2019年9月2日月曜日
症例報告:Disappearing into the Drug Crowd
American Journal of Medicineにケースレポートがアクセプトされました!
https://doi.org/10.1016/j.amjmed.2019.05.052
意識障害の患者で,病歴が聴取できず困ったため,
家にある内服薬を持ってくるようお願いしたところ,
大量の残薬(8施設より47種類:マグミット1580錠,センノシド992錠など)が発覚し
下剤が大量に処方されている→それを飲んでいない→肝性脳症だ!
と診断にいたったというケースです.
ポリファーマシーが健康に影響を与える経路として
prescribing potentially inappropriate medications:不適切な薬剤が入っている
Potential Prescribing Omittions:適切な薬剤が入っていない
という2つが従来より提唱されています.
しかし,このケースは上の2つには当てはまりません.
キードラッグ(この場合は下剤)は処方されている
→他の薬が多すぎる
→多すぎて飲めない
→有害事象発生
本論文で,この経路をDisappearing into the Drug Crowdと名づけました.
衝撃的な残薬の写真を論文に載せることができただけでもうれしいです.
マグミットの数はうちの病院の在庫を超えていました.
(以下,論文より引用)
小病院でも,ありふれたケース(下剤のまずに肝性脳症発症)でも
国際誌にアクセプトされる,ということがわかり,非常に勉強になりました.
よろしければご一読ください.
2018年10月9日火曜日
原発性アルドステロン症の内服治療
診療所外来で疑問に思ったので.
原発性アルドステロン症の内服治療
・first-lineはスピロノラクトン
・スピロノラクトンの副作用は高K,高Cre.特に腎障害・糖尿病の患者で
・スピロノラクトン+NSAIDs定期は避ける(降圧効果減弱)
・プロゲステロンアゴニストとしての副作用に注意
・初期投与量は37.5-75mg/分3
・血性カリウム値が正常高値になるまで2週間ごとに用量を増やしていく
・副作用に耐えられなければエプレレノン.副作用は少ないが血圧低下効果が劣る
・上の2剤がともにだめならアミロライドやトリアムテレン
・血圧はスピロノラクトンだけでは目標達成できないことが多い
・その場合はサイアザイドやACE阻害薬を併用する.
参照:UpToDate Treatment of primary aldosteronism
2017年4月30日日曜日
ミニレクチャー 尿酸降下療法と食事療法
10分でまとめ5分で発表するミニレクチャー
Q. 尿酸降下療法の適応は?
A. The Lancet, Oct.22,2016の痛風レビューによると,以下が適応
・発作が年2回以上
・痛風結節あり
・stage2以上のCKD (GFR90以下)
・腎結石
治療するなら,尿酸値は6以下に下げる.
第一選択はアロプリノール.100mgで開始,腎障害あれば50mgで開始,ゴールまでゆっくり増量.
腎障害患者で使用後8週以内に発熱,発疹,白血球増加,好酸球増加,腎障害,肝障害を来すことがある(allopurinol hypersensitivity syndrome)
Q. 食事指導に意味はあるのか?どうすればいいのか?
A. 食事療法で痛風発作は減少しないというエビデンスがある
アルコールと果糖は肝代謝で尿酸になる.
赤身肉は発作triggerになりうる.レバーも注意.
プリン体[mg/100g]はウニ137,イクラ3.7
うに丼50gで約70mg 痛風学会の基準は400mg/d うに丼6杯食べなければ大丈夫
2017年4月18日火曜日
ミニレクチャー subclinicalな甲状腺機能異常
10分でまとめ5分で発表するミニレクチャー
Q. subclinical hypothyroidismを治療するべきか
A. Cochrane Libraryでは以下の通り.
・治療しても死亡率改善なし.
・QOL,症状も有意差なし.
・左室機能,脂質は改善するかも
Q. subclinical hyperthyroidismは治療するべきか
A. Cochrane Libraryでは治療のレビューは作成途中.
ただし,subclinical hyperthyroidismは年1-5%で明らかな甲状腺機能亢進症になる.
日本とブラジルが協働した研究では,subclinical hyperthyroidismの死亡HRは1.5-5.9(7.5年フォロー)とある.
UpToDateでは以下の表のとおり
頭に入らないので,正確性を犠牲にして要約すると
・65歳以上→治療しましょう
・心血管疾患or骨粗鬆症あり→治療しましょう
・TSH0.1以下→治療しましょう
≪Clinical Pearl≫
subclinical hypothyroidismはあまり積極的に治療しなくてよい
subclinical hyperthyroidismは適応広めにして治療するのがよい
2017年4月4日火曜日
骨軟化症について
高齢者の全身痛で、診断して治療することで、劇的に改善するもの。PMRとOsteomalacia(低リン血症性骨軟化症)。 #residentday— 清田実穂 (@miho_kk) 2017年3月16日
高齢者の骨軟化症,全くイメージがわかなかったので調べてみました.
