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2018年1月12日金曜日

突然の両側難聴


諸事情あり、記事を更新する時間がとれない日々が続いています。
e-portfolioとして、日々の学びを小さいものでも書きとめていきたいものです。


この前、突然の両側難聴を主訴に救急受診した高齢患者のケースを見聞しました。
なんと、脳幹梗塞だったようです。

脳幹梗塞で突然の両側難聴?
とおもいましたが、調べてみると和文献でもけっこうヒットします。

https://www.jstage.jst.go.jp/article/jstroke1979/25/2/25_2_274/_pdf
https://www.jstage.jst.go.jp/article/otoljpn1991/1/5/1_5_19/_pdf


付随して、めまい+突然の片側性感音難聴は、まず突発性難聴を想起してしまいますが、
AICA梗塞でも同じ症状が起こるため、鑑別が必要ですね。
https://www.jstage.jst.go.jp/article/orltokyo/57/1/57_28/_pdf

突発性難聴と思ったら梗塞だった、というのはままあるピットフォールなのかもしれません。

Clinical Pearls
・突然の両側難聴は脳幹梗塞を想起する
・鑑別に突発性難聴を想起したら、かならず脳梗塞を除外する。


2017年11月23日木曜日

ピットフォールその3:心筋梗塞


今回でピットフォールシリーズはいったん終了.

●心筋梗塞は,非典型なのが典型

心筋梗塞患者434877人を解析した研究では,33%が胸痛なし
高齢者,女性,糖尿病,心不全の既往で多い.
(JAMA 2000;283:3223-9)

急性冠症候群で入院した20881例を解析した研究では,
8.4%に胸痛がなく,23.8%は初期診断が違っていた. 
呼吸困難が約半数.次いで発汗 26.2%,悪心・嘔吐24.3%,(前)失神19.1%.
(Chest 2004;126:461-9)

非典型的な症状の方が死亡率が高い.HR 1.30-1.97(多因子調整済)
30日後の死亡率 典型例17.9% 非典型例49.2%
1年後の死亡率  典型例26.2% 非典型例61.0% 
(Heart 2001;86:494-8)


●心筋梗塞をいかに除外するか

症状と身体所見だけでは診断も除外もできない.
(Br J Gen Pract 2008;58(547):e1-e8)

血清マーカーの組み合わせ(CK, CK-MB, ミオグロビン,トロポニンI/T)はどうか.
初回測定だけでは感度37-49%, 特異度87-97%とイマイチ.
(Ann Emerg Med 2001;37:478-94)


●TIMI score 0点で感度97.9-99.8%(Lancet 2011;377:1077-84)

個人的には,このスコアは絶対に覚えられない自信があります.
TIMI scoreを眺めると,大事な点がいくつか見つかります.
こうまとめる方が実践的かも.

①心電図の「変化」をみること
②時間を空けて再度血液検査行うこと
③生活歴をしっかり聞くこと
④65歳以上の胸痛はそれだけでリスクが高いと認識すること


2017年11月16日木曜日

ピットフォールその2:くも膜下出血


ピットフォールシリーズ 第2弾はくも膜下出血

●どうして私たちはくも膜下出血を見逃すのか.
N Engl J Med 2000;342:29-36には以下の要因が挙げられている.

1.臨床像の幅広さを理解していない
〇警告出血の頭痛(急性,強い,いつもと違う)
〇頭痛が自然と治る,鎮痛薬でよくなる
〇ウイルス感染症,一次性頭痛,副鼻腔炎,頸部痛に似ている
〇頭部外傷に惑わされる(実際は失神による転倒)
〇ECG変化に惑わされる
〇高血圧に惑わされる 
〇未破裂動脈瘤の臨床像を知らない

2.CTの限界を理解していない
〇頭痛開始から時間がたつと感度が低下していく
〇小出血で偽陰性となる
〇読影の問題
〇技術面の問題(スライスの薄さや動きによるアーチファクト)
〇Hct 30%以下で偽陰性

3.腰椎穿刺施行しない+所見を正確に解釈できない
〇CTで判断がつかないときに腰椎穿刺を施行しない
〇出血12時間以内なら陰性になることがある
〇視認は分光計より感度が劣る

●よくある迷信・神話

くも膜下出血の頭痛で,突然発症は半数のみにみられる.
ただし,大半は5分以内にピークに達する.
(J Neurol Neurosurg Psychiatry 1998;65:791‐3)

Trauma Tapを見分ける方法はない.別の椎間で穿刺するか他の方法を.
(Am J Neuroradiol 2005;26:820-4)

頭蓋内出血による頭痛もNSAIDsに反応する
(Am J Emerg Med 1995;13:43-5)

●オタワ基準やエメラルド基準は,そりゃそうだよなという印象を個人的に受けます.
それぞれJAMA 2015;310:1248-55,BMJ Open 2016;6:e010999を参照

●第5世代CTならSAHの見逃しは殆どない.(J Emerg Med 2005;29:23-7)
ただし,非専門医がパッと見て判断しても間違えない,なんて誰も言っていない.
やはり,少しでも疑わしければ腰椎穿刺の閾値を下げるのがよいか.
時間を空けて再度CTでもいいかも(BMJ 2006;333:235-40).




