2015年8月31日月曜日

起立性低血圧の原因



座位で血圧が急激に低下するという方がいらしたので
起立性低血圧(prthostatic hypotension)の原因についてまとめてみます。


起立性低血圧は65歳以上だと20%くらいに見られる、良くある状態です。
ただし、症状があるのは2%です。やはり症状があれば一度立ち止まる必要があります。

定義は、5分以上臥位になった後、2~5分直立して、sBP低下20mmHg以上またはdBP低下10mmHg以上、となります。

また、高齢者では、食後15~90分で血圧が下がることも良くあります。
知っておくと余計な心配をする必要がなくなるかもしれません。


原因は、自律神経障害、循環血液量低下、薬剤、その他と大別できます。
原因が分からない場合が1/3を占めるところに注意です。

まずは循環血液量低下がないか判断します。
最近の嘔吐、下痢、発熱、水分制限がないか聴取します。
血液検査と心電図は必要です。

合わせて、心不全、悪性腫瘍、糖尿病、アルコール依存症の既往歴と、以下に挙げるような薬剤歴も確認します。

自律神経障害を疑う場合は、パーキンソニズム、失調、末梢神経障害があるか、他の自律神経障害症状があるか(縮瞳/散瞳の異常、便秘の有無、勃起障害の有無など)を確認します。
感覚障害や腱反射の有無はすぐ確認できるので確認します。
バルサルバ手技で脈拍が変わるか、なども有用な診察です。


自律神経障害を起こす疾患は以下の通り。

●神経変性疾患
 ・パーキンソン病/症候群(レビー小体型認知症など)
 ・多系統委縮症
 ・真性自律神経不全

真性自律神経不全はPAFとかBradbuy-Eggleston症候群と呼ばれます。
特発的に自律神経のみ機能しなくなります。予後良好です。

●神経障害
 ・糖尿病
 ・アミロイド―シス・サルコイドーシス
 ・シェーグレン症候群などの膠原病
 ・腎不全
…などなど、典型的には遠位部の疼痛や感覚消失、勃起障害、尿路や消化管の症状と合わせて起こります。
また、ギランバレー症候群は強い自律神経障害を起こしうるので注意です。

自律神経のみを侵す疾患もあります。
nAChRに対する自己抗体ができる場合は、強い交感神経優位状態になります。
また、傍腫瘍性自律神経障害というものもあります。
家族性のものもあるみたいですが…あまりにマニアックなのでやめておきましょう。


●その他
大動脈弁狭窄症、心膜炎、不整脈、褐色細胞腫、副腎不全なんかも原因となります。


●薬剤
代表的な薬剤は以下の通り。

・アルコール

・α/βブロッカー
・利尿薬
・血管拡張薬(硝酸薬、Ca拮抗薬など)
・PDE阻害薬(バイアグラ)

・抗うつ薬、睡眠薬
・オピオイド

・抗精神病薬
・抗パーキンソン病薬

言われてみればなるほどと思う薬剤群です。
アルコールや精神科系の薬剤の見落としに注意ですね。



起立性低血圧は、将来の心血管系イベント発生のリスクとなります(HR 2.6)。
頸動脈雑音は全例で確認しておいた方がいいでしょう。
もちろん、転倒には注意です。


参考:UpToDate Mechanisms, causes, and evaluation of orthostatic hypotension


2015年8月19日水曜日

気管支拡張症について



疑う機会があったので簡単にまとめます。

種々の肺感染症が契機となって発症することが多いです。
あとは悪性腫瘍などによる気管支閉塞も契機となりえます。

数か月~数年続く咳嗽とねばっこい喀痰をみたら本症を疑います。
あとは喀血の鑑別診断の筆頭ですね。


症状の出現頻度は、咳嗽98%、毎日の喀痰78%、呼吸困難62%、鼻副鼻腔炎73%、喀血27%、繰り返す胸膜炎20%です。

女性の気管支拡張症患者における失禁の頻度は47%とのことです。
一概には言えませんが、「失禁+咳嗽」をみたら気管支拡張症を想起してもいいかもしれません。

所見では、cracklesが75%、wheezeが22%で聞こえます。ばち指を来すのは稀です。


事実上、診断はCTです。
細かいものを無視すれば、3つのサブタイプに分かれます。

・cylindrical
最も一般的なタイプです。気管支の輪切りが見えます。


・varicose
比較的まれなタイプ。


・cystic
重症。胸膜にまで広がる。二ボーが見える。



参考
UpToDate: Clinical manifestations and diagnosis of bronchiectasis in adults
American Journal of Roentgenology. 2009;193: W158-W171.
Radiopedia.org: Bronchiectasis