原因(後天性のみ)
・ビタミンD不足:日光不足,食餌性,胃切後など
脂溶ビタミンなので肝機能障害・膵機能障害・胆汁鬱滞にも注意
(胃切→https://www.jstage.jst.go.jp/article/juoeh/35/1/35_25/_pdf)
(PD→https://www.jstage.jst.go.jp/article/naika1913/71/11/71_11_1566/_article/-char/ja/)
・慢性腎障害,尿細管性アシドーシス(2型)
(RTA→https://www.jstage.jst.go.jp/article/nishiseisai1951/31/1/31_1_160/_article/-char/ja/)
・ビスホスホネート,アルミニウム製剤,鉄剤,長期の抗てんかん薬など
(鉄剤→https://www.jstage.jst.go.jp/article/juoeh/35/1/35_25/_pdf
https://www.jstage.jst.go.jp/article/naika1913/71/11/71_11_1566/_article/-char/ja/)
・腫瘍性:FGF23分泌性腫瘍
(https://www.jstage.jst.go.jp/article/clinicalneurol/48/2/48_2_120/_pdf)
症状
・骨痛:特に下位脊椎,骨盤,下肢.骨折を起こすことも
・筋力低下:遠位から進行.筋緊張低下,運動時不快感の合併も
・歩行困難
・低カルシウム血症による筋スパズム等の症状
検査
・ALP高値(ほぼ100%)
・Ca/P低値(1/3程度でのみ)
・25[OH]D低地,PTH低値
鑑別疾患(というより以下の病気と誤診されやすい)
・リウマチ性多発筋痛症
・線維筋痛症
・骨粗鬆症
・変形性関節症
・頸椎/腰椎ヘルニア
全身の疼痛を訴える場合は,滑液包炎か?神経痛か?関節痛か?等を確認し,
「全身の骨痛」というキーワードで骨軟化症を疑い
病歴とCa, P, ALPで診断に迫る,という流れでしょうか.
参考文献:UpToDate Epidemiology and etiology of osteomalacia
UpToDate Clinical manifestations, diagnosis, and treatment of osteomalacia
2017年3月29日水曜日
NEJM Case Record 2017-9
思い出したようにNEJM Case Recordです.
Case 9-2017
A 27-Year-Old Woman with Nausea, Vomiting, Confusion, and Hyponatremia
27歳女性
1週間前に嘔気,嘔吐(非胆汁性,非血清)あり.数時間で軽快した.
2日前の夕方,嘔気と数回の嘔吐あり.その後,傾眠,歩行不能になったため近医を受診した.
バイタルサイン:体温36.1℃,血圧94/64mmHg,脈拍100bpm,呼吸数16/min,SpO2 100%ra
質問や指示に応じず,話は的を射ない.時折啼泣し,四肢を意味もなく動かしている.低血圧に対し生食投与を行った.
血液検査:Na 104,K 5.1,Cl 74,CO2 19,BS 114 ,AG 11
集中治療が可能な病院に移送した.移送中に患者は興奮し横にじっとできなくなった.
搬送先病院バイタルサイン:体温36.7℃,血圧102/57mmHg,脈拍92bpm,呼吸数12hi/min,SpO2 100%ra
尿所見:比重740,Na 158
瞳孔正常,粘膜湿潤,心音呼吸音正常,腹部所見なし.頭部CTと胸部レントゲンは正常.
さて,診断は?
最大のプロブレムは低ナトリウム血症
くわえて,間欠的嘔吐,昏迷・興奮,高比重・高ナトリウム尿,輸液に反応する低血圧,高K血症,AG正常性代謝性アシドーシス
低ナトリウム血症をみたら,まずは体液量評価をする.
このケースでは,最初は細胞外液量低下→輸液で正常体液になった.
くわえて,尿比重が高いということはADH高値であるということ
腎症や中枢性塩喪失症候群は否定的.
妊娠は低Na血症を来すがこんなに重症にはならない.
甲状腺機能低下症は原因となりうる→ホルモン測定で除外できた.
SIADHは除外診断
利尿薬使用による低ナトリウム血症はどうか.
最多の原因薬物はサイアザイド.ループ利尿薬より低ナトリウム血症を来しやすい.
特徴は,尿濃縮能力が保たれている・ADH反応性がある・体液量正常であることが多い点.
服用1-2週で発現する.
副腎不全,特に一次性はどうか.
低ナトリウム血症に至る経路は,コルチゾール不足によるADH上昇とアルドステロン不足(原発性のみ)の2つ.体液量は低~正常.
副腎不全は低血圧を来す.コルチゾール不足による血管拡張または嘔吐やアルドステロン不足による体液量低下.
MDMA乱用もADH上昇による低Na血症を来す.
高体温になるので飲水も促される.
その他の徴候は,高血圧,頻脈,横紋筋誘拐,セロトニン症候群など.
このケースでは利尿薬乱用か副腎不全が考えられる.
利尿薬乱用はふつう,低K血症かつ高アルドステロン症による代謝性アルカローシス
副腎不全なら低アルドステロンによる高K血症と代謝性アシドーシス
原発性副腎不全なら色素沈着がほぼ必発だが頻繁に見逃される.
そう思って調べると,屈曲部位に色素沈着が見られた.
追加の病歴をとると,じつは数か月前から倦怠感があり,運動機能が低下していた.
というわけで,最終診断は原発性副腎不全でした.
低Na血症の鑑別はシステマティックに行うようにしましょう.
2016年11月9日水曜日
非糖尿病患者の低血糖
救急でであったので,考え方をまとめてみます.
CutlerのProblem solving in clinical medicineには,低血糖は3つに分類すると書いてあります.
「内科診断リファレンス」の記載も追加して分類を挙げます.
①反応性低血糖
食後2-4時間で起こる低血糖です.特に炭水化物の多い食事を食べた後です.
下位グループとしてさらに3つに分けます.
機能性:最も多い.症状はそこまで強くない.
OGTTで5時間経過観察し血糖の変移をみる.
アルコール多飲がリスク.
