2026年11月3日火曜日

在宅での処方の複雑さと医師の負担感

 Masumoto S, Nakayama G, Sun Y, Ishii M, Nin S, Inaba T, et al. Excessive polypharmacy and complicated medication regimen are associated with physicians' perceived burden in home healthcare: a multicenter cross-sectional study. Fam Pract. 2026;43(6):cmag079. doi:10.1093/fampra/cmag079.


背景

在宅医療では、多剤併用や複雑な服薬レジメンが一般的に認められる。しかし、これらが医師の感じる負担にどのような影響を及ぼすかは、十分に明らかになっていない。本研究では、在宅医療において、多剤併用および服薬レジメンの複雑さが、医師の感じる負担とどのように関連しているかを検討した。


方法

日本国内の7つの在宅療養支援診療所および病院において、横断研究を実施した。在宅医療を受けている18歳以上の患者を対象に、医師が自記式質問票に回答した。薬剤数(3段階に分類)、服薬レジメン複雑性指数の日本語版(MRCI-J)スコア(四分位に分類)と、医師が感じる負担との関連を検討した。医師が感じる負担は、0~100 mmの視覚的アナログ尺度(VAS)を用いて評価した。分析には線形混合効果モデルを使用し、医師をランダム効果として扱った。


結果

506人の患者からデータを収集し、そのうち503人を分析対象とした。患者の平均年齢は82.4歳で、服用薬剤数の中央値は6剤であった。医師が感じる負担の平均スコアは33.6 mmであった。過剰な多剤併用とMRCI-Jスコアが最も高い四分位に属することは、共変量で調整した後も、医師の負担の増大と有意に関連していた。過剰な多剤併用における回帰係数は8.20(95%信頼区間:4.07–12.33)、MRCI-Jスコアの最高四分位における回帰係数は7.84(95%信頼区間:3.61–12.07)であった。


結論

在宅医療において、過剰な多剤併用および複雑な服薬レジメンは、医師の負担の増大と有意に関連していた。これらの結果は、医師の業務負担を軽減するために、地域薬剤師との多職種連携を通じて薬物療法を最適化することの潜在的な有益性を示している。この負担を軽減するための効果的な介入方法を明らかにするには、さらなる研究が必要である。


感想

結果としては当たり前。医師の負担増大がそこまで重要なアウトカムなのかという疑問はあります。あまりに処方が複雑すぎると、かえってdo処方が増えるような気がしますが、医師はそのことを負担だと感じているのかな、というのが次の疑問として抱きました。

2026年11月2日月曜日

デジタルツールの実装

 Lambooij AC, van der Worp H, van Noort E, et al. Implementation of an evidence-based app to improve healthcare for female urinary incontinence: identification of implementation strategies using the consolidated framework for implementation research-expert recommendations for implementation change matching tool. Fam Pract. 2026;43(6):cmag082. doi:10.1093/fampra/cmag082.


背景

女性の尿失禁は女性の約3人に1人に影響を及ぼしており、十分でない対応がなされていることも多い。アプリを用いた治療法であるURinControlは、費用対効果が高いことが示されている。しかし、オランダのプライマリ・ケアにおける導入は限定的である。本研究の目的は、導入における主要な障壁を明らかにし、プライマリ・ケアの現場でURinControlの利用を促進するための実施戦略を開発することである。


方法

オランダの家庭医、地域薬局の薬剤師、および診療所または地域薬局で働く支援スタッフを対象に、横断的質問紙調査を実施した。実施上の障壁は、実装研究のための統合フレームワーク(CFIR)を用いて特定した。実施戦略の候補は、CFIRと実装変更に関する専門家推奨(ERIC)を組み合わせたマッチングツールを用いて選定した。


結果

合計174人の医療従事者が質問紙に回答した。家庭医と薬局の双方に共通する主な障壁として、アプリの相対的な優位性に対する疑問、尿失禁およびアプリに関する知識不足、組織上の制約、患者のデジタルスキルの不足が挙げられた。薬局では、尿失禁について話し合う機会が限られていることや、費用負担に関する懸念も追加の障壁として認められた。これらの結果に基づき、5つの実施戦略が開発された。


解釈

尿失禁に対するエビデンスに基づくデジタルアプリをプライマリ・ケアに効果的に導入するには、医療従事者の認知度や知識を高め、支援体制を整えるとともに、デジタルヘルスツールを日常診療に構造的に組み込む必要がある。また、eHealthの受容を促進するための、より広範な政策的・社会的変化も求められる。さらに、本研究では、特定された障壁を、理論に基づく5つの個別化された実施戦略に変換した。これらは、医療従事者への教育、患者の参加促進、診療ワークフローへの統合、費用負担への対応、そしてオランダ全土の日常診療における家庭医療診療所と地域薬局の連携を対象としている。


感想

デジタルツールの実装に関する研究。今時だなとも思いますし、どのようにしたら実施できるかを検討することはとても大事だと思います。

2026年11月1日日曜日

ACP、ホスピスと主介護者との関係

 Dong Y, Lum HD. Caregiving relationships, advance care planning, and hospice use in later life. J Am Geriatr Soc. 2026 Oct 19. doi:10.1111/jgs.70791.


