2016年3月29日火曜日

特発性間質性肺炎の基礎



特発性間質性肺炎がさっぱりわからないので
基本的なところを勉強してみました。

気管支鏡検査と病理組織の項目は飛ばします。当院では施行できないので。
とりあえずこのくらいの知識があれば、その都度調べるための土台となるのではと思います。

もちろん、続発性を鑑別することを忘れずに。
個人的には薬剤性と膠原病関連(とくに肺障害から起こる場合)が鑑別から抜けそうです。注意しなくては。


①IPF
・最多
・60-70歳代で多い
・月~年単位で慢性に呼吸苦増悪
・ばち指が多い
・肺底部、胸膜直下
・がちがちに線維化→蜂巣肺に
・がちがちに線維化→ステロイドだけでは効果乏しい


②NSIP
・2番目に多い
・週~月単位で亜急性発症
・ばち指は少ない
・1/3でインフルエンザ様症状(発熱)を呈する
・そこまでがちがちにならない→すりガラス影・網状影主体
・そこまでがちがちにならない→ステロイド効果見込める



③COP
・週~月単位で亜急性発症
・約半数でインフルエンザ様症状を呈する
・自然消退することもある。予後良好。
・細菌性肺炎みたいに肺胞にべたっと浸潤影
・約半数で白血球上昇。約2/3でCRP上昇。
・抗菌薬に不応で浸潤影が出たり引っ込んだりしたら疑う…のかな?


④AIP
・原因が見当たらないARDS
・予後不良



これくらいなら覚えられそう…。


~文献~
レジデントのためのやさしイイ呼吸器教室
UpTpDate Idiopathic interstitial pneumonias: Clinical manifestations and pathology
UpTpDate Nonspecific interstitial pneumonia
UpTpDate Cryptogenic organizing pneumonia




2016年3月23日水曜日

COPD急性増悪時の対応


以前、安定期COPDの治療についてまとめたので
教科書的な記載になりますが、急性増悪の治療もまとめてみます。
最近よく出会うのです。季節柄でしょうか。


COPDのある患者さんに、呼吸苦増悪、喀痰や咳嗽の増加、喘鳴などが出現し、
ほかの原因が考えにくいときに、急性増悪と判断します。
当たり前ですが、スパイロメトリーの結果で診断するわけではありません。あくまで臨床診断。

なので鑑別診断が重要です。
気胸、心不全、心筋虚血、肺塞栓といった鑑別が浮かんでくるかが大事そうですね。


第一選択はSABA吸入。SAMAを追加してもいいです。
多くの急性増悪患者は吸入手技がちゃんとできていないそうで。
言われてみれば、そりゃそうかもしれません。


全身ステロイド投与は入院日数短縮、肺機能、再発減少の効果があるそうで、入院患者では推奨されています。ただし死亡率低下まで強いエビデンスではないです。
コクランレビューはこちら

30mg/day程度を<7日間で投与するのがよさそうです。
コクランレビューはこちら

経口摂取ができれば第一選択はプレドニン錠です。


感染の関与が疑われるときは抗菌薬を用います。
当然ながら起因菌を同定する努力をしたうえで、エンピリックにはβラクタム+マクロライド(またはキノロン)でしょうか。
緑膿菌をカバーするかなどで変わってきますね。


SpO2は88-92%を目標に。

中等度以上の呼吸困難、急性呼吸性アシドーシス(pH<7.35またはPaCO2>45mmHg)、頻呼吸があり、気管確保の必要がなく患者さんが協力的なら、NPPVによるBi-level PAPの適応です。

はじめはIPAP 4cmH2O/ EPAP 8cmH2O程度から始めたのでよさそうです。
実際につけてみるとわかるのですが、結構大変です。圧を上げるのは慣れてから必要があればでよいと思います。
つけてみて本人の症状が改善すればOKです。
あとは、PaO2(モニターではSpO2)をみながらFiO2の値を変えます。
S/Tで設定する最低呼吸回数は10/min程度と低くします。呼吸数を早く設定してしまうと、呼気が終わる前に吸気が来てしまいます。
モニターの値はみますが、最も鋭敏かつ信頼できる指標は「本人の自覚症状」です。


挿管+人工呼吸管理に至った場合の設定について。
どうせモニター見ながら調整するので、思い切ってわかりやすい数字にしてみました。
キーワードはpermissive hypercapniaです。

まずはA/Cで。VCVなら一回換気量は6ml/kg(理想体重)程度が良いと思います。
身長170cmの男性で400ml程度ですね。

呼吸回数は10/min程度。
早すぎると呼気が終わる前に吸気がきて、肺が過膨張してしまいます。
ミストリガーの原因ともなるので、呼気で流量波形がしっかり基線まで戻っていることを確認です。
PaCO2の正常値は目指しません。pH>7.15ならばPaCO2高値は許容します。
これをpermissive hypercapniaといいます。肺損傷を防ぐためですね。

FiO2は40%程度から開始。COPD単独で重度苦の低酸素血症を招くことはありません。
PaO2をみながら、上げ下げするのが良いと思います。

吸気流量(VCV)は75L/min程度と多めに。吸気時間も短くなっていい感じです。

抜管できるかの評価は、SBTで行いますが、
COPDの場合は、抜管直後にNPPVにするのも良いとのことです。


以上、のべつまくなしに書き並べてみました。


~参考文献~
レジデントのための感染症診療マニュアル
Washington Manual
病態で考える人工呼吸管理
http://ameblo.jp/bfgkh628/entry-11369520272.html





2016年3月21日月曜日

ストレス潰瘍の予防


重症患者の急性期に出血性胃潰瘍→予防しておけばよかった
という経験があるので、以下の文献をまとめてみます。

Prevention of stress-related ulcer bleeding at the intensive care unit: Risks and benefits of stress ulcer prophylaxis
World J Crit Care Med. Feb 4, 2016; 5(1): 57-64


