2020年4月6日月曜日
女性の尿失禁(AIM IN THE CLINIC)
新生活になりました.
このブログでは今まで通り,週1回更新継続を目標に,のんびりやっていきます.
Annals of Internal MedicineのIn the clinicに,女性の尿失禁がまとめられていました.
こういうコモンプロブレムは何回でも学習すべきです.
要点をザクっとまとめます.
・有病率は20歳以上で17.1%,高齢者は30-40%
・若年者で多いのは腹圧性尿失禁(stress UI),年齢が上がると切迫性尿失禁(urge UI)がふえ,高齢者で最も多いのは腹圧性と切迫性の混合(mixed UI).
・切迫性尿失禁:突然排尿したくなる
原因:排尿筋収縮が抑制できない,内因性の排尿筋活動活性化,膀胱・脊髄・大脳皮質レベルでの感覚路障害
・腹圧性尿失禁:努責,運動,くしゃみ,咳嗽などで尿が漏れる
膀胱や尿路の問題 尿路を閉鎖することができない
・混合性尿失禁:切迫性+腹圧性
・尿閉による尿失禁:症状は上記3つと同じだが,自分では気づかない
原因:膀胱収縮の障害.神経疾患,薬剤,直腸内便多量貯留など
・肥満や座っている時間が多いことなどは,修正可能な生活因子
・カフェイン摂取減量は患者によっては効果があるかもしれない。2-4週控えて効果を確認するのが良い。
・トイレにすぐ行ける環境か,失禁による心理的なストレスや抑うつはないかなど社会心理的側面も考慮すべし.
・経膣分娩は尿失禁のリスク因子。
・子宮摘出術は高齢者では尿失禁のリスク因子
・併存疾患や薬剤の影響をみる.疾患の適切なコントロールが尿問題の改善につながることもある.主要なものは以下の通り.
・心不全:体液量過剰による夜間尿増加,利尿薬による多尿,ACE阻害薬による咳嗽
・高血圧:CCBによる浮腫→夜間尿増加,失禁となることも
・喘息・COPD:抗コリン薬による排尿筋収縮障害
・糖尿病:チアゾリジンによる浮腫,SGLT-2阻害薬による尿量増加,浸透圧利尿,膀胱の神経障害による尿閉,骨盤底筋の神経障害
・ビタミンB12:膀胱の知覚低下,運動障害→トイレに間に合わない
・神経痛:ガバペンチンやプレガバリンは末梢浮腫による夜間尿・尿失禁のリスク
・てんかん:高用量の抗てんかん薬は膀胱知覚障害を起こす
・パーキンソン病:プラミペキソールやロピニロールは末梢浮腫を起こす
・認知症:コリンエステラーゼ阻害薬による排尿筋収縮力低下→頻尿,尿失禁
・OSAS:ANP分泌増加による夜間尿と夜間尿切迫
・急性発症の尿失禁は、可逆的要因を検討すべし。薬物、尿路感染、尿閉、神経学的異常、膀胱刺激物質の曝露、せん妄、宿便など。
・尿失禁の病型診断は、3IQ(Incontinence Question)が有用
1.過去3か月で(少量でも)尿もれがあったか。→Yesなら次に進む。
2.過去3か月で、尿が漏れたときはどんな時だったか(複数回答可)
a. 体を動かしている(せき、くしゃみ、荷物を持ち上げる、運動する)時
b. 尿意が迫っている/感じているが、トイレまでたどり着けなかった時
c. 体動時でも尿意時でもない
3. 過去3か月で、尿が漏れたときはどんな時が最も多かったか(1つだけ回答)
a. 体を動かしている(せき、くしゃみ、荷物を持ち上げる、運動する)時
b. 尿意が迫っている/感じているが、トイレまでたどり着けなかった時
c. 体動時でも尿意時でもない
d. どちらも同じだけある
3-a. 腹圧性尿失禁(優位)
3-b. 切迫性尿失禁(優位)
3-c. 他の原因
3-d. 混合性尿失禁
・治療は生活習慣の改善や理学療法が第一選択
・水分制限は過度に行うべきではない。一度にたくさん飲むのではなく、少量ずつちょくちょく飲むように指導する。
・定期的な排尿を指導する。2-3時間に一回または排尿日誌をつけて管理。
・認知症患者に排尿するかどうか聴くのは推奨されない。排尿したいという膀胱からの感覚が鈍っている可能性がある。定期的にトイレ誘導するのが良い。
・肥満患者では減量が非常に効果的
・利尿薬使用患者では、就寝前の服用は避ける。生活習慣を聞いて内服タイミングを考える。
・腹圧性尿失禁には骨盤底筋訓練±バイオフィードバック
・腹圧性尿失禁に推奨される薬剤はない
・腹圧性尿失禁ないしそれに併存するうつや慢性疼痛については、デュロキセチンの使用を考慮してもよい。
・難治性の場合、ペッサリーなどによる治療や手術も検討
・切迫性尿失禁には膀胱訓練。または決まった時間に排尿する。
・薬剤を使うなら抗ムスカリン薬(オキシブチニン(ポラキス)、ダリフェナシン(ウリトス)、ソリフェナシン(ベシケア)、トルテロジン(デトルシトール)、フェソテロジン(トビエース)など)、またはβ3刺激薬(ミラベグロン(ベタニス))
・抗ムスカリン薬では、口渇、眼圧亢進、便秘、認知機能低下などの副作用に注意
・β3刺激薬では、高血圧、頻尿に注意(ベタニス50mgは1錠181.8円。)
・萎縮性膣炎があれば、局所エストロゲン療法。
・難治性なら神経刺激療法やボツリヌス毒素などの方法もある
2018年6月30日土曜日
BPHによる尿閉(EBMの実践)
研修医との回診で…
高齢男性、入院中に尿閉になり膀胱内カテーテル挿入中。
直腸診でクルミ大・弾性軟の前立腺を触れる。
タムスロシン服用を開始したが、今後どうすればよいのか。
Step1 定式化
P: BPHによる尿閉・カテーテル挿入患者に
I:タムスロシンを投与するのは
C:他の治療法(タムスロシン+他の薬剤の併用など)と比べて
O:尿閉を脱する可能性が高くなるのか
Step2/3 情報収集と批判的吟味
UpToDateでAcute Urinary Retentionという記事を発見。
Summary and Recommendationに、以下の記載あり(太字はM. Junによる、以下同様)。
●In men with BPH or presumed BPH, treatment also includes an alpha-1-adrenergic antagonist (eg, alfuzosin 10 mg daily) initiated at the time of initial catheterization. Ongoing combination treatment is generally necessary to prevent recurrence of AUR. (See 'Medical management' above and "Medical treatment of benign prostatic hyperplasia", section on 'Alpha-1-adrenergic antagonist and 5-alpha-reductase inhibitor'.)
