2021年1月16日土曜日

クラークシップで学生が何をしてよいかをだれが決めているか

Pinilla S, Kyrou A, Maissen N, Klöppel S, Strik W, Nissen C, Huwendiek S. Entrustment Decisions and the Clinical Team: A Case Study of Early Clinical Students. Med Educ. 2020 Dec 10. doi: 10.1111/medu.14432. Epub ahead of print. PMID: 33301632.

https://onlinelibrary.wiley.com/doi/abs/10.1111/medu.14432?af=R

目的

臨床学習の文脈により,entrustment decision(自分で責任をもって行う決定)への医学生の関与の仕方が左右される.しかし、学生と医療チームのメンバーがentrustment decisionのプロセスをどのように認識しているかは不明である。本研究では、臨床ローテーションの初期段階で、どのような要因がentrustment decisionに関連していると,学生とチームメンバーが考えているのかを検討した。

方法

大学の教育病院において,クラークシップ期間中の医学生28名と医療チームメンバー4名にインタビューを行い、ケーススタディを実施した。社会構成主義的な認識論のもと、半構造化インタビューを用いて、その場限りのentrustment decisionに対する学生と医療チームメンバーの認識を探った。インタビューの記録と学生とのフィードバックラウンドのメモが分析に使用された。

結果

コアクラークシップ中の医学生は、研修医を教育上の重要な門番であり、entrustment decisionを行う上で重要な促進役であると認識していた。もう一つの重要なテーマは、学生のモチベーション、自発性、医療チームや患者との関わりへの意欲に関するものとして浮上した。学生は様々な医療チームのメンバーとの信頼形成プロセスに積極的に関与していた。entrustment decisionのプロセスは、医療チームのメンバー全員と患者を巻き込む,多面的かつダイナミックなものであると認識されていた。また、インタビューデータからは,看護師や心理士を含む複数のentrusting supervisorが浮かび上がってきた。彼ら/彼女らは、クラークシップ生とともに、またクラークシップ生のために、entrustment decisionの交渉に積極的な役割を果たし、機会を促進することも阻害することもあった.entrustment decisionは,多面的な監督者ネットワークの相互作用の結果として現れたものであった。

結論

学生を臨床チームに統合する指導医の能力は、医学生が臨床活動で責任をもって業務を果たす機会を促進するための重要な要素であると考えられる。また、医療チームのメンバーからなる非公式な監督者ネットワークが学生を積極的にマネジメントしていることや、チームメンバーが学生の教育に責任を持とうとしていることが、その場限りのentrustmentに関連する側面として浮かび上がった。これらのデータは、多職種からの監督が医学生の臨床教育に有益であることを示唆しており、さらなる検討が必要であると考えられる。

感想

めちゃ面白い論文.臨床実習で医学生が責任をもって何かを行う(日本だと,情報収集,身体診察,カルテ記載,患者への簡単な説明などでしょうか)ときに,それを現場でだれがどのようにマネジメントしているのか,という論点.1つ目は,研修医が指南役になっている,ということ.2つ目は,多職種がいろいろかかわって,やってみたら,とか,やらないでね,とか言っている,ということ.かつそれは,その場において即興的になされる決定である,ということですね.

言語化されたら,たしかにそうだよなという感覚.一方で日本の卒前実習だと,そこまで学生が積極的にかかわらないのではという印象がある.学外の地域医療実習などでより当てはまりそうな知見だと思いました.

EPAを設定して監督しようと思っても,結局は現場の多職種や研修医が,学生がどのくらいできるか決めちゃうのだなぁという解釈もできるかと思います.