Burrell A, Booker M. GP roles in emergency ambulance services in the UK: a qualitative realist study. Br J Gen Pract. 2026 Nov 2. doi:10.3399/BJGP.2026.0105.
背景
救急医療サービスへの需要は増加している。救急搬送サービス(Emergency Ambulance Services:EAS)に家庭医を活用することは、救急外来への回避可能な搬送を減らし、緊急度の高い患者への対応に救急車を確保するうえで有効である可能性がある。しかし、英国における救急搬送サービスでの家庭医の役割や活動モデルに関するエビデンスは限られている。
目的
救急搬送サービスにおける家庭医の現在の配置・活動状況を記述し、その役割を説明する暫定的な理論モデルを構築することを目的とした。
研究デザインとセッティング
英国全土において、救急搬送サービスで働く家庭医について詳細な知識や経験を有する専門職を対象とした、質的リアリスト・インタビュー研究である。
方法
救急搬送サービスを運営する各組織の研究開発チームを通じて、研究参加候補者を特定し、参加を依頼した。研究チームが質問項目を作成し、試行したうえで改良した半構造化インタビューを実施した。27人の参加者にオンラインでインタビューを行った。データ分析にはリアリスト・アプローチを採用し、救急搬送サービスにおける家庭医の役割が、どのような状況で、どのようなメカニズムを通じて、意図された成果を生み出すのかを検討した。
結果
家庭医の主な役割は、最初にアルゴリズムに基づくトリアージが行われた後、より高度な遠隔患者評価を実施し、最も適切なレベルの医療につなげることであった。個々の患者に対する臨床的対応を最適化するだけでなく、緊急度の高い患者に迅速に対応できるよう、救急搬送資源を確保するという医療システム全体に関わる役割も果たしていた。家庭医によるトリアージの背景にあるメカニズムについては、既存の中範囲理論(における「リスクの個別化」という概念を用いて検討した。これは、組織として許容するリスクの考え方を、個々の患者への対応に反映させるプロセスである。このプロセスによって、救急搬送サービスは、より「踏み込んだ」判断を行うことが可能になる。具体的には、救急搬送を行わない判断、救急搬送以外の代替手段を選択する判断、あるいは緊急度の低い対応を選択する判断などである。家庭医がこうした判断を効果的に行える理由として、経験豊富な医師としての立場、幅広い臨床知識と経験、リスクや不確実性に対する対応力、ガイドラインの範囲を超えて柔軟に診療する能力、診察・コミュニケーション能力、そして医療システム全体への理解が挙げられた。
結論
救急搬送サービスにおける家庭医は、組織としてのリスク管理や資源管理の方針を個々の患者に応じて調整することによって、患者個人と医療システム全体の双方に貢献している。
How this fits in
救急搬送サービスへの需要は増加し続けており、その多くは家庭医によって対応できる可能性がある。救急搬送サービスに家庭医を活用することで、回避可能な救急外来への搬送を減らし、地域で患者に対応することが可能になる。現在、英国では5つの救急搬送サービスが家庭医を配置しており、個々の患者に最も適切な医療を提供すると同時に、救急搬送資源を確保するという2つの目的を担っている。家庭医は、組織としてのリスクの考え方を個々の患者の状況に応じて調整することによって、この役割を果たすことができる。その結果、救急搬送サービスは、より踏み込んだ判断を行うことが可能になる。
感想
英国の制度の勉強にもなりましたが、家庭医が救急、特に適正な医療資源配分とdispositionに役割を発揮できるというのは、日本でもコンテクストは異なりますがそうだろうなとは思います。病院家庭医は日常的にER業務をしていると思いますが、診療所家庭医が救急に関わるような体制づくりはもっと求められるのではないかと思っています。