軽度糖尿病:つまりは低血糖をきたした患者には糖尿病の検査をする必要がある
消化管性:いわゆるダンピング症候群やその亜形
②空腹時低血糖
朝一番や食事を抜いた5時間以上経過後に起こる低血糖です.
糖原病など先天性のものを除けば,原因は以下の5つです.
内因性高インスリン血症:インスリノーマやインスリン自己免疫症候群など
インスリン自己免疫症候群は80%で自己免疫疾患が合併します.
SH基を持つ薬剤の先行投与がリスク因子です.
(メチマゾール,ペニシラミン,カプトプリル,イミペネムなど)
薬剤性:糖尿病の薬を間違えて飲んだなど.同居人全員の薬剤歴を聴取する.
非糖尿病薬で低血糖を起こすのは以下の通り.
Ⅰa・Ⅰc抗不整脈薬,抗うつ薬,ST合剤,キノロン,NSAIDs,アセトアミノフェン,βブロッカー,ACEI,フィブラートなど
また,クラリスロマイシンとSU薬の併用注意は有名ですね.
臓器不全:敗血症が有名.肝不全や腎不全でも.
ホルモン欠乏:副腎不全,下垂体不全など
nonislet cell tumor hypoglycemia(NICTH):稀ですが種々の腫瘍が低血糖を起こします
多いのは間質系腫瘍で.大きな腫瘤が後腹膜,腹腔内,胸腔内にみられます.
上皮系であれば肝細胞癌や副腎皮質腫瘍,カルチノイドが多いようです.
UpToDateからNICTHを起こす腫瘍のリストを引用します.低血糖発作=検査乱れ打ちではなく,糖尿病の有無の確認・反応性か空腹時かの区別,リスクファクターと薬剤に注目した病歴聴取で,なんとか迫っていきたいものです.
(Cutlerは邦訳も出ていますが,原著は平易な英語でかかれているのでお勧めです.)
2016年4月18日月曜日
糖尿病性末梢神経障害
糖尿病性末梢神経障害が疑われるが他の疾患の可能性もある方をマネジメントしていて
ちょうど今週のNEJMでレビューが出ていたのでさっそく読みましたが
大雑把な記載であまり参考になりませんでした…。
(メトホルミンでビタミンB12欠乏になるから鑑別に入れるようにとの指摘はなるほどと思いました。)
(抗てんかん薬、TCA、SSRIなどの薬剤は疼痛緩和目的なのですね。)
神経疾患に出会った際にいつもお世話になっている教科書に
詳しい記載がありましたので
まとめてみます。
①sensory or sensorimotor polyneuropathy
いわゆる手袋靴下型。最もなじみのあるタイプ。
感覚障害優位で、腱反射は低下する。
dysesthesiaが強い。進行すると下肢遠位部優位に筋力低下・筋委縮。
②autonomic neuropathy
見逃しやすいタイプ。下痢、胆嚢機能障害、勃起不全、起立性低血圧、直腸膀胱障害など
低血糖の症状が自覚できないのも症状の一つ。
③cranial mononeuropathy
典型例:外眼筋麻痺+瞳孔は正常、一側性、急性発症、1-2カ月で自然回復
外転神経障害をきたすことも。
顔面神経麻痺をみたらヘルペスウイルスの関与を疑う。
④symmetric proximal lower limb motor neuropathy
ここら辺からなじみのないタイプになってきます。
ただ、今私が出会っているのはこのタイプかもしれません。
50歳以上のコントロール不良患者
慢性・対称性の下肢近位の筋萎縮・筋力低下
①と合併していることが多い。
厳格な血糖コントロールで改善する。
⑤asymmetric lower limb motor neuropathy
50歳以上の長期罹病患者
突然発症、1-2日で症状完成
一側大腿四頭筋、大内転筋の筋力低下・筋萎縮
保存的加療で徐々に改善
④⑤を合わせてdiabetic amyotrophyという
⑥trunk and limb monomeuropathy
50歳以上の長期罹病患者
肋間神経や体幹・四肢の神経幹の障害
非常に強い痛み
狭心症、急性腹症と間違えられることも
予後良好だが数年症状が続くことも
また、インスリン治療で血糖コントロールが急速に改善した場合に末梢神経障害が起こることがあります。
こちらの本に症例が載っていました。
post-treatment neuropathyは、もともと神経障害が軽度の患者に起こりやすいそうです
有痛性で夜間に増悪、アロディニアも来しますが、1年以内に自然軽快するようです。
2015年12月11日金曜日
甲状腺結節(NEJM Clinical Review)
今週のNEJM Clinical reviewが甲状腺結節についてでした。
偶発的に見つけることがままあるので、まとめてみます。
・触知可能な甲状腺結節は人口の4-7%にみられる。
・癌は結節の8-16%を占める。
・無症状の患者100人にエコーをすると、22人に単結節、45人に多結節がみられる。
・亜急性甲状腺炎や橋本病が腫瘤を形成することがある。
・ヘモクロマト―シスや癌転移などの浸潤性疾患や種々の良性腫瘍は甲状腺結節の稀な原因である。
・甲状腺がんのリスクファクターは以下の通り:家族歴、放射線曝露歴、既往歴、男性、原子力事故の近隣住民
・良性の場合は大きさが比較的変わらない。
・組織学的に良性と診断された甲状腺結節を5年間フォローすると、拡大傾向が15%、縮小傾向が19%。5例(0.3%)が悪性と判明した。
・まずは病歴。上記のリスクファクターを念頭に。
・急速進行は悪性を疑うが、良性結節・嚢胞の出血も。
・嗄声、嚥下困難、前頸部不快感はRED FLAG。
・甲状腺がん、乳がん、大腸がんの家族歴あり、皮膚や粘膜に過誤腫があれば、Cowden症候群かも。他にも家族性に甲状腺がんを来す症候群はある。
・触診では硬さ、位置、大きさを確認。リンパ節腫大も合わせて確認。