●In men with BPH, removal of the catheter after a period of time ("trial without catheter" or TWOC) results in successful spontaneous micturition in up to 40 percent of patients, although recurrent AUR is common. We suggest a trial of catheter removal in one to two weeks. For patients who fail the initial TWOC, we advise a second trial of TWOC after an additional two weeks with the catheter. (See 'Trial without a catheter' above.)
●Men with BPH who fail a second TWOC may need surgical therapy. A urodynamic evaluation is advised prior to prostate surgery for patients who have experienced AUR. (See 'Surgical therapy' above.)
知りたい情報に近づいたので、リンクをたどり、Medical treatment of benign prostatic hyperplasia 内の項目 Alpha-1-adrenergic antagonist and 5-alpha-reductase inhibitorをざっと読む。
In patients with severe symptoms of BPH (IPSS ≥20) (table 2), those who are known to have a large prostate (>40 mL), and/or in those who do not get an adequate response to maximal dose monotherapy with an alpha-adrenergic antagonist, we suggest combination treatment with an alpha-adrenergic antagonist and a 5-alpha-reductase inhibitor.
(中略)The number needed to treat to prevent one instance of overall clinical progression was 8.4 for combination therapy, 13.7 for doxazosin, and 15.0 for finasteride.
まとめると…
・BPHによる尿閉にはα1作動薬+カテーテル挿入。1-2週後に一度カテーテルを抜去し、自尿がなければ再度挿入しさらに1-2週待つ。
・IPSS≧20、前立腺体積>40mL、α1作動薬だけでは効果不十分な患者では、5α還元酵素阻害薬の併用が推奨される(NNT 13.7→8.4)。
Step4 患者への適用
・認知症、施設入所中
・経済的問題があり早く退院したい&薬も増やしたくない
・前立腺容積は約25ml
・施設はカテーテル留置状態でも受け入れ可能
→今回は、タムスロシンだけを投与し、1-2週後にTWOC実施。抜去困難ならバルーン留置して施設退院とした。
Step5 1-4のフィードバック
退院後のかかりつけは当院ではないが、退院後の様子を教えてもらうことは出来そう。
振り返り
・研修医の疑問に端を発したものであったが、いつも何となくマネジメントしていたので、知識が整理され良い勉強になった。
・これからも研修医と一緒にEBMを実践していきたい。
・所要時間は5-10分。簡単。楽。
2017年5月29日月曜日
ミニレクチャー 妊婦の尿路感染症
10分で調べ5分で発表するミニレクチャー
Q. 妊婦の尿路感染症の治療戦略は?
A. BMJの10 minutes consultationでは以下の通り(BMJ 2017;357:j1777)
・妊婦は膀胱炎→腎盂腎炎のリスクが高い
・尿培養,尿グラム染色を施行
・全身状態に問題がなければ,7日間の抗菌薬投与
1stはフラントインとあるが日本未発売
・尿培養でKlebsiellaやProteusがでたら結石合併を考慮せよ
・尿培養でGBSがでたら産婦人科紹介を:胎児産道感染のリスク
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抗菌薬
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~15 週
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16~27週
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28週~
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出産
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授乳
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ST合剤
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禁忌
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安全
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安全
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安全
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短期間なら安全
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CEX
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安全
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安全
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安全
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安全
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安全
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AMPC
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安全
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安全
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安全
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安全
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安全
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GM
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禁忌
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禁忌
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禁忌
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禁忌
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―
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CPFX
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禁忌
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禁忌
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禁忌
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禁忌
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禁忌
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・ただし,日本の添付文書ではST合剤は妊娠中,授乳中は禁忌となっている.
2017年4月12日水曜日
ADPKDについて
ADPKDのマネージメント,知らないことだらけでした.
【診断】
家族歴が分からない場合,以下の基準を用いる.
15-39歳:両側合計で腎嚢胞3つ以上
40-59歳:両側ともに腎嚢胞2つずつ以上
60-歳:両側ともに腎嚢胞4つずつ以上
【自然史】
40歳代までは腎機能正常.
腎機能が落ちだしたら,GFRが4.4-5.9/年で低下していく.
蛋白尿は予後不良(約27%).
死因は心血管が多い(36%)ため,血圧管理が大事.脂質異常あれば積極的にスタチンを.
脳動脈瘤にも注意.死因のうち破裂6%,脳出血5%.腎癌で死亡する人はいない.
【治療】
・血圧は130/80目標に.110/75以下になればなお良し.first choiceはACEI
・ADPKD進行を抑制する確立された治療はないが,バソプレシン受容体アンタゴニストは良いかも.水をたくさん飲むのもよいとされるが効果は小さい.
・プラバスタチン(メバロチン)は,小児患者で進行抑制作用あるかも.
