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2017年3月29日水曜日

NEJM Case Record 2017-9


思い出したようにNEJM Case Recordです.

Case 9-2017
A 27-Year-Old Woman with Nausea, Vomiting, Confusion, and Hyponatremia

27歳女性
1週間前に嘔気,嘔吐(非胆汁性,非血清)あり.数時間で軽快した.
2日前の夕方,嘔気と数回の嘔吐あり.その後,傾眠,歩行不能になったため近医を受診した.
バイタルサイン:体温36.1℃,血圧94/64mmHg,脈拍100bpm,呼吸数16/min,SpO2 100%ra
質問や指示に応じず,話は的を射ない.時折啼泣し,四肢を意味もなく動かしている.低血圧に対し生食投与を行った.
血液検査:Na 104,K 5.1,Cl 74,CO2 19,BS 114 ,AG 11
集中治療が可能な病院に移送した.移送中に患者は興奮し横にじっとできなくなった.

搬送先病院バイタルサイン:体温36.7℃,血圧102/57mmHg,脈拍92bpm,呼吸数12hi/min,SpO2 100%ra

尿所見:比重740,Na 158
瞳孔正常,粘膜湿潤,心音呼吸音正常,腹部所見なし.頭部CTと胸部レントゲンは正常.

さて,診断は?

最大のプロブレムは低ナトリウム血症
くわえて,間欠的嘔吐,昏迷・興奮,高比重・高ナトリウム尿,輸液に反応する低血圧,高K血症,AG正常性代謝性アシドーシス

低ナトリウム血症をみたら,まずは体液量評価をする.
このケースでは,最初は細胞外液量低下→輸液で正常体液になった.
くわえて,尿比重が高いということはADH高値であるということ

腎症や中枢性塩喪失症候群は否定的.
妊娠は低Na血症を来すがこんなに重症にはならない.
甲状腺機能低下症は原因となりうる→ホルモン測定で除外できた.
SIADHは除外診断

利尿薬使用による低ナトリウム血症はどうか.
最多の原因薬物はサイアザイド.ループ利尿薬より低ナトリウム血症を来しやすい.
特徴は,尿濃縮能力が保たれている・ADH反応性がある・体液量正常であることが多い点.
服用1-2週で発現する.

副腎不全,特に一次性はどうか.
低ナトリウム血症に至る経路は,コルチゾール不足によるADH上昇とアルドステロン不足(原発性のみ)の2つ.体液量は低~正常.
副腎不全は低血圧を来す.コルチゾール不足による血管拡張または嘔吐やアルドステロン不足による体液量低下.

MDMA乱用もADH上昇による低Na血症を来す.
高体温になるので飲水も促される.
その他の徴候は,高血圧,頻脈,横紋筋誘拐,セロトニン症候群など.

このケースでは利尿薬乱用か副腎不全が考えられる.
利尿薬乱用はふつう,低K血症かつ高アルドステロン症による代謝性アルカローシス
副腎不全なら低アルドステロンによる高K血症と代謝性アシドーシス

原発性副腎不全なら色素沈着がほぼ必発だが頻繁に見逃される.
そう思って調べると,屈曲部位に色素沈着が見られた.

追加の病歴をとると,じつは数か月前から倦怠感があり,運動機能が低下していた.

というわけで,最終診断は原発性副腎不全でした.
低Na血症の鑑別はシステマティックに行うようにしましょう.

2016年8月12日金曜日

ミルク・アルカリ症候群



今週のNEJM Case Recordが,ミルク・アルカリ症候群についてでした.
Case 24-2016 — A 66-Year-Old Man with Malaise, Weakness, and Hypercalcemia

このブログでも以前取り扱っています


過剰検査に対する注意などもかかれており,非常に勉強になるので,ぜひ本文も読んでください.
ミルク・アルカリ症候群について簡単にまとめます.

現在ではカルシウム製剤やビタミンDが広く使われるようになったことで,発症が増えています.
2005年の研究では,高カルシウム血症の8.8%,重症の場合は25.7%を占めています.

サイアザイドはCa再吸収を促進するためリスク因子となります.
NSAIDsもリスクです.

高Ca血症に加え,急性腎障害,代謝性アルカローシスが起こります.
高Ca血症+急性腎障害なので,多発性骨髄腫との鑑別が問題となります.
そもそも高Ca自体が脱水→腎前性腎不全をきたすので,これだけでは決め手に欠ける印象ですね.




2015年5月1日金曜日

NEJM Case14-2015



NEJM Case Recordです。
今週は議論が込み合っていて、すっきりとした結論が出ているわけではないのですが
「目に見えているものだけが真実とは限らない」という感じでエキサイティングでした。

Case 14-2015 — A 58-Year-Old Woman with Shortness of Breath

【患者】ジョギングが日課である58歳女性
【主訴】8か月前から進行する息切れ

8か月前にジョギング時の息切れを自覚。症状はどんどん進行し、階段を上っただけでも息切れが出るように。足のだるさもでてきた。喘息治療は効果なし。心エコー正常。Dダイマー正常。

陰性所見:起坐呼吸、発作性夜間呼吸困難、wheezing、浮腫、咳嗽、喀痰、発赤、悪寒、頬部圧迫感、同期、便変化、排尿症状、チアノーゼ、ばち指、リンパ節腫大

既往:骨粗鬆症、偏頭痛、脂質異常症、季節性アレルギー、軽度AST・ALT高値、乳腺石灰化
薬剤:アレンドロネート、シムバスタチン、ロラゼパム
生活:アルコールなし、30年前に禁煙(3年間のみ喫煙)

%FVC 101%, %FEV1 97%, FEV1/FVC 0.76, %TLC 97%, %DLco 92%
AST 56, ALT 60, ANA (+; 1:40), RF(-), ANCA(-), その他血液検査異常なし

CTは以下の通り。



プロブレムリストは以下の通り。

#進行性の重篤な労作時呼吸困難
#両側上肺野中心に結節(数個)と胸膜肥厚(葉間裂にわたる)
#下肢のだるさ

そしてとても大事なことが…
#症状の割に
 ・画像所見が派手じゃない
 ・呼吸機能検査に異常がない
 ・労作時呼吸困難以外の呼吸器症状がない

私が最初読んだときは、この「症状との乖離」に気づくことができませんでした。
最終診断を下すよりよっぽど大事なことだと思います。


肺野に多発結節があるときの3大鑑別診断は、感染症、癌、血管炎です。
感染症は、結核や真菌症(ヒストプラズマとか)が挙がりますが、咳嗽や発熱がなかったり期間が長すぎたりと、合わない点が多いです。
癌の多発転移だと、普通は下肺野中心です。
血管炎だとしても、発熱や手足のしびれ、腎障害といった他の症状に乏しいです。
というわけで、どうもこの結節は間質性の変化みたいです。

肺間質の疾患は、サルコイドーシス、過敏性肺臓炎、肺ランゲルハンス細胞組織球症、塵肺症などが挙げられます。
特定の物質の曝露歴はありませんし、喫煙者ではないため肺ランゲルハンス細胞組織球症も否定的です。ただし、サルコイドーシスを完全に除外することはできません。

画像的に本例と合致する疾患は以下の通り。
特発性器質化肺炎(COP)
慢性好酸球性肺炎
膠原病関連間質性肺疾患(膠原病の全身症状が出る前に間質性肺疾患が出ることがある)

ここで、初めに述べた「症状との乖離」についてもう一度考えてみます。
もしこの患者に画像的な異常がなかったらと考えると、
呼吸困難は呼吸器によるものではなく、呼吸筋によるものではないか、
下腿のだるさと、薬剤歴を踏まえると
スタチンによるミオパチーが挙がってきます。
スタチンが間質性肺疾患を引き起こすことも、非常に稀ながらあるみたいでして、
いよいよこれで決まりか、と思ってしまいますが、
実際は、スタチンは数週間前に始まったばかりであるとのこと。あらら。


生検の結果、特発性のpleuroparenchymal fibroelastosis (PPFE)との診断が下されました。

くだんの「症状との乖離」ですが、
・腰痛があり、歩きにくいのはそのせいと考えることもできる
・子どもが7年前に頭部外傷による障害を負い、それがストレスになっている
・強く症状を訴えているが、いまでも7kmのジョギングをこなすことができる

