、可視性、そして「選択した家族(chosen family)」の認識によってどのように形づくられるかを示す概念である。

Institutionalized othering(制度による他者化):異性愛規範的な方針、前提、教育上の不足によって、医療システムのなかでクィアなアイデンティティや人間関係が周縁化されることを示す概念である。

Self-protective behaviours(自己防衛的行動):クィアな高齢者が、カミングアウトや自身の情報開示をどの程度行うかを判断し、安全性を評価し、予想される差別から自分自身を守るために用いる方略を示す概念である。

これらのテーマは、現在開発中の教育ツールキットの中核的な内容領域を構成するものとなっている。


結論

これらの結果は、HCP教育において、積極的な信頼関係の構築(proactive trust building)と包摂的なケア方針(inclusive care policies)を優先する必要があることを示している。

具体的には、

relational ontologies:包摂的なコミュニケーション、「選択した家族」の認識、肯定的な対人ケア

institutionalized othering:構造的スティグマ、異性愛規範的な制度・方針への批判的検討、システムレベルでの包摂

self-protective behaviours:情報開示に配慮した診療、信頼関係の構築、安全に医療へ参加するための障壁の軽減

という形で、ツールキットの内容に反映される。

生きられた経験とデザイン研究の原則に基づいて開発されるこのツールキットは、クィアな高齢者をケアするHCPの準備性を高め、医療における公平性の向上を目指すものである。


感想

研究デザインもトピックも結果も、どれをとっても質の高い研究だと思います。

chosen familyとは、血縁や法律上の家族ではなくても、本人が「自分の家族」と認識し、家族のような親密さや相互扶助を持つ人々をさします。

単にニーズを記述するのではなく、当事者と医療者がco-designのプロセスに参加し、その経験を医療者教育の具体的なコンテンツへ変換しようとしている点が評価すべき点だと思いました。

2026年9月30日水曜日

RCTで効果を検証した介入を実装するための質的研究

 Purcell N, Moore LC, Becker WC, Seal KH. Implementing Integrated Whole-Person Care for Chronic Pain: Lessons from VA’s Multisite wHOPE Study. J Gen Intern Med. 2026. doi:10.1007/s11606-026-10825-5. https://link.springer.com/article/10.1007/s11606-026-10825-5


背景

ガイドラインでは、慢性疼痛に対して、多面的かつ生物心理社会的なケアが推奨されている。しかし、このようなケアを大規模に実装することは容易ではない。近年、Whole Health Options and Pain Education(wHOPE)研究では、米国の6つの退役軍人省(VA)医療センターにおいて、Whole Health Team(WHT)介入が実施・評価された。WHTは、医療提供者、complementary and integrative health(CIH)提供者、health coachからなる多職種チームであり、包括的で非薬物的な疼痛ケアを提供する。慢性疼痛を有するVA患者764人を対象としたランダム化比較試験では、WHTは、group cognitive behavioral therapy(CBT)および通常診療と比較して、pain interferenceをより効果的に減少させ、その他の疼痛関連アウトカムも改善した。WHTの有効性が示されたことから、今後広くWHTを実装することが可能かどうかを検討することが重要である。


目的

質的研究を用いて、WHTの実装を促進・阻害する要因、WHTの持続可能性に影響する要因を検討した。


方法

Practical Robust Implementation and Sustainability Model(PRISM)を理論的枠組みとして用いた。wHOPE介入の実装に関わった43名のcliniciansおよびstaffを対象に半構造化インタビューを実施し、template-based rapid analysisを用いてインタビュー内容からテーマを抽出した。


主な結果

臨床医はWHT介入を高く評価しており、自身の診療を向上させ、患者ケアを改善したと感じていた。インタビューから、WHTの実装と持続可能性に影響するいくつかの重要な要因が明らかになった。

① チーム構成・協働

以下が必要とされた。

チームメンバーが継続して同じメンバーであること

臨床医に十分な時間・業務量を割り当てること

各臨床職種の役割を明確にすること

定期的なteam huddleを行うこと

② 組織インフラ・統合

以下が重要とされた。

既存の疼痛診療におけるギャップに対応すること

primary careと緊密に連携すること

complementary wellnessおよびtreatment modalitiesへの紹介経路を確立すること

③ Administrative coordination

実装およびその後の運営を支えるために、熟練したadministrative coordinationが必要であることも強調された。


結論

包括的で患者中心的な多職種疼痛ケアを実装することは複雑であり、特有の課題を伴う。しかし、この質的研究から、こうしたケアの実装と持続可能性を成功させるための有望な戦略が明らかになった。


感想

昨日紹介した論文はこの論文を読むための準備でした。RCTで効果があるのはわかった(本当に?と私は思っていますが…)から、じゃあどうやって実装する?という質的研究です。分析は、あらかじめマトリックスを作っておいて該当する内容を埋めるような方法で行われており、迅速に結果が得られるようです。

結論はありきたりですが、こうやってRCTに質的研究をくっつけて実装の課題を探すというのは、とても重要なことだと思います。