2026年8月29日土曜日

電子タバコをどう考える?

 Vasooja D, Peters K, Wasan D, Najafi E, Warnapala M, Baker Y, et al. GPs' perspectives on assessing adolescent vaping among individuals without prior smoking history: a qualitative study within primary care. BJGP Open. 2025 Nov 19;BJGPO.2025.0207. doi:10.3399/BJGPO.2025.0207. 

https://bjgpopen.org/content/early/2026/08/24/BJGPO.2025.0207


背景

 現在、喫煙経験のない青年や若年成人の間でも、電子タバコを使用する人が増えている。GPは、電子タバコ使用について適切にスクリーニングし、助言を行う必要がある。電子タバコの使用は、ニコチン依存、呼吸器症状、心血管系への影響と関連している。長期的なデータが限られていることから、長期間使用する人に対するリスクや不確実性はさらに大きくなっている。青年・若年成人の電子タバコ使用者に対するGPの助言を導くエビデンスは、日常診療において依然として乏しい。

目的

 電子タバコ使用の流行への対応について、GPがどのように考えているか、どの程度準備ができているか、どのような課題を抱えているか、また個人レベルおよび国レベルでどのような改善が可能かを明らかにすること。

研究デザイン・セッティング

 英国のGPを対象とした半構造化インタビューによる質的研究。

方法

 英国全土のPrimary Care Networks(PCN)を通じて、半構造化インタビューへの参加を募集した。英国のGPの人口統計学的特徴を反映するようpurposive samplingを用いて参加者を選定した。インタビューは2024年4~5月に英国各地で実施し、11人(n=11)でデータ飽和に達した。インタビューは逐語録を作成してNVivo 10に取り込み、Gioia法を用いてテーマ分析を行った。 

結果

 4つの統合的次元、11の二次テーマ、29の一次概念が抽出された。変化を促す要因として、若者の電子タバコ使用に対する懸念の高まりが中心となっていた。一方、現在の診療では、知識が限られており、患者への助言にもばらつきがみられた。障壁として、ガイダンス、利用可能なサービス、診療時間の不足が挙げられた。改善策としては、教育の充実、デジタルツールの活用、関係者の関与が重視された。 

結論

 本研究の結果は、青年および若年成人の非喫煙者における電子タバコ使用の増加に対応するため、早急な介入が必要であることを示している。一部のGPは診療を改善しようという意欲を持っている一方、現在得られているエビデンスが限られ、内容も一貫していないため、不確実性を感じているGPもいる。効果的な解決策には、プライマリ・ケアだけでなく、他の医療専門職や主要な関係者も含めた取り組みが必要である。


感想

アブストだけよめば、軽く流してしまいがちになりますが、論文じっくり読んだら面白かったです。質的解析の過程やreflexivityについてかなり詳細に記述してあります。コーディングの過程もわかりやすくsupplementalに載っています。ここまで詳しく記載した論文を今まで読んだことがなく、新たな見本とすべき論文だと思いました。

Gioia法が初見だったのでしらべました。

参加者の発言→1st-order concepts(参加者に近い概念)→2nd-order themes(研究者による解釈)→Aggregate dimensions(より抽象的な概念)という「データから理論へ」の階層構造を作る方法とのことで、日本のSCATに似てるなという印象です。

「参加者が意味づけた概念」と「研究者が理論的に解釈した概念」を明確に区別して記述するので、分析過程を比較的透明に示すことができ、新しい概念モデルや理論をデータから帰納的に構築したい場合に使えそうです。

これを使うと、各コンセプトがどれだけ生み出されているかを数えることもできるので、データの飽和についてもかなり明確に示すことができます。

結論として、まだ探索されていない研究課題について、一般的で包括的な結論を得たい場合には有用だなと思いました。私が使うかどうかは…私のRQとは合わないことが多いようなきがしています。ちょうど合致するRQを思いついたときに使いたいですね。