【症状】
・濃縮力低下による口渇,多尿頻尿,夜尿
・嚢胞出血による側腹部痛.血尿は出たりでなかったり.
・25%の患者に腎結石
・側腹部痛を見たら嚢胞感染,腎結石,嚢胞出血を考える.
・腎性貧血は起きづらい
【合併症】
・肝嚢胞,膵嚢胞もみられる
・弁膜症合併が多い.特にMVPとAR
・冠動脈瘤と冠動脈解離も多い
・大腸憩室合併が多い
・十二指腸憩室による嘔気,嘔吐,腹痛,吸収不良,胆管膵管閉塞に注意.
・腹壁ヘルニアは45%の患者で見られる
【TIP】
・ADPKD患者はコルチゾールが少し高い.検査解釈に注意.(Exp Clin Endocrinol Diabetes. 2010; 118:741-6)
参考
UpToDate
Diagnosis of and screening for autosomal dominant polycystic kidney disease
Course and treatment of autosomal dominant polycystic kidney disease
Renal manifestations of autosomal dominant polycystic kidney disease
Extrarenal manifestations of autosomal dominant polycystic kidney disease
2017年4月8日土曜日
PSAの評価と前立腺がんの検出
PSAまたは直腸診による前立腺がんスクリーニングは大規模RCTで有効性が否定されています(N Engl J Med 2009; 360:1310-19)ので,家族歴がある人以外では基本的に推奨しないようにしていますが,
前立腺肥大がある患者の評価でPSAはどう使えばよいのでしょうか.
トップジャーナルから学ぶ総合診療アップデート(第2版)に,NEJM 2007; 357:2696-705が紹介されています.
PSA>4で悪性を疑うというのが一般的かと思いますが,以下の指標が紹介されています.
・PSA density=PSA/前立腺容積[ml]<0.1は正常所見
・PSA velocity=⊿PSA density/⊿年>2は悪性所見
ちなみに,前立腺容積=横×前後×頭尾/2です.
正常値は4×1.5×2.5/2=7.5です.「良い子がにっこり」と覚えるようです.
でも,じゃあ前立腺肥大症全員にPSAを測定するのかという話になります.
もうちょっと対象者を絞りたいです.
もちろん一般的な病歴を聴取して,持続血尿や神経学的異常,体重減少があれば癌をうたがうことになります.意外なのは勃起不全.癌患者の30.9%は初診時に勃起不全の症状があるようです.(Br J Gen Pract 2006; 531: 756-62)
くわえて,直腸診の悪性所見は,弾性硬,辺縁不整,前立腺左右差,硬結などです.
忘れてはいけないのは,PSA低値でも癌を否定できない事です
癌患者の15%がPSA<4,9%がPSA<1です.(N Engl J Med. 2011; 365:2013-9)
以上より
risk factorを聴取して,直腸診をして,検査前確率を上げてから
エコーで容積を測って,PSA densityをだして,フォローを適切に行う
という流れがよいかなと考えました.
大事なのは,全ての前立腺がん≠致死性ではないことを患者さんとshareすることでしょうか.
なお,65歳以上なら全摘術の適応にはならないようです.TURPやホルモン,放射線などで様子を見ていきます.
⊿PSA>0.2で再発を疑います.PSAは術後フォローには素晴らしい検査です.
参考:ホスピタリストのための内科診療フローチャート
2017年4月4日火曜日
骨軟化症について
高齢者の全身痛で、診断して治療することで、劇的に改善するもの。PMRとOsteomalacia(低リン血症性骨軟化症)。 #residentday— 清田実穂 (@miho_kk) 2017年3月16日
高齢者の骨軟化症,全くイメージがわかなかったので調べてみました.
原因(後天性のみ)
・ビタミンD不足:日光不足,食餌性,胃切後など
脂溶ビタミンなので肝機能障害・膵機能障害・胆汁鬱滞にも注意
(胃切→https://www.jstage.jst.go.jp/article/juoeh/35/1/35_25/_pdf)
(PD→https://www.jstage.jst.go.jp/article/naika1913/71/11/71_11_1566/_article/-char/ja/)
・慢性腎障害,尿細管性アシドーシス(2型)
(RTA→https://www.jstage.jst.go.jp/article/nishiseisai1951/31/1/31_1_160/_article/-char/ja/)
・ビスホスホネート,アルミニウム製剤,鉄剤,長期の抗てんかん薬など
(鉄剤→https://www.jstage.jst.go.jp/article/juoeh/35/1/35_25/_pdf
https://www.jstage.jst.go.jp/article/naika1913/71/11/71_11_1566/_article/-char/ja/)
・腫瘍性:FGF23分泌性腫瘍
(https://www.jstage.jst.go.jp/article/clinicalneurol/48/2/48_2_120/_pdf)
症状
・骨痛:特に下位脊椎,骨盤,下肢.骨折を起こすことも
・筋力低下:遠位から進行.筋緊張低下,運動時不快感の合併も
・歩行困難
・低カルシウム血症による筋スパズム等の症状
検査
・ALP高値(ほぼ100%)
・Ca/P低値(1/3程度でのみ)
・25[OH]D低地,PTH低値
鑑別疾患(というより以下の病気と誤診されやすい)
・リウマチ性多発筋痛症
・線維筋痛症
・骨粗鬆症
・変形性関節症
・頸椎/腰椎ヘルニア
全身の疼痛を訴える場合は,滑液包炎か?神経痛か?関節痛か?等を確認し,
「全身の骨痛」というキーワードで骨軟化症を疑い
病歴とCa, P, ALPで診断に迫る,という流れでしょうか.
参考文献:UpToDate Epidemiology and etiology of osteomalacia
UpToDate Clinical manifestations, diagnosis, and treatment of osteomalacia
2016年8月12日金曜日
ミルク・アルカリ症候群
今週のNEJM Case Recordが,ミルク・アルカリ症候群についてでした.
