2021年1月26日火曜日

住宅の保障と医療アクセス

Chen KL, Wisk LE, Nuckols TK, et al. Unmet Medical Needs Among Adults Who Move due to Unaffordable Housing: California Health Interview Survey, 2011–2017. J Gen Int Med 2020 Dec 28 [Epub ahead of print]. https://doi.org/10.1007/s11606-020-06347-3

背景

安定した手頃な価格の住宅は、健康の決定要因として確立されている。米国全土で手頃な価格の住宅が不足しているために、人々が自宅から追い出されるおそれがあるため、費用に関連する住宅の移動が医療アクセスに与える影響を理解することが重要である。

目的

費用に関連する引っ越しと満たされない医療ニーズとの関係を検討する。

デザイン

カリフォルニア州健康面接調査の7波(2011年~2017年)を対象に横断研究を行った。

参加者

18歳以上の全回答者を対象とした。

主な測定

主な予測変数は、過去5年間の自宅の引っ越し歴(費用に関連する引っ越し、費用に関連しない引っ越し、引っ越しなし)であった。主要アウトカムは、過去1年間における満たされない医療ニーズ(必要な薬や医療ケアが遅れている、または受けられていない)であった。

主な結果

我々のサンプルには 146,417 人の成人(回答率 42-47%)が含まれており、その加重人口は 28,518,590 人であった。全体では、サンプルの20.3%が過去1年間の満たされない医療ニーズを報告し、4.9%が過去5年間に費用関連の引っ越しを報告した。多変量ロジスティック回帰モデルにおいて、満たされない医療ニーズの調整後リスクは、引っ越しをしなかった人と比較して、費用に関連する引っ越し(aOR 1.38;95%CI 1.19-1.59)および費用に関連しない引っ越し(aOR 1.17;95%CI 1.09-1.26)の双方で増加していた。引っ越しをした人の中で、費用に関連する引っ越しをした人は、費用に関連しない引っ越しをした人に比べて、満たされない医療ニーズを報告する可能性が高かった(p = 0.03)。

結論

家賃が賄えないために引っ越しをした人々は、満たされない医療ニーズのリスクが高まる集団である。人々の健康を改善しようとする政策立案者は、費用に関連する引っ越しを少なくして、医療アクセスへの悪影響を緩和するための戦略を検討すべきである。

感想

非常に重要かつ目の付け所が鋭い研究.米国では家賃を払えなくなった人が家から追い出されるというのが社会問題化していて(例えばサブプライムローンの時にかなり多くの人が自宅を失っていたはず),それは健康に悪影響を与えるはずだという仮説のもと,今回の研究では,経済的理由で家を手放した場合に医療アクセスが悪くなるということを観察研究で示しています.このようなエビデンスを一つずつ積み重ねることが,健康格差の是正につながっていくと思います.