2026年8月28日金曜日

personal continuityの測定法

 Sidaway-Lee K, Pereira Gray D, Fearn-Smith J, Buick A, Engamba S, Khan N, et al. Development of a novel GP continuity measurement for practices without personal lists. Br J Gen Pract. 2026 Apr 2;BJGP.2025.0624. doi:10.3399/BJGP.2025.0624. https://bjgp.org/content/early/2026/08/23/BJGP.2025.0624


背景

 GPによるケアの継続性を改善すべきであることは広く認識されている。そのためには、すべての診療所で利用可能な継続性の指標が必要である。しかし、これまでの指標には限界がある。

目的

 ケアの継続性を評価する、より優れた指標を開発し、既存の指標とその性能を比較すること。

研究デザイン・セッティング

 2つのGP診療所において、監査データを用いて1年間実施したパイロット研究。

方法

 修正版SLICC(modified St Leonard's Index of Continuity of Care:mSLICC)を開発し、毎月算出した。そして、St Leonard's Index of Continuity of Care(SLICC)、1年間のBice-Boxerman(BB)指標、およびUsual Provider of Care Index(UPC)と比較した。指標に含まれる患者および診療予約の割合を算出し、患者を年齢、3年間の診療予約回数、フレイルのカテゴリー別に分類した。

結果

 2つの診療所において、mSLICCには29,127件の診療予約のうち19,840件(68.1%)が含まれ、診療予約のある患者の平均65.2%(SD 6.4%)が対象となった。UPC/BBでは21,032件(72.2%)の診療予約と、診療予約のある9,924人の患者のうち4,096人(41.2%)が対象となった。

診療所Aでは、mSLICCは52.0%、SLICCは57.1%、平均UPCは0.63(95% CI 0.62–0.64)、平均BBは0.41(95% CI 0.40–0.43)であった。診療所Bでは、mSLICCは25.7%、SLICCは25.1%、平均UPCは0.50(95% CI 0.49–0.51)、平均BBは0.23(95% CI 0.22–0.25)であった。mSLICCはSLICCと強く相関していた(r=0.98、P<0.001)。

結論

 mSLICCは、ケアの継続性を毎月評価するための新しい指標である。BBやUPCと比較して限界が少なく、特定の担当GP(named GP)を必要としない。十分なITリソースがあれば、担当GPの個人リスト制(personal lists)を採用していない診療所でも、mSLICCを用いてケアの継続性を測定することが可能である。


感想

新たな継続性の指標を提案している論文です。

SLICCは、特定のかかりつけ医との継続性を測る指標です。ある患者がGPを10回受診したとして、何回「特定の個人のかかりつけ医」を受診したかを算出します。非常にわかりやすいですが、担当GP制がない診療所では使いにくいという課題がありました。

mSLICCは、過去2年間に最も多く診察したGPを実質的な担当GPとみなすことで、この課題を解決しようとしました。そして、相関がかなり高かったということで筆者たちはこの測定が妥当であると主張しています。

なお、UPCは、患者の受診のうち、最も多く診察した医師を受診した割合を示す指標で、BBは、患者の全受診回数と、各医師への受診回数の分布から継続性を評価する指標です。


研究を行った2つの診療所は担当GP制であり、それならSLICCとmSLICCがほぼ一致するのは当たり前では?という気がしました。まあでも、personal continuityを測定しようと思ったらいずれにせよこういう算出法になるわけで、研究対象を広げることができるという意味で価値があるのだと思います。家庭医療の基礎研究ですね。ほかのcontinuityについては、それぞれ測定指標があるのだろうと思います。

2026年8月27日木曜日

手の変形性関節炎

 Kaya O, van Baalen E, Strijkers R, Kloppenburg M, Selles R, Bierma-Zeinstra S, et al. Patients' perceptions of hand osteoarthritis care in Dutch general practice. Br J Gen Pract. 2026 Aug 25. doi:10.3399/BJGP.2025.0768. https://bjgp.org/content/early/2026/08/25/BJGP.2025.0768