・TSHは全例測定しよう。TSH低値でhyperfunctioning noduleなら甲状腺機能亢進症として治療となる。
・カルシトニンを全例測定するのは推奨されていない。
・エコーも全例検査しよう。低エコー、辺縁不明瞭、高さ>幅、微小石灰化は悪性所見
・1cm以上でエコーで疑わしい場合、1.5cm以上でエコーで否定的でない場合、2cm以上の場合は細胞診を。
・細胞診の偽陰性は5-10%ある。3cm以上なら偽陽性率11.7%(3cm以下なら4.8%)。
・細胞診の結果と将来の発がんリスクは以下の通り。
・細胞診で良性所見かつ臨床的、エコー的に疑わしくない場合は1-2年ごとにエコーをフォロー。
・少しでも疑わしい所見があれば6-12か月ごとにエコーをフォロー。
・50%以上の体積増加あるいは2つの次元で2mm以上増大があれば再度針生検。
2015年10月20日火曜日
ビスフォスフォネートを止める時期について
骨粗鬆症のスクリーニング対象群と治療開始判断基準については
この本によくまとまっています。
骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン2011年版からの引用です。
ステロイドを使用する際も、第一選択はビスフォスフォネートです。
ステロイド性骨粗鬆症の管理と治療ガイドライン(2014年改訂版)の引用です。
ビスフォスフォネートを使用している入院患者さんで
長期投与は逆に骨折のリスクになるとどこかで読んだなと思い
ポリファーマシーということもあって
ビスフォスフォネートをやめようかなと考えたのですが
ガイドラインや上の文献にも「やめ時」の記載がなく
どうしたものかと困ったので調べてみました。
BMJ 2015;351:h3783の記載を基にまとめます。
HORIZON-PFT studyでは、ゾレドロン酸3年間投与後に、さらに3年ゾレドロン酸を内服した群と、3年後からプラセボを服用した群をRCTで比較しています。
X線上の椎体骨折発見率はゾレドロン酸継続群で少なかった(3.0%vs6.2%)ですが、臨床的な違いはなかったという結論でした。
FLEX studyでは、アレンドロン酸を継続した群と止めた群で、椎体以外の骨折のリスクは変わらなかったが、臨床的な椎体骨折の発生率は継続群で減少した(2.4%vs5.3%)という結論になりました。しかし、FDAの分析では診療的な骨折の発生率は差がないということになったみたいです。
ビスフォスフォネートの休薬に関するRCTはこの2つだけなので、はっきりしたことは言えないのですが
BMJでは、アレンドロン酸を5年間ありはゾレドロン酸を3年間使用することで、休薬しても骨折予防効果が残るかもしれないという記載になっています。
臨床の場では、その時々の患者さんの状態に合わせて判断するように、とのことですね。
薬を始めた後に寝たりきになった、ステロイドを始めた、骨折をした、など、続けるか止めるかを判断する情報は変わっていきますからね。
そして大切なのは、始めるときに治療期間を決めることだ、とのあります。
私のケースでは、ポリファーマシーであること、寝たきりであることは休薬を支持する情報であり
治療期間がまだ短いこと、骨折新規発症のハイリスク群であることは続行を支持する情報です。
本人のADLと相談し、併存疾患の趨勢を判断しながら、相談して決めていこうと思います。
2015年9月16日水曜日
甲状腺機能亢進症の症状
本日のPrimary Care Lecture Seriesのケースシェアリングカンファランスが
主訴が頻尿で、頸部痛があり亜急性甲状腺炎と診断したケースでした。
甲状腺機能亢進症で頻尿がでることを初めて知りました。
また、病棟でも甲状腺の問題が併存している方にたくさん出会います。
甲状腺結節を偶然発見→ホルモンは異常なし→エコーで結節が多発していると判明→euthyroid multinodular goiterだから安心だね(Washington Manual pp.895-896)、という流れはしばしば経験するところです。
総花的ですが、甲状腺機能亢進症のマイナーな症状についてまとめてみます。
・Plummer's nail
Plummerが記述した甲状腺機能亢進症患者の爪の変化です。
爪甲剥離、縦溝、扁平化がみられます(Ann Intern Med. 1958;49(1):102-8)。
画像はEndocrine Practice 2008;14(1):132 でみてください。
・血球異常
貧血が、女性で18%、男性で28%の割合であり、多くは正球性貧血ですが、悪性貧血が全体の1.9%でみられたという報告(Q J Med. 1978;47(185):35-47)があります。
・凝固能異常
凝固因子の異常をきたすことがあります(Eur J Endocrinol. 2001;145(4):391-6.)。
最近だと、甲状腺機能亢進症以外のリスク因子のないDVT発生の2例報告(Neth J Med. 2014;72(4):242-4.)や、甲状腺中毒症の脳静脈洞血栓症の報告(BMJ Case Rep. 2013;5:2013)があります。
・頻尿
UpToDateには、"Urinary frequency and nocturia are common in hyperthyroidism, although the mechanism is uncertain."とあります。また、小児の夜尿症については、"Enuresis is common in children."とあります。
女性尿失禁の罹患率が、甲状腺機能亢進症患者では1.60%、コントロールでは1.04%とHR1.30-1.83で有意に異なるという研究(Clin Endocrinol (Oxf). 2011;75(5):704-8.)があります。