ということがさらなる医療面接で明らかとなりました。


最終診断こそマニアックですが
診断をしていく上で非常に大切な事項が盛りだくさんでした。


~Clinical Pearls~

・目に見えるものだけが真実とは限らない

 ・「症状と検査との乖離」に気づく。「検査値正常」はときに異常である。

 ・心惹かれる所見に出会ったら、本当にそれで全てが説明できるか考える。

 ・患者の訴えは、overestimateもunderestimateも避けるべし。


2015年4月24日金曜日

NEJM Case13-2015



今週のNEJM Case Recordです。
Case 13-2015 — A 27-Year-Old Woman with Arthralgias and a Rash


【患者】タークスカイコス諸島で蚊に刺され、8日前に帰国した27歳女性
【主訴】関節痛、発疹

5日前:指関節、手関節、肩関節痛と、腰痛、頸部痛、眼の奥の痛み、39.0℃の発熱、悪寒、嘔気、食欲不振、咽頭痛、眼の充血、陰部潰瘍、舌側面の潰瘍、味覚低下、頸部と鼠径部の圧痛を伴うリンパ節腫大が出現。
4日前:右前腕にピンク色で無痛の痒疹(蕁麻疹様)が出現。そこから1時間で、体幹と四肢に広がる。
3日前:関節痛が肘、膝、足首、足趾にも。手首以遠の腫脹あり。歯磨き時に歯肉出血。夕方に発熱、頭痛、発疹が消失。
2日前~:関節痛以外の症状が消失。
当日:新たに痒い丘疹が出現。手掌から始まり上肢、体幹、下肢に広がる。足底にはない。

BT 36.4℃、HR 69bpm、BP 135/87、RR 18/min、SpO2 98%r/a
ターニケット試験陰性。腎機能、電解質正常。Hb 14.2、WBC 5600、Plt 10.7万、ALT 52、AST 46


なんとなくデング熱かチクングニア熱かなと思うのですが、症状の細かい違いは良く知りません。
潜伏期はこんな感じだそうです。


デング熱とチクングニア熱は似ていますが、明確に区別すべき病態です。
デング熱は、最初の発熱以降すっとよくなることもあれば、重症化する人もそれなりにいます。
チクングニア熱は、重症化は稀ですが、強い関節痛がずっと続くのが悩みの種です。

チクングニア熱に特徴的なものとして、低Ca、高CK、粘膜潰瘍や蕁麻疹などの皮膚病変、小~中関節を対称に侵す多関節炎などがあります。
実際は、渡航地の発生状況などを参考に検査を進めていくのがいいと思います。
本例では検査にてチクングニア熱の診断となりました。

実際の論文ではたくさんの鑑別診断について解説しています。
ぜひご一読ください。


~Clinical Pearls~

・発熱、関節痛、発疹をみたら、渡航歴を聴取すべき。

・デング熱は良くなりやすいが重症化もあり、チクングニア熱は症状続いて苦しいが致死性ではない。

・多様な発疹、粘膜潰瘍、浮腫と多関節炎をみたら、チクングニア熱の可能性が高まる。


2015年4月9日木曜日

NEJM Case11-2015



NEJM Case Recordです。
今週は簡単ですね。本文はこちら

Case 11-2015
A 28-Year-Old Woman with Headache, Fever, and a Rash

患者は28歳女性。
当日朝起きたら、頭全体がとても痛い。体動で増悪し嘔気嘔吐も。
いったん寝て数時間後起きたら全身の筋痛あり。体温37.7℃。体幹と右上肢に紫斑あり。

というわけで、髄膜炎を疑う徴候がありますね。
鑑別としては、TTP/HUSや血管炎でしょうか。
紫斑がでる髄膜炎は髄膜炎菌によるものが有名です。この後、急激に悪化していく可能性があります。実際にこの患者は髄膜炎菌性髄膜炎で、入院後急激に悪化していきます。

同様の経過をたどっている症例が、2014年12月のMayo Clinic Proceedings Residents' Clinicにあります。記事はこちら


この患者は9歳の時にも髄膜炎にかかっています。
そして、髄膜炎菌の感染症になりやすい免疫不全といえば、補体欠損です。
補体欠損症だと感染した時の症状があまり激しくなく、またすぐ治るのだそうです。へぇー。

検査の結果、原発性C8欠損症が判明したそうです。


~Clinical Pearls~

髄膜炎+皮疹(紫斑)は超危険。いまは平気そうでも急激に悪化するかも。

髄膜炎菌曝露者へのリファンピン予防投与も忘れずに。


2015年3月28日土曜日

NEJM Case10-2015



先ほど旅行から帰ってまいりました。
遅くなりましたがNEJM Case Recordです。
本文はこちら


Case 10-2015
A 15-Year-Old Girl with Graves' Disease and Psychotic Symptoms

【患者】グレーブス病がある15歳女児
【主訴】精神病症状

3か月前、甲状腺機能亢進症状出現し、TSH低値とシンチによりグレーブス病と診断され、アテノロールとメチマゾールが開始となった。
5週前、身体の見た目についてイライラすることが増え、友達がいなくなった。
3週前、どこにいても声が追いかけてきて、悪魔に狙われていると妹に訴えた。自傷や自傷未遂を繰り返し腹部と手首に痕あり。毎朝3時には目が覚める。不安を訴え、食事をとらなくなった。

身長166cm、体重85.6kg、BMI 31.1
血圧137/81、心拍110整、呼吸数28、体温とSpO2は正常。見当識正常。
涙を流しさびしそうでそわそわしているが協力的。
血算、電解質、糖、腎機能正常。鉄、VitB12、フェリチン、甲状腺以外のホルモン正常。
毒物スクリーニング陰性。妊娠反応陰性。TSH<0.01。
メチマゾール増量。オランザピンとロラゼパム開始。6日目で精神病症状落ち着き、気分も明るくなった。

2週間前に退院。過度に信心深くなり、突然教会を変えたりした。
8日前、ネットで知り合った男性に会うために家を出て、翌日警察が保護、病院へ搬送。抑うつ気分とエネルギーのなさを感じているが、希死念慮と幻覚はなし。



3か月前から重症のグレーブス病に罹患している15歳女児に現れた精神病症状の原因は何でしょうか。
最初に答えを言ってしまうと、この症状はグレーブス病によって引き起こされたものであると考えられるそうです。

甲状腺機能亢進症は、イライラや心配などの精神症状は有名ですが、本症例のような躁症状や精神病症状は稀とのことです。どちらかというと甲状腺機能低下症で見られることが多いです(myxedema madness, myxedema psychosis)。

しかし、双極性障害や精神病の家族歴のある患者では特に、甲状腺機能亢進でも躁症状や精神病症状がみられることがあるそうです。治療開始後するに症状が出ることが多く、甲状腺の機能が亢進から正常に移行するときに起きやすいのではと考えられています。


私なら、このような患者さんに出会ったら、まず薬物と譫妄を除外したいと考えます。
いわゆるtreatable dementiaに内包する各種疾患やAIUEOTIPSが鑑別疾患に含まれるのではないでしょうか。


甲状腺機能亢進症の治療開始直後に発症した精神病症状の症例でした。


~Clinical Pearls~

甲状腺機能亢進症の治療開始直後に精神病症状が発症することがある


2015年3月19日木曜日

NEJM Case9-2015



今週のNEJM Case Recordです。
本文はこちら

Case 9-2015
A 31-Year-Old Man with Personality Changes and Progressive Neurologic Decline

【患者】19年前に交通事故で頭部外傷を負った31歳男性
【主訴】人格の変化、進行する神経学的障害

3年前から、音楽をずっと聞いたり、訳わからん買い物をしたり、吐くまで酒やたばこをしたり、人づきあいが亡くなったりという人格変化が始まった。生まれた子のミルクをうまく作れなかったりもした。

CTは以下の通り。前頭部の軟化は19年前の交通事故によるものだろう。しかしそれ以外のところも萎縮や異常信号がある。
とりあえずうつという診断で薬剤開始していたが効果なし。



1年前から意思疎通できず、時に失禁。いまは歩行、食事もできない。
診察では、命令に従うことができない、仮面顔貌あり。眼球運動は正常、指鼻試験も正常。
筋量減少あり、線維束攣縮なし。四肢筋緊張亢進し歯車様硬縮あり、ミオクローヌス時にあり、両側把握反射↑