背景

手の変形性関節症(osteoarthritis: OA)は、OAの中で2番目に頻度の高い病型であり、しばしば疼痛、機能低下、生活の質(QOL)の低下を伴う。その有病率の高さにもかかわらず、手のOA患者は、この疾患が通常管理されるプライマリ・ケアにおいて、満たされていないニーズがあることをしばしば訴えている。


目的

 プライマリ・ケアにおける手のOAの管理について患者の視点を明らかにし、ケアに対する主要な障壁および促進要因を特定すること。


研究デザイン・セッティング

 オランダの手のOA患者を対象とした半構造化インタビューに基づく質的研究。


方法

 フレームワークに基づくインタビューガイドを用いて、16人の患者に半構造化インタビューを実施した。患者はpurposive samplingによって募集した。テーマ分析により主要なテーマを特定した。さらに、51人の患者が回答した追跡質問票を用いて、回答者による妥当性確認(respondent validation)を行った。


結果

 7つの障壁と3つの促進要因が明らかになった。GPによる指導の質、手のOAに関する情報や説明の提供状況、治療の有効性に対する認識は、それらが不十分な場合には障壁となり、十分な場合には促進要因となることが示された。その他の障壁として、手のOAに対する意欲を削ぐような態度、医療提供者間の連携不足、利用できる治療選択肢が限られているという認識、そして患者自身が特定の治療を受けることに消極的であることが挙げられた。


結論

 手のOA患者は、プライマリ・ケアにおいて複数の障壁に直面しており、その多くはGPによるコミュニケーション、支援、医療提供者間の調整に関連している。患者は、積極的に関与し、日常生活の中で自分の病状を管理するための実践的な手段や指導を提供してくれるGPを求めている。GPがこの役割を果たせるようにするためには、研修の充実、より明確な臨床ガイドライン、そして利用しやすい患者教育資料が必要である。これらの取り組みにより、より先回りした患者中心のケアが可能となり、手のOA患者のアウトカム改善につながる可能性がある。


感想

BJGPはこの手の、common diseaseのプライマリ・ケア管理に関する患者(または医療者)の視点を探る質的研究をたくさん採用するんですよね。着眼点が鋭い論文は大変に面白いのですが、この研究に関しては結果が総花的で、薄味になっている印象です。自分なら何をテーマにするかなぁ。ACNESを診断することが多いので、ACNESの確定診断を付けた患者に協力してもらうかなあ。人数集まるかなぁ。あと、ぱっと思いつくのはリブレですけど、先行研究ありそうなんですよね。

2026年8月26日水曜日

プライマリ・ケアでのCKD管理

 Veighey K, Teasdale E, Myall M, Henaghan-Sykes K, Blakeman T, Ibrahim K, Raut B, Everitt H, Fraser SDS. Understanding risk stratification of chronic kidney disease: a qualitative study in primary care. Br J Gen Pract. 2026 Aug 24. doi:10.3399/BJGP.2025.0802.https://bjgp.org/content/early/2026/08/23/BJGP.2025.0802


背景

慢性腎臓病(chronic kidney disease: CKD)は、英国イングランドの成人のおよそ10%にみられる。このうち約1%が腎不全へ進行し、健康関連QOLに大きな影響を及ぼすとともに、医療費の増大にもつながっている。CKDは心血管疾患リスクの上昇とも関連している。近年、CKD患者の転帰を改善する新たな治療法が登場しており、効果的なリスク層別化の必要性が高まっている。