2015年8月18日火曜日

各種感染症検査の感度と特異度



各種感染症迅速検査について、日ごろの疑問をまとめてみました。

【ピロリ菌検査】

選択肢としては、尿素呼気試験、血清抗体検査、便抗原検査、内視鏡検査があります。
感度・特異度はどれも比較的良いみたいです。
注意点は以下の通りです。

・PPI・抗菌薬では、血清抗体検査以外の検査で偽陰性率が高くなる。
→なので検査の2週前にPPIは中止すること。
  抗菌薬は4週前に中止すること。

・最近の消化管出血の既往があると、迅速ウレアーゼ検査と鏡検で偽陰性率が高くなる。

除菌判定は、除菌後4週間以降で行います。
血清抗体検査は陰性化に1年くらいかかるので使えません。
1種の検査で陰性の時に限り、追加でもう1種検査を行うことができます。


【レジオネラ尿中抗原検査】
Legionella pneumophila1型のみを検出します。
日本ではレジオネラ感染症の50%を占めるのみなので、陰性すなわちレジオネラではないとは言えません。
重症度と関連して感度もあがるみたいです。


【肺炎球菌尿中抗原検査】
これも重症度に応じて感度が上がります。
この検査を提出するときは、肺炎の診断は付いていて、でも良質喀痰がとれないときになると思いますが、そのセッティングでの特異度は良くわからないです。
小児では特異度が低くなるみたいです。


【マイコプラズマ抗体検査】
文献的にはイムノカードマイコプラズマ抗体の感度、特異度は48%と79%で、計算すると陽性尤度比2程度です。これだけみるとあまり有用ではないのかもしれません。しかも対象は発症6日以降の検体なので、もっと早期のタイミングではさらに検査特性は悪くなるかもしれません。
なお、近くの病院の臨床検査科のデータだと、感度57%、特異度92%とのことです。これだといい感じですね。


参考:総合内科999の謎、感染症999の謎


2015年8月12日水曜日

終末期ケアにおける患者との対話 Vol.3



AAFPが発表している
Discussing End-of-Life Care With Your Patients
を自分なりに訳しています。

何回かに分けて、全文訳を載せていきます。
かなり崩して訳していますので、正確な記載はぜひ原文を確認ください。

今回で最後です。




事前指示(advance directive)について説明する

 事前指示では、患者は人生を終える際の希望を書き記すことができる。複雑だと思われている事前指示の種類についても、整理してみれば簡単である(下表参考)。内容指示(instructive advance directive)では、リビングウィルのように、自分が何をしてほしいかを書いたり伝えたりする。代理人指示(proxy advance directive)では、持続的権限移譲(durable power of attorney)に代表されるように、自分が意思決定をできなくなったときに代わりに決定してくれる人を指名する。患者の財産が複雑である場合を除いて、事前指示に法律家が関わらなくてもよい。

 事前指示について患者と話す時期は、終末期に至る前が最も良い。いつもの身体診査の間に行うのでも構わない。このように口火を切るのはどうだろう。「患者さん全員に、事前指示書について、それが必要となる前にお話しすることにしています。今まで作成してみようと思ったことはありますか?」このように言うと、事前プランニングが社会的かつ医療的に受け入れられていることであり、事前指示について考えたり作成したりしてみようとなる。


 宝物

 終末期ケアとは、最も内省的かつ脆弱なときをすごしている患者に手を差し伸べることである。死が近いと悟ると、その人の人格は著しく成熟する。この旅路にいる患者さんと共に歩むことこそ、医師が行う医業の中で最も価値のある宝物である。自分自身の死を身近にとらえ、患者との垣根を取り除くことが必要である。終末期ケアを行う医師は、患者の心に接してもいいのだ、人間として当然感じる感情を抱いてもいいのだということを知っている。

