2026年10月14日水曜日

胆汁酸性下痢

 Barbara G, et al. Bile acid diarrhea in patients with chronic diarrhea: current appraisal and recommendations for clinical practice. Dig Liver Dis. 2025;57(3):680-687. doi:10.1016/j.dld.2024.12.019.

Bile acid diarrhea(BAD)知らなかったのでまとめます。
CMAJのこの記事を読んだのがきっかけです。

胆汁酸の吸収・代謝の異常により大腸に過剰な胆汁酸が流入し、下痢を引き起こす病態。

過敏性腸症候群・下痢型(IBS-D)や機能性下痢と判断されている患者の中にも、BADが隠れている可能性がある。


4週間以上続く慢性下痢で、特に以下の背景がある場合はBADを考慮せよ。

- 回腸末端切除の既往

- 胆嚢摘出術後

- 腹部への放射線治療歴


検査はいろいろあるが、現在臨床で使用可能なものはない。

中心となる治療は、胆汁酸吸着薬(bile acid sequestrants:BAS)であり、コレスチラミンが第一選択とあるが、日本では下痢に対する適応はない。抗リウマチ薬レフルノミドを体内から除去する薬でもあり、大事に使うべき薬剤とのこと(日本動脈硬化学会より)

第二選択のコレセベラムは日本では上市されていない。


まとめると…

慢性下痢を診療する際に、安易にIBS-Dとするのではなく、治療可能な原因の一つである胆汁酸性下痢を意識せよ、特に胆嚢摘出後や回腸切除後の慢性下痢では、BADを見逃すな。
ただ、治療薬で入手可能なものはない。コレスチラミンの適応外投与しか方法はなさそう。診断的治療も出来ないのでは困ったなぁ。

2026年10月13日火曜日

がんワクチン(JAMA review)

 Disis ML, Chun BMN, Dhillon KK, Liao JB, Hunter N, Cecil DL. Vaccines for cancer: a translational science review. JAMA. Published online September 21, 2026. doi:10.1001/jama.2026.15540. https://jamanetwork.com/journals/jama/article-abstract/2854262


重要性

腫瘍免疫学とワクチン技術の進歩により、長年にわたって臨床的な成功が限られていたがんワクチンの開発は、大きく変化しつつある。免疫原性を有する腫瘍タンパク質、すなわち抗原が2,000種類以上同定され、腫瘍を排除するために必要な免疫応答の種類が明らかになり、安全かつ有効なワクチン送達技術も開発されてきた。こうした進歩により、さまざまながんを対象としたがんワクチンの臨床研究が再び活発化している。


観察

ヒトパピローマウイルス(HPV)やB型肝炎ウイルスに対するワクチンなど、ワクチンは主に以下の3つの要素から構成される。

1. 抗原標的:免疫応答の標的となるもの

2. アジュバント:免疫系を活性化するもの

3. ワクチン送達媒体:抗原などを体内に届けるもの

抗原には、腫瘍の遺伝子変異に由来するネオアンチゲンと、がんに関連する非変異タンパク質がある。後者は、正常なヒトのタンパク質でありながら、がんにおいて異常に発現しているものである。

また、腫瘍そのものを抗原源として利用する方法もある。例えば、腫瘍細胞全体を用いて免疫する方法や、免疫原性物質を腫瘍内に直接注入し、適応免疫応答を誘導する方法がある。

がんワクチンは、獲得免疫を担うTリンパ球およびBリンパ球を刺激することで、がんに対する高い特異性と持続性を備えた免疫応答を誘導できる。適応免疫を誘導するがんワクチンの中には、すでにがん治療薬として承認されているものもある。

前立腺酸性ホスファターゼを標的とするワクチンであるsipuleucel-Tは、転移性去勢抵抗性前立腺がんの男性患者において、プラセボと比較して全死亡リスクを低下させた(32%対23%、ハザード比0.78、95%信頼区間0.61–0.98、p=0.03)。

また、全身性免疫刺激薬である顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)と比較して、talimogene laherparepvecを進行期メラノーマの病変内に注入した場合、6か月以上持続する完全奏効または部分奏効の割合が高かった。奏効率は16.3%(95%信頼区間12.1–20.5%)対2.1%(95%信頼区間0–4.5%)で、オッズ比は8.9、p<0.001であった。

