2026年9月21日月曜日

喘息の診断を家で行う

 Wang R, Lawton K, Khatoon B, Smith J, Fowler SJ, Simpson A, Murray CM. Expectations and attitudes in primary care towards home-based testing for diagnosing asthma: a mixed-methods study. BJGP Open. 2026 Sep 8. doi:10.3399/BJGPO.2025.0260. https://bjgpopen.org/content/early/2026/09/06/BJGPO.2025.0260


背景

喘息は、診療所で行われる検査では喘息症状の自然な変動性を捉えきれないことがあり、しばしば誤診される。


目的

本研究では、早期のステークホルダー・エンゲージメントの一環として、携帯型スパイロメーターおよび呼気一酸化窒素濃度(FeNO)を用いた在宅診断検査について、プライマリ・ケア医療従事者がどのように考えているかを検討した。


デザイン・セッティング

2段階のmixed-methods studyを実施した。

Phase 1では、イングランド北西部のプライマリ・ケア医療従事者を対象に2回のフォーカスグループを実施した。

Phase 2では、英国全土のプライマリ・ケア医療従事者を対象に、電子的な全国調査を実施した。


方法

フォーカスグループではnominal group technique(NGT)を用いて、在宅で喘息診断を行うための戦略について重要な優先事項を特定した。これらの結果をもとに、Phase 2の全国調査票を作成した。


結果

Phase 1のフォーカスグループには、21人のプライマリ・ケア医療従事者が参加した。在宅で喘息診断を行うことについて、利点、課題、実装を促進する要因が明らかになった。

Phase 2では、104人のプライマリ・ケア医療従事者がすべての質問への回答を完了した。回答者は幅広い人口学的背景を有し、勤務する診療所も社会経済的困窮度のさまざまなレベルにわたっていた。

在宅診断戦略が実行可能ではないと考えた回答者はわずか3.8%だった。

最も頻繁に挙げられた障壁は「デバイスの高コスト」であり、一方、「患者の参加・関与」と「デバイスへのアクセス可能性」が最も重要な促進要因として挙げられた。

また、多くの回答者が「より正確な喘息診断」を在宅診断の主要な潜在的メリットとして挙げた。


結論

携帯型スパイロメトリーとFeNOを用いた在宅での喘息診断は、調査結果からはプライマリ・ケア医療従事者に概ね好意的に受け止められている。ただし、その実装には多面的な課題が存在する。成功のためには、在宅検査をどのように提供し、支援するかについて、システムレベルでの変化が必要となる。今後は、検査の実行可能性と精度を評価し、その後、臨床的有効性および費用対効果を評価する予定である。


感想

診断の場を在宅に移行しようという取り組みだと認識しました。デバイスのアクセスが過大なのですね。そりゃそうですが。

2026年9月20日日曜日

救急対応が稀な家庭医療診療所における救急チェックリスト

Higham H, Maloney A, Greig PR, Shawcross E, Harbord P, Warren R, Thomas J. Checklists for emergencies in general practice: participatory design of a quick reference handbook. BJGP Open. 2026. doi:10.3399/BJGPO.2025.0268. https://bjgpopen.org/content/early/2026/09/06/BJGPO.2025.0268


背景
家庭医療診療所における救急対応の機会は増加している一方、診療所のスタッフが救急事態に対応する機会は数か月に一度しかないこともある。チェックリストなどの認知支援ツールは、病院内の救急医療の質を向上させることが知られているが、既存のツールは家庭医療診療所での使用には十分適していない。


目的

家庭医療診療所で遭遇する頻度の高い救急事態を明らかにし、より安全な対応のために、診療所に特化したチェックリストを共同開発すること。


デザイン・セッティング

家庭医療診療所に特化した救急チェックリストを参加型デザインによって開発し、多職種からなる家庭医療チームが実際の臨床現場でその使いやすさを評価した。


方法

多職種の専門家グループが、混合研究法による参加型アプローチを用いて、優先的に対応すべき救急事態を選定し、GP Quick Reference Handbook(GP-QRH)のためのチェックリストを作成した。29の家庭医療診療所で実施した現場シミュレーションを通じて、チェックリストの内容、レイアウト、使いやすさを反復的に改善した。


結果

最終版のGP-QRHには、15種類の臨床的救急事態に対するチェックリスト、非臨床スタッフ向けのチェックリスト1種類、構造化された申し送りテンプレート、および救急対応後のデブリーフィングのためのガイダンスが含まれた。11の家庭医療診療所で最終版を試験したところ、評価は一貫して肯定的であり、シンプルなデザイン、明確な言葉遣い、エスカレーションを促す目立つプロンプト、そしてチェックリスト使用に関するチームトレーニングの重要性が強調された。