 積極的な治療を中止し、症状のマネージメントに向かうタイミングを知っているという点で、終末期のケアや教育は高貴なものである。仮にすべての病気を治癒しようと躍起になっても、私たちはいつか必ず死ぬ。患者の生命の質を少しでも良くするように奮闘すれば、たとえ死が近づこうとも、私たちはみな栄光を手にするのだ。


必読文献
・“End-of-Life Care: Guidelines for Patient-Centered Communication.” Ngo-Metzger Q, August KJ, Srinivasan M, Liao S, Meyskens FL . 2008;77:167-174.
・“Facing the Truth.” Havas NE. 2008;77:140.
・March 15 2008 のAAFPに載っている緩和ケアの記事も見るように



2015年8月11日火曜日

終末期ケアにおける患者との対話 Vol.2



AAFPが発表している
Discussing End-of-Life Care With Your Patients
を自分なりに訳しています。

何回かに分けて、全文訳を載せていきます。
かなり崩して訳していますので、正確な記載はぜひ原文を確認ください。

前回の続きです。



ホスピスでの会話を始める

 私たちが医師として行う中で最も難しいことのひとつに、患者やその家族に悪い知らせを伝えることがある。私たちにとっては、自然に死を迎えるためにややこしい議論を行うより、疾患治癒のはかない望みにかけ続けるほうがよっぽど簡単である場合が多い。しかし、賢明な医師なら、治療から緩和にいつ移行すべきか、その場合患者や家族がどれほど満足するかをよく知っている。

 終末期との診断を受けた患者は、たいていの場合その意味を理解し、医師が正直に伝えてくれたことに感謝する。医師はしばしば、患者の希望を奪ってしまったといらぬ心配はしてしまうが、誤った希望を与えるくらいなら患者のパートナーになる資格はない。「治癒」に合っていた患者の焦点を、より理にかなった目標、たとえば関係修復やイベントを見届けるなど特定のタスクを成し遂げるまでは長生きするなどの目標に向けなおすのも一考である。疼痛が伴わない死というのも目標になりうるかもしれない。生命の質と生命の量、このどちらも大事にすることは十分可能であるし、これは文献的にも明らかである。最近の研究によると、ホスピスケアを受けている患者は、積極的な治療を追求している患者より実際に長生きである。

 ホスピスや緩和ケアについて患者と話す前に、細かい実践上の注意点を慎重に考えなくてはならない。

 時間を確保する:会話を急かしてはいけない。
 空間を確保する:プライベートかつ静かな場所で、全員が着席できるところを選ぶ。
 電話の電源を切る:気をそらしたり邪魔をしたりする可能性のあるものは全て部屋に持ち入らない。

 会話それ自体についても事前に十分考えておくだけの価値がある。会話がどのように広がるかを数分でいいから考えておきなさい。自分が話すのと同じだけの時間、耳を傾けるようにしておきなさい。あなたはこれから述べるようなやりかたをしたいと思うかもしれない。

 患者の知っていることを明らかにする:まず、患者と家族が診断についてどれだけ理解しているかを明らかにしなさい。「あなたは自分の状況をどのように理解していますか」「他の医者から病気についてどのように言われましたか」といった質問をしても良い。

 患者の反応に注意深く耳を傾ける:予後について患者の感覚と自分の考えに大きな食い違いがあれば、時間をとって話し合うことになる。ゆっくりはきはき話しなさい。高齢の患者では耳が遠い可能性を敏感に察知しなさい。

 患者の目標を見つける:これが良質な緩和ケアにとっての鍵である。このためにはしっかりした傾聴スキルが必要となる。患者の目標が分かりさえすれば、あとは患者に気づいてもらう方法はたくさんある。患者の目標が緩和なら、ホスピス機関の助けを借りることは非常に価値のあることである。ホスピスで可能なことをリストアップし、患者の目標をホスピスのモデルに当てはめるのではなく、まずは患者の目標を確定して、それからホスピスが実際にできることと照らし合わせるのが良い。