薬剤:トラゾドン、ベンズトロピン、ヒドロキシジン、オメプラゾール、ハロペリドール


さーて、なんでしょうかねー。
3年の経過で進行した人格障害、神経機能障害ですね。
感染症(梅毒、HIV、ウイルス脳炎など)、金属中毒、神経変性疾患、自己免疫疾患などが鑑別だと私は考えました。漠然としすぎていますが。
treatable dementiaの検査(ビタミン、甲状腺など)はすべきだと思います。何か見つかる気はしませんが。

dementiaをみる場合、最初の症状に注目すべしとありました。
たとえばアルツハイマー病では、脳の後方がまず障害されるため、覚えられない、ことばが出ないといった症状がまず出ます。
本ケースでは、精神病的症状がまず出ています。非優位半球の頭頂葉、島皮質、眼窩前頭皮質の障害が考えられます。


急速進行の認知症(rapidly progressive dementia)の鑑別が載っていました。
CJD、ウイルス脳炎、中枢神経限局性血管炎(PCNSV: primary central nervous system vasculitis)、傍腫瘍症候群、自己免疫性脳症

傍腫瘍症候群による中枢神経症状といえば
肺小細胞がんなどによる辺縁系脳炎、卵巣腫瘍による抗NMDAR脳炎、あとはstiff-person症候群などが思いつきます。
意識していないと傍腫瘍症候群という鑑別は出てきにくいですね。

PCNSV(primary central nervous system vasculitis)は初めて知りました。
PACNS(primary angiitis of the central nervous system)ともいうらしいです。
以下、UpToDateJAMA Neurologyの総説を基に記載します。

PCNSVは脳の小~中血管を侵し、雷鳴頭痛や人格障害、意識レベル変化などを起こします。
脳脊髄液は正常所見で、画像も非特異的な変化であることが多いため、診断のため脳生検をすることもあるみたいです。
血管攣縮を起こす何らかの原因(妊娠、偏頭痛、薬剤)を探る必要があります。
治療はステロイドとシクロフォスファミドの併用です。骨粗鬆症とPCPの予防をする必要があります。

主な鑑別疾患はRCVS(reversible cerebral vasoconstriction syndrome)です。
雷鳴頭痛が数日~数週間周期におき、同時に神経所見も呈することがあります。
この場合、シクロフォスファミドのような細胞毒性の強い薬剤を使う必要はないので、しっかり鑑別する必要があります。



結局、一番可能性が高いのは前頭側頭型認知症(FD)だろう、だそうです。
えー!28歳初発のFDなんてあるのー!と思いましたが、読み進めてみると色んな発見が。

まず、FD一般について。
・発症は60歳代が多いが、60歳以下の認知症で最も多い原因でもある。
・精神病的症状で初発が多い。
・10-15%でAD遺伝が見られる。

・左半球が障害→失語症がメイン
・右半球が障害→精神病的症状がメイン(behavioral variant)

・behavioral variantの主症状は6つ(本ケースでは5つ当てはまっている)
 脱抑制、無感動、同情や共感の欠落、反復行動、口唇傾向(hyperorality:何でも口に入れる状態)、実行能力の欠落


FDは3つのサブタイプに分かれるそうです。初めて知りました。

①tauサブタイプ
いわゆるPick病。50-70歳代が初発で、認知症がゆっくり進行していきます。家族性は稀で、パーキンソニズムを呈することがありますがALSとの関連はほぼ間違いなくありません。

②TDP43サブタイプ
70歳前半で初発が多く、behavioral variant + ALSとなることが多い。年齢を除けば本ケースの特徴と一致する。

③FUSサブタイプ
もっとも稀なタイプ。初発は30-40歳代で、behavioral variant + ALSとなることが多い。病歴からは最も可能性が高い。



剖検も踏まえての最終診断は以下の通り。
Frontotemporal lobar degeneration with tau-positive inclusions (Pick’s disease subtype) due to a Gly389Arg MAPT mutation, resulting in the behavioral variant of frontotemporal dementia with parkinsonism


というわけで、28歳初発の前頭側頭型認知症のケースでした。


~Clinical Pearls~

・認知症は初発症状に注目する。

・rapidly progressive dementia:CJD、ウイルス脳炎、PCNSV、傍腫瘍症候群、自己免疫性脳症

・前頭側頭型認知症は、失語症がメインの型と行動障害がメインの型がある。

・behavioral variant:脱抑制、無感動、同情や共感の欠落、反復行動、口唇傾向、実行能力の欠落



2015年3月12日木曜日

NEJM Case8-2015



NEJM Case Recordです。
ざっくりまとめます。本文はこちら

Case 8-2015
A 68-Year-Old Man with Multiple Myeloma, Skin Tightness, Arthralgias, and Edema

【患者】多発性骨髄腫の治療を受けている68歳男性
【主訴】皮膚緊満感、関節痛、手足の腫れ

約2年前に多発性骨髄腫の診断をされ、多剤薬物療法開始。9カ月前に自家幹細胞移植し完全寛解。

約1年前より腰痛あり。3か月前の造影MRIにて圧迫骨折と多発する骨融解像あり。

2カ月前より手足の腫れと疼痛、皮膚緊満感出現。体幹四肢にびまん性色素沈着あり。レナリドミドによる維持療法開始になったが症状悪化のため中止。びまん性の関節痛も出現。
関節fat padの針生検では悪性細胞またはアミロイドはなし。

来院日、関節痛あり(6点/10点)。アシクロビル、スタチン、オメプラゾール服用中。
バイタルに異常なし。
両側のMP関節、PIP関節に腫脹圧痛あり。
膝より下に浮腫あり、色素沈着あり、発赤熱感なし。
CRP 54.7、CK正常値、各種抗体(SS-A, SS-B, Sm, RNP, Jo-1, Scl-70, CCP)陰性。
既往歴にGERDあり。家族歴に関節リウマチあり。
ステロイド開始。

5週間後、強い疲労感あり体がなかなか動かない、約3.5kgの体重減少。
関節痛は2/10点になったものの、こわばりや腫脹は依然強い。
黒色便あり、便潜血3+。上部内視鏡と生検で胃前庭部毛細血管拡張症と判明。
下部消化管は良性ポリープのみ。

3か月後、増悪する息切れあり。CTその他でNSIPに一致する所見あり。
またCTで、食道のびまん性拡張あり。

IVIGとボルテゾミブが開始も、5日後症状は悪化。下肢の関節が曲げられず、車いす使用。
その4日後、意識障害出現。言葉を見つけにくい。経口摂取低下。人に対してのみ見当識保たれている。血圧98/63、あらたに眼窩周囲と顔面の腫脹が出現。
Hb 8.1, Plt 88000, 末梢血破砕赤血球あり。BUN86, Cre 4.38, eGFR 14。フィブリノーゲンとはプログロビンは正常値。
尿検査でアルブミン2+、色素顆粒円柱あり、非変形赤血球あり、細胞円柱なし。


problem listを作ってみました。

○比較的急速に進行した筋骨格系の問題
 # 四肢の腫脹、皮膚緊満感
 # 多関節痛/腫脹、関節可動域制限
 # びまん性色素沈着

○急性期
  # 血圧低下
 # 軽度意識障害
 # 急性腎障害(thrombic microangiopathy によるものか)
 # 浮腫

○亜急性期
 # 息切れ→間質性肺炎
 # 貧血→胃前庭部毛細血管拡張症

○慢性期その他
 # 多発性骨髄腫寛解状態
 # 種々の薬剤投与
 # GERD、食道のびまん性拡張
 # リウマチ性疾患の家族歴あり


胃前庭部毛細血管拡張症(gastric antral vascular ectasia GAVE)という疾患を初めて知りました。
その名の通りの疾患で、短期間に貧血が進行し輸血が頻回に必要になることが多いそうです。

内視鏡所見からwatermelon stomachともいうそうです。
下の画像はUpToDateから。確かにスイカに見えますね。

UpToDateによれば、肝硬変や強皮症と関連するらしいです。





















本文の記載に従って、色素沈着と多関節痛(炎)を来す疾患について考えましょう。
私が思いついたのはこのくらい。zebraに思えて仕方がないです。
・POEMS 症候群
・アミロイド―シス
・ヘモクロマト―シス
・薬剤
・造影MRIによる腎性全身性線維症

上の3つは検査で否定的ですね。
腎性全身性線維症は、eGFR30以上だとまず発症しないそうです。
造影MRI検査時はeGFR>60なのでまずありえないかなと。
線維化はおもに皮膚ですが、肺、心、神経を侵すこともあるみたいです。

とここまでで行き詰りました。
本文を読むと、骨髄腫に関係する皮膚疾患が何個かあるみたいです。

強皮症
先行感染、糖尿病、MGUS、多発性骨髄腫との関係性があるそうです。
皮膚所見の分布が非典型的ですが、その他の所見は一致していますね。
GERD、間質性肺炎も説明できます。GAVEについては先述の通りです。
急性腎障害、軽度意識障害は、腎クリーゼで説明できます。高血圧はないですが。