結論

本研究では、プライマリ・ケアに特化し、実際の利用者と共同で開発した、家庭医療診療所のための初のクイック・リファレンス・ハンドブック(QRH)を開発した。その効果を発揮するためには、一貫した使用、地域レベルでのリーダーシップ、GPネットワークによる普及への取り組みが必要である。今後は、さらなるユーザビリティ評価、臨床的効果の検証、チェックリストの追加開発が必要であるが、このGP-QRHは、英国および国際的な家庭医療診療所における救急医療と患者安全を向上させる可能性がある。

感想
実際のチェックリストはこちらからアクセスできます。
チェックリスト開発のために様々なステップを経ており、同様の研究をする際の参考になると思います。

2026年9月19日土曜日

漏斗胸レビュー

 Odeh NB, Khedr AE, Zeineddine RM, Senjab A, Farina JM, Jaroszewski DE. Diagnosis and Management of Pectus Excavatum in Primary Care. J Am Board Fam Med. 2026;39(1). doi:10.3122/jabfm.2025.250122R1. https://www.jabfm.org/content/39/1/157903


漏斗胸(pectus excavatum: PE)は、胸骨が内側に陥凹する先天性胸壁変形であり、最も頻度の高い胸壁変形です。重症例では心肺機能に影響し、日常生活や運動能力を低下させることがあります。にもかかわらず、漏斗胸は単なる美容上の問題であり治療を必要としないと考えられることがあります。

プライマリ・ケア医はPE患者を最初に診察することが多いため、漏斗胸の診断、評価、治療適応、専門医への紹介について理解しておくことが重要です。

漏斗胸患者の症状には大きな個人差があり、無症状の場合もあれば、軽度の労作時呼吸困難から失神まで認める場合があります。また、症状は加齢とともに進行することがあります。PEの手術後には、QOLだけでなく心肺機能も改善し得ることが報告されています。


感想

見た目の変形が強くなくても心臓圧迫から労作時呼吸困難、運動耐容能低下、胸痛、動悸、めまいなどを呈することがあるようです。心エコー正常でも全く除外できないとのこと。

大したことないと思わず、専門医に紹介すべき疾患であると認識しました。

2026年9月18日金曜日

ハイブリッド型バーチャル在宅医療

 Bravata DM, Perkins AJ, Schwartzkopf AL, Myers LJ, Zhang Y, Damush TM, et al. Evaluation of Hybrid-Virtual Home Visits for Comprehensive Geriatric Management: A Quality Improvement Project. J Gen Intern Med. 2026. doi:10.1007/s11606-026-10580-7. https://link.springer.com/article/10.1007/s11606-026-10580-7?utm_source=chatgpt.com


背景

高齢者に対する在宅訪問はアウトカムを改善することが知られている。しかし、高齢者に多い身体的・認知的・技術的な障壁や、人員不足などの施設側の制約によって、老年医学的な在宅医療プログラムの対象を拡大することには限界がある。


目的

ハイブリッド型のバーチャル在宅訪問モデル(TeleGRACE)の有効性を評価すること。


デザイン

傾向スコアによる重み付けを用いた観察コホート型の質改善(quality improvement)プロジェクト。


対象

米国退役軍人省(VA)の1施設において、入院または救急外来(ED)受診後の老年症候群を有する地域在住高齢者。


介入

患者宅にはtelehealth technicianが訪問し、看護師とソーシャルワーカーからなる老年医学チームが遠隔から参加するハイブリッド型の在宅訪問を実施した。


主な評価項目

TeleGRACEへの登録後90日および1年以内の、全死亡、ナーシングホームへの入所、再入院、救急外来受診。


主な結果

TeleGRACE群76人、通常ケア群319人を比較した。TeleGRACE群では、通常ケア群と比較して、90日以内にさまざまな臨床サービスを受ける割合が高かった。例えば、補助具の提供は78.7%対18.9%であった(p<0.001)。傾向スコアによる逆確率重み付け(IPW)解析では、1年間のナーシングホーム入所リスクはTeleGRACE群で低かった(HR 0.20、95% CI 0.07–0.53)。一方、ED受診リスクは90日(HR 1.32、95% CI 1.02–1.72)および1年(HR 1.28、95% CI 1.04–1.76)でTeleGRACE群の方が高かった。入院および死亡については、両群間に差は認められなかった。


結論

ハイリスクの地域在住高齢者に対して、ハイブリッド型の在宅訪問モデルは、ケアやアウトカムを改善する可能性がある。特にナーシングホームへの入所を減らす効果については、今後の研究による検証が必要である。


感想

この結果を受けての結論が「ケアやアウトカムを改善する可能性がある」は少し言い過ぎではないかという気がします。ただ、ED受診の回数が増えるのは、決してネガティブな結果ではないというのは、確かになぁと思うところではあります。こうやってちゃんと活動をpaperにするのは素晴らしいことだと思います。