終末期ケアにおける患者との対話 Vol.1



地域密着の病院で働くものの宿命として
患者さんやご家族と、お看取りについて話す機会が日常茶飯事にあります。

しっかり勉強しなくてはと思い、
AAFPが発表している
Discussing End-of-Life Care With Your Patients
を自分なりに訳しています。

何回かに分けて、全文訳を載せていきます。
かなり崩して訳していますので、正確な記載はぜひ原文を確認ください。



話し合いは容易ではない、しかし患者さんは必ず感謝してくれる


終末期ケアにおける患者との対話


 人口構造の変化に従い、家庭医療のかたちも変化している。85歳以上の人々の割合がこれほどまで急速に増加しているのは人類史上初めてのことである。今や、終末期との診断を受けてから実際に亡くなるまでに、平均して30カ月も生きなくてはならない(図は原文参照のこと)。これらがもたらす経済学的影響は、立ちくらみがしそうなほど重大である。ある研究によると、65歳を超えると、1年寿命を延ばすたびに患者(あるいは組織)は145,000ドルものお金を払わなくてはならない。しかし、医学の進歩により寿命は延びているにもかかわらず、人間の死亡率は(少なくとも私の経験では)いまだ100%のままである。


 余命を予測する

 余命を予測することは、終末期ケアにおいての最難問にあげられる。ある研究によると、医師は余命を63%も長く過大評価してしまう。プライマリケア医は、患者との関係が近いため、余命を予測するのに特に苦悩する。不幸中の幸いか、私たちを助けてくれる客観的なツールやガイドラインが開発されている。

 緩和医療行動スケールPPS(http://www.victoriahospice.org/ed=publications.html)は、機能低下がみられ始めた患者の予後を非常に正確に推定する。PPSスコアが50%以下であると、6か月以内に亡くなることが多い。余命予測の一般的なガイドラインは、米国ホスピス・緩和ケア協会のウェブサイト(http://www.nhpco.org)や、米国ホスピス・緩和医療学会のウェブサイト(http://www.aahpm.org)にもある。

 鍵となる臨床指標もまた、患者の余命を測る手助けとなる。慢性疾患のある患者で、以下に述べる基準のうちどれか1つでも当てはまれば、余命は6か月以内である可能性が非常に高い:意図せずに体重が10%以上減少する、感染症(誤嚥性肺炎、褥瘡感染、腎盂腎炎など)が繰り返し起こる、入院回数が増える、血清アルブミン値が2.5以下である、機能低下がある。

 経験のある医師にとっては、自分自身に問い直すことも有用である。「この患者が6か月以内に亡くなったら自分は驚くだろうか。」その答えがNOなら、ホスピスや緩和ケアに向けての評価をおこなう時期にきているのかもしれない。

 患者に予後を伝える方法もまた重要である。予測される残りの人生の期間を(「あなたは残り3カ月です」というように)かっちりと伝えることは、望ましくないばかりか危険ですらある。ただし、年単位より月単位、月単位より週単位で、できる限り具体的に提示することは理にかなっている。たいていの場合、患者は全ての情報を伝えてほしいと願うし、過度に楽観的な予後予測は求めていない。

 多くの医師は、死は避けるべきものであり、人生の一部として自然なものであると受容できるものではないと固く信じている。このような心持ちでいると、はじめは余命の予測を難しいと感じてしまう。しかし、疾病に対して関心を抱くのと同じように、人生の終末期に対して関心を持ち、しっかり観察するようになると、臨床的に予後を予測するスキルはあっという間に伸びていく。他の分野での臨床判断のほうが大変なくらいだ。余命について患者と話すことはつねに困難が付きまとうが、そのスキルは注意と経験によって向上させることができる。



2015年8月6日木曜日

ビタミンB1欠乏症



・拒食がある高齢者の認知機能低下の原因評価
・貧困状態で食事できていなかった方の末梢神経障害

というケースに出会いました。

どちらもビタミンB1を測定、低値であったため補充療法開始しましたが、症状は良くならず、結局別の診断がなされました。

ビタミンB1欠乏症による症状が疑わしくて、実際にビタミンB1低値でも、ビタミンB1欠乏症であるとは限らない、ということでしょうか。

ビタミンB1の生物学的半減期は10-20日。欠乏すると以下の状態を招きます。


・脚気
成人の脚気はdry beriberiとwet beriberiに分けられます。
dry beriberiでは、対称性末梢神経障害が起きます。運動と感覚どちらの神経も侵します。
多くは四肢遠位を障害します。
wet beriberiは心肥大、心筋症、心不全、末梢浮腫、頻脈も呈します。