なんで思いつかなかったのでしょうか…。
多関節炎の鑑別をしてしまったことと
多発性骨髄腫との関連を知らなかったことが原因ですね。

UpToDateには
Frank inflammatory arthritis is uncommon in SSc.
Joint pain, immobility and contractures develop as the result of fibrosis around tendons and other periarticular structures.
と書いてあります。
関節炎ではなく、関節痛、可動域制限、拘縮を診るのですね。
palpable and/or audible deep tendon friction rubs(腱がこすれる音)も大事な所見らしいです。


硬化性粘液水腫(scleromyxedema)
初めて知りました。
粘液水腫性苔癬の一形態で、ほぼ必ずIgG MGUSに合併するみたいです。
重症なものは多発性硬化症によっておこるとのこと。
診断基準は以下の4つです。本例では丘疹がないですね。

 ・丘疹と皮膚硬化が全身にある
 ・皮膚生検でムチン沈着、線維芽細胞増殖、線維化がある。
 ・モノクローナルのγグロブリン増殖
 ・甲状腺疾患がない


好酸球性筋膜炎(Shulman症候群)
骨髄腫を含む血液疾患で起こるみたいです。
手足や時に体幹から始まる急速進行の皮膚病変が特徴です。
オレンジの皮様の皮膚拘縮は有名ですね。
血中好酸球数が上昇していないので今回は否定的です。



というわけで、多発性骨髄腫寛解状態の68歳男性が強皮症を発症し、診断の遅れから腎クリーゼになったという症例でした。


~Clinical Pearls~

強皮症の腎クリーゼに注意。BUN, CreだけでなくRBC, Pltも確認。

強皮症の関節所見は、関節痛、可動域制限、拘縮。

GAVEは内視鏡でスイカの皮に見える。肝硬変と強皮症に注意。

骨髄腫と関係のある皮膚疾患:強皮症、硬化性粘液水腫、好酸球性筋膜炎


2015年2月26日木曜日

NEJM Case7-2015



今週のNEJM Case Recordです。
本文はこちら


Case 7-2015
A 25-Year-Old Man with Oral Ulcers, Rash, and Odynophagia

【患者】25歳男性
【主訴】口腔内潰瘍、発疹、嚥下時痛

【現病歴】
18日前:副鼻腔が軽く詰まったような感じが出現
16日前:右股関節の手術をうけた。その後ナプロキセン処方
8日前:咽頭炎、嚥下時痛、発熱、戦慄、夜汗出現
5日前:外来受診。扁桃は腫大発赤、陰窩膿瘍と前頸部リンパ腫大あり。アモキシシリン処方。
4日前:体温38.6℃に症状
3日前:再受診。平熱に戻っていたが他の所見は変化なし。アモキシシリン継続も再び発熱。
2日前:再受診。扁桃より膿排泄あったが扁桃周囲膿瘍の所見なし。伝染性単核球症の検査は陰性。好中球優位のWBC上昇以外に血液検査異常なし。アモキシシリンクラブラン酸処方で帰宅。その後、口腔内病変と、顔面と体幹に散在する膿疱が出現
1日前:再受診。体温38.7℃。当院紹介受診。

【現症】
体温38.8℃、血圧147/82、脈拍110、呼吸数22、SpO2 97%r/a
陽性症状:嚥下時痛(8点/10点)、両下肢の筋痛、下腿の圧痛のある結節、肛門周囲の搔痒、3日前からの便秘、経過中に約3.5kgの体重減少
扁桃発赤。扁桃腫大発赤し陰窩膿瘍あり。頸部、頤下部、鼠径部リンパ節腫大あり。
下唇、顔面、口腔内、体幹、四肢に膿疱あり、手掌足底にはなし。各大きさ2mm以下。
圧痛のある結節が体幹、下腿、臀部に散在。
陰茎、陰嚢、肛門周囲に潰瘍あり。
迅速ストレップ陰性。血液検査値特に変化なし。尿検査異常なし。

【既往歴】
痤瘡、陰部びらん(自然治癒した)、好酸球性食道炎疑い



以下、議論です。

梅毒:2期梅毒は発熱、発疹、筋痛、リンパ節腫大、咽頭炎を起こすこともある。
ただ発疹の種類が違う。2期梅毒の発疹は斑状または斑状丘疹状となる。
また、2期梅毒の陰部病変は、浅い無痛性びらんと扁平コンジローマとなる。
他のSTIも、やはりこの患者の全身の皮膚症状を説明できない。

天疱瘡/類天疱瘡:口腔内病変だけでなく陰部病変をきたすこともある。
ただ、年齢が合わない。自然軽快している点も合わない。

Tリンパ球関連皮膚疾患:多形紅斑、びらん性扁平苔癬、TENなど。
NSAIDsや抗菌薬の曝露があり、口腔内と陰部に病変がある患者で疑う。
どれも患者の皮膚所見とは合わない。

クローン病:アフタ性潰瘍と結節性紅斑は合致するが、膿疱の存在と消化器症状の不在が合わない。



というわけで、やはりこの特異的な皮膚症状が曲者ですね。
最も可能性のある鑑別診断はベーチェット病だとおもいます。
皮膚症状だけを考えるならまずこれだろうと思います。
ただ、扁桃に膿がたまったりや嚥下時痛がおきたりするのかが私の知識外です。

口腔内アフタ、皮膚症状、眼症状、外陰部潰瘍の主症状のうち3つを満たしているので、厚生労働省ベーチェット病診断基準では不全型の診断ですね。
ちなみに副症状は、関節炎(変形や硬直がない)、副睾丸炎、消化器病変(回盲部潰瘍など)、血管病変、中枢神経病変です。

そういえば、「血管炎を疑ったら睾丸痛を調べる」というClinical Pearlを見たことがあります。
ベーチェット病のPearlでは、「若い日本人女性の脳梗塞をみたらベーチェット病を疑え」がありますね。

いろいろ調べてみたら、どうやら扁桃炎がベーチェット病発症の契機になるみたいです。
「喉風邪をひくと皮膚に発疹が出る」という病歴が聴取できることもあるみたいですね。

参考:扁桃炎を契機に増悪した完全型ベーチェット病の1症例


というわけで、嚥下時痛が初発となったベーチェット病の症例でした。


~Clinical Pearls~

ベーチェット病の発症初期は、扁桃炎や齲歯との合併が多い。

ベーチェット病の皮膚病変は、痤瘡様、丘疹‐小水疱‐膿疱、偽毛嚢炎、結節、結節性紅斑、表在性静脈炎、壊疽性膿皮症様、多形滲出性紅斑様、触知可能な紫斑。



2015年2月19日木曜日

NEJM Case6-2015



今週のNEJM Case Recordです。
本文はこちら
いつものごとくさっくりまとめます。


Case 6-2015
A 16-Year-Old Boy with Coughing Spells


16歳男性が、咳がひどいと春の終わりに外来受診。

3週間前から咳嗽と鼻閉があった。抗ヒスタミン薬は効果なし。
3日前の夜にひどい咳の発作が出現。呼吸困難と咳嗽後嘔吐を伴った。
他院受診、ステロイドの点鼻と咳止め(ベンゾナテート)を処方された。

2日前、咳は続いていた。夜に再び咳の発作と嘔吐。鼻閉があるほか異常所見ない。
経口ステロイドとアルブテロール吸入薬が処方された。

以降、やはり咳は続いていた。当日夜、再び咳の発作が出現。

陽性症状:咳嗽、鼻閉、咳嗽後嘔吐、発作時鼻出血、発作時呼吸困難
陰性症状:発熱、扁桃腺腫大、頭痛、難聴、胸痛、非発作時呼吸困難、腹痛、消化器症状

身体所見:血圧140/79(右上肢)、119/72(左上肢)、心拍数83、体温36.5℃、SpO2 99%r/a
右肺野で呼吸音減弱。他の所見は正常。

検査:WBC 8200(好中球46.1%、リンパ球42.6%) 胸部レントゲン正常




以下、議論をまとめます。

咳嗽が8週間以上続くと、慢性咳嗽と判断します。
最も多い原因は反復感染です。
喘息、GERD、上気道咳症候群がメジャーですが
他には喫煙(受動含む)、嚢胞性線維症、異物誤嚥、気道狭窄、間質性肺疾患などが上がります。
特に小児では、異物誤嚥を鑑別から外さない意識が大事かもですね。