・PPIやH2RAは胃粘膜からの出血を予防できる
・ただ、ICU患者の薬剤によるストレス潰瘍予防は、全体の死亡率減少には寄与しない

・ICUで胃出血が起こると死亡率は49%。胃出血がない場合は9%。
・多変量解析をすると胃出血が死亡率を上げない。

・出血のリスク因子:人工呼吸(OR 15.6)、凝固障害(OR 4.3)、3つ以上の併存疾患(OR 8.9)、肝障害(OR 7.6)、腎代替療法(OR 6.9)

・使用する薬剤はPPIの方が最も出血予防できる。
・ICUでのストレス潰瘍予防のフローチャート(毎日評価すること)




・なぜ全員に予防しないのか。有害事象があるから。

・クロストリジウム腸炎や肺炎のリスクが高くなる可能性がある。
・肝硬変患者ではPPI使用は独立した死亡リスク因子となる(SBP増やしてしまうからか)。

・薬物相互作用も注意。たとえばクロピドグレルを阻害して心血管イベントが増える。
・重症患者では肝毒性、骨髄毒性、低マグネシウム血症の可能性もある。

・ストレス潰瘍の予防策はなにもPPIだけじゃない。経腸栄養ができればそれがベスト。




2016年3月16日水曜日

副作用救済給付(2016.2)



PMDA(医薬品医療機器総合機構)
「副作用救済給付の決定に関する情報」
毎月発行されるので、目を通すことにしています。

今月2月発行分より、目についた副作用報告をいくつか抜粋します。


ラモトリギン(ラミクタール):多形紅斑性薬疹

炭酸リチウム(リーマス):汎発性薬疹・肝障害

メトトレキサート・アダリムマブ(ヒュミラ):肺炎→死亡
免疫抑制による細菌性肺炎、ニューモシスティス肺炎発症リスク上昇

レボメブロマジン(ヒルナミン)・リスペリドン・アリピプラゾール(エビリファイ):肺血栓塞栓症→死亡
抗精神病薬は頻度不明ながらDVT,PEの報告あり

ランソプラゾール:collagenous colitis

ロキソニン・リバビリン・ペグイントロン:間質性肺炎

バクタ:白血球減少・肝障害

アレンドロン(ボナロン):大腿骨骨幹部非定型骨折

アムロジピン・ランソプラゾール・クロピドグレル(プラビックス):再生不良性貧血
薬剤性再生不良性貧血の被疑薬としては、NSAIDs、抗てんかん薬、ニフェジピンなどがある

セレコックス:間質性肺炎→死亡

ヨーピス:腸閉塞→死亡

タミフル:虚血性大腸炎

ラペプラゾール・アモキシシリン・メトロニダゾール:出血性大腸炎

カロナール・ガレノキサシン(ジェニナック):多形紅斑性薬疹

半夏瀉心湯:肝障害

アモキシシリン:出血性腸炎

ロキソニン・PL顆粒・イナビル:中毒性表皮壊死症

ロキソニン・メジコン・ムコダイン・トスキサシン:アナフィラキシー

ミノサイクリン:DIHS

クラビット:アナフィラキシー

ルル(OTC):アナフィラキシー

ノーシン(OTC):アナフィラキシー

ヤーズ:肺血栓塞栓症

バファリン(OTC)・テプレノン:肝障害

メジコン・スペリア・ジェニナック:過敏症(皮疹、顔面上下肢の浮腫)


チアマゾールによる無顆粒球症など教科書的な副作用も報告されていますが
多いのは感冒薬、解熱薬、抗菌薬による副作用との印象を受けました。

タミフルは消化器症状の副作用発現が多いですが
他院でタミフル+抗菌薬を処方された患者が血便で当院受診されたケースがあり
適正使用の必要性が改めて沁みました。


2016年3月4日金曜日

不整脈原性右室異形成について



失神→じつは心室性不整脈をきたす疾患として、最近になって初めて知ったので、まとめます。

不整脈原性右室異形成(AVRD: arrhythmogenic right ventricular cardiomyopathy)

・有病率は1/2000~1/5000
・心臓突然死の原因となる

・症状:動悸(67%)、失神(32%)、胸痛(27%)、呼吸困難(11%)など
・多くは無症状(40%)

・30%は家族性
・10-50歳でみられ、診断がつく平均年齢は30歳

・心室性不整脈は、心室期外収縮の多発や、心室頻拍など。これが動悸の原因。
・最も多いのは単源性心室頻拍(左脚ブロックパターン)
・心室頻拍や心臓突然死は運動で誘発されうる

・まれに家族性のAVRDがあり、手掌足底の角化症ともじゃもじゃな頭髪が特徴となる。


・心電図異常で疑ったり、AVRDを疑って心電図をとったりするが、半数近くの患者は正常心電図となる。
・胸部誘導でQRS延長:右室活動の延長を意味する。V1でQRS>110msecだと感度24-70%。
・S波の上りが遅い(>55msec):右脚ブロックを伴っていなければ感度91-95%。V1-V3で。
・ε波(QRSとTの間に見られる波):感度30%。右室の一部の活動が遷延することによる。
・V1-V3でT波陰転化

・運動心電図で心室性期外収縮が増えるのを確認することもある

・エコーは疑ったら行う。
・右室拡大、右室収縮機能低下、余計な肉柱形成などが所見




失神をみたら、心原性を疑うRed flagをきちんと聴取する。
Red flagがあれば、AVRDも考慮して検査する。


参考:UpToDate Clinical manifestations and diagnosis of arrhythmogenic right ventricular cardiomyopathy