背景

高齢期において、主たる介護者との関係性が、ホスピスの利用やアドバンス・ケア・プランニング(ACP)と関連しているかどうかについては、ほとんど明らかになっていない。本研究では、主たる介護者との関係性によって、ホスピスの利用およびACPにどのような違いがあるかを検討した。


方法

Gateway Harmonized Health and Retirement Studyの終末期データを用い、第12波以降のデータを分析対象とした。対象者は、60歳以上で死亡した3,952人であった。

介護者のカテゴリーは、主たる介護者の関係性に基づき、配偶者・パートナー、子ども・孫、その他の親族、親族以外のインフォーマルな介護者に分類した。これらに加えて、フォーマルな介護サービスのみを利用している場合、および特定の介護者が確認されない場合も、独立したカテゴリーとして設定した。

ホスピス利用については多変量ロジスティック回帰分析を用いて推定した。また、4つのインフォーマルな主介護者カテゴリー間の全体的な差を共同Wald検定によって評価し、ACPを介した間接的な関連については、確率尺度による分解分析を行った。


結果

インフォーマルな主介護者が特定されていた死亡者において、ホスピス利用には、介護者との関係性による全体的な差は認められなかった。

配偶者・パートナーが主介護者である場合と比較すると、介護者が特定されていない場合(OR 0.46)、およびフォーマルな介護サービスのみを利用していた場合(OR 0.62)には、ホスピス利用が少なかった。

一方、子ども・孫が主介護者であることは、ACPが行われる確率の3.87パーセントポイントの上昇と関連していた。ただし、子ども・孫が主介護者であることとホスピス利用との関連において、ACPを介した間接的な関連は小さく、0.39パーセントポイントであった。


結論

ホスピス利用は、特定のインフォーマルな主介護者との関係性に集中しているわけではなかった。一方、ACPについては、介護者との関係性による違いがより明確に認められた。これらの結果は、事前のケア計画と、最終的なサービス利用との間には違いがあることを示している。また、介護者との続柄だけでなく、介護者の存在や、より広い介護を取り巻く状況を考慮することの重要性を示唆している。


Key points

インフォーマルな主介護者が特定されている高齢死亡者では、配偶者・パートナー、子ども・孫、その他の親族、親族以外の介護者という4つのカテゴリー間で、ホスピス利用に全体的な差は認められなかった。

子ども・孫が主介護者であることは、ACPの実施率の高さと関連していたが、ホスピス利用の増加とは関連していなかった。このことは、ケアの事前計画と最終的なサービス利用との間に違いがあることを示している。

介護者との関係性は、最終的に誰がホスピスを利用するかを区別するよりも、終末期のケア計画がどのように行われるかを理解するうえで、より有用な情報となる可能性がある。


感想

続柄だけから介護支援の有無を推測するのではなく、誰が介護に関わっているのかを具体的に把握する方が良い、ということかなと思い亜mした。

2026年10月31日土曜日

誤嚥性肺炎予防のための入院時スクリーニングプロトコル

 Yamauchi T, Ikebuchi M, Toyoda H,  et al. Admission dysphagia screening and hospital-acquired aspiration pneumonia in general wards: a retrospective cohort study. J Gen Intern Med. 2026 Oct 26. doi:10.1007/s11606-026-10770-3.


背景

高齢化に伴い、誤嚥性肺炎の発生率は増加している。誤嚥性肺炎は予防できる可能性があるため、入院時に系統的な嚥下評価を行うことで、誤嚥性肺炎のリスクが高い患者を特定できる可能性がある。当院では一般病棟において、看護師主導の嚥下障害スクリーニングプロトコルを導入した。このプロトコルでは、摂食評価ツール10(EAT-10)に続いて、反復唾液嚥下テスト(RSST)および食事場面の観察を実施する。


目的

入院時の嚥下障害スクリーニングと、入院後に発症する誤嚥性肺炎(HA-AP)の発生率との関連を評価すること。


研究デザイン

後ろ向きコホート研究。


対象

2022年3月から2023年2月までに一般病棟へ入院した成人患者12,374人。内訳は、プロトコル遵守群10,947人、非遵守群1,427人であった。


主要評価項目・測定方法

HA-APは、まず、日本の通常診療において診療報酬請求目的で記録されたICD-10コードJ69.0~J69.9に基づいて特定した。その後、特定されたすべての症例について、研究者が診療録を確認し、該当することを検証した。年齢、性別、BMI、嚥下障害に関連する併存疾患、悪性腫瘍、手術、内視鏡処置、放射線治療、化学療法、および入院月で調整した上で、修正ポアソン回帰分析を用いてリスク比(RR)を推定した。