尿意切迫、頻尿、夜尿は訴えづらい症状のため過小評価されており、甲状腺機能亢進症の治療で改善するとの論文(Postgrad Med. 1988;84(8):117-8.)もあります。
以前、亜急性発症の認知機能変動の原因として、甲状腺ホルモン正常だが各種抗体陽性で橋本脳症と診断されたケースを勉強しました。
rare presentations of common diseasesをしっかり把握しておきましょう。
参考:UpToDate Overview of the clinical manifestations of hyperthyroidism in adults
2015年9月6日日曜日
高アンモニア血症にどう気づくか
ウレアーゼ産生菌の尿路感染症による高アンモニア血症の報告を最近よく目にする気がするので、纏めてみました。
意識障害をきたす高アンモニア血症の原因としては、やはり第1に肝性脳症が挙げられます。
他には、先天性の尿路回路酵素欠損(OTC欠損症など)、ウレアーゼ産生菌感染、薬剤(バルブロ酸など)があります。
肝性脳症の診断にアンモニア測定は必要ありません。
血清アンモニア値は様々な要因の影響を受けるため、変動が強いためです。
あえて言うなら、正常値の2倍以上となってはじめて診断的価値があるみたいです。
基本的には臨床診断です。
文献上の肝性脳症の定義は、"the development of clinically overt neuropsychiatric symptoms in patients with cirrhosis"とあり、肝硬変患者に神経精神症状が出れば肝性脳症です。
アルゴリズムでは、MMSEで24点未満ならその時点で肝性脳症として扱うことになっています。
肝性脳症の症状は、以下の図がすごくわかりやすいので掲載します。
問題は、肝硬変のない患者の高アンモニア血症にどう気づくかです。
特にウレアーゼ産生菌の尿路感染の場合、感染症そのものでも意識障害が起こりえます。
感染症の治療をすれば当然高アンモニア血症も是正されるので
臨床上どうしても鑑別したいというものではないのかもしれませんが
やはり目の前の意識障害患者の原因が分かっているとこちらとしても気持ちが楽です。
思いつきで恐縮ですが、呼吸性アルカローシスがあるときにアンモニアを測定する、というのは銅でしょうか。
UpToDate: Urea cycle disorder: Clinical features and diagnosisには以下の記載があります。
"Hyperventilation is thought to result from cerebral edema caused by the accumulation of ammonia and other metabolites."
感染症(特に尿路感染)が疑わしくて意識障害がある場合、とくに呼吸数20/min以上の場合は
全例血液ガスをとると思いますので、あながち無理のないプラクティスかとも思います。
尿路感染症の場合は、アルカリ尿や尿中結石の存在も傍証になると考えられます。
アルカリ尿がもっともわかりやすい所見でしょう。
参考:UpToDate: Hepatic encephalopathy in adults: Clinical manifestations and diagnosis
~Clinical Pealrs~
意識障害のある尿路感染患者で、呼吸性アルカローシスまたはアルカリ尿をみたら、血清アンモニア値を調べてもいいかもしれない。
肝性脳症の診断は臨床所見に基づいて行う。
2015年8月6日木曜日
ビタミンB1欠乏症
・拒食がある高齢者の認知機能低下の原因評価
・貧困状態で食事できていなかった方の末梢神経障害
というケースに出会いました。
どちらもビタミンB1を測定、低値であったため補充療法開始しましたが、症状は良くならず、結局別の診断がなされました。
ビタミンB1欠乏症による症状が疑わしくて、実際にビタミンB1低値でも、ビタミンB1欠乏症であるとは限らない、ということでしょうか。
ビタミンB1の生物学的半減期は10-20日。欠乏すると以下の状態を招きます。
・脚気
成人の脚気はdry beriberiとwet beriberiに分けられます。
dry beriberiでは、対称性末梢神経障害が起きます。運動と感覚どちらの神経も侵します。
多くは四肢遠位を障害します。
wet beriberiは心肥大、心筋症、心不全、末梢浮腫、頻脈も呈します。
・Wernicke-Korsakoff症候群
アルコール関連死の29-59%を占めます。
3徴は脳症、外眼筋麻痺、歩行失調です。
しかし、すべてそろうのは1/3にすぎません。
精神状態の異常だけが出ることがそこそこあるみたいですね。
生前に診断されていたのが26/131だけであったという報告もあります。
歩行障害が他の症状に先行することもあります。
血清ビタミンB1値による判断の感度、特異度が不明であり、血清値が正常でも本症を除外できなません。
・Leigh症候群
progressive subacute necrotizing encephalomyopathyともいいます。
乳幼児に発症する神経変性疾患です。
Leigh症候群の患者でビタミンB1欠乏がよくみられます。
ただ、原因はミトコンドリア異常なので、いわゆる「欠乏症」ではないです。
参考:UpToDate
Overview of water-soluble vitamins
Wernicke encephalopathy