ここで、完全奏効とは治療対象となったすべての病変が消失すること、部分奏効とは新たな病変が出現せず、測定可能病変の互いに垂直な径の積の総和が50%以上減少することと定義された。

がんワクチンの有害事象の多くは、倦怠感、発熱、注射部位反応など、軽度のものである。

がんワクチンを化学療法や免疫療法と組み合わせることで、免疫応答の強さが増し、腫瘍の縮小がさらに促進される可能性がある。

個別化された変異ベースのメッセンジャーRNA(mRNA)ワクチン(mRNA-4157)と免疫チェックポイント阻害薬ペムブロリズマブを併用した研究では、切除後の高リスクステージIIIB~IV皮膚メラノーマ患者において、ペムブロリズマブ単独と比較して無再発生存率が改善した(76.6%対60%、ハザード比0.56、95%信頼区間0.31–1.02、p=0.05)。

現在、がんワクチンは、がんの再発予防および一次予防を目的とした臨床試験でも評価されている。


結論と意義

がんワクチンは、メラノーマ、前立腺がん、膀胱がんなど、複数の悪性腫瘍の治療に使用できる。がんワクチンに関連する有害事象は、一般に軽度で持続期間も短い。そのため、今後、化学療法や免疫療法を含む治療レジメンに組み込まれていく可能性がある。

さらに、がんワクチンは、がんの一次予防を目的とした研究でも、ますます評価されるようになっている。


感想

この分野については全く知らなかったのでとても勉強になりました。どんどん進歩しているのですね。

2026年10月12日月曜日

多様なジェンダーの患者の骨盤痛

 Chona R, Sabbah SG, Englesakis M, Di Renna T, Drodge O, Rosenbloom BN, et al. Chronic pelvic and related genital pain in transgender and gender-diverse people: a scoping review. EClinicalMedicine. 2026 Oct;101:104252. doi: 10.1016/j.eclinm.2026.104252.


背景

慢性骨盤痛(chronic pelvic pain:CPP)および関連する性器痛は、トランスジェンダーおよびジェンダー・ダイバース(transgender and gender-diverse:TGD)の人々において、生活に支障をきたす多面的な問題であるが、これまで十分に研究されてこなかった。


方法

本スコーピングレビューでは、ホルモン療法(gender-affirming hormone therapy:GAHT)、手術、コミュニティという各文脈において、慢性骨盤痛の有病率、病因、評価方法、管理に関するエビデンスを整理した。Joanna Briggs Instituteの方法論およびPRISMA-ScRに従い、データベースの収載開始時点から2025年7月30日まで、10種類のデータベースを検索した。さらに、引用文献をたどる追加検索を行った。慢性骨盤痛については、3か月以上持続または反復する骨盤痛と定義し、より広い慢性疼痛の枠組みにおける関連する骨盤痛・性器痛も対象に含めた。研究計画はOpen Science Framework(OSF)に事前登録された。2名のレビュー担当者が、文献のスクリーニングと公表データの抽出を独立して実施した。


結果

24報の文献が採択され、23の独立したコホート、計5,527人のTGDの参加者が含まれた。

期間を明確に定義した慢性骨盤痛の有病率を推定していた研究は1件のみであり、出生時に女性と割り当てられたTGDの成人において17.7%と報告されていた。

より広義の骨盤痛・性器痛については、5件の研究で有病率が9.6~72.2%と報告されていた。ただし、これらの数値を、期間が定義された慢性骨盤痛の有病率として解釈すべきではない。


原因や関連要因として、相互に重複し得る以下の4領域が特定された。

1. ホルモンおよび組織を介した要因

2. 骨盤底および筋骨格系の要因

3. 手術および解剖学的要因

4. 心理社会的要因およびトラウマに関連する要因


評価方法や診断までの経路には大きなばらつきがあった。

治療・管理に関するエビデンスは非常に限られており、そのほとんどが観察研究、プログラムの監査報告、症例報告に由来していた。介入を評価したランダム化比較試験は、短期間のものが1件のみであった。


