2021年1月18日月曜日

マンモグラフィーのエビデンスに対する家庭医の認識

Siedlikowski S, Grad R, Bartlett G, Ells C. Physician Perspectives on Mammography Screening for Average-Risk Women: "Like a Double-Edged Sword". J Am Board Fam Med. 2020 Nov-Dec;33(6):871-884. doi: 10.3122/jabfm.2020.06.200102. PMID: 33219066.

https://www.jabfm.org/content/33/6/871.full

背景

マンモグラフィ検診は,有益性と有害性のバランスを検討するに、平均的なリスクを持つ女性に体系的な検診を行うべきかは疑問視されている。スクリーニングをするかどうかの決定はプライマリケアで行われることが多いため、家庭医がマンモグラフィ検診に関するエビデンスについてどのように考えているのか、またこの情報を実際にどのように利用しようとしているのかを理解することが重要である。

方法

横断的デザインを用いて、我々は、医師参加者のグループに毎日Patient-Oriented Evidence that Matters(POEM:研究に基づく短文のパール)を評価してもらい,データを得た。医師は、妥当性の評価された情報評価法に基づいて、クローズドおよびオープンエンドの質問に回答した。量的データは記述的統計を用いて評価した。質的データは帰納と演繹を反復するテーマ分析で分析した。これらのデータはサブテーマに整理され、主要なテーマにグループ化された。

結果

4 つの関連する POEM が特定された。これらのPOEMはそれぞれ1243人から1351人の医師によって評価され、POEMの評価により310のコメントが生み出された。3つの主要なテーマが4つのPOEMすべてに渡って浮上した。1)POEMで提示された情報の視点、2)この情報を実践に応用すること、3)臨床的・文化的現実に直面すること。我々の調査結果は、医師がマンモグラフィ検診に関する研究ベースの情報を評価し、この情報を診療に利用する方法の重要な違いを浮き彫りにした。

結論

マンモグラフィ検診についてのPOEMは、有害性と有益性についての認識を高めるが、変化のプロセスがどのように複雑であるかを示す根深い考えがある。要約すると、平均的なリスクを持つ女性に対する乳がん検診を再考することはハードルの高い課題である。

感想

4つのPOEMは以下の通り.1. Overdiagnosis of breast cancer is common. 2. Numbers to help women understand the benefits/harms of screening mammography. 3. Mammography doesn’t decrease cancer-related deaths long term. 4. Mammogram decision aid slightly increases informed decisions by women.

実際の現場ではエビデンス通りに診療が行われていないことが多いです.この研究では,マンモグラフィーのエビデンス(を短文の形に要約したPOEM)を家庭医がどのように診療に反映させているかを明らかにすることで,どうしてギャップができるのかの一端を明らかにしようとしているのではないかと思いました.エビデンスだけでなく様々な要因が意思決定に絡んでいることが描写されています.