Hereditary neuropathies associated with generalized disorders
2015年7月13日月曜日
69歳男性:繰り返す意識混濁と発熱(Mayo residents' Clinic)
Mayo Clinic ProceedingsのResidents' Clinicです。
2013年4月の記事を読みました。
69-Year-Old Man With Recurrent Episodes of Confusion and Diaphoresis
69歳男性 繰り返す意識混濁と発汗
2年前より、発汗、動悸、意識混濁、発語不明瞭のエピソードが時々出現した。
食事摂取により症状寛解するため、食事摂取量増え体重2.7kg増加した。
有症状時の血糖は47mg/dl。
既往歴:高血圧、前立腺肥大、甲状腺機能低下症
家族歴:兄弟が2型糖尿病
現症:発熱なし、呼吸苦なし、脈拍75bpm、血圧130/85mmHg、BMI 28
Whippleの三徴が見られていますね。
①低血糖症状、②有症状時の低血糖、③血糖上昇で症状改善
原因がインスリンによるものなのかどうかをまず鑑別します。
インスリン243uIU/ml、Cペプチド2.8ug/ml、プロインスリン690pmol/l
というわけで内因性のインスリン依存性低血糖となります。
この場合、インスリノーマが最多の原因なので、CTを撮ったところ、正常とのことでした。
この場合の鑑別は、インスリン自己免疫症候群となります。
インスリン自己抗体が0.93nmol/lと高値のため、確定です。
3~6か月で自然軽快することが多い疾患です。
頻回少量の食事とαGI阻害薬(食後高血糖を防ぐ、ただ下痢など副作用強くであまり使えない)が治療の選択肢となります。
治療抵抗性ではステロイド、血漿交換の適応となります。
非入院患者の低血糖発作では、薬剤性とインスリノーマが2大鑑別です。
インスリン自己免疫症候群は、日本で多い疾患です。
自己免疫疾患、血液疾患、薬剤(抗甲状腺薬、カプトプリル、ヒドララジン、ペニシラミン)と合併することが多いです。
2015年7月6日月曜日
31歳女性:脱毛症(Mayo Residents' Clinic)
毎週Mayo Clinic ProceedingsのResidents' Clinicを読んでいるのですが
なかなかブログにまとめる時間が取れていません。
というわけで久しぶりにまとめてみます。
31-Year-Old Woman With Alopecia
31歳女性
主訴:びまん性の脱毛
現病歴:3か月前に気付いた。それから、髪の1/3くらいが減ってきた。
新しいシャンプーは使っていない。部分的な脱毛ではない。
体重減少なし、ストレスなし、大きな既往歴なし。
頭部視診ではシラミ、疥癬なし、外傷なし、抜毛症なし
食欲低下、体重減少、軽度倦怠感はあり
フケ用シャンプーを使ったが効果なし
既往歴:肥満、リンパ浮腫、全般性不安障害、パニック発作、偏頭痛、喘息
薬剤歴:アルブテロール吸入 アミトリプチン ガバペンチン ナラトリプタン オンダンセトロン ベラパミル、ブプロピオン
家族歴:姉妹に甲状腺疾患に関連する脱毛症
身体診察:非瘢痕性びまん性脱毛。紅斑なし、落屑なし、髪の太さの異常なし。
膿瘍、創傷なし。眉毛、まつ毛、体毛は異常なし。リンパ節腫脹なし、甲状腺異常なし。多毛・痤瘡なし。
脱毛は瘢痕性か非瘢痕性かに分けられる。圧倒的に非瘢痕性が多い。
瘢痕性脱毛の原因は腫瘍、水疱、放射線、薬品、苔癬など。
薬剤歴では、ガバペンチンは脱毛を引き起こしうる。
甲状腺は、可逆性な脱毛を引き起こすので有名。(眉毛が抜けるのは知ってたけど…)
頭髪が全般的に薄くなる。治療すると良くなる。
男性型脱毛は生涯にわたり女性の半数に影響を与えうる。
栄養障害による脱毛は、鉄、亜鉛、ビオチン、L-リシンの欠乏で起こる。
甲状腺の検査では異常なし。
追加の病歴聴取にて、月経がここ最近かなり重いことが判明。
鉄欠乏も脱毛を引き起こす。
検査をするとフェリチン低値。
ということで鉄欠乏によるTelogen effluvium(休止期脱毛症)と診断。
休止期脱毛症はびまん性脱毛症でもっともよくある原因。
何か大きなストレス(体重減少、妊娠、大きな病気、精神的なもの)をきっかけとして、
そのきっかけの約3か月後から始まる。
自然に治る疾患ではあるが、原因を取り除くことで治療可能である。
ラベル:
MAYO RESIDENTS' CLINIC,
血液,
内分泌,
皮膚
2015年7月5日日曜日
帯状疱疹/甲状腺機能低下症/院内感染/胸水のドレナージ
日頃の貯まった疑問をさっくり解決しましょうのコーナー。
・口腔内帯状疱疹
専攻医の先生が外来で、片側の顔面疼痛を主訴に来院した方を診察して、
歯肉にこんな皮疹があったので帯状疱疹と診断したとのことでした。
へー、こんな感じになるんですね。
こちらより引用
・帯状疱疹による脳卒中
そういや顔面の帯状疱疹って大脳の動脈炎をおこして脳卒中になることがあるってどこかで聞いたことがあるなと思い調べてみました。
UpToDateのStroke caused by varicella zoster virusでは以下の通り。
虚血性脳梗塞だけでなく、様々な病変を撮りうるとのことです。
巨細胞性動脈炎みたいに側頭動脈を侵して失明に至らせることもあります。
2/3の患者さんで脳脊髄液中単球増加します。確定診断は髄液PCR。
典型的には白質と灰白質の境界に病変がでます。
・橋本病で甲状腺結節が見られる場合
殆どが良性の結節だそうですが、乳頭がんの合併が多いという研究があるので
特に単結節の場合は注意すべきかもです。
こちらのブログを参照してください。
・甲状腺機能低下症で難聴が起こる?