Case 24-2016 — A 66-Year-Old Man with Malaise, Weakness, and Hypercalcemia
このブログでも以前取り扱っています.
過剰検査に対する注意などもかかれており,非常に勉強になるので,ぜひ本文も読んでください.
ミルク・アルカリ症候群について簡単にまとめます.
現在ではカルシウム製剤やビタミンDが広く使われるようになったことで,発症が増えています.
2005年の研究では,高カルシウム血症の8.8%,重症の場合は25.7%を占めています.
サイアザイドはCa再吸収を促進するためリスク因子となります.
NSAIDsもリスクです.
高Ca血症に加え,急性腎障害,代謝性アルカローシスが起こります.
高Ca血症+急性腎障害なので,多発性骨髄腫との鑑別が問題となります.
そもそも高Ca自体が脱水→腎前性腎不全をきたすので,これだけでは決め手に欠ける印象ですね.
2016年7月12日火曜日
女性の単純性膀胱炎の治療薬
30代前半の女性が「膀胱炎だと思う」と来院→単純性膀胱炎と臨床診断→グラム陽性球菌検出
という、よくあるケースを経験しました。
起因菌の多くはE.coliですが、P.mirabilisやK.pneumoniaeなど他の腸内細菌も関与します。
グラム陽性球菌がみられたら、S.saprophyticusを考えます。 性交後の膀胱炎として有名ですね。
腸球菌やB群溶連菌の関与はまれだそうです。
海外のガイドラインでは、フラントイン、ホスホマイシン、ST合剤が第一選択ですが、前2つは日本では使えません。
ST合剤は妊婦では禁忌です。
日本のガイドラインではキノロン推しですが、まあ使う気にはなれません。
結局、単純性膀胱炎なら第一世代セフェムでよいのではと思います。
この論文を見ると、第一世代セフェムはST合剤と比べ
治療成功率は同じ、再発率は有意差ないものの若干劣る
という結果ですね。
第一世代セフェム3日間→再発すれば培養してST合剤
という治療プランはどうかなと考えています。
なお、患者の「膀胱炎だと思う」は信用してよいみたいですね。
Diagnosis and Treatment of Acute Uncomplicated Cystitis
参考
UpToDate Acute uncomplicated cystitis and pyelonephritis in women
http://ameblo.jp/bfgkh628/entry-11239031852.html
2015年11月5日木曜日
再発性尿路結石のマネジメント
尿路結石の再発率は以下の通り。
ワシントンマニュアルでは、尿路結石で行うべき検査として
尿培養/pH/沈渣、血清Ca/P/PTH/UAをルーチーンでと書いてあります。
再発性尿路結石に対しては
外来での24時間蓄尿でCa/P/UA/クエン酸/シュウ酸/シスチンを測定するようにあります。
…やりすぎでは?
なお、初回の結石発作でも、画像検査で結石が複数あれば、再発性と分類するようです。
再発予防はまず食事から。
増やす:水、カルシウム、カリウム、フィチン酸(ナッツやゴマに含まれている)
ヘらす:シュウ酸、動物性たんぱく、糖類、ナトリウム、サプリのカルシウムとビタミンC
3~6か月食事制限を行っても再発する場合は、結石の成分や背景疾患を検索したうえで薬剤投与を考慮します。
カルシウム尿中排泄量減少→サイアザイド
高尿酸尿症→アロプリノール
低クエン酸尿症→クエン酸カリウム
参考:UpToDate Prevention of recurrent calcium stones in adults
2015年10月17日土曜日
ボルタレン坐薬による血圧低下
内科研修で担当した患者を何かの切り口でまとめたいと考えています。
薬物の有害事象がでている高齢者をみる機会が非常に多いので、その切り口で分析したら面白いかなと思っています。
腎障害のある高齢者が腎盂腎炎で発熱して
近医でボルタレンサポを投与されて意識レベル低下して…
という患者さんに出会いました。
私自身はボルタレンサポを使用する機会がないのですが
腎障害+ボルタレンで低血圧を招くとのことです。
ROCKY NOTEに詳しい解説がありました。さすが…。
ジクロフェナク坐薬と血圧低下
2015年9月6日日曜日
高アンモニア血症にどう気づくか
ウレアーゼ産生菌の尿路感染症による高アンモニア血症の報告を最近よく目にする気がするので、纏めてみました。
意識障害をきたす高アンモニア血症の原因としては、やはり第1に肝性脳症が挙げられます。
他には、先天性の尿路回路酵素欠損(OTC欠損症など)、ウレアーゼ産生菌感染、薬剤(バルブロ酸など)があります。
肝性脳症の診断にアンモニア測定は必要ありません。
血清アンモニア値は様々な要因の影響を受けるため、変動が強いためです。
あえて言うなら、正常値の2倍以上となってはじめて診断的価値があるみたいです。
基本的には臨床診断です。
文献上の肝性脳症の定義は、"the development of clinically overt neuropsychiatric symptoms in patients with cirrhosis"とあり、肝硬変患者に神経精神症状が出れば肝性脳症です。
アルゴリズムでは、MMSEで24点未満ならその時点で肝性脳症として扱うことになっています。
肝性脳症の症状は、以下の図がすごくわかりやすいので掲載します。
問題は、肝硬変のない患者の高アンモニア血症にどう気づくかです。
特にウレアーゼ産生菌の尿路感染の場合、感染症そのものでも意識障害が起こりえます。
感染症の治療をすれば当然高アンモニア血症も是正されるので
臨床上どうしても鑑別したいというものではないのかもしれませんが
やはり目の前の意識障害患者の原因が分かっているとこちらとしても気持ちが楽です。
思いつきで恐縮ですが、呼吸性アルカローシスがあるときにアンモニアを測定する、というのは銅でしょうか。
UpToDate: Urea cycle disorder: Clinical features and diagnosisには以下の記載があります。
"Hyperventilation is thought to result from cerebral edema caused by the accumulation of ammonia and other metabolites."