解釈

本レビューの結果は、ジェンダー・アイデンティティを肯定し、多職種が連携して評価するアプローチの必要性を支持している。同時に、慢性骨盤痛の標準化された定義、TGDの人々に特化した妥当性の確認された患者報告アウトカム尺度、前向きコホート研究、十分な検出力を備えた介入試験の必要性が明らかになった。


感想

確かに重要なリサーチテーマだと思います。あまり考えたことのなかった臨床問題だったので、これから気を付けて診察します。

2026年10月11日日曜日

デエビゴは股関節骨折リスクが低いといえそう

 Matsuo Y, Yamana H, Sasabuchi Y, Matsui H, Kohro T, Yasunaga H. Hip fracture risk of lemborexant and suvorexant in comparison with Z-drugs: a target trial emulation. J Am Geriatr Soc. 2026 Oct 8. doi: 10.1111/jgs.70754.

https://agsjournals.onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1111/jgs.70754


背景

レンボレキサントとスボレキサントは、不眠症の薬物療法に広く使用されているデュアルオレキシン受容体拮抗薬(dual orexin receptor antagonists:DORA)である。これらの薬剤は、股関節骨折を含む有害事象に関して、一般にベンゾジアゼピン受容体作動薬(Z-drugs)より安全と考えられている。しかし、両者を直接比較したエビデンスは限られている。本研究では、高齢者において、レンボレキサントおよびスボレキサントがZ-drugsと比較して股関節骨折リスクの低下と関連するかを検討した。


方法

栃木県のデータベースを用いたコホート研究を実施した。対象は65歳以上で、レンボレキサントまたはZ-drugsを新規に開始した患者(レンボレキサント解析コホート)、あるいはスボレキサントまたはZ-drugsを新規に開始した患者(スボレキサント解析コホート)とした。主要アウトカムは、コホートへの登録後1年以内の股関節骨折による入院とした。割り付けられた薬剤を継続使用した場合の、per-protocol効果を推定した。ベースラインの交絡因子については、傾向スコアに基づく逆確率治療重み付けを用いて調整した。割り付けられた薬剤の中止、または比較対象薬への切り替えによる打ち切りについては、逆確率打ち切り重み付けを用いて調整した。調整後の累積発生率はKaplan–Meier法、ハザード比はCox回帰を用いて推定した。


結果

レンボレキサント解析コホートには22,655人が含まれ、レンボレキサント群が6,879人、Z-drugs群が15,776人であった。

調整後、レンボレキサントの使用は、股関節骨折発生率の有意な低下と関連していた(HR 0.31(95%信頼区間 0.16–0.59、p<0.001))。

スボレキサント解析コホートには22,377人が含まれ、スボレキサント群が6,699人、Z-drugs群が15,678人であった。

調整後、スボレキサント群では股関節骨折発生率が低い傾向を認めたものの、統計学的に有意な差ではなかった(HR 0.57(95%信頼区間 0.23–1.44、p=0.234))。


結論

DORAは、特にレンボレキサントについて、股関節骨折リスクの観点からZ-drugsより安全な代替薬となる可能性がある。


感想

レンボレキサント(デエビゴ)とスボレキサント(ベルソムラ)を直接比較しているわけではありませんが、デエビゴのほうに軍配が上がる結果ではありました。ビッグデータでこういうのが分かるのはいいですね。

2026年10月10日土曜日

スティグマを伴う言葉遣いのカルテ記載

 Caton J, Sun B, Steele N, Santiago C, Antara F, Hom J, Dougherty R. Hospital-Based Clinicians’ Knowledge and Practices Regarding Stigmatizing Language in Clinical Documentation: A Multicenter Survey. J Gen Intern Med. 2026 Oct 7. doi: 10.1007/s11606-026-10803-x.