2026年9月17日木曜日

知的/発達障害者の予防医療の不公正

 Santra R, Pulukuri S, Sharma N. Inequities in preventive care for adults with intellectual and/or developmental disability in the USA: a narrative review. J Gen Intern Med. 2026. doi:10.1007/s11606-026-10807-7. https://doi.org/10.1007/s11606-026-10807-7


40代の女性姉妹を2人とも診療しているプライマリ・ケア医を想像してみたい。1人はDown症候群があり、もう1人にはない。Down症候群のない姉妹は、国内のガイドラインに従って子宮頸がん検診(Pap smear)を定期的に受けていた。一方、Down症候群のある姉妹については、「検査に容易には耐えられないだろう」という思い込みから、検診が繰り返し延期されていた。子宮頸がんのリスクを心配した姉妹は、障害のある人への診療を専門とする婦人科クリニックに妹を連れて行った。そこでは、写真を用いた説明や、慎重に配慮した抗不安薬の使用といった簡単な工夫が行われた。その結果、妹は推奨されていた時期から20年遅れて、初めてPap smearを受けることができた。幸いにも、HPVおよび子宮頸部異形成は陰性であった。この患者レベルでの実例は、集団レベルでも広く存在する問題、すなわち知的障害および/または発達障害(intellectual and/or developmental disabilities: IDD)を持つ人々における予防医療の不平等を示している。これまでの研究から、IDDのある人々では、ワクチン接種や、乳がん・子宮頸がん・大腸がんの検診といった一次予防・二次予防の実施率が、一般人口より低いことが示されている。しかし、こうした人々が予防医療を必要とする程度は一般人口と同等、あるいはそれ以上である。実際、これらのがんでは、より進行した段階で診断され、死亡率も高いことが報告されている。本ナラティブレビューでは、米国のIDD成人における予防医療の利用格差について検討し、患者、臨床医、医療システムという3つのレベルにおける障壁について記述する。さらに、代替的なスクリーニング方法や、医療提供モデルなど、アクセスを拡大するための可能な戦略について検討する。修正可能な障壁を認識し、それらに対処することは、この集団における予防可能な罹患および死亡を減らすために不可欠である。


感想

本文の要点は以下の通り。

IDDのある成人では、ワクチン接種や乳がん・子宮頸がん・大腸がん検診などの予防医療を受ける割合が、一般人口より明らかに低い。

その結果、IDDのある人では予防可能な疾患による死亡や、より進行した段階でのがん診断が多い。乳がん・大腸がんでは、診断時に転移している割合やがん死亡率も高い。

障壁は患者側だけではない。感覚過敏、コミュニケーション困難、移動・費用・介護者の負担に加え、医療者の知識不足や「この患者には検査は難しいだろう」という思い込みが、予防医療へのアクセスを妨げている。

対策として、写真や絵を使った説明、長めの診療時間、静かな環境、鎮静など、患者に合わせた合理的配慮が重要。標準的な検査が困難な場合には、FIT、乳房超音波、スペキュラムを使わないPap smearなどの代替手段も検討できる。ただし、代替検査は感度・特異度を犠牲にする場合があり、標準検査が本当に困難な場合に限定して考えるべきとされている。

医療者側では、IDDに関する教育を医学教育・研修医教育に組み込み、障害者差別や診断の思い込みを減らす必要がある。同時に、IDD診療に必要な追加時間・労力に見合う診療報酬など、制度的支援も必要。

個々の医師の努力だけでは限界があり、IDDを対象とした定期的な包括的健康チェックを制度化することが有効な可能性がある。カナダや英国では、標準化されたannual health checkによって、がん検診や慢性疾患スクリーニングの実施率が改善している。

さらに、在宅プライマリ・ケア、地域での予防医療、個別化された予防接種環境など、患者が医療システムに合わせるのではなく、医療システムを患者に合わせるモデルが紹介されている。


制度面を改革する必要があります。最近成人のDown syndromの方のフォローが増えたのですが、採血一つとってもなかなか大変だと痛感しております。

2026年9月16日水曜日

コミュニティハブのケアの効果

 Bailey JE, Ogunsanmi DO, Mahmud S, Kabir UY, Boykins AM, Butterworth SW, et al. The Neighborhood Health Hub Model: Extending Primary Care into Medically Underserved Neighborhoods to Improve Health Equity. J Gen Intern Med. 2026 Sep 8. doi:10.1007/s11606-026-10764-1. https://link.springer.com/article/10.1007/s11606-026-10764-1


背景

医療サービスが十分に行き届いていない地域(medically underserved neighborhoods)にプライマリ・ケアを拡張するために、health coachを配置することの実現可能性については、十分な研究がなされていない。