感染症(特に尿路感染)が疑わしくて意識障害がある場合、とくに呼吸数20/min以上の場合は
全例血液ガスをとると思いますので、あながち無理のないプラクティスかとも思います。
尿路感染症の場合は、アルカリ尿や尿中結石の存在も傍証になると考えられます。
アルカリ尿がもっともわかりやすい所見でしょう。
参考:UpToDate: Hepatic encephalopathy in adults: Clinical manifestations and diagnosis
~Clinical Pealrs~
意識障害のある尿路感染患者で、呼吸性アルカローシスまたはアルカリ尿をみたら、血清アンモニア値を調べてもいいかもしれない。
肝性脳症の診断は臨床所見に基づいて行う。
2015年8月3日月曜日
遊走腎
「気持ちの問題」といわれる可能性の高い器質性の下腹部痛の原因として
慢性膵炎や間質性腎炎と並んで、遊走腎があります。
あまり良く知らない疾患なのでまとめてみました。
定義:臥位とくらべ立位で腎臓の高さが5cm以上あるいは2椎体以上下がる
典型例:痩せた若い女性。立位で悪化し臥位で寛解する腹部・側腹部の引っ張られる痛み
痛みの特徴:痛みは尿路結石の疝痛に似ることがある。右側で多い。開腹術を受けたことのある患者もいる。「気のせい」といわれると痛みが悪化することが多い。
他の症状
・嘔気・嘔吐:臓側自律神経の刺激による
・立位で腹部腫瘤をふれる:用手的に本来ある位置に戻すと症状良くなる
・一過性の血尿:腎静脈の機械的な進展による
・繰り返す尿路感染
・腎結石
・高血圧:RAA系の亢進による。腎動脈線維筋異形成の合併率も高い。
合併症:Dietl's crisis
尿管が閉塞して急性水腎症となる。
側腹部の激しい疝痛、嘔気、悪寒、頻脈、乏尿、一過性の血尿/蛋白尿、圧痛ある肥大した腎臓をふれる。
用手的に還納するor膝胸位になってもらう
保存的に見て改善乏しければ手術も考える。
引用文献:BJU Int. 103:296-300.
2015年7月26日日曜日
尿路閉塞について
膀胱がんや前立腺肥大による尿路閉塞によく出会うので、まとめてみました。
参照:UpToDate Clinical manifestations and diagnosis of urinary tract obstruction and hydronephrosis
・疼痛、尿量変化、高血圧、血尿のうち1つ以上の症状がみられることが多い。
・疼痛は急性発症であっても見られないことが多い。
・疼痛があれば、膀胱拡張、感染、結石や腫瘍を考える。
・水腎症に疼痛が見られる場合、結石、乳頭壊死、感染が併発している可能性が高い。
・尿量減少は、片側の尿管閉塞ではおこらない。尿道閉塞では完全な無尿となることは少なく、大抵は乏尿となる。
・部分的な尿路閉塞により、尿細管障害が起こり、尿量増加が起こることがある。
・ゆえに尿量が正常であっても尿路閉塞を否定できない。
・急性発症の片側尿路閉塞では、病側の腎でレニン分泌が亢進することにより、レニン‐アンギオテンシン‐アルドステロン系を介して高血圧を招くことがある。また、両側尿路閉塞や残腎の閉塞では、体液量過剰による高血圧が起こりうる。
・血液検査では、腎後性腎不全による血清クレアチニン値上昇が重症例でみられることがある。
・尿路閉塞を除外できる尿検査結果はないが、肉眼的血尿は悪性腫瘍や結石の存在を示唆する。
・慢性閉塞例で、高カリウム性の遠位尿細管性アシドーシスを呈することがしばしばある。
・水腎症の存在が常に尿路閉塞を意味するわけではない。尿崩症などで多尿になると、時に大きな水腎症を呈することがある。妊娠も軽度~中程度の水腎症を起こす原因となりうる。
・尿路閉塞を解消した後の経過は、閉塞の程度と期間によって異なる。尿管の完全閉塞では、一週間以内だとGFRは完全に回復することが多いが、12週以上経過しているとGFRはほとんど回復しない。部分閉塞の場合、予後予測は困難である。
2015年6月3日水曜日
大腸菌以外での尿路感染症
大腸菌による尿路感染症はよく遭遇するので
なんとなく全体像を描くことができます。
膀胱炎なら、熱が出ず頻尿、排尿時違和感・疼痛あり。
腎盂腎炎なら菌血症→エンドトキシンショックで頻脈、血圧低下、呼吸数増加。
しかし、大腸菌以外の菌による尿路感染症の病態を把握していないので
青木先生の成書(聖書)を参考にまとめてみました。
95%の尿路感染症は単一の起因菌により生じる
複雑性尿路感染症では、大腸菌以外の菌の可能性が比較的高い
具体的には、プロテウス, 緑膿菌、クレブシエラ、腸球菌
ここで、複雑性とは「合併症のない女性の尿路感染症」のことなので、
つまり、男性であればすべて複雑性、結石などあっても複雑性です。
Staphylococcus saprophyticus
性的に活発な女性で