背景 スティグマを伴う言葉遣いは医療記録に広くみられ、偏見を助長し、その後の臨床判断や患者ケアに影響を及ぼす可能性がある。内科の指導医、研修医、Advanced Practice Provider(APP)は、臨床記録を作成する最前線の医療者である。また、指導医とAPPには、研修医に適切な記録方法についてフィードバックや教育を行う役割もある。しかし、研修医、APP、指導医が、医療記録におけるスティグマを伴う言葉遣いに対応する準備ができているかは明らかでない。さらに、このような言葉遣いに関する医療者の知識、態度、行動についても、十分にわかっていない。


目的 臨床記録におけるスティグマを伴う言葉遣いについて、研修医、APP、指導医の経験、価値観、信念を明らかにすることを目的とした。


方法 横断的なオンライン調査と知識テストを実施した。


対象者 2つの大規模な大学内科部門に所属する内科研修医、指導医、APPを対象とした。


主要評価項目 知識テストでは、臨床記録の抜粋に含まれるスティグマを伴う言葉遣いを識別する能力を評価した。質問紙では、リッカート尺度による質問を用いて、言葉遣いに関する態度と、自分自身のスキルに対する認識を評価した。


結果 指導医・APP群から82人(指導医72人、APP 10人、回答率52%)、研修医群から63人(回答率21%)の回答を得た。

回答者のほぼ全員が、自分の言葉遣いが患者に与える影響を考慮していると回答した(指導医・APP群91%、74人;研修医群92%、58人)。また、他の医療者への影響を考慮していると回答した割合も高かった(指導医・APP群90%、73人;研修医群84%、53人)。

しかし、自分の臨床記録がスティグマを伴う言葉遣いを避けられていると自信を持っていたのは、指導医・APP群の10%(8人)、研修医群の24%(15人)にとどまった。 さらに、知識テストで評価された11個のスティグマを伴う用語をすべて正しく識別できたのは、指導医・APP群の4%(3人)、研修医群の3%(2人)だけであった。


結論 参加施設の指導医・APPと研修医は、患者中心の言葉遣いの重要性を認識している一方で、このテーマに関する知識やスキルが不足していた。この結果は、対象を絞った教育的介入と、システムレベルでの介入を今後開発する重要性を示している。


感想

カルテ記載内容を扱ったスティグマに関する研究。面白い着眼点です。

2026年10月9日金曜日

研修医はメンタルを病みやすいがあまり受診しない

 Syed S, Myran DT, Solmi M, Kobewka D, Yoo S, Gibb M, Spilg E, Kendall CE, Fleming N, Maniate JM, Tucker J, Hundemer GL, Colman I, Tanuseputro P, Sood MM. Mental Health Care Use Among Resident Physicians Compared with the General Population. J Gen Intern Med. 2026 Oct 5. doi: 10.1007/s11606-026-10843-3.


背景 医師では一般人口よりもメンタルヘルス上の問題が多いことが、これまでの調査から示唆されている。しかし、こうした問題が医師という職業特有の要因によるものなのか、それとも社会全体にみられる変化を反映したものなのかは明らかではない。特に、独特のストレスにさらされる研修医においてメンタルヘルス上の問題がより大きな影響を及ぼしているのか、また男女で違いがあるのかについては十分にわかっていない。本研究では、研修医におけるメンタルヘルス関連の医療機関受診を、非医師と比較し、さらに性別による違いを検討することを目的とした。


方法 2004年4月1日から2018年3月31日までを対象とした、性別で層別化した人口ベースの後ろ向きコホート研究を実施した。研修医を、研修開始年、性別、年齢、都市・農村区分、所得五分位を用いて、非医師と1:5でマッチングした。主要評価項目は、5年間の研修期間中におけるメンタルヘルス関連の受診率とし、メンタルヘルス疾患を示す診断コードまたは請求コードが記録された場合を受診と定義した。


結果 研修医10,925人と、マッチングされた非医師54,625人を対象とした。研修医の平均年齢は27.2歳で、女性が5,941人(54.37%)、男性が4,984人(45.62%)であった。全体として、研修医の34.35%が研修期間中にメンタルヘルス関連の受診をしていたのに対し、非医師では36.13%であった。すべての群で不安症が最も一般的な診断であり、女性研修医ではメンタルヘルス関連受診の67.38%を占めた。

研修医の中では、女性は男性よりもメンタルヘルス関連受診のリスクが高かった(調整HR 1.44、95% CI 1.35–1.54)。一方、非医師と比較すると、女性研修医の受診率は女性非医師より低かった(39.71% vs 41.24%、調整HR 0.89、95% CI 0.85–0.93)。男性でも同様に、男性研修医は男性非医師より受診率が低かった(27.97% vs 30.03%、調整HR 0.81、95% CI 0.76–0.85)。