この症例では、咳発作の症状が激しいこと、発症が急であること、画像検査が正常であることより、感染症以外の上述の鑑別診断は考えにくくなります。
家族歴を聴くと、どうやら母親も4週間前から咳があるらしい。やっぱり感染症ですね。

副鼻腔炎としては発熱や疼痛がない。膿性鼻汁でもない。
結核としては曝露歴がなくX線で異常がない。(これだけで否定するのは危険だと私は思います。)
マイコプラズマにしては非典型だけど可能性は大いにある。
クラミジア肺炎は稀だけどやはり可能性はある。
ウイルス性だと発熱や全身症状が出るはず。

2014年はマサチューセッツで百日咳が流行ったらしいです。
ワクチン歴を確認すると、幼少期に接種しているが、その後のブースター接種はしていないとのこと。
日本では、DPTワクチンを通常生後3-12か月に3回、その12-18か月後に追加接種、さらに11-12歳にDTワクチンを接種、となっています。

百日咳といえば、まずカタル症状が出て、7-10日後に発作期となり咳がひどくなって、数週間で良くなる、という経過をよく勉強します。
咳発作は1時間に数回起こることもあり、夜に増悪します。咳嗽後嘔吐が認められることも多いです。非発作時は無症状です。

しかし、これはワクチン未接種者の場合。
ワクチンを受けた思春期以降の百日咳の症状は、慢性咳嗽が前面にでます。
失神、肋骨骨折、失禁、肺炎、痙攣、脳症を合併することもあるそうです。

百日咳の診断は各種検査を時期毎に使い分けます。



百日咳の治療は、マクロライド系を2週間投与+対処療法です。
周囲にうつさない注意も必要です。
家族や濃厚接触者には、マクロライド系を2週間程度服用してもらいます。


~Clinical Pearl~

ワクチン接種者の百日咳の症状は、慢性咳嗽が主体となる。

小児の慢性咳嗽の原因として、感染、喘息、上気道咳症候群の他に、異物誤嚥と受動喫煙も考える。


2015年2月17日火曜日

NEJM Case5-2015



ようやくオンライン環境に身を置くことができました。
書き溜めていた記事を投稿することができます。



NEJM Case Recordです。
Case 5-2015は以下の症例でした。

【患者】未分化大細胞型リンパ腫治療後の69歳女性
【主訴】繰り返し出現する丘疹



皮膚リンパ系悪性腫瘍についての専門的な議論がされていました。
診断はリンパ腫様丘疹症(Lymphomatoid papulosis)でした。


聞いたことのない病名だったのでUpToDateなどで調べてみました。
皮膚科と病理部にお任せする疾患だとは思います。

リンパ腫様丘疹症では中心に壊死や痂皮を伴う丘疹や結節ができますが、3-8週で自然に消えます。その際、色素沈着や瘢痕を残します。
出ては消えてを結構長い間繰り返すみたいで、新旧の皮疹が混在していることも多いそうです。

予後良好なので美容の問題がなければ経過観察がいいです。ただし、菌状息肉腫、未分化大細胞型リンパ腫、ホジキンリンパ腫など他の悪性疾患の発症リスクがあるので長期フォローが必要です。発症の順番は問わないみたいです。


調べてみたら初診では帯状疱疹疑いだった例などが出てきました。
私の医師人生でこの疾患に出会う日は来るのでしょうか。



皮膚のT細胞系悪性腫瘍だとATLや菌状息肉腫、Sezary症候群が有名ですよね。

ATLは日本にいる限りは勉強する必要がある疾患だと思います。
沖縄や九州の一部ではHTLV-1キャリア率が約5%とのことです。こんなに多いんだとびっくりです。長崎県では発症・死亡が年間で70件あるそうですが、納得の多さですね。ですが、妊婦のスクリーニングが功を奏しているみたいで、B型肝炎ウイルスと同じくそのうち駆逐されそうな雰囲気です。

宮城征四郎先生の本で、頑固な便秘→高Ca血症→ATLという症例があったと記憶しています。
たしか「Dr.宮城の白熱カンファレンス」だったと思います。沖縄らしいなーと納得しました。





高Ca血症の鑑別としては、薬剤性、副甲状腺機能亢進症、悪性腫瘍の三大柱がまず想起されます。腎不全もCa高値となりますが、そもそもCrやBUNの値で気付くかと思います。マニアックなところだと肉芽腫性疾患や家族性ナンタラカンタラとかでしょうか。

高Ca血症の症状としては、多飲多尿、中枢神経症状、食欲低下、嘔気嘔吐、便秘、尿路結石などが頭の中にでてきます。高齢者が全身状態悪化して譫妄みたいになってる、というイメージがぱっと出てくるのですが、これだと若年者の高Ca血症を見落としてしまいそうですね。
UpToDateで調べると、他には膵炎、胃潰瘍、筋力低下、骨痛、徐脈、高血圧などがあるそうです。


全体の60%を占めるacute variantでは、治療しても予後は1年以内で、非常に恐ろしいという印象があります。
高Ca血症などでATLを疑ったら、全身のリンパ節腫脹(ほぼ100%でみられる)、肝脾腫(50%)、皮膚病変(50%)に注意して診察する必要がありそうです。感染に弱くなるのにも注意です。

今回勉強して一番意外だったのは、lymphamotous variant(20%を占める、血球異常が出ない)も予後はacute variantと同じだということです。acute variantと同じくCaやLDHは高値になります。

全体の15%をしめるchronic variantの予後は2-5年程度です。
しかし、Alb低値、LDH高値、BUN高値で特徴づけられるunfavorable chronic-typeの予後はacute variantと同じだそうです。



菌状息肉腫とSezary症候群は、私にとっては名前はよく聴くけどいまいち患者さんを想像できない疾患です。こちらの疾患はそのうち出会う気がします。

USMLEでは「乾癬と思っていたけど難治性で生検したら異型リンパ球が上皮内に集簇していて(Pautrier微小膿瘍)、菌状息肉腫と診断しました」という流れでよく問われている印象です。

ステージはpatch→plaque→systemicと進行します。
systemicまで進行して紅皮症やリンパ節腫大、血液中異型Tリンパ球(Sezary細胞)があるとSezary症候群、というイメージで理解しているのですが、これで正しいのでしょうか。


~Clinical Pearls~

リンパ腫様丘疹症では、中心に壊死や痂皮を伴う丘疹が、色素沈着を残しながら出ては消える。

高Ca血症の三大柱は、薬剤性、副甲状腺機能亢進症、悪性腫瘍(ATLを含む)。全身リンパ節、肝脾腫、皮疹に注意。



2015年1月29日木曜日

NEJM Case 4-2015



今週のNEJM Case Recordです。

本文はこちら

Case 4-2015
A 49-Year-Old Man with Obtundation Followed by Agitation and Acidosis


自殺目的で何かを服用した患者。
アニオンギャップ開大代謝性アシドーシスから何を考えるか、というケースでした。

アニオンギャップ開大代謝性アシドーシスの鑑別ですが
私はKUSSMALで覚えています。
(Kussmaulの大呼吸が見られることからの語呂合わせ)

Ketoacidosis(diabetic, alcoholic)
Uremia
Sepsis
Salicylate
Methanol
Aspirin
Lactic acidosis


これだとマニアックな中毒はカバーできないです。
そんなときはMUDPILES-CARTです。
こっちはさすがに暗記していません。

Methanol
Uremia
Diabetic ketoacidosis
Propylene glycol
Infection/Isoniazid
Lactic acidosis
Ethylene glycol
Salitylate
Cyanide
Alcoholic ketoacidosis
Rhabdomyolysis
Toluene


個人的には、アニオンギャップ開大代謝性アシドーシスをみると
ケトアシドーシス、乳酸アシドーシス、アスピリン中毒、不揮発アルコール中毒
がこの順番で思い浮かびます。

尿毒症と敗血症がどうしても鑑別から抜け落ちてしまいます。
この二つをアニオンギャップ開大代謝性アシドーシスからみつけるという経験がないからでしょうか。
ピットフォールにならないように、この際、しっかり頭に叩き込んでおこうと思います。
尿毒症と敗血症、尿毒症と敗血症、尿毒症と敗血症…


今回のケースでは、浸透圧ギャップが開いていたことが手掛かりとなりました。
アニオンギャップ開大代謝性アシドーシス+浸透圧ギャップ開大ときたら
不揮発アルコール中毒で決まりですね。
プロピレングリコールかエチレングリコールです。