目的

重要な予防医療サービスを住民が便利に利用できるようにする、革新的で、患者中心で、場所を基盤とした(place-based)、近隣地域レベル(neighborhood-level)で提供するアプローチである「Neighborhood Health Hub Model」を実施した初期経験を評価すること。


セッティング

米国テネシー州メンフィス/シェルビー郡。


参加者

2022年1月から2024年6月までにNeighborhood Health Hubの施設を利用した成人。


プログラムの概要

Health Hubには、地域から採用されたlay health coachが配置され、動機づけ面接の訓練を受け、遠隔医療で接続された医療専門職の監督を受けた。

提供されたサービスには以下が含まれた。

肥満、高血圧、糖尿病、社会的決定要因のスクリーニング

慢性疾患管理のための個別およびグループでのhealth coaching

医療、行動・心理面、社会的ニーズに対する紹介


プログラム評価

合計1,252人の利用者がサービスを受け、そのうち1,151人がhealth coachingを受けた。383人(31%)は2回以上のcoaching sessionに参加し、合計3,367回のcoaching sessionと2,951回のgroup visitが実施された。

肥満のある利用者では、平均体重変化は−3.32ポンド(95% CI −5.72~−0.92)であった。

高血圧のある利用者では、収縮期血圧の平均変化は−15.17 mmHg(95% CI −19.64~−10.69)であった。

また、health coachingのセッション数が多いほど、体重減少が大きいことと有意に関連していた。


考察

Neighborhood Health Hub Modelを広く普及させることで、全米のhealth equityの改善につながる可能性がある。


感想

改善したというだけでは、平均への回帰(使い方あってるかなぁ。数字が悪い人がHubに行くから何もしなくても再度計測すれば少し良くなって見える)ではという気もしますが、セッション数に依存して体重が減少することも示しているので、確かに効果あるのだなとわかります。費用対効果を知りたいところですね。普通に家庭医かNPが一人いればOK、ではないことを知りたいと思いました。

2026年9月15日火曜日

電子カルテをデザインするだけでは不十分

 Owens-Jasey C, Gunn R, Cook N, Fein HL, Pisciotta M, Fee C, et al. Community Health Center Adoption of Enabling Technologies to Address Contextual Drivers of Health for Care-Managed Patients: Formative Evaluation. J Gen Intern Med. 2026 Sep 10. doi:10.1007/s11606-026-10735-6. https://link.springer.com/article/10.1007/s11606-026-10735-6


背景

ケアマネジメント・プログラムでは、食料、住居、交通など、健康に影響を与えるcontextual driversに対応するための新たな戦略が検討されている。電子カルテ(EHR)を基盤としたケアマネジメントツールは、こうした要因のスクリーニングや、特定されたニーズへの対応のための紹介を支援することができる。しかし、地域医療センター(community health centers: CHCs)のケアマネジャーが、このような支援技術をどのように導入し、活用することができるのかについては、十分に明らかになっていない。


目的

CHCのケアマネジメント担当者が、患者のcontextual driversに対応するために、統合型モジュールを含むEHRツールを現在どのように利用しているかを明らかにすること。得られた結果を、こうしたツールの導入を促進するための実装戦略の開発に活用することを目的とした。開発された戦略は、今後、試行・改良された後、無作為化試験で評価される予定である。


研究デザイン

人間中心設計の原則に基づく形成的評価


参加者

複数州にまたがるヘルスセンター・ネットワークから、ケアマネジメント担当者11名および専門家5名。


アプローチ

半構造化インタビューを実施し、その後、rapid qualitative analysisを用いて、EHRツールを利用してcontextual driversに関連するケアを調整する際の、文脈的要因、障壁、実装戦略について検討した。


主な結果

一部のEHR機能(例えば、スクリーニング用フローシートやアラート)は、スクリーニング結果の記録に利用されていた。

一方、contextual driversに関連するケアの調整にケアマネジメント・モジュールを利用する際には、いくつかの課題があった。例えば、紹介内容を記録するための構造化された入力欄がEHRにないなど、EHRツール自体の限界があった。また、患者を適切なサービスへ紹介し、その後のフォローアップを行うための十分なトレーニングも不足していた。

参加者は、こうしたツールを効果的に活用するためには、組織のリーダーシップによる支援、実践的なトレーニング、そしてヘルスセンターが提供するサービスやケアマネジメントに対する報酬要件に合わせたケアプランのカスタマイズが必要であると強調した。


結論

EHRを用いたケアマネジメントツールには、contextual driversに関連するケアの調整を支援する可能性がある。しかし現在は、こうしたツールを効果的に利用することを妨げる障壁が存在している。対象を絞った実装支援によって、これらの障壁を取り除き、ツールの導入・活用を促進できる可能性がある。


感想

カルテのシステムを作るだけではダメとのことですね。最終的にはそれができる人を育成する必要があります。