Corynebacterium urealyticum
解剖学的異常が存在、抗菌薬使用の既往、尿アルカリ性(珊瑚状結石など)
カンジダ
膀胱カテーテル使用例で時にある。無症候性なら定着菌と判断
症候性膀胱炎、腎盂腎炎、好中球減少などあれば治療する
腸球菌
おおくは院内感染である
腸球菌の菌血症でショック・DICになることは稀
その場合は同時に感染している大腸菌・緑膿菌などによるものを考える
腎盂腎炎だと思って、けど治療がうまくいかないときは
起因菌や耐性菌について考えるのももちろんですが
前立腺炎、腎(周囲)膿瘍なども考慮する必要があります。
無菌性膿尿なら、最も多いのは(しばし不十分に)抗菌薬治療が始まった尿路感染ですが
虫垂炎など腸管感染症や後腹膜膿瘍、前立腺炎で無菌性膿尿をきたすこともあります。
結核や膠原病系なども鑑別に上がりますが実際は稀だと思います。
(NEJMのレビュー Sterile Pyuriaを参照)
2015年6月1日月曜日
高ナトリウム血症の補正
高ナトリウム血症の補正についてまとめてみました。
本当にざくっと調べただけです。間違い、不十分な点はご教授いただければ幸いです。
※症状のある場合、1時間で1mEq/L、24時間で12mEq/Lまでにおさめる。
※無症状の慢性高Na血症は、24時間で5-8mEq/L程度におさめる
※経口摂取可能ならなるべく口から水を飲むようにしましょう。
1Lの輸液で補正されるNa濃度は以下の式で計算できる。
∆[Na] = (輸液のNa濃度+輸液のK濃度-血清Na値)/(TBW+1)
(TBWは《男性》体重×0.5、《女性》体重×0.4で求める)
例えば、体重50kgの男性の血清Na値が160だとする。
ブドウ糖1L輸液すると
∆[Na] = (0+0-160)/(50×0.5+1) = -6.2
と計算でき、Naは160から154に下がると考えられる。
高ナトリウム血症すなわち自由水の欠乏であり、細胞内液の減少である。
ゆえに、細胞外液=循環血液量が減少している高ナトリウム血症では、
細胞外液=生食と、細胞内液=自由水の両方を補充する必要がある(ソルデム1輸液など)。
ソルデム1輸液はNa 90mEq/L, K 0mEq/Lなので、1L輸液すると
∆[Na] = (90+0-160)/(50×0.5+1) = -2.7
と計算でき、Naは160から157に下がると考えられる。
これで細胞外液も細胞内液も補充できる。
ただし、この計算式は便や不感蒸泄による水喪失を考えていない。
頻繁に値をチェックしながら調節していくことになる。
他にも、フロセミドを併用するなどの方法もある。成書参照。
参考文献:Washington Manual 34th edition
2015年5月31日日曜日
無症候性細菌尿について
研修をはじめて、高齢者の細菌尿によく出くわします。
UpToDateには、細菌尿の定義が載っていました。
尿検体はコンタミが多いため、以下の定義を満たしたときに細菌尿と定義する
女性:2回連続で同じ菌がみつかる(>10^5cfu/ml)
男性:1回菌がみつかる(>10^5cfu/ml)
カテ採取:1回菌がみつかる(>10^2cfu/ml)
高齢者で細菌尿を見たときに、
これは無症候性細菌尿なのか、
それとも高齢故に症状がでない(あるいは訴えられない)だけのがっつり尿路感染なのか
非常に悩みます。
無症候性細菌尿なら、ほとんどの場合、症状がないのに治療するのは不適切です。
ではその「症候」とは何やねん、という話ですが、
発熱、尿閉、頻尿、残尿感、排尿時痛、CVA叩打痛、尿臭、血尿などが挙げられると思います。
判断に迷った場合は、膿尿は良い指標となるみたいです。
以下、「高齢者診療で身体診察を強力な武器にするためのエビデンス」
の記載を参考にまとめてみます。
まず、無症候性細菌尿の頻度です。
市中70歳以上:(女性)10.8-16%、(男性)3.6-19%
施設入所:(女性)25-50%、(男性)15-40%
尿道カテ長期留置:100%
市中菌血症の症状の頻度は、85歳以上では以下の通り(頻度の高いもののみ抜粋)。
頻脈 73%、鼓膜温>38.5℃ 77%、ショック 39%
症状の出ない菌血症に注意です。
やはり尿路症状とCVA叩打痛が大事と書いてあります。
日が経つと顕在化することもあります。疑ったら毎日CVA叩打痛をとりましょう。
CVAでいたくなくても、後腋窩線をたたくと痛いこともあります。
表情も参考になります。
CVA叩打痛がない男性なら前立腺炎の可能性があります。直腸診が必要です。
また、咳や呼吸困難などの呼吸器症状があっても、尿路感染は否定できないです。
診断を「肺炎」だと早期閉鎖しないほうがいいみたいですね。
~Clinical Pearls~
・尿路感染を疑ったら毎日CVA叩打痛を取る。
・CVA叩打痛のない男性の尿路感染疑いは直腸診!