・Wernicke-Korsakoff症候群
アルコール関連死の29-59%を占めます。
3徴は脳症、外眼筋麻痺、歩行失調です。
しかし、すべてそろうのは1/3にすぎません。
精神状態の異常だけが出ることがそこそこあるみたいですね。
生前に診断されていたのが26/131だけであったという報告もあります。
歩行障害が他の症状に先行することもあります。
血清ビタミンB1値による判断の感度、特異度が不明であり、血清値が正常でも本症を除外できなません。


・Leigh症候群
 progressive subacute necrotizing encephalomyopathyともいいます。
乳幼児に発症する神経変性疾患です。
Leigh症候群の患者でビタミンB1欠乏がよくみられます。
ただ、原因はミトコンドリア異常なので、いわゆる「欠乏症」ではないです。


参考:UpToDate
Overview of water-soluble vitamins
Wernicke encephalopathy
Hereditary neuropathies associated with generalized disorders

2015年8月5日水曜日

降圧薬、利尿薬の禁忌、慎重投与


良く使う薬は、いまのうちにしっかり勉強しておきたいです。
降圧薬、利尿薬の禁忌、慎重投与をまとめてみました。
考えたらあたりまえのことばかりですが、腎動脈狭窄疑いの人にACE阻害薬とかは踏んじゃいそうですね。

病院の採用薬中心です。簡単のため網羅性は多少犠牲にしています。


アーチスト (カルベジロール)
禁忌:喘息、アシドーシス、高度徐脈(SSS, 2-3°AV block)、非代償性心不全、肺高血圧、褐色細胞腫、妊娠
慎重投与:低血糖、コントロール不十分な糖尿病、絶食状態、栄養状態不良、糖尿病合併の慢性心不全、重篤な肝腎機能障害、1°AV block、徐脈、末梢循環障害、高齢車


エナラプリル
禁忌:血管浮腫の既往、妊娠
慎重投与:両側性腎動脈狭窄又は片腎で腎動脈狭窄、高カリウム血症、重篤な腎機能障害、脳血管障害、高齢者
※ARBも同様


カルブロック(アゼルニジピン)
禁忌:妊娠、アゾール系投与中
慎重投与:重篤な肝腎機能障害、高齢者


スピロノラクトン
禁忌:無尿、急性腎障害、高カリウム、アジソン病、エプレレノン投与中
慎重投与:心疾患のある高齢者、重篤な冠/脳動脈硬化、肝障害、高齢者
用量:50~100mg


フロセミド
禁忌:無尿、肝性昏睡、低Na・K、スルホンアミド誘導体過敏症
慎重投与:進行した肝硬変、重篤な冠/脳動脈硬化、重篤な腎障害、肝障害、嘔吐下痢、痛風・糖尿病の家族歴、ジギタリス・ステロイドの投与、高齢者


フルイトラン(トリクロルメチアジド)
禁忌:無尿、急性腎不全、低Na・K、スルホンアミド誘導体過敏症
慎重投与:進行した肝硬変、重篤な冠/脳動脈硬化、重篤な腎障害、肝障害、痛風・糖尿病の家族歴、高Ca血症、ジギタリス・ステロイドの投与、高齢者


ペルジピン注
禁忌:急性心不全において、高度な大動脈弁狭窄・僧帽弁狭窄、肥大型閉塞性心筋症、低血圧(収縮期血圧 90mmHg 未満)、心原性ショックがある、発症直後で病態が安定していない重篤な急性心筋梗塞患者
慎重投与:脳出血急性期、脳卒中急性期で頭蓋内圧亢進、肝・腎機能障害、大動脈弁狭窄症、急性心不全において重篤不整脈、急性心不全において低血圧



