2015年2月19日木曜日
NEJM Case6-2015
今週のNEJM Case Recordです。
本文はこちら。
いつものごとくさっくりまとめます。
Case 6-2015
A 16-Year-Old Boy with Coughing Spells
16歳男性が、咳がひどいと春の終わりに外来受診。
3週間前から咳嗽と鼻閉があった。抗ヒスタミン薬は効果なし。
3日前の夜にひどい咳の発作が出現。呼吸困難と咳嗽後嘔吐を伴った。
他院受診、ステロイドの点鼻と咳止め(ベンゾナテート)を処方された。
2日前、咳は続いていた。夜に再び咳の発作と嘔吐。鼻閉があるほか異常所見ない。
経口ステロイドとアルブテロール吸入薬が処方された。
以降、やはり咳は続いていた。当日夜、再び咳の発作が出現。
陽性症状:咳嗽、鼻閉、咳嗽後嘔吐、発作時鼻出血、発作時呼吸困難
陰性症状:発熱、扁桃腺腫大、頭痛、難聴、胸痛、非発作時呼吸困難、腹痛、消化器症状
身体所見:血圧140/79(右上肢)、119/72(左上肢)、心拍数83、体温36.5℃、SpO2 99%r/a
右肺野で呼吸音減弱。他の所見は正常。
検査:WBC 8200(好中球46.1%、リンパ球42.6%) 胸部レントゲン正常
以下、議論をまとめます。
咳嗽が8週間以上続くと、慢性咳嗽と判断します。
最も多い原因は反復感染です。
喘息、GERD、上気道咳症候群がメジャーですが
他には喫煙(受動含む)、嚢胞性線維症、異物誤嚥、気道狭窄、間質性肺疾患などが上がります。
特に小児では、異物誤嚥を鑑別から外さない意識が大事かもですね。
この症例では、咳発作の症状が激しいこと、発症が急であること、画像検査が正常であることより、感染症以外の上述の鑑別診断は考えにくくなります。
家族歴を聴くと、どうやら母親も4週間前から咳があるらしい。やっぱり感染症ですね。
副鼻腔炎としては発熱や疼痛がない。膿性鼻汁でもない。
結核としては曝露歴がなくX線で異常がない。(これだけで否定するのは危険だと私は思います。)
マイコプラズマにしては非典型だけど可能性は大いにある。
クラミジア肺炎は稀だけどやはり可能性はある。
ウイルス性だと発熱や全身症状が出るはず。
2014年はマサチューセッツで百日咳が流行ったらしいです。
ワクチン歴を確認すると、幼少期に接種しているが、その後のブースター接種はしていないとのこと。
日本では、DPTワクチンを通常生後3-12か月に3回、その12-18か月後に追加接種、さらに11-12歳にDTワクチンを接種、となっています。
百日咳といえば、まずカタル症状が出て、7-10日後に発作期となり咳がひどくなって、数週間で良くなる、という経過をよく勉強します。
咳発作は1時間に数回起こることもあり、夜に増悪します。咳嗽後嘔吐が認められることも多いです。非発作時は無症状です。
しかし、これはワクチン未接種者の場合。
ワクチンを受けた思春期以降の百日咳の症状は、慢性咳嗽が前面にでます。
失神、肋骨骨折、失禁、肺炎、痙攣、脳症を合併することもあるそうです。
百日咳の診断は各種検査を時期毎に使い分けます。
百日咳の治療は、マクロライド系を2週間投与+対処療法です。
周囲にうつさない注意も必要です。
家族や濃厚接触者には、マクロライド系を2週間程度服用してもらいます。
~Clinical Pearl~
ワクチン接種者の百日咳の症状は、慢性咳嗽が主体となる。
小児の慢性咳嗽の原因として、感染、喘息、上気道咳症候群の他に、異物誤嚥と受動喫煙も考える。