・呼吸器症状のある尿路感染を肺炎としない。
・症状のない細菌尿を安易に治療してはいけない。
2015年3月5日木曜日
全身の搔痒(NEJM Clinical Problem-Solving)
今週のNEJMに載っている、Clinical Problem-Solvingです。
いつものごとくさらっとまとめます。本文はこちら。
【患者】58歳女性
【主訴】2週間つづく全身の搔痒
3週前に軽い感冒用症状があった。
2週前より全身がかゆく、どんどん悪化している。皮疹はない。
食欲もなく、疲れやふらつきも感じる。
慢性副鼻腔炎に対してステロイド点鼻と、カルシウムとビタミンDを内服中。
身体診察上は特に異常なし。
皮疹のない全身搔痒なので、全身性の疾患を考えます。
私の鑑別は、胆汁酸鬱滞(黄疸)、腎障害、薬剤、骨髄増殖性疾患、悪性腫瘍、(妊娠)でした。
この記事によれば、さらにHIV感染と甲状腺機能亢進症が鑑別に上がるようです。
骨髄増殖性疾患は具体的にはPV(真性多血症:polycythemia vera)やET(本態性血小板血症:essential thrombocythemia)を想起しました。
その場合、入浴などで温まると痒くなる、が典型例だと思います。
CMLでも好塩基球がヒスタミンを放出して搔痒が生じると思います。
悪性腫瘍は、リンパ腫や白血病の他に、気管支癌で全身搔痒が出やすいという記述をどこかでみました。
全身搔痒を引き起こす薬剤はあるのでしょうか。一応鑑別にはあげましたが。
調べてみると、オピオイドやイナビルをはじめ、結構あるみたいです。
肝障害や腎障害を引き起こして搔痒、という経路も考えられます。
血液検査です。
Na 129, K 4.9, Cl 93, HCO3 25, BUN 121, Cre 10.6, Glu 114, Ca 7.6, T.Bil 0.2, T.P 6.1, Alb 2.4
WBC 14200(Seg 47%, mono 14%, Lym 37%, Eos 0%), Ht 38%, plt 144000, 胸部Xp 異常なし
1か月前の血液検査では異常がなかったようです。
BUNとCreがとんでもないことになってますね。
全身搔痒の原因は腎障害ということでいいでしょう。たぶん尿毒症になってます。
さっそく、腎障害の鑑別をすすめていきます。
尿量変化なし。血尿1+、蛋白尿3+。RBCは変形していない。脂肪円柱あり。FENa 12%。エコーで両側腎やや腫大。その後の検査で尿蛋白22g/day(!)。
腎性の腎不全です。ネフローゼ症候群の基準を満たすかなと思ったら案の定そうでした。
脂肪円柱があるので糸球体疾患でしょう。
ただ、変形赤血球や赤血球円柱がないので腎炎とはいえないとのことです。
ネフローゼ症候群の半分は続発性のもので、糖尿病やSLE、感染後などが多いそうです。
NSAIDsなど腎障害(急性尿細管壊死)を引き起こす薬剤は飲んでいないようです。
腎の腫大は急性を意味します。慢性腎不全だと腎は縮小します。
膠原病の各検査は異常なし。ASO陽性で咽頭培養から溶連菌が出てきました。
こういわれると、私はすぐに急性糸球体腎炎に飛びつきたくなるのですが、先述の通り腎炎は考えにくいのだそうです。そんなものなのでしょうか。
溶連菌感染後に急性腎障害とネフローゼ症候群を引き起こした58歳女性
この疾患スクリプトにピッタリくる疾患として、collapsing glomerulopathyが挙げられていました。
…なにそれ?初見です。
HIV感染後に発症するためHIV関連腎症といわれていましたが、HIV感染がなくても起こることが分かって今の名前になったみたいです。
巣状糸球体硬化症の一亜型という扱いですが、独立した疾患にしようという動きもあるとのこと。
特徴はCre著明高値と大量の蛋白尿です。
腎炎を示唆する尿所見がないことも診断を支持します。
この患者さんでは生検で確定診断となりました。
続発性collapsing glomerulopathyの原因は以下の通りです。
HIV
他の感染(パルボ、CMV, HCVなど)
薬剤(ビス、IFNα、バルブロ酸など)
自己免疫疾患(SLEなど)、
TTP/HUS(thrombotic microangiopathyという)
血液疾患(血液貪食症候群など)
…
予後は不良。治療はステロイドや免疫抑制薬などですが効果はまちまちだそうです。
というわけで、全身搔痒を主訴にやってきた急性腎障害の症例でした。
~Clinical Pearls~
全身搔痒の鑑別は、胆汁酸鬱滞(黄疸)、腎障害、薬剤、HIV感染、甲状腺機能亢進症、骨髄増殖性疾患、悪性腫瘍、妊娠。
腎炎では破砕赤血球や赤血球円柱がみられる。
大量の蛋白尿とCre異常高値を呈する急速進行の腎障害をみたらcollapsing glomerulopathyを疑う。
2014年12月29日月曜日
無症候性蛋白尿/透析受容/Reticulocyte Index/オタワCTルール
先日参加したカンファランスで話題になった事項を纏めます。
・成人の無症候性蛋白尿のアプローチ
透析導入時の患者・家族の受容や、紹介元が果たすべき役割についての議論がありました。
議論したケースの患者さん(80歳代)は、20歳代で蛋白尿のみを指摘されていました。
おそらく今回の透析導入とは関係ありませんが、無症候性蛋白尿の鑑別について調べてみました。
いつものようにUpToDateを。proteinuriaで検索し以下の記事を見つけました。
Assessment of urinary protein excretion and evaluation of isolated non-nephrotic proteinuria in adults
蛋白尿があって、尿沈渣(血尿など)に異常がなく、GFR低下がなく、高血圧や糖尿病もない場合を、isolated proteinuriaというとのことです。
蛋白排出は3.5g/day以下で、低アルブミンがなく、浮腫などの症状がないのが特徴です。
isolated proteinuriaをみたら、まず一過性蛋白尿でないかを確認します。
発熱や運動などで惹起されることが多く、多くは尿蛋白1g/day以下です。
18歳以下の蛋白尿の8-12%を占めるそうです。
次に起立性蛋白尿を鑑別します。
大事なのは、30歳以上では稀であること、仰臥位で尿蛋白が正常になることです。
