2021年1月12日火曜日

ambulatory care-sensitive conditionの実態調査

Mahmoudi E, Kamdar N, Furgal A, Sen A, Zazove P, Bynum J. Potentially Preventable Hospitalizations Among Older Adults: 2010-2014. Ann Fam Med. 2020 Nov;18(6):511-519. doi: 10.1370/afm.2605. PMID: 33168679

https://www.annfammed.org/content/18/6/511

目的

米国の 3,200 の郡および高齢者の様々な下位集団にまたがる、予防可能であったと考えられる入院(potentially preventable hospitalization)―患者が適切な時期にプライマリケアを受診していれば防ぐことができたであろうambulatory care-sensitive conditionsによる入院―の全国的な傾向を調査するために研究を行った。

方法

2010-2014年のメディケアの請求データを用いて、65歳以上の被保険者におけるpotentially preventable hospitalizationの傾向を調査し、ヒートマップを作成して郡レベルの変動を調査した。一般化推定可能式(generalized estimating equation)を使用し、人口統計、併存疾患、二重受益(メディケアとメディケイド)、郵便番号レベルの地域所得、郡レベルのプライマリケア医と病院の数を用いてモデルを調整した。

結果

3,200の調査郡において、potentially preventable hospitalizationは327郡で減少し、123郡で増加し、その他の郡では変化がなかった。人口レベルでは、potentially preventable hospitalizationの調整後の割合は、2010年の19.42%(95%CI:18.4%-20.5%)から2014年には15.97%(95%CI:15.3%-16.6%)へと3.45ポイント減少した.白人では2.93ポイント減少して14.96%(95%CI:14.67%-15.24%)に,黒人では2.87ポイント減少して17.92%(95%CI:17.27%-18.58%)に、ヒスパニックでは3.87ポイント減少して17.10%(95%CI:16.25%-18.0%)になった。同様に、二重受益者における割合は、2010年の21.62%(95%CI:20.5%-22.8%)から2014年には17.91%(95%CI:17.2%-18.7%)へと3.71ポイント低下した。(すべてP <.001)

結論

2010年から2014年の間、potentially preventable hospitalization の割合は、大多数の郡で変化しなかった。人口レベルでは、すべての小集団の間で割合は低下したが、二重受益者、黒人およびヒスパニック系の患者では、それぞれ非二重受益者および白人患者と比較して,非常に高い割合を維持していた。

感想

ambulatory care-sensitive conditionや potentially preventable hospitalizationは,家庭医なら絶対抑えておいた方が良い概念.これをどれだけ防げるかが,家庭医の質をはかる指標の1つだと思います.

日本では,船橋二和病院で単施設での記述疫学調査が今年発表されたばかりで,実態解明はこれからという感じ.https://onlinelibrary.wiley.com/doi/full/10.1002/jgf2.352

さすがAnn Fam Medといった内容で,記述疫学とはいえかなり網羅的に調査しており,かつ年度比較と地域差,人種差,保険(Medicare, Medicaid)による差も検討している.ACSCは定義上,プライマリケア医がちゃんと診療していれば防げるはずなので,黒人/ヒスパニックやMedicare/medicaid両方の対象になるような社会経済的状況にある人には,適切なプライマリケアが届いていないことの傍証になる.日本ではどうなるのだろうか.生活保護,無料低額診療,在日外国人でACSCが多くなっていないか調べてみたい.