主な結果

HA-APの発生率は、プロトコル遵守群で非遵守群よりも低かった(0.8%対2.1%)。脳血管疾患、認知症、呼吸器疾患は、HA-APの発生率上昇と関連していた。多変量調整後も、プロトコルの遵守はHA-APリスクの低下と独立して関連していた(RR 0.424、95%信頼区間 0.272–0.663、p<0.001)。このリスク低下との関連は、疾患カテゴリー全般で認められ、特に悪性腫瘍を有していない患者および手術を受けた患者で顕著であった。


結論

一般病棟において、入院時の嚥下障害スクリーニングプロトコルを遵守することは、入院後誤嚥性肺炎のリスクが有意に低いことと関連していた。入院時に系統的な嚥下評価を実施することは、入院後誤嚥性肺炎の予防を目的とした取り組みの有用な構成要素となる可能性がある。


感想

具体的なスクリーニングは以下の三段階だそうです。

  1. EAT-10(摂食評価ツール10):入院時に質問紙を用いて嚥下障害のリスクを評価する。
  2. RSST(反復唾液嚥下テスト)
  3. 食事場面の観察:実際の食事中の様子を観察し、嚥下障害の徴候を確認する。


実際の体制としては

  • 看護師主導で実施する。
  • 入院後24時間以内にスクリーニングを完了する。
  • 結果に基づいて嚥下リスクを判定し、必要に応じて専門職への紹介や適切な対応につなげる。
  • 多職種間の情報共有や食事場面の継続的な観察も、想定される重要な要素である。


著者らは、スクリーニングによる早期リスク把握に加え、以下のような一連のケアプロセスが効果に寄与した可能性を指摘しています。

  • 多職種間の情報共有
  • 食事場面の注意深い観察
  • 必要な専門職への迅速な紹介
  • 患者の状態に応じた適切な管理


単にスクリーニングしたから効果が出たというものではないのでしょう。しっかりと多職種連携してリソース割いてやらないといけないのでしょう。

2026年10月30日金曜日

認知症患者の不安・抑うつ

 Nimmons D, Aboughdir M, Walters K, Cooper C, Renukanthan A, Chew-Graham CA, et al. Identification of anxiety and depression in community-dwelling people with dementia: a multiperspective qualitative study. Br J Gen Pract. 2026 Oct 26. doi:10.3399/BJGP.2025.0639.


背景

認知症のある人では不安や抑うつの症状がよくみられる。しかし、これらの症状をほかの症状と区別することは難しく、見逃されたり、適切に認識されなかったりすることがある。


目的

地域で生活する認知症のある人において、不安や抑うつの症状がどのように認識され、理解されているのかについて、本人、介護者、医療・福祉専門職それぞれの視点から明らかにすること。


研究デザイン・対象

英国の地域で生活する認知症のある人のうち、不安や抑うつを経験している人、その介護者、およびプライマリ・ケアに従事する医療・福祉専門職を対象とした質的研究。


方法

56人の参加者を対象に、対面、電話、ビデオ通話による半構造化インタビューおよびグループインタビューを実施した。インタビューを録音・文字起こしし、リフレクシブ・テーマ分析によってデータを分析した。


結果

2つのテーマと6つのサブテーマが抽出された。

第1のテーマは「認識と診断に影響する要因」であった。不安や抑うつ、認知機能障害の症状には類似性があり、これによって認知症の診断が遅れる可能性があると、すべての参加者群が考えていた。医療・福祉専門職と介護者は、認知症が進行するにつれて生じる行動や感情反応の経時的な変化が、不安や抑うつの認識に役立つと考えていた。

医療・福祉専門職と介護者は、不安や抑うつの症状を認知症そのものに起因すると捉えることが多かった。しかし、ほかの併存疾患も症状に影響する可能性があるため、別の原因についても検討する必要がある。すべての参加者群が、性格などの状況的要因によって、不安や抑うつの現れ方が異なる可能性を指摘した。

第2のテーマは「援助を求めることへのスティグマ」であった。すべての参加者群が、文化的背景(民族性など)、症状の否認、症状を隠すことなどが、援助を求める行動に影響すると考えていた。


結論

認知症のある人における不安や抑うつの認識は複雑である。行動の変化、併存疾患、文化的背景、スティグマなどの要因を考慮することで、症状をより適切に認識できる可能性がある。


感想

N集めて労作だなと思う一方で、結果は何一つ新しいことがなく、つまらない研究だなと思ってしまいました。

2026年10月29日木曜日

高齢者施設での排便管理の困難

 Fukuyama Y, Furushima C, Ito S, Akiyama A. Factors associated with care workers' perceived difficulty in collaborating with nurses on bowel care in dementia group homes: A nationwide survey in Japan. J Gen Fam Med. Published online October 14, 2026. doi:10.1002/jgf2.70189.