目的

プライマリ・ケアチームがCKDのリスク層別化についてどのように考え、どのような経験をしているのかを明らかにする。


研究デザイン・実施施設

イングランド南部、南ロンドン、ヨークシャーのGP診療所を対象とした質的インタビューおよびフォーカスグループ研究。


方法

2024年1月から2025年1月にかけて、20の診療所を対象に、GP、薬剤師、診療看護師に対する半構造化インタビュー26件と、診療チームを対象としたフォーカスグループ4回(参加者31名)を実施した。フォーカスグループには、臨床スタッフだけでなく、事務職員やマネジメントスタッフも参加した。研究はNormalisation Process Theory(NPT:実践の定着・標準化を説明する理論)を踏まえて実施し、テーマ分析を用いてデータを分析した。


結果

以下の4つの主要なテーマが明らかになった。

診断基準およびリスク層別化ツールに関する認識

CKDのコーディング(電子カルテ等への診断情報の登録)とリスクについて話し合うことの価値

CKDのリスク層別化を妨げる障壁

CKDのリスク層別化を改善するための方法

診断基準については、すべての参加者が認識していた一方、リスク層別化ツールについての認識は低かった。CKDを電子カルテ等にコーディングすることは、医療専門職にとっては有用であると認識されていたが、患者にとっての有用性は低いと考えられていた。また、リスクについて患者と話し合うことにより、患者の不安を増大させたり、過剰な医療化(overmedicalisation)につながったりする可能性が懸念されていた。さらに、時間的制約や業務量の多さ、インセンティブの不足が、CKDのリスク層別化を妨げる主要な障壁として認識されていた。

改善策として、医療専門職への教育の充実、ガイドラインの整備、診療経路(pathway)の改善、テクノロジーや自動化の活用などが挙げられた。


結論

プライマリ・ケアにおけるCKDへの認識は高いものの、業務量の多さ、時間的制約、患者の不安や過剰な医療化への懸念が、十分なリスク層別化の実施を妨げている可能性がある。診療プロセスを改善するとともに、患者との効果的なコミュニケーションを促進することによって、CKDのケアを改善できる可能性がある。


感想

確かにそうだなーという印象で、肌感覚を説明してくれています。Cre値ここ数年動いていないし、敢えてこれを取り上げても患者の不安をかきたてるだけだろうし、これでSGLT-2I入れるのはさすがにovermedicalisationだよなー、とかよく思います。適切なケースには導入しているつもりですが。

2026年8月25日火曜日

発育阻害とケアラーの知識

 Rachmawati R,  Nazarina, Setyawati B, et al. Bridging the knowledge divide: a national cross-sectional analysis of urban-rural disparities in the stunting knowledge index among mothers/caregivers in Indonesia. Korean J Fam Med.2026 https://kjfm.or.kr/journal/view.php?number=4902


背景

インドネシアでは、発育阻害による深刻な公衆衛生危機が続いている。母親の知識は、栄養習慣と結果の重要な推進力である。本研究は、母親/介護者の発育阻害知識指数(SKI)を開発し、都市部と農村部の知識の格差を分析し、これらの格差を引き起こす主要な決定要因を特定することを目的とした。


方法

この横断研究では、294,538人の母親と介護者を対象とした2024年インドネシア栄養状態調査のデータポイントを分析した。発育阻害に関する知識、社会人口統計学的特性、母親と介護者の特性、子供の特性、居住地域、および母親の健康知識と利用に関連する変数に関するデータは、母親へのインタビューを通じて収集された。年齢別身長Zスコア(HAZ)は、年齢と身長の測定値を使用して計算された。知識レベルは、低、中、高に分類された構築されたSKIを使用して測定された。カイ二乗検定と多変量ロジスティック回帰を用いて、低SKIの予測因子と発育阻害のリスクを特定した。


結果

低SKIスコアの有病率は農村部で有意に高く、両地域において母親の教育が低SKIスコアの最も強い決定因子であった。農村部では、正式な保健情報へのアクセスが限られていること(例:母子保健手帳がない)が主な予測因子であった。低SKIは発育阻害リスクのオッズ上昇と関連していた(都市部:調整オッズ比[aOR]、1.617;農村部:aOR、1.576)が、発育阻害の長期的な影響に対する高い認識は有意な保護効果をもたらした。


