2017年4月30日日曜日

ミニレクチャー 尿酸降下療法と食事療法


10分でまとめ5分で発表するミニレクチャー


Q. 尿酸降下療法の適応は?

A. The Lancet, Oct.22,2016の痛風レビューによると,以下が適応
・発作が年2回以上
・痛風結節あり
・stage2以上のCKD (GFR90以下)
・腎結石
治療するなら,尿酸値は6以下に下げる.
第一選択はアロプリノール.100mgで開始,腎障害あれば50mgで開始,ゴールまでゆっくり増量.

腎障害患者で使用後8週以内に発熱,発疹,白血球増加,好酸球増加,腎障害,肝障害を来すことがある(allopurinol hypersensitivity syndrome)


Q. 食事指導に意味はあるのか?どうすればいいのか?

A. 食事療法で痛風発作は減少しないというエビデンスがある
アルコールと果糖は肝代謝で尿酸になる.
赤身肉は発作triggerになりうる.レバーも注意.

プリン体[mg/100g]はウニ137,イクラ3.7
うに丼50gで約70mg 痛風学会の基準は400mg/d うに丼6杯食べなければ大丈夫



2017年4月26日水曜日

胃前庭部毛細血管拡張症


入院患者の突然の貧血→上部消化管内視鏡でwatermelon appearance
というのを経験したので,復習します.


胃前庭部毛細血管拡張症(GAVE: gastric antral vascular ectasia)

・じわじわ出血→鉄欠乏性貧血のパターンが多い
・肝硬変,強皮症と合併することもあるが,たいていは特発性
・31%で門脈圧亢進
・高齢女性に多い

・内視鏡で凝固したりバンドで結紮したり
・内科的治療はあまり奏功しない
・ちょくちょく輸血する必要が出ることも


以前の記事もご参照ください.


2017年4月18日火曜日

ミニレクチャー subclinicalな甲状腺機能異常


10分でまとめ5分で発表するミニレクチャー


Q. subclinical hypothyroidismを治療するべきか
A. Cochrane Libraryでは以下の通り.
  ・治療しても死亡率改善なし.
  ・QOL,症状も有意差なし.
  ・左室機能,脂質は改善するかも


Q. subclinical hyperthyroidismは治療するべきか
A. Cochrane Libraryでは治療のレビューは作成途中.
ただし,subclinical hyperthyroidismは年1-5%で明らかな甲状腺機能亢進症になる.
日本とブラジルが協働した研究では,subclinical hyperthyroidismの死亡HRは1.5-5.9(7.5年フォロー)とある.


UpToDateでは以下の表のとおり


頭に入らないので,正確性を犠牲にして要約すると
 ・65歳以上→治療しましょう
 ・心血管疾患or骨粗鬆症あり→治療しましょう
 ・TSH0.1以下→治療しましょう


≪Clinical Pearl≫
subclinical hypothyroidismはあまり積極的に治療しなくてよい
subclinical hyperthyroidismは適応広めにして治療するのがよい


2017年4月12日水曜日

ADPKDについて


ADPKDのマネージメント,知らないことだらけでした.

【診断】
家族歴が分からない場合,以下の基準を用いる.
15-39歳:両側合計で腎嚢胞3つ以上
40-59歳:両側ともに腎嚢胞2つずつ以上
60-歳:両側ともに腎嚢胞4つずつ以上

【自然史】
40歳代までは腎機能正常.
腎機能が落ちだしたら,GFRが4.4-5.9/年で低下していく.
蛋白尿は予後不良(約27%).
死因は心血管が多い(36%)ため,血圧管理が大事.脂質異常あれば積極的にスタチンを.
脳動脈瘤にも注意.死因のうち破裂6%,脳出血5%.腎癌で死亡する人はいない.

【治療】
・血圧は130/80目標に.110/75以下になればなお良し.first choiceはACEI
・ADPKD進行を抑制する確立された治療はないが,バソプレシン受容体アンタゴニストは良いかも.水をたくさん飲むのもよいとされるが効果は小さい.
・プラバスタチン(メバロチン)は,小児患者で進行抑制作用あるかも.

【症状】
・濃縮力低下による口渇,多尿頻尿,夜尿
・嚢胞出血による側腹部痛.血尿は出たりでなかったり.
・25%の患者に腎結石
・側腹部痛を見たら嚢胞感染,腎結石,嚢胞出血を考える.
・腎性貧血は起きづらい

【合併症】
・肝嚢胞,膵嚢胞もみられる
・弁膜症合併が多い.特にMVPとAR
・冠動脈瘤と冠動脈解離も多い
・大腸憩室合併が多い
・十二指腸憩室による嘔気,嘔吐,腹痛,吸収不良,胆管膵管閉塞に注意.
・腹壁ヘルニアは45%の患者で見られる