治療は重炭酸ナトリウム→ホメピゾールです。
ホメピゾールは2日前に日本でも発売開始になりました。なんという偶然。


浸透圧ギャップ開大が分かれば診断は容易ですので
アニオンギャップ開大代謝性アシドーシスをみたときに浸透圧ギャップを測定できるかがカギだと思います。


意識障害をみたら、3つのギャップをさがせ
という言葉があるみたいです(出典はこちら)

アニオンギャップ
サチュレーションギャップ(CO中毒ではSpO2正常でもPaO2低下)
浸透圧ギャップ

に気を付ける必要があるとのことです。


アイスノンなどの保冷剤にもエチレングリコールは入っているみたいなので
自殺企図がないからといって安易に除外はできないですね。

また、プロピレングリコールはロラゼパム製剤に入っているそうです。
アルコール離脱譫妄だと思ってロラゼパムたくさん使っていたら、じつはプロピレングリコール中毒による譫妄だったという症例報告が2003年のthe Lancetにありました。

Agitation by sedation
Tuohy, Kathryn A et al.
The Lancet , Volume 361 , Issue 9354 , 308


~Clinical pearl~
アニオンギャップ開大代謝性アシドーシスをみたら浸透圧ギャップを測定する。


2015年1月22日木曜日

NEJM Case3-2015



今週のNEJM Case Records of the Massachusetts General Hospitalです。

記事が長いといわれたので、簡潔さを心掛けます。
時系列など大幅に端折ったので、全文を読みたい方はこちらへ。


Case 2-2015
A 60-Year-Old Woman with Abdominal Pain, Dyspnea, and Diplopia

【患者】真冬に救急受診した60歳女性

【主訴】腹痛、呼吸困難、複視

【現病歴】
1日前に、声が嗄れて太くなり、唾液が増えた。
その日の晩に以下の症状が出現。
 嘔気、嘔吐、腹痛(鋭い、持続する、びまん性)、喘息発作(既往あり)に似た息切れ、喉が締め付けられる感じ、嚥下困難

ここで他院に救急受診。体温36.8℃、血圧138/79、脈拍117、呼吸数18、SpO2 96%r/a。
CTで小腸閉塞あり、経鼻胃管挿入。
ここで、水平性の複視が2時間前から続いているとの訴えあり。
その後すぐ、しゃべることが難しくなっていった。
他院到着してから9時間後に当院到着。
そのころには患者は筆談でコミュニケーションをとるようになった。

【身体診察】
意識清明。体温36.8℃、血圧125/77、脈拍122、呼吸数18、SpO2 96%r/a
複視が進行。両側完全眼瞼下垂、眼球運動麻痺、瞳孔不同にまで至った。
語音不明瞭。舌突出不能。顔面神経麻痺も出現してきた。
喉頭鏡で両側声帯麻痺あり、浮腫なし →挿管に。
四肢近位筋力低下あり。腱反射低下。バビンスキー反射は陰性。
感覚障害はなし。



以下、解説篇です。



Problem listはこんな感じかな。

# 脳神経障害
両側動眼神経、顔面神経、迷走神経、舌下神経麻痺は少なくともある

# 自律神経障害(副交感神経障害)
頻脈、低血圧?、消化管運動低下→嘔気嘔吐腹痛

# 運動神経障害
近位筋力低下、もしかしたら呼吸筋麻痺あるかも、腱反射消失

# 感覚神経は障害されていない
# 上位運動ニューロンは障害されていない
# 失調なし

# 発熱なし、筋痛なし、先行する感染症状なし


障害部位に共通するのは、神経伝達物質がAChである、ということ。
重症筋無力症は、急速な進行と、自律神経障害があることから否定的。

筋電図検査やPCRなどで確定診断がつきました。
【診断】原因物質不明のボツリヌス中毒


ボツリヌス中毒の典型症状は、眼のかすみ、眼瞼下垂、複視です。
運動神経障害は下行性におこり、両側で近位→遠位へと思いります。
自律神経障害も良くみられる症状で、神経学的症状の前に消化器症状が出ることもあります。
感覚は正常、発熱もなく、画像検査では異常は見つかりません。

私は最初、喉頭浮腫+中枢神経症状で橋本病かなと考えました。
しかし、頻脈の説明ができず、アレ?という感じに。
両側声帯麻痺あたりから、何か違うぞと思いはじめました。
脳神経motor neuronの障害、それに加え麻痺性イレウス→自律神経障害?
というところまではたどり着けたのですが
ピッタリくる疾患が思い浮かばず、マニアックな自己免疫疾患かなとうたぐるハメに。
ボツリヌスという鑑別が完全に抜け落ちていました。


~Clinical Pearl~
ボツリヌス中毒=眼と球麻痺を中心とする脳運動神経麻痺+自律神経障害+感覚神経intact(+近位からの末梢運動神経障害)



2015年1月15日木曜日

解説篇:NEJM Case2-2015



問題篇がまだの方は、先にこちらを読んでくださいね。


Case 2-2015
A 25-Year-Old Man with Abdominal Pain, Syncope, and Hypotension


急激な腹痛と低血圧をみて、最初は
肝がん破裂、腹部大動脈解離、腹部大動脈瘤破裂
などを想起しましたが、その後の経過が合わないです。

腹腔内でなにかが「破れた」のは間違いないだろうとおもいます。
あとは、このような急激な症状を引き起こすような「なにか」が分かればいいのです。
破れたものの内容物がこの病態を引き起こしているのでしょうが…。

うーん、ヒスタミンなら血圧低下・脈拍数増加と皮膚所見を説明できるかな。
肝臓のカルチノイド腫瘍が破裂した?原発は虫垂?
でも、本当にそんなこと起こるのでしょうか…。
25歳という年齢も合わないです。

失神の鑑別は
心原性、痙攣、神経性(血管迷走神経反射など)、血液循環(貧血など)
があがりますが
なんらかの物質により急激に血管拡張・透過性亢進が起きた
として間違いないとは思います。
問題は「何らかの物質」が全く思いつかないこと。なんだろう…。

と、ここまで考えて続きを読みました。


…あー、なんで思いつかなかったんだろう。
エキノコックスはアナフィラキシーショックを起こすじゃないか!

なぜここまで考えておいてエキノコックスを想起できなかったのか。
自分の理解、記憶の仕方が中途半端だったのでしょう。
「エキノコックスの嚢胞の生検は播種とアナフィラキシーを起こすため禁忌」
としか理解しておらず
エキノコックスの嚢胞が破裂してアナフィラキシー
というエキノコックスの自然史を十分理解していませんでした。


Wikipediaの記載が最も分かりやすかったので引用します。

患者の98%が肝臓に病巣を形成される。感染初期の嚢胞が小さい内は無症状だが、やがて肝臓腫大を惹き起こして右上部の腹痛胆管を閉塞して黄疸を呈して皮膚の激しい痒み、腹水をもたらす事もある。次に侵され易いのは肺で、咳、血痰、胸痛、発熱などの結核類似症状を引き起こす。経過は成人で10年、小児で5年以上かかるといわれている。そのほかにも、脳、骨、心臓などに寄生して重篤な症状をもたらす事がある。また、嚢胞が体内で破れ、包虫が散布されて転移を来たす事もしばしばある。内容物が漏出するとアナフィラキシーショックとなる。本虫の引き起こす症状は大型の条虫よりも重篤である。


~Clinical pearl~
エキノコックス嚢胞の破裂はアナフィラキシーショックを引き起こす。


問題篇:NEJM Case2-2015



今週のNEJM Case Records of the Massachusetts General Hospitalです。
先週のCase1-2015は、乳癌の転移についての内容でした。
診断を考えるという類ではありませんでしたので、ブログには纏めませんでした。