結論

都市部と農村部の知識格差は、教育水準が低く保健サービスの利用が限られている介護者に集中していた。介入は地域に合わせて調整し、教育水準の低い介護者を対象とし、発育阻害の長期的な影響を強調して予防行動を促進する必要がある。


感想

SKIを開発したとありますが、筆者たちが文献をもとに作成したものだそうです。こういう知識を測定する質問紙ってどうやってvalidateするものなのか気になったので勉強してみました。

あくまで一例ですが…

・内容妥当性:専門家パネルに、各質問の関連性、包括性、明快さなどを判断(content validity indexなどを算出したり)

・インタビュー:対象者10~20人程度にthink-aloudやcognitive interviewを行う

・パイロット研究:各項目について、難易度、弁別性、天井効果、分布などを確認 ITTなど

・Known-groups validity:専門家や一般人など異なる集団での比較

・Test-retest:ICCなどで再現性を確認

・可能なら外的妥当性の確認

という感じなのですね。大変だ…

2026年8月24日月曜日

片頭痛の診断と治療

 Watson DP, Pawinski R, Czachorowski M, Araghi M, Williams AM, Randall R, Camidge L, Rottier E, Gowman H, Law S, O'Neil G. Diagnosis and management of migraine in adults: a population-based study in England. BJGP Open. 2026 Aug 11:BJGPO.2025.0143. https://bjgpopen.org/content/early/2026/08/09/BJGPO.2025.0143


背景

これまでの研究では、片頭痛はプライマリケアにおいて診断不足および治療不足であることが明らかになっている。


目的

イングランドにおける片頭痛患者の診断および治療パターンを明らかにすること。


デザインとセッティング

臨床診療研究データリンク(CPRD)Aurumと2019年多重剥奪指数データセットをリンクさせた後向きコホート研究。


方法

本研究の対象集団は、2012年9月から2023年5月(指標イベント)までに18歳以上で片頭痛のため家庭医診療所を受診した患者とした。指標イベントから12か月後に処方された薬剤を、社会人口統計学的層別化(年齢、性別、民族、貧困度)ごとに比較した。薬剤の過剰処方は、3か月連続で10日分以上(オピオイドおよびトリプタン)または15日分以上(鎮痛剤、解熱剤、非ステロイド性抗炎症薬[NSAID])の供給と定義した。


結果

合計で、イングランドのプライマリケアを受診した頭痛または片頭痛の患者1,534,807人が観察された。このうち、876,233人(57.1%)は未分化または分類不能の頭痛とコード化され、606,928人(39.5%)は一次性頭痛障害とコード化された。一次性頭痛障害の中で最も多くコード化されたのは片頭痛で、成人476,191人(78.5%)が、その後の分析に使用された最終サンプルを構成した。片頭痛コホートのうち、予防薬を処方されたのはわずか36.5%であった。処方された用量に関して、アミトリプチリンを処方された人の17.9%、プロプラノロールを処方された人の31.3%、トピラマートを処方された人の31.2%が、スコットランド大学間ガイドラインネットワーク(SIGN)155および国立医療技術評価機構(NICE)臨床知識要約(CKS)の推奨用量に達していた。片頭痛患者全体の62.6%に急性期治療薬が処方されており、内訳はトリプタンが36.6%、オピオイドが9.6%であった。薬剤の過剰使用の可能性については、国際頭痛分類第3版(ICHD-3)の定義に基づくと、トリプタン使用者の23.6%、オピオイド使用者の44.3%に薬剤の過剰処方が見られた。


結論

プライマリケアを受診する頭痛の大部分は、鑑別診断がつかないか分類されないままである。片頭痛と診断された患者のうち、トリプタン製剤または予防薬を処方されるのは約3分の1に過ぎない。急性期治療薬の過剰処方はよく見られ、予防薬の最適化は不十分である。