こちらの論文に日本での症例報告があります。
おそらく神経障害が起こるためであろうということになっています。
甲状腺機能低下症を診断するスコアとしてBillewicz scoreがありますが、
疑えば採血すればいいと思うので、そんなに頼らなくてもいいと私は思います。
スコアの項目はしっかり覚えておきましょう。難聴もしっかり入っています。
・CRBSI
紹介状に記載があって、何コレ?と思って調べたら
カテーテル関連血流感染(Catheter Related Blood Stream Infection)のことでした。
ちなみに人工呼吸器関連肺炎はVAP(Ventilator Associated Pneumonia)です。
カテーテル関連尿路感染はCRUTI (catheter related urinary tract infection)です。
・胸水をドレナージする適応
分かりやすいのはpH<7.2です。リトマス紙さえあれば判別できます。
くわしくはこちらのブログが分かりやすいです。
2015年6月17日水曜日
甲状腺機能低下症の鑑別と治療経過
甲状腺機能低下症について
とくに鑑別と治療経過を中心にまとめてみました。
参考:UpToDate Disorders that cause hypothyroidism Treatment of Hypothyroidism Hypothyroid myopathy
[鑑別]
TSHの値でprimary hypothyroidismなのかsecondary hypothyroidismなのかは判断できます。
全身のレセプター異常ということも稀ながらあるみたいです。
primary hypothyroidismの原因として、圧倒的多数は橋本病です。
その他の原因としては以下の通りです。
・医原性(甲状腺摘出、放射線照射など)
・ヨウ素欠乏/増多
・薬剤
・浸潤性疾患(線維性甲状腺炎、ヘモクロマトーシス、サルコイドーシス)
・一過性の甲状腺炎
無痛性甲状腺炎、亜急性甲状腺炎、出産後甲状腺炎
薬剤はリチウムとアミオダロンは有名だと思います。
ヨード入りうがい薬の多用による症例報告を以前読んだことがあります。
日常診療で良く使う薬だと、鉄剤やPPIは薬剤の吸収不良を招きます。
以前、この記事で扱いました。
[治療]
チラージンを投与する際は、
・心疾患がないか、心臓の薬を飲んでいないか
・masked adrenal insufficiencyがないか
に気を付ける必要があります。
投与後に低血圧、意識障害が出現すれば、それは副腎クリーゼかもしれません。
チラージンの初回投与量は
UpToDateでは合併症のない若い患者で1.6ug/kg/dayを推奨しています。
甲状腺の数値を早く正常化できるみたいですが、症状・QOL改善の速度は少量投与時とあまり変わらないみたいです。
この部分の記載は、Arch Intern Med. 2005;165(15):1714-1720.に依拠しています。
また今度、批判的に読んでみようと思います。
ワシントンマニュアルには、中年までなら100ug/day、健康な高齢者なら50ug/day、心臓病あれば25-50ug/dayで開始するようにとあります。
治療が効いていれば、2週間以内に症状改善が見られます。
血液検査でTSHが安定するには少なくとも6週かかるそうです。
なので血液の再検査は6週後、そこでTSH低値なら12-25ug/dayずつ増量して再度6週後検査となります。
治療開始後2-3週経っても症状がつづく場合は3週後再検です。
ただ、甲状腺機能低下症によるミオパチーは、症状改善するまでの期間の中間値が5.5か月と、比較的長いです。
筋の脱力、痙攣、痛みといった症状は甲状腺機能低下症の79%にみられます。
甲状腺機能低下ミオパチーでは
緩徐進行で対称性の近位筋力低下を呈するのが典型的です。
肩や臀部が最も高率に侵されます。多発性筋炎と紛らわしいこともあります。
他には、Hoffmann症候群(筋硬直、筋力低下、有痛性筋痙攣)に代表される症状や
ひどい場合は横紋筋融解症→腎不全になることもあります。
アキレス腱反射弛緩相遅延は有名ですが、
myoedema(筋をたたくと筋表面に小さいコブができ、30秒程度続く)という所見もあります。
~Clinical Pearls~
・多発性筋炎を疑うなら、甲状腺機能低下症を鑑別に挙げる
・甲状腺機能低下症によるミオパチーの症状改善は長期間かかる
・鉄剤+チラージンはチラージン効かないかも
・チラージン投与後の副腎クリーゼに注意
2015年5月16日土曜日
polyarticular goutという概念
痛風が発作性の多発関節炎となることがあります。polyarticular goutといいます。
多くの場合無治療で放置された場合です。
発作間(intercritical period)は全く無症状になることが多いです(UpToDateによる)。
多発関節炎の鑑別に痛風を入れたことがなかったので、驚きです。
敗血症やせん妄、関節リウマチに間違えられることもあるようです。
上行性に関節をおかしていき、上肢全ての関節が罹患するそうです。
変形性関節症を合併していることも多いみたいです。
日本の症例報告もあります。
高尿酸血症の持続により持続性の多発関節炎を呈した慢性結節性痛風の一例
非定型的な多関節炎を臨床症状と した結節性痛風の一例
無症状→発作→無症状を繰り返す多発関節炎をみたら、
(回帰性リウマチに飛びつく前に)多発関節性痛風を考えましょう。
ちなみに回帰性リウマチでは、発熱が稀である(DynaMedによる)、発作が通常は単関節炎であるため、そこらへんで鑑別してもいいかもです。