解説は次の記事を見てくださいね。

かいつまんでまとめてあります。全文を読みたい方はこちらへ。


Case 2-2015
A 25-Year-Old Man with Abdominal Pain, Syncope, and Hypotension

【患者】生来健康な25歳男性

【主訴】腹痛、失神、低血圧

【現病歴】
重い箱を持ち上げたときに、突然、全身が温かい感じがして、心窩部と右上腹部から腹部全体に放散する不快感が生じた。その後、口、舌、腕、脚がしびれてきた。
次の数分間で、視界がぼやけ真っ暗になった。意識が遠のき歩道に倒れた。非血性・非胆汁性の嘔吐があり、意識を失った。体は震えていた。救急車が呼ばれた。
救急隊員到着時点で、GCS3点。発汗あり、呼吸は浅く、歯を食いしばっていて、失禁していた。バックバルブマスクによる人工呼吸開始。血圧53/27、脈拍90、モニターでは洞調律。生食ボーラス。3分経過して血圧60/28、脈拍118、自発呼吸再開、ノンリザーバーマスクに変更。
血糖73mg/dl、ナロキソン投与も症状改善なし。搬送中にGCS9点に回復。血圧は102/73→83/31と変動あり。脈拍90、呼吸数17-21。
症状が出てから30分後に救急部に到着。状態は迅速に回復し意識もかなり戻ってきた。腹痛あり(2点/10点)。何が起こったか覚えていない。頭痛、胸痛、同期、痙攣の前兆はない。シャワーを浴びるときに時々かゆくなるとのこと。

【既往歴】虫垂切除
【薬剤歴】なし
【アレルギー歴】なし
【家族歴】父親:心血管疾患、心筋梗塞で59歳で死亡 痙攣・癌の家族歴なし
【生活歴】アルコール、タバコ、違法薬物なし
生まれはルーマニア、6年前に渡米。年1回ルーマニアに帰省する。ルーマニアで野良犬との接触あり。6年前にインド、7年前に中国に旅行。

【身体診察】
見当識あり。血圧98/48、脈拍128、体温36.0℃、呼吸数16(自発)、SpO2 99%(酸素15l)→98%(r/a)
瞳孔径同じ、対光反射(+/+)
肺音清、心音異常なし、左側胸部に中程度の叩打痛あり。
グル音あり、心窩部と腹部右側に圧痛あり、自発的な腹壁防御がある。
皮膚は全体に発赤。温かく青白い発疹が頸、胸、腹部にある。
指趾は冷たく、浮腫や蕁麻疹はない。
GCSは15まで回復、神経学的所見異常なし。

モニターは洞性頻脈で期外収縮なし。血液検査を施行(下表)。
腹部エコーでは腹腔内の液体貯留は見られない。肝臓に低エコー領域あり。

到着後1時間で、震えと嘔吐が出現。生食とオンダンセトロン投与。胸部レントゲン正常。
次の1時間で、口唇と爪床のチアノーゼと手の浮腫が出現。再度血液検査を施行(下表)。
4時間で生食2l、血圧96/52、脈拍77、SpO2 99%(r/a)。




さて、あなたの診断は?


2014年12月25日木曜日

解説篇:NEJM Case40-2014



問題篇がまだの方は、先にこちらを読んでくださいね。


Case 40-2014
A 57-Year-Old Man with Inguinal Pain, Lymphadenopathy, and HIV Infection


AIDS患者の、左鼠蹊部付近優位のリンパ節腫大の鑑別となります。
比較的大きく、圧痛があり、壊死を伴っています。

リンパ節腫大の局在があるので、感染症をまず考えたいです。

内部壊死ですぐに連想するのは結核です。

ネコ飼育歴+免疫不全は、Bartonella henselaeによるBacillary angiomatosisを思い浮かべますが、臨床像が違う気がします。

免疫不全患者のHHV8感染といえば、カポシ肉腫とmulticentric Castleman's disease、primary effusion lymphomaです。
multicentric Castleman's diseaseはリンパ節の腫大が主徴候ですが、その名の通り全身のリンパ節が腫れると思います。あまり詳しく知らないので何とも言えません。
primary effusion lymphomaは胸水ADA高値なので結核性胸膜炎と誤診されやすいんでしたっけ。今回の症例には合いません。

他にもリンパ節腫大を起こす病原体はたくさんあると思いますが
気になるのは侵入経路が不明であること。
ヘルニア門から侵入とかあり得るのでしょうか?もしくは陰部から?


感染症以外だと、「夜間発汗を伴う間欠的な発熱」というキーワードは悪性リンパ腫を思い起こします。
ただ局在は説明できるのでしょうか。

サルコイドーシスは…こんな経過にはならないよなぁ。


以前、大学の課題でリンパ節腫大についてまとめたことがあったので
ここで見返してみました。



この表だと、結核とリンパ腫以外にそれっぽい疾患はないですね。



と、ここまで考えたうえでケースの続きを読みました。



…おお、答えは梅毒による壊死性リンパ節炎でしたね。



シマウマに走ってしまいました。反省です。

ですが、鑑別診断の議論で

The necrosis in the affected nodes brings mycobacterial infection to the top of the list of possibilities. However, other infectious processes, including cat scratch disease, are also associated with enlarged, necrotic lymph nodes.

とあり、自分も捨てたものではないなとうれしくなりました。

なお、multiple Castleman's diseaseは高熱などの全身症状が出るのが特徴らしいです。

…骨盤部腫瘍の転移は考えていませんでした。まだまだですね。



梅毒はありとあらゆる病像を呈することで有名ですが、
リンパ節炎を起こすことは知りませんでした。

本文中には

Syphilitic lymphadenitis, although uncommon, may be manifested as painful inguinal masses and may simulate an inflammatory pseudotumor, features that are similar to those seen in this case. 

とあり、そのまま疾患スクリプトとして覚えておく必要がありそうです。



実際には、ルーチーンで梅毒検査はするでしょうから

いずれにせよそこで判明するのでしょうね。

身も蓋もない意見ですが。



リンパ節の局在から感染症を疑ったところまでは良かったのでしょうが

侵入経路についての考察をもっとしておけば

何らかのSTIによるもの、という所までは行けた気がします。



~Clinical Pearl~

リンパ節腫大では、リンパの流れを意識する!

梅毒は鼠蹊部のinflammatory pseudotumorを起こしうる!



問題篇:NEJM Case40-2014




今週のNEJM Case Records of the Massachusetts General Hospitalです。

解説は次の記事を見てくださいね。

かいつまんでまとめてあります。全文を読みたい方はこちらへ。


Case 40-2014
A 57-Year-Old Man with Inguinal Pain, Lymphadenopathy, and HIV Infection

【患者】HIVに感染している57歳男性

【主訴】左鼠蹊部痛

【現病歴】
10年前から左>右の鼠径ヘルニアあり、時々膨隆するも還納容易。
3か月前より、膨隆を伴う痛みが増強。
3週間前より、左側のヘルニアが大きくなり、夜間発汗を伴う間欠的な発熱を自覚
1週間前より、ヘルニアの近くに圧痛のある「硬い塊」を自覚
前日夜、口腔内体温38.1℃
当日朝、救急受診

受診時の所見
陽性:鼠蹊部痛(スケール3/10)、
陰性:悪寒、嘔気、嘔吐、腹痛


【既往歴】
8年前:HIV感染と診断、ART開始。2カ月前の検査で、HIVRNA検出限界以下、CD4+リンパ球250/mm3
8年前:カポシ肉腫(左大腿と口蓋)、ブレオマイシンで治療
他に、伝染性軟属腫、anal dysplasia(HPV感染による、anal wartsより進行)、肺MAC症(9年前に診断され、18か月の治療を受けた)、ニューモシスティス肺炎、鵞口瘡、眼窩隔膜前蜂巣炎、クリプトスポリジウムによる下痢の既往あり
3年前に一過性の肝酵素上昇あり(脂肪肝化アルコール性肝障害によると思われる)
HIV診断後すぐの検査でトキソプラズマIgG抗体(-)、8年前と5年前の検査でRPR(-)、他のSTIの既往なし

【薬剤】emtricitabine, tenofovir, rilpivirine
【アレルギー】ST合剤で溶血性貧血

【社会歴】異性愛者。離婚後、いまはHIV(+)でART服薬中の女性パートナーと同居。直近の性交歴はそのパートナーと2年前でコンドーム着用だった。喫煙30年間、アルコール毎日1-2本、違法薬物なし。製造工場で勤務。22歳の猫の世話をしているが最近噛まれたり引っ掻かれたりはない。6か月前にオクラホマから移住。白人ヨーロッパの血筋。

【家族歴】父親:冠動脈疾患 母親:線維筋痛症

【身体所見】
体温36.8℃、血圧155/79mmHg、脈拍82bpm、呼吸数18/min、SpO2 100%(r/a)
腹部平坦で圧痛や膨満はなし。左>右の鼠径ヘルニアあり、還納容易。鼠径管に一致してわずかに圧痛あり。左鼠径に3つ、大きく(最大径3cm)軽度圧痛あるリンパ節腫大あり。

【検査】
血液検査は以下の通り。
CTで左総腸骨、左外腸骨、左鼠径領域に多数のリンパ節腫大あり。壊死と考えられる低信号領域もある。傍大動脈、右鼠径領域にも小さいリンパ節腫大がある。
肝腫大(22cm)あり、下端は腸骨稜に達する。脾臓12.8cmとやや大きい。非閉塞性腎結石あり。






さて、あなたの診断は?



