2014年12月25日木曜日

解説篇:NEJM Case40-2014



問題篇がまだの方は、先にこちらを読んでくださいね。


Case 40-2014
A 57-Year-Old Man with Inguinal Pain, Lymphadenopathy, and HIV Infection


AIDS患者の、左鼠蹊部付近優位のリンパ節腫大の鑑別となります。
比較的大きく、圧痛があり、壊死を伴っています。

リンパ節腫大の局在があるので、感染症をまず考えたいです。

内部壊死ですぐに連想するのは結核です。

ネコ飼育歴+免疫不全は、Bartonella henselaeによるBacillary angiomatosisを思い浮かべますが、臨床像が違う気がします。

免疫不全患者のHHV8感染といえば、カポシ肉腫とmulticentric Castleman's disease、primary effusion lymphomaです。
multicentric Castleman's diseaseはリンパ節の腫大が主徴候ですが、その名の通り全身のリンパ節が腫れると思います。あまり詳しく知らないので何とも言えません。
primary effusion lymphomaは胸水ADA高値なので結核性胸膜炎と誤診されやすいんでしたっけ。今回の症例には合いません。

他にもリンパ節腫大を起こす病原体はたくさんあると思いますが
気になるのは侵入経路が不明であること。
ヘルニア門から侵入とかあり得るのでしょうか?もしくは陰部から?


感染症以外だと、「夜間発汗を伴う間欠的な発熱」というキーワードは悪性リンパ腫を思い起こします。
ただ局在は説明できるのでしょうか。

サルコイドーシスは…こんな経過にはならないよなぁ。


以前、大学の課題でリンパ節腫大についてまとめたことがあったので
ここで見返してみました。



この表だと、結核とリンパ腫以外にそれっぽい疾患はないですね。



と、ここまで考えたうえでケースの続きを読みました。



…おお、答えは梅毒による壊死性リンパ節炎でしたね。



シマウマに走ってしまいました。反省です。

ですが、鑑別診断の議論で

The necrosis in the affected nodes brings mycobacterial infection to the top of the list of possibilities. However, other infectious processes, including cat scratch disease, are also associated with enlarged, necrotic lymph nodes.

とあり、自分も捨てたものではないなとうれしくなりました。

なお、multiple Castleman's diseaseは高熱などの全身症状が出るのが特徴らしいです。

…骨盤部腫瘍の転移は考えていませんでした。まだまだですね。



梅毒はありとあらゆる病像を呈することで有名ですが、
リンパ節炎を起こすことは知りませんでした。

本文中には

Syphilitic lymphadenitis, although uncommon, may be manifested as painful inguinal masses and may simulate an inflammatory pseudotumor, features that are similar to those seen in this case. 

とあり、そのまま疾患スクリプトとして覚えておく必要がありそうです。



実際には、ルーチーンで梅毒検査はするでしょうから

いずれにせよそこで判明するのでしょうね。

身も蓋もない意見ですが。



リンパ節の局在から感染症を疑ったところまでは良かったのでしょうが

侵入経路についての考察をもっとしておけば

何らかのSTIによるもの、という所までは行けた気がします。



~Clinical Pearl~

リンパ節腫大では、リンパの流れを意識する!

梅毒は鼠蹊部のinflammatory pseudotumorを起こしうる!