結論 研修医の3人に1人が研修期間中にメンタルヘルス関連の医療機関を受診していた。しかし、受診率は、背景因子をマッチさせた非医師よりも低かった。これは、医師のメンタルヘルスに関する懸念が持続しているにもかかわらず、研修医が必ずしも一般人口より積極的にメンタルヘルスケアを利用しているわけではないことを示している。女性研修医は男性研修医よりも受診率が高く、この点は一般人口における男女差と同様のパターンであった。


感想

重要な記述研究です。研修医はメンタルで病院を受診するのにハードルがあるのでしょう。

2026年10月8日木曜日

「QIを教える」ことと「QIが継続する組織をつくる」ことは別

Disalvo D, Giannitrapani K, Lorenz K, Offner K, Roberts SJ, Puranam S, Mickelsen J, DeNatale M, Agar M. Fostering Locally Led Palliative Care Innovation: A Qualitative Evaluation of the SPHERE-Stanford Collaborative Quality Improvement Program. J Gen Intern Med. 2026 Oct 5. doi: 10.1007/s11606-026-10824-6.


背景 オーストラリアは質の高い緩和ケアで国際的に評価されている一方、緩和ケアへのアクセスの不均衡、サービスモデルのばらつき、医療人材への負担などが、安全で効果的かつ患者中心のケアを妨げている。質改善(QI)は、こうした課題に取り組むための実践的な方法となり得る。本研究では、地域におけるQI能力を構築するため、Sydney Partnership for Health, Education, Research and Enterprise(SPHERE)がStanford Medicineと連携し、オーストラリアの7つの緩和ケアサービスにエビデンスに基づくQIプログラムを導入した。


目的 SPHERE-Stanford Medicine Collaborative QI Programを通じてQIプロジェクトを実施した医療者の経験を評価し、プロジェクトの実施を成功させるうえでの障壁と促進要因を明らかにすることを目的とした。


参加者 7つの参加チームから、チームリーダー、チームメンバー、メンター、サービスディレクターを含む25人にインタビューを実施した。


方法 各チームは、オンラインワークショップ、2日間の対面集中研修、継続的なメンターによる支援を組み合わせた、6か月間の構造化されたQIカリキュラムを受講した。半構造化インタビューによって、QI能力の構築とQIプロジェクトの実施に関する経験を調査した。Consolidated Framework for Implementation Research(CFIR)を枠組みとして、質的内容分析を行い、実施の成功に影響する要因を特定した。


結果 プログラムによって、医療者のQIに関する知識と自信が向上し、各チームはサービス上の問題の根本原因を特定し、標的を絞った介入を設計できるようになった。その結果、緩和ケアへの紹介件数の増加、ケアの統合の向上、記録方法の一貫性の向上など、意味のある改善が得られた。多職種連携、強いチームの結束、そして継続的なメンタリングが、主要な促進要因であった。また、経営層からの支援と積極的なコミュニケーションが、関係者からの支持を促し、新しい実践の導入を支えた。

一方、サービスモデルの違い、限られた資源、医療者の離職・交代、連携先サービスにおける緩和ケアに対する認識不足が主要な障壁となった。それでも参加者は、本プログラムを継続的なQI活動のきっかけとなるものと捉えており、成果を他施設へ共有・拡大する機会も認識していた。


結論 本プログラムは、オーストラリアの緩和ケアサービスにおけるQI能力を強化し、公平性、アクセス、サービスの質を改善するために他の現場にも応用可能な解決策を生み出した。今後は、こうした取り組みを持続可能なものにするための支援、学習成果の普及、そして緩和ケア領域全体へのQI能力の拡大が必要である。


感想

「QI能力を個人に教える」ことと「QIが継続する組織をつくる」ことは別の課題、ということですかね。

単なる研修内容ではなく、①多職種チームの結束、②継続的なメンタリング、③経営層の支持、④積極的なコミュニケーションが成功要因で、逆に、医療者の離職や資源不足が組織的障壁として挙がっています。