感想

プライマリ・ケアでは片頭痛患者に予防薬を出すことはそこまでなくてもいいような… アセトアミノフェンやロキソニンで対応可能ならそれに越したことはないと思っています。ただ、急性期の鎮痛薬が過剰処方されているというのは確かに問題です。診断はなるべくつけるようにはしていますが、分類不能が一定いるのは仕方ないことだとは思います。

2026年8月22日土曜日

入院患者の鎮静剤処方

 Burry LD, Rose L, Pinto R, Williamson DR, Hill A, Scales D, Bronskill SE, Fowler R, Dolovich L, Fu L, Bell CM, Wunsch H. Association between sedative prescriptions after hospital discharge and falls and other adverse events in older adults: a population-based cohort study. CMAJ. 2026 Jun 28;198(25):E958-E968. doi: 10.1503/cmaj.251965. PMID: 42373114; PMCID: PMC13309139.


背景:入院後の鎮静剤処方が患者の予後不良と関連しているかどうかは不明である。本研究では、高齢者における退院後30日以内の鎮静剤に関連する有害事象の発生率とリスクを明らかにすることを目的とした。


方法:オンタリオ州の病院から生存退院した高齢者(66歳以上)を対象とした集団ベースのコホート研究を実施した(2003年から2023年)。退院後7日以内に処方された鎮静剤(ベンゾジアゼピン、抗うつ鎮静剤、または抗精神病薬)と転倒(骨折の有無を問わず)、救急外来(ED)受診、および再入院との関連性を評価した。退院後に処方された鎮静剤とアウトカムとの関連性を評価するために、死亡以外の結果については原因別比例ハザード回帰、死亡についてはCox比例ハザードモデルを使用した。入院前の鎮静剤処方との相互作用があったため、入院前の鎮静剤未投与状態と投与済み状態に基づいて結果を層別化した。


結果: 1,868,484人の高齢者(平均年齢77歳、女性52.1%)のうち、13.2%が退院後に鎮静剤の処方箋を受け取った。これらの患者のうち、31.0%は入院前に鎮静剤を服用したことがなかった。転倒は1.6%(n = 30,626)、救急外来受診は21.3%(n = 397,402)、再入院は12.4%(n = 231,191)、死亡は3.8%(n = 70,661)に発生した。退院後に鎮静剤の処方箋を受け取った患者(処方箋を受け取らなかった患者と比較)で、入院前に鎮静剤を服用したことがなかった患者では、すべての転帰について調整ハザード比(HR)が増加した(転倒:1.20、95%信頼区間[CI] 1.13~1.26、救急外来受診:1.20、95% CI 1.19~1.22、再入院:1.20、95% CI 1.17~1.22、死亡:1.78、95% CI 1.73~1.83)。入院前に鎮静剤に曝露された患者では、死亡のリスクが増加したが(調整HR 1.08、95% CI 1.05~1.11)、他の転帰については増加しなかった。鎮静剤を服用したことのない高齢者においては、ベンゾジアゼピン系薬剤はあらゆる転帰のリスク増加と関連があり、抗精神病薬は転倒および死亡のリスク増加と関連があり、抗うつ鎮静剤は転倒のリスク減少と関連があった。


解釈:退院後7日以内に新たに処方された鎮静剤は、退院後30日以内の転倒、救急外来受診、入院、死亡のリスク増加と関連しており、そのリスクは鎮静剤の種類によって異なっていた。これらの知見は、カナダの高齢者に対する入院中の薬剤見直しと転倒リスク評価において重要な意味を持つ。


感想

入院中に新たにベンゾ、抗精神病薬を開始した場合、退院後も服用継続が必要なのかしっかり考えるべきであり、漫然と開始し漫然と継続してしまったら患者に明らかに害である、という解釈をしました。入院診療を行っている身としては重要なデータだと思います。