CIDPの亜型について



sensory dominant CIDPと診断された方がいましたので
良い機会だと思い勉強してみました。

典型的なCIDPは、比較的緩徐に進行する対称性かつ運動神経優位の末梢神経障害を呈します。腱反射が消失します。とはいえ突然悪化することもあるみたいです。
遠位筋も近位筋も筋力低下が起こるというパターンが脱髄性ポリニューロパチーの特徴です。
一方、感覚神経は遠位から近位へと障害が進行します。

CIDPはヘテロな疾患群である可能性が示唆されています。
CIDPの亜型としては以下の通り。

・Lewis-Sumner症候群
multifocal acquired demyelinating sensory and motor neuropathy(MADSAM)ともいいます。
運動神経、感覚神経の両方を傷害する多発性単神経炎を呈します。

・Sensory-predominant CIDP
感覚神経が優位に障害されます。温痛覚より振動覚、位置覚が強く障害されます。(太い神経から障害される)
平衡感覚障害、疼痛、感覚異常が出現します。
筋力低下がなくても、検査をすると伝導速度は低下しています。

・Distal acquired demyelinating sensory neruopathy(DADS)
典型的なCIDPより進行が緩徐。
IgMパラプロテインが見られることが多い。その場合、通常のCIDPの治療に抵抗性となる。

・CIDP with CNS involvement
10-20%の患者で、脳神経障害、球麻痺症状が起こる。
視神経障害、腱反射亢進、バビンスキー陽性、MRIにて中枢神経の脱髄所見などがみられる。


まとめると、古典的なCIDPの特徴は以下の通り。
 Progression over at least two months
 Weakness more than sensory symptoms
 Symmetric involvement of arms and legs
 Proximal muscles involved along with distal muscles
 Reduced deep tendon reflexes throughout
 Increased cerebrospinal fluid protein without pleocytosis
 Nerve conduction evidence of a demyelinating neuropathy
 Nerve biopsy evidence of segmental demyelination with or without inflammation

一方、これにあれはまらないものもあるということを認識しておきましょう。

もちろん、除外診断が基本になります。


2015年8月3日月曜日

三叉神経・自律神経系頭痛とその分類



群発頭痛は知っているけど、他にも似た様な疾患があると知ったのでまとめます。
総称してTrigeminal Autonomic Cephalalgia(TAC)といいます。
片側性の三叉神経領域の疼痛+同側頭部の自律神経症状(結膜充血、流涙など)を呈します。

・群発頭痛(cluster headache)
発作の持続時間:数分~数時間 頻度:8回/日

・発作性片側頭痛(paroxymal hemicrania)
持続時間:数分 頻度:40回/日

・SUNCT(short-lasting unilateral neuralgiform pain with conjunctival injection and tearing)
持続時間:数秒~数分 頻度:200回/日
他のTACで有効な酸素投与やトリプタンは効きにくい。リドカイン持続静注が有効。

・持続性片側頭痛(hemicrania continua)
持続的に数週~数か月続く


ポイントとしては、
自律神経症状があるところ
SUNCTのみ治療が異なるので鑑別が必要なところ
でしょうか。

自殺頭痛といわれるほど痛みが激しく、診断されていないことも多いので
出会ったら漏らさずすくいたいですね。


参考:UpToDate Pathophysiology of the trigeminal autonomic cephalalgias

遊走腎



「気持ちの問題」といわれる可能性の高い器質性の下腹部痛の原因として
慢性膵炎や間質性腎炎と並んで、遊走腎があります。

あまり良く知らない疾患なのでまとめてみました。


定義:臥位とくらべ立位で腎臓の高さが5cm以上あるいは2椎体以上下がる

典型例:痩せた若い女性。立位で悪化し臥位で寛解する腹部・側腹部の引っ張られる痛み

痛みの特徴:痛みは尿路結石の疝痛に似ることがある。右側で多い。開腹術を受けたことのある患者もいる。「気のせい」といわれると痛みが悪化することが多い。

他の症状
・嘔気・嘔吐:臓側自律神経の刺激による
・立位で腹部腫瘤をふれる:用手的に本来ある位置に戻すと症状良くなる
・一過性の血尿:腎静脈の機械的な進展による
・繰り返す尿路感染
・腎結石
・高血圧:RAA系の亢進による。腎動脈線維筋異形成の合併率も高い。

合併症:Dietl's crisis
尿管が閉塞して急性水腎症となる。
側腹部の激しい疝痛、嘔気、悪寒、頻脈、乏尿、一過性の血尿/蛋白尿、圧痛ある肥大した腎臓をふれる。
用手的に還納するor膝胸位になってもらう

保存的に見て改善乏しければ手術も考える。


引用文献:BJU Int. 103:296-300.