背景

本探索的研究は、日本の認知症高齢者グループホームにおいて、排便ケアに関する看護師との協働について、介護職員が感じる困難と関連する要因を明らかにすることを目的とした。


方法

2025年7月から10月にかけて、全国横断調査を実施した。国の公開データに掲載された14,202施設のうち、層化無作為抽出法により2,000施設に質問票を郵送した。437件(回収率21.9%)の回答のうち、介護職員からの423件を解析対象とした。

協働の困難感は0〜10点の数値評価尺度で測定し、6〜10点を「困難あり」、0〜5点を「困難なし」と二分した。群間比較と多変量二項ロジスティック回帰分析を実施した。共変量の欠測値は多重代入法で補完した。また、困難感を連続変数として扱う感度分析を行った。


結果

評価項目に有効な回答があった417人のうち、182人(43.6%)が困難を感じていた。困難感と有意に関連する要因は4つあった。

年齢が高いこと(調整オッズ比[aOR]=1.044、95%信頼区間[CI]:1.020–1.069)、腹部を温めることの重要性を強く信じていること(aOR=1.222、95% CI:1.077–1.386)、排便に関する懸念をいつ看護師に報告すべきかについて不確かさが大きいこと(aOR=1.282、95% CI:1.175–1.398)は、困難感が高いことと関連していた。

一方、介護経験が長いこと(aOR=0.939、95% CI:0.906–0.973)は、困難感が高いことと関連するオッズの低下に関連していた。感度分析でも同様の結果が得られた。


結論

看護師との協働に関する困難感は、年齢が高いこと、介護経験が短いこと、看護師に相談する適切なタイミングがわからないことと関連していた。介護職員がどのような場合に看護師の助言を求めるべきかを明確にすることで、排便ケアにおけるより効果的な協働を支援できる可能性がある。


感想

排便の管理は難しいですよね。本文でも温罨法との関連の原因についてはよくわからないとあります。温罨法に拘泥するとうまくいかないのでしょうか。

2026年10月28日水曜日

脊椎関節症(AFP)

 Kim AR, Van Weezep J, Silva TW. Spondyloarthropathies. Am Fam Physician. 2026;114(3):262-270.


脊椎関節症は、強直性脊椎炎、反応性関節炎、炎症性腸疾患に伴う関節炎、乾癬性関節炎、分類不能の脊椎関節症などを含む炎症性疾患群である。それぞれの病型では、脊椎などの体軸に関わる症状と末梢の症状の両方がみられることがある。これらの疾患には、共通する遺伝的素因や臨床所見があり、炎症性腰痛、末梢関節炎、指趾炎、付着部炎などが含まれる。そのほか、眼病変、皮膚・粘膜病変、炎症性腸疾患を伴うこともある。診断は主に病歴と身体診察に基づいて行うが、画像検査やHLA-B27遺伝子検査も実施する。治療は病型によって異なり、通常は非ステロイド性抗炎症薬、理学療法、生物学的製剤(腫瘍壊死因子阻害薬など)を組み合わせて行う。家庭医の役割は、初期の徴候や症状を認識して適切な治療を開始し、患者の生活の質を高めるとともに、疾患の進行を最小限に抑えることである。


感想

この前疑い事例があったので、ちょうどよかったので読みました。


  • 診断の基本は、病歴、身体診察、画像所見の組み合わせ。単独で確定診断できる特異的な検査はない。
  • 45歳未満で発症した慢性腰痛、運動による改善、安静で改善しない痛み、夜間痛、30分以上の朝のこわばりなどは、体軸性脊椎関節症を疑う手がかりとなる。
  • 単純X線検査を行う。X線検査が正常でも疑いが強い場合は、仙腸関節のMRIを検討する。
  • HLA-B27検査は診断を支持するが、陽性だけで疾患とは診断できない。赤沈やCRPも補助的な指標であり、正常値でも疾患を否定できない。
  • 関節症状だけでなく、乾癬、爪病変、ぶどう膜炎、消化器症状、先行感染などを系統的に確認する。
  • 診断までに時間がかかることがあり、体軸性脊椎関節症では症状出現から診断まで平均約7年と報告されている。


今まで通りの疑い方でいいのかなと確認できました。