2014年12月21日日曜日

NEJM Case 39-2014 / BMJクリスマス号



今週のNEJM Case recordは

クローン病患者の肺結節影についてでした。

本文はこちらを。

Case 39-2014
A 9-Year-Old Girl with Crohn’s Disease and Pulmonary Nodules


いつもみたいに頑張って診断を考えて…というケースではなかったです。

診断であった肺クローン病は知りませんでした。

肺実質に血管炎による結節ができるみたいです。

こういうマニアックな疾患の勉強は、今はまだいいかな…



もうBMJクリスマス号のシーズンなのですね。

毎年のことながらウィットに富んでいます。


テレビの医療番組の半分は嘘っぱち(だいぶ荒い表現です)という記事もありましたね。

ちょっと違いますが、空間除菌のCM、あれは何とかならないのでしょうか。


私が知ったのは2年前でした。

便を犬に嗅がせることでCD関連腸炎を検査するという内容でした。



BMJの公式サイトはこちら

南郷栄秀先生がアブストラクトを訳してくれています。ありがたいです。



2014年12月14日日曜日

解説篇:NEJM Case38-2014

問題篇がまだの方は、先にこちらを読んでくださいね。


Case 38-2014
An 87-Year-Old Man with Sore Throat, Hoarseness, Fatigue, and Dyspnea


まずは主訴でもある嗄声について考えました。

病態は、声帯か、球麻痺か、迷走神経障害。
球麻痺だと呂律が回らない、嚥下障害などが出るはずです。
顔面腫脹を伴っているので、嗄声は声帯浮腫によるものでしょう。


顔面腫脹、眼窩周囲の浮腫に関しては
最初は上大静脈症候群かなと思ったのですが
画像検査で縦隔腫瘤影なく
また体重増加を伴っているので
全身の浮腫によるものだろうと考えました。

UpToDate‐Clinical manifestations and diagnosis of edema in adults
にはこのように書いてあります。

Periorbital and scrotal edema are localized forms of edema that can be seen in systemic edematous states but should not be the sole manifestation of edema in these disorders.

また、「内科診断学改訂第17版」(南江堂)には
上大静脈症候群は「顔面浮腫、チアノーゼ、頸静脈怒張をきたす」とあります。
やはりこのケースには当てはまりません。

この本によると、急性糸球体腎炎の浮腫は眼瞼にとどまることが多く、
ネフローゼ(特に微小変化型)では浮腫が高度、目を開くことができないほどになり、顔面は蒼白、
心不全では顔面腫脹に合わせてチアノーゼ、頸静脈怒張をみることが多いそうです。
また、腫瘍などによる両側頸静脈閉塞では顔面全体に強い浮腫(開眼、開口障害を伴うこともある)が生じてくるそうです。


声帯浮腫を伴う全身浮腫、CK著名高値という点でピンときました。
コントロールされていた甲状腺機能低下症が、何らかの要因で悪化したのではと考えます。

87歳男性で、数年前に妻と死別して独居、そしてpolypharmacy。
なんとなく生活が目に浮かびます。


このケースを読んで、藤沼康樹先生のブログのこの記事を思い出しました。

事例:75才男性 72才の妻と二人暮らし

問題リスト

1. 糖尿病・高血圧 A内科医院(糖尿病専門医)にて経口血糖降下剤処方 

2. 心房細動 B病院循環器内科にて抗凝固薬処方

3. 変形性膝関節症 C整形外科医院にてNSAIDS処方及び物理療法

4. 皮脂欠乏性湿疹 D皮膚科医院にて軟膏処方

5. 白内障 E眼科医院にて保存的治療

そして、ものわすれがひどいことが気になり、F病院神経内科受診する予定。

(リンク先記事より引用)

私も実習で経験した例として、
腹痛で入院した患者さんが、便秘と下痢の薬を両方飲んでいた、ということがありました。



「Dr.宮城の白熱カンファランス」(羊土社)のp.70に
poly-pharmacyについてのコラムがありました。

5種類以上の内服と定義することが最近は多いのだとか。
prescribing-cascadesという言葉も初めて知りました。

「医療機関受診者のうちpoly-pharmacyに起因するものはプライマリケア領域では27%に上るとされており、またそのうち42%が予防可能であった」

「高齢者の薬剤の有害事象による入院のうち、88%は予防可能であった」

(全て上記コラムより引用)





と、ここまで考えたうえでケースの続きを読みました。



…やはり診断は甲状腺機能低下症でしたね。


なぜ甲状腺機能低下症が悪化したのか、
Discussionされていた可能性は以下の通りです。

1. levothyroxineを服用していなかった。

2. 服薬が複雑でちゃんとできなかった。

3. コーヒー、食物繊維、カルシウムなどと一緒に服用して吸収阻害が起きた。


添付文書には、併用すると血中濃度が下がる薬剤が並んでいます。
鉄剤と一緒だと吸収低下は、ハリソン問題集に載っていました。





実際は、服薬指導が複雑になってしまったために
患者さんがlevothyroxineを服用しなくてよいと勘違いしていたようです。

甲状腺機能低下症があると、スタチンによる横紋筋融解症が起きやすいみたいです。
CK異常高値に寄与しているのかもしれませんね。


解説では、polypharmacyやpolydoctorの害について詳しく書かれていました。
この患者さんが飲んでいた薬の外観が写真に載っており、非常に興味深かったです。
こりゃ間違えるわ。


このケース、ぜひご一読をおススメします。



2014年12月13日土曜日

問題篇:NEJM Case38-2014

今週のNEJM Case Records of the Massachusetts General Hospitalです。

解説は次の記事を見てくださいね。

かいつまんでまとめてあります。全文を読みたい方はこちらへ。


Case 38-2014
An 87-Year-Old Man with Sore Throat, Hoarseness, Fatigue, and Dyspnea


【患者】慢性疾患を多く抱えている87歳男性

【主訴】のどの痛み、倦怠感

【現病歴】
数週間前に嗄声、のどの痛み、増悪する倦怠感出現。家族に勧められ当診療所受診。

受診時の所見
陽性:嗄声、顔面腫脹、眼窩周囲の浮腫
陰性:胸痛、呼吸困難、関節痛、筋痛

【既往歴】
高血圧、脂質異常症、慢性腎不全(2か月前Cre 2.22mg/dlでここ数年は安定)、甲状腺機能低下症(8か月前TSH 3.38uU/mlで基準範囲内)、GERD、食道運動障害、AAA、慢性腰痛、希死念慮を伴ううつ病(数年前に妻と死別してから)、繰り返す尿路感染
右腎動脈形成術(10年前)、胆嚢摘出、結節(おそらく良性)に対する右肺中葉切除、閉塞性前立腺肥大症に対する光選択式前立腺蒸散術(2か月前)、手首の手術

【内服薬】
atenolol, vitamin D3, fluticasone propionate and salmeterol inhaler, aspirin, citalopram, fluticasone nasal spray, atorvastatin, omeprazole, levothyroxine
Lisinopril で咳が、zolpidem tartrate で悪夢が出た。

【生活歴】
独居、ADL自立、3人の子は近くに住んでいるが、あまり顔を見せず、診療所にもついてこない。
内科、泌尿器科、循環器科に定期通院。何年も前に禁煙、アルコールは飲まない。

【家族歴】
父:肝がんで死亡 息子:サルコイドーシス

【身体所見】
General appearance 快活、嗄声あり。血圧130/72、脈拍59、SpO2 96%r/a、体重86.8kg(1か月で4.5kg増えた)、BMI 29.9
顔面腫脹、眼窩周囲の浮腫以外の所見なし。

【その後の経過】
2日後、血液検査の結果が出た。CK高値のためスタチンの内服中止を指示。
7日後、再度受診。腹部膨満も訴えた。
11日後、再度受診。倦怠感がひどくなり、特に労作後にひどい。息切れ、顔面腫脹、体重増加、湿性咳嗽、咽頭炎を訴えた。胸痛、関節痛なし。胸部レントゲンでは陳旧性の病変のみで肺水腫、リンパ節腫脹、縦隔腫瘍はない。

【血液所見】


さて、あなたの診断は?