2015年8月2日日曜日

足白癬



とってもコモンな疾患です。病棟でもよく見かけます。
とはいえ、非典型的な出方をすることもあります。
足底の結節性紅斑の鑑別に上がることもあります。(South Med J. 1977 Jan;70(1):27-8.)

ネットで集めた写真をどうぞ。
(http://physio-treatment.weebly.com/foot/athletes-foot
http://healthh.com/tinea-pedis/
http://www.dermis.net/dermisroot/en/15724/image.htm
http://tundrat-zone.blogspot.jp/2010/05/fostering-patient-adherence-in.html)






急性と慢性(こちらが多い)に分かれます。
急性足白癬は、強い搔痒(時に疼痛)をともなう発赤した水疱の出現が初発症状です。
趾間や足底から生じ、足背に上がっていきます。
鑑別診断は汗疱(dyshidrosis)です。以下に写真を提示します。
(http://tundrat-zone.blogspot.jp/2010/05/fostering-patient-adherence-in.html)



慢性足白癬は、いつもよくみているアレです。
皮溝に落屑が溜まるのが特徴らしいです。
よくならない足白癬は、乾癬を疑うタイミングでもあります。


白癬が真皮にまで達すると、稀ですがMajocchi肉芽腫を形成します。
脚を剃毛する女性で起こりやすいみたいです。
健常人では局在しますが、免疫不全の患者さんだと発症、重症化のリスクが高くなります。
(UpToDate Dermatophyte (tinea) infections)



commonな疾患は、稀なPresentationも押さえておきたいですね。



2015年8月1日土曜日

リンパ節腫脹について



気付いたら週末になっている感じです。
やや総花的な記載になりますが、リンパ節腫大についてまとめてみます。

ちなみに、いまのいままで総花的を「そうかてき」と呼んでいました。
正しくは「そうばなてき」だそうです。


リンパ節腫脹について診察上重要となる項目
・腫脹リンパ節が1領域にとどまるか否か
・可動性があるか
・圧痛や自発痛があるか
・硬さはどうか

反応性リンパ節腫脹では、腫大リンパ節は軟らかく、圧痛があり、可動性良好で、原因疾患の病勢により大きさが変化するのが典型的。


頸部リンパ節腫脹で最も多いのは両側前頸部リンパ節急性腫脹
 ・細菌性咽頭炎
 ・ウイルス性咽頭炎
 ・単純ヘルペスウイルスによる歯肉口内炎、
 ・伝染性単核球症 など

後頸部リンパ節の腫脹は注意
 ・後頭部の感染
 ・伝染性単核球症
 ・結核
 ・風疹
 ・菊池病
 ・悪性腫瘍 など


隣接しない複数の領域にわたるリンパ節腫大
 ・HIV感染
 ・抗酸菌感染
 ・伝染性単核球症
 ・SLE
 ・関節リウマチ
 ・サルコイドーシス
 ・白血病
 ・リンパ腫
 ・薬剤(フェニトイン、カルバマゼピン、アロプリノール、ペニシリン、セフェム系)


リンパ節生検の必要性予測モデル:score Z(Medicine (Baltimore) 79:338-47)

本邦での研究によると、score Z(カットオフ値は1点)は、悪性疾患や肉芽腫(検証サンプルの有病率26%)とそれ以外の鑑別において、感度97%、特異度56%である(Medicine (Baltimore) 82:414-8)。

score Z=5a-5b+4c+4d+3e+2f-6
a: 40歳以上なら1点
b: 圧痛があれば1点
c: 大きさが9cm以上なら3点、4cm以上なら2点、1cm以上なら1点
d: 全身掻痒感あれば1点
e: 鎖骨上リンパ節腫脹なら1点
f: 硬ければ1点