【TIP】
・ADPKD患者はコルチゾールが少し高い.検査解釈に注意.(Exp Clin Endocrinol Diabetes. 2010; 118:741-6)


参考
UpToDate
 Diagnosis of and screening for autosomal dominant polycystic kidney disease
 Course and treatment of autosomal dominant polycystic kidney disease
 Renal manifestations of autosomal dominant polycystic kidney disease
 Extrarenal manifestations of autosomal dominant polycystic kidney disease


2017年4月8日土曜日

PSAの評価と前立腺がんの検出



PSAまたは直腸診による前立腺がんスクリーニングは大規模RCTで有効性が否定されています(N Engl J Med 2009; 360:1310-19)ので,家族歴がある人以外では基本的に推奨しないようにしていますが,

前立腺肥大がある患者の評価でPSAはどう使えばよいのでしょうか.


トップジャーナルから学ぶ総合診療アップデート(第2版)に,NEJM 2007; 357:2696-705が紹介されています.

PSA>4で悪性を疑うというのが一般的かと思いますが,以下の指標が紹介されています.

・PSA density=PSA/前立腺容積[ml]<0.1は正常所見
・PSA velocity=⊿PSA density/⊿年>2は悪性所見

ちなみに,前立腺容積=横×前後×頭尾/2です.
正常値は4×1.5×2.5/2=7.5です.「良い子がにっこり」と覚えるようです.


でも,じゃあ前立腺肥大症全員にPSAを測定するのかという話になります.
もうちょっと対象者を絞りたいです.

もちろん一般的な病歴を聴取して,持続血尿や神経学的異常,体重減少があれば癌をうたがうことになります.意外なのは勃起不全.癌患者の30.9%は初診時に勃起不全の症状があるようです.(Br J Gen Pract 2006; 531: 756-62)

くわえて,直腸診の悪性所見は,弾性硬,辺縁不整,前立腺左右差,硬結などです.

忘れてはいけないのは,PSA低値でも癌を否定できない事です
癌患者の15%がPSA<4,9%がPSA<1です.(N Engl J Med. 2011; 365:2013-9)

以上より
risk factorを聴取して,直腸診をして,検査前確率を上げてから
エコーで容積を測って,PSA densityをだして,フォローを適切に行う
という流れがよいかなと考えました.
大事なのは,全ての前立腺がん≠致死性ではないことを患者さんとshareすることでしょうか.

なお,65歳以上なら全摘術の適応にはならないようです.TURPやホルモン,放射線などで様子を見ていきます.
⊿PSA>0.2で再発を疑います.PSAは術後フォローには素晴らしい検査です.


参考:ホスピタリストのための内科診療フローチャート

2017年4月4日火曜日

骨軟化症について





高齢者の骨軟化症,全くイメージがわかなかったので調べてみました.

原因(後天性のみ)
・ビタミンD不足:日光不足,食餌性,胃切後など
  脂溶ビタミンなので肝機能障害・膵機能障害・胆汁鬱滞にも注意
(胃切→https://www.jstage.jst.go.jp/article/juoeh/35/1/35_25/_pdf)
(PD→https://www.jstage.jst.go.jp/article/naika1913/71/11/71_11_1566/_article/-char/ja/)

・慢性腎障害,尿細管性アシドーシス(2型)
(RTA→https://www.jstage.jst.go.jp/article/nishiseisai1951/31/1/31_1_160/_article/-char/ja/)

・ビスホスホネート,アルミニウム製剤,鉄剤,長期の抗てんかん薬など
(鉄剤→https://www.jstage.jst.go.jp/article/juoeh/35/1/35_25/_pdf
 https://www.jstage.jst.go.jp/article/naika1913/71/11/71_11_1566/_article/-char/ja/)

・腫瘍性:FGF23分泌性腫瘍
(https://www.jstage.jst.go.jp/article/clinicalneurol/48/2/48_2_120/_pdf)

症状
・骨痛:特に下位脊椎,骨盤,下肢.骨折を起こすことも
・筋力低下:遠位から進行.筋緊張低下,運動時不快感の合併も
・歩行困難
・低カルシウム血症による筋スパズム等の症状

検査
・ALP高値(ほぼ100%)
・Ca/P低値(1/3程度でのみ)
・25[OH]D低地,PTH低値

鑑別疾患(というより以下の病気と誤診されやすい)
・リウマチ性多発筋痛症
・線維筋痛症
・骨粗鬆症
・変形性関節症
・頸椎/腰椎ヘルニア

全身の疼痛を訴える場合は,滑液包炎か?神経痛か?関節痛か?等を確認し,
「全身の骨痛」というキーワードで骨軟化症を疑い
病歴とCa, P, ALPで診断に迫る,という流れでしょうか.

参考文献:UpToDate Epidemiology and etiology of osteomalacia
UpToDate Clinical manifestations, diagnosis, and treatment of osteomalacia