痛風発作がある患者に対する尿酸値降下療法
[foreground question]
P: 痛風発作の既往がある高尿酸血症の患者に
E: キサンチンオキシダーゼ阻害薬を使用するのは
C: 尿酸排泄促進薬を使用するのと比べて
O: 痛風発作の回数を減らすか
キサンチンオキシダーゼ阻害薬は
アロプリノール(ザイロリック)やフェブキソスタット(フェブリク) などがあります。
フェブリクは新しい薬ですが、アロプリノールとのRCTで遜色ない効果を示しています。
(このRCTに関しては後日ブログで紹介する予定)
一方、尿酸排泄促進薬は
プロベネシド(ベネシッド)やベンズブロマロン(ユリノーム)などがあります。
CURRENTや「内科診療ストロングエビデンス」には、
蓄尿で尿酸排泄600-800mg/day以下なら
尿酸排泄低下型として、尿酸排泄促進薬を投与し、
600-800mg/day以上なら
尿酸産生亢進型として、キサンチンオキシダーゼ阻害薬を投与すると書いてあります。
しかし、引用文献がなく、根拠が不明でした。
そこで、Pubmedにて検索。
gout, arthritisでRCT, humanのフィルターをかけると135の論文がヒット。
しかし、そのうちお目当ての論文はありませんでした。
どうやら、尿酸排泄促進薬を評価したRCTはこの世に存在していないみたいです…。
アメリカリウマチ協会のガイドラインでは、禁忌がなければ第一選択はアロプリノールになっています。
副作用について
ザイロリックはやはり、過敏反応(DIHSとか)が恐ろしいです。
肝障害が起こる頻度も高いです。
ベネシッドやユリノームは尿酸結石に注意です。
予防のために飲水を促します。また、尿pHを6.0~7.0になるよう調節します。
ユリノームは最低6か月間は肝機能酵素をフォローする必要があります。
無症候性の患者に治療すべきではないのはいまさらですが、
発作があり治療する場合は血中尿酸は6.0以下になるようにします。
アロプリノールは容量不足なことが多いみたいです。割とがっつり出すべきなのでしょう。
そういえば、発作時にザイロリックを飲んでも発作がひどくならないのではという話がありますね。
Allopurinol during acute gout attacks did not differ from delayed allopurinol for pain or recurrence
Ann Intern Med. 2013;158(8):JC6.
あえて危険を冒す必要はないとは思います。
~5/22追加~
尿酸低下療法時にコルヒチン600mg/day服用することで発作の予防になるみたいです。
2015年3月28日土曜日
NEJM Case10-2015
先ほど旅行から帰ってまいりました。
遅くなりましたがNEJM Case Recordです。
本文はこちら。
Case 10-2015
A 15-Year-Old Girl with Graves' Disease and Psychotic Symptoms
【患者】グレーブス病がある15歳女児
【主訴】精神病症状
3か月前、甲状腺機能亢進症状出現し、TSH低値とシンチによりグレーブス病と診断され、アテノロールとメチマゾールが開始となった。
5週前、身体の見た目についてイライラすることが増え、友達がいなくなった。
3週前、どこにいても声が追いかけてきて、悪魔に狙われていると妹に訴えた。自傷や自傷未遂を繰り返し腹部と手首に痕あり。毎朝3時には目が覚める。不安を訴え、食事をとらなくなった。
身長166cm、体重85.6kg、BMI 31.1
血圧137/81、心拍110整、呼吸数28、体温とSpO2は正常。見当識正常。
涙を流しさびしそうでそわそわしているが協力的。
血算、電解質、糖、腎機能正常。鉄、VitB12、フェリチン、甲状腺以外のホルモン正常。
毒物スクリーニング陰性。妊娠反応陰性。TSH<0.01。
メチマゾール増量。オランザピンとロラゼパム開始。6日目で精神病症状落ち着き、気分も明るくなった。
2週間前に退院。過度に信心深くなり、突然教会を変えたりした。
8日前、ネットで知り合った男性に会うために家を出て、翌日警察が保護、病院へ搬送。抑うつ気分とエネルギーのなさを感じているが、希死念慮と幻覚はなし。
3か月前から重症のグレーブス病に罹患している15歳女児に現れた精神病症状の原因は何でしょうか。
最初に答えを言ってしまうと、この症状はグレーブス病によって引き起こされたものであると考えられるそうです。
甲状腺機能亢進症は、イライラや心配などの精神症状は有名ですが、本症例のような躁症状や精神病症状は稀とのことです。どちらかというと甲状腺機能低下症で見られることが多いです(myxedema madness, myxedema psychosis)。
しかし、双極性障害や精神病の家族歴のある患者では特に、甲状腺機能亢進でも躁症状や精神病症状がみられることがあるそうです。治療開始後するに症状が出ることが多く、甲状腺の機能が亢進から正常に移行するときに起きやすいのではと考えられています。
私なら、このような患者さんに出会ったら、まず薬物と譫妄を除外したいと考えます。
いわゆるtreatable dementiaに内包する各種疾患やAIUEOTIPSが鑑別疾患に含まれるのではないでしょうか。
甲状腺機能亢進症の治療開始直後に発症した精神病症状の症例でした。
~Clinical Pearls~
甲状腺機能亢進症の治療開始直後に精神病症状が発症することがある
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