立位より臥位で尿蛋白が減るのは当たり前だそうです。
この2つでない、つまり生理的でない蛋白尿のアルゴリズムは以下の通りです。
尿蛋白が3mg/day以上、またはアルブミンが大部分を占める場合は、糸球体性蛋白尿を考え腎生検を行います。
尿蛋白3mg/day以下でアルブミンの割合が小さいなら、骨髄腫を考えて、モノクローナル軽鎖を測定します。
それでもなければ、尿細管障害(薬剤、自己免疫など)を考えます。β2ミクロアルブミンなど低分子蛋白を測定します。
腎後性蛋白尿、つまりUTI、結石、腫瘍でも蛋白尿が起こるので注意です。1g/day以下が多いみたいです。
あとは、溶血や横紋筋融解症も蛋白尿をきたします。
・透析導入の受容過程
ディスカッションでは、紹介元医師による透析の説明の有無や、家族の支援、本人の病状の理解などが大事なのではとなりました。
透析施設=墓場みたいなイメージを持つ患者さんもいるらしく、事前にビデオを見せたり見学をしてもらったりしているみたいです。
私は、週3回の通院の負担を考え、タクシー代などの通院費や、施設へのアクセス、家族の協力が需要に関係するのではという意見を述べました。
私は研修を行う病院のある自治体では、障害者手帳でタクシー運賃の割引があるそうですが、詳しい数字は福祉課そなえつけのしおりにしか載っていないらしく、調べられませんでした。
透析需要に影響を与える要因について質的に分析した看護論文(J. Jpn. Acad. Nurs. Sci. 23; 1-13, 2003)によると、「ス トレスの認知状態」「友人の手段的支援」「年齢」「精神健康状態」「導入時 どの程度納得していたか」が心理的適応に影響しており、ストレスの積極的な介入と透析に至る前の患者教育が重要であると結論しています。
また、糖尿病性腎症による透析導入の患者では、視力障害などで就業率や社会参加が低いという患者背景があり、障害を負い目と感じ、その障害と対峙できないことが、自尊心の低下をもたらすという研究もありました。(J. Jpn. Acad. Nurs. Sci. 34; 31-38, 2011)
・貧血における網赤血球の評価
貧血では網赤血球の増減が大事だけど、Retの数値をみるだけでは騙されるよという話でした。
RI(Reticulocyte Index)を計算して、2以上なら溶血性貧血を考えます。
上表は週刊医学界新聞のこの記事より引用しました。
・頭痛を訴える救急患者にCTを撮るべきか
作業服を着た30歳男性が、頭痛を訴えて救急受診というケースでした。
続発性を除外しないと、工場勤務だから中毒か…ということでCT撮影までしましたが
実際は作業着来てるけど仕事は事務、ブラック企業で睡眠時間も3時間程度で、診断は緊張性頭痛でした。
頭痛患者のCT撮影については
JAMAで2013年にpublishされた以下の論文があります。
Clinical decision rules to rule out subarachnoid hemorrhage for acute headache.
カナダで3次救急を受診した頭痛患者(ピークが1時間以内、神経学的所見なし)2131人を対象に
SAHがあった群(6.2%)とそうでない群を比較して、decision ruleを作成したものです。
作成されたオタワSAHルールは以下の通り。
これで感度100%(98.6-100%)、特異度17.8%(16.6-19.1%)です。
…そりゃそうだろっていう感じですかね。
病歴聴取でこのあたりを落とさないようにするのが大事ということでしょうか。
でもこれだと、40歳以上の患者は全例ひっかかりますよね。
2014年12月6日土曜日
ANCA関連腎炎の初発症状
先日、講師の先生が研修医時代に最も印象に残った患者さんについて話をしてくれました。
たしか60代の男性。BUN, Cre高値。
半月ほど前に感冒様症状があったため、薬剤性腎障害を疑い入院。
しかし、休薬して3日目、どんどんCreが高くなっていった。
ここまで聞いて、非常に驚きました。
以前に読んだ、急速進行性糸球体腎炎の症例と病歴がほとんど一致していました。
果たして、生検してANCA関連腎炎と判明。
その後は省きますが、波乱に富んだ経験だったそうです。
以前よんだ文献とはコレ。
鮫島謙一. 急速進行性糸球体腎炎(RPGN). Hospitalist 2014 ; 2 : 105-10.
典型的なRPGNとして、このような症例が紹介されています。
63歳男性、2カ月前から全身倦怠感。1か月前に37.5℃あり近医受診し感冒と診断。
セフェム系処方されたが2週間後でも改善せず。CRP4.5、Cre1.34で尿潜血と尿蛋白が陽性。
尿路感染症としてニューキノロン処方されたが症状改善せず他院受診。
Cre2.41で当科紹介。MPO-ANCA陽性。生検でMPAと診断された。
RPGNの初期症状は、微熱、倦怠感、食欲低下など非特異的だそうです。
この文献では、感染症を注意深く除外する必要性が強調されていました。
日本のガイドラインでは、
1. 尿所見異常(血尿、蛋白尿、円柱尿など)
2. eGFR<60
3. CRP高値や赤沈促進
があれば疑い症例で専門医受診をすすめるとあります。
朝倉内科学によると
ANCA関連の急速進行性糸球体腎炎では先行感染や何らかの刺激により、MPOやPR3が好中球や単球の表面に発現され、ANCAと反応して、好中球・単球の脱顆粒や活性酸素の放出をきたし、糸球体内皮細胞の壊死、毛細血管壁の破綻をきたす。(第九版 p.1202より引用)
急速進行性糸球体腎炎の初発症状としては、全身倦怠感(44.9%)、発熱(42.0%)、食欲不振(32.1%)、上気道炎症状(26.2%)、関節痛・筋肉痛(16.7%)、嘔吐・悪心(15.4%)、体重減少(11.8%)などの非特異的症状が大半で、自覚症状を完全に欠いて検尿異常、血清クレアチニン異常の精査で診断に至る例も少なくない。(第九版 p.1203より引用)
だそうです。
~Clinical Pearl~
感冒と診断された後の腎機能異常では、予後不良なRPGNを頭の片隅においておく。
Hospitalistのまだ読んでいない記事も早めに目を通さないといけませんね。
最新号の消化器疾患特集はどうしようかな。懐事情と相談です。
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