2017年11月9日木曜日

ピットフォールその1:虫垂炎


軽症疾患と間違えてしまうピットフォールをいかに避けるか.

その1:虫垂炎

「ERでの非典型症状に騙されない 救急疾患の目利き術」によると…
①主訴が腹痛でない
②腹部所見がそれらしくない
③既存の疾患のために惑わされる
のときに,虫垂炎を見落としてしまいやすくなる.

たしかに,自験例でも腹部膨満や便秘,発熱のみを主訴に来院した虫垂炎は
診断がつくまで厄介だった記憶があります.

●高齢者は腹部所見がはっきりしないので要注意.

60歳以上の虫垂炎患者で
・古典的症状(右下腹部痛,嘔吐,発熱,白血球増加)は20%のみ
・⅓は入院が48時間以上遅れ,入院時点で虫垂炎の疑いがあったのは51%のみ
(以上,Am J Surg 1990;160:291-3)

・⅔以上が発熱なし
・30%が右下腹部痛なし
・¼が白血球正常
(以上,Am J Surg 2003;185:198-201)

●小児も注意

①半数以上が痛みの移動がない
②半数以上が嘔気がない
③半数以上が局所的な圧痛点がない
④半数以上が反跳痛がない
→胃腸炎,咽頭炎,中耳炎,敗血症,尿路感染,熱性けいれんなどと誤診される
(Emerg Med Clin N Am 2010;28:103-18)

↑の文献は必読です.



結局は,すべての腹痛患者で虫垂炎を念頭に置き,
医療面接と適切な誘発試験を行ったうえで,
迷ったら,子どもならエコー,高齢者ならCTかエコーをするしかないかと.

65歳以上の腹痛患者で
CT撮影で方針が変化した割合が,入院:26%,手術:12%,抗菌薬:21%
診断が変化した割合が45%
という報告もあります(Am J Emerg Med 2004; 44:270-2)

虫垂炎のCTは, 感度90-100%,特異度91-99%と診断能が良い(N Engl J Med 2003; 348:236-42)ですが,
非専門医が見落としなく読めるかというのは別問題だと理解しています.


2017年3月29日水曜日

NEJM Case Record 2017-9


思い出したようにNEJM Case Recordです.

Case 9-2017
A 27-Year-Old Woman with Nausea, Vomiting, Confusion, and Hyponatremia

27歳女性
1週間前に嘔気,嘔吐(非胆汁性,非血清)あり.数時間で軽快した.
2日前の夕方,嘔気と数回の嘔吐あり.その後,傾眠,歩行不能になったため近医を受診した.
バイタルサイン:体温36.1℃,血圧94/64mmHg,脈拍100bpm,呼吸数16/min,SpO2 100%ra
質問や指示に応じず,話は的を射ない.時折啼泣し,四肢を意味もなく動かしている.低血圧に対し生食投与を行った.
血液検査:Na 104,K 5.1,Cl 74,CO2 19,BS 114 ,AG 11
集中治療が可能な病院に移送した.移送中に患者は興奮し横にじっとできなくなった.

搬送先病院バイタルサイン:体温36.7℃,血圧102/57mmHg,脈拍92bpm,呼吸数12hi/min,SpO2 100%ra

尿所見:比重740,Na 158
瞳孔正常,粘膜湿潤,心音呼吸音正常,腹部所見なし.頭部CTと胸部レントゲンは正常.

さて,診断は?

最大のプロブレムは低ナトリウム血症
くわえて,間欠的嘔吐,昏迷・興奮,高比重・高ナトリウム尿,輸液に反応する低血圧,高K血症,AG正常性代謝性アシドーシス

低ナトリウム血症をみたら,まずは体液量評価をする.
このケースでは,最初は細胞外液量低下→輸液で正常体液になった.
くわえて,尿比重が高いということはADH高値であるということ

腎症や中枢性塩喪失症候群は否定的.
妊娠は低Na血症を来すがこんなに重症にはならない.
甲状腺機能低下症は原因となりうる→ホルモン測定で除外できた.
SIADHは除外診断

利尿薬使用による低ナトリウム血症はどうか.
最多の原因薬物はサイアザイド.ループ利尿薬より低ナトリウム血症を来しやすい.
特徴は,尿濃縮能力が保たれている・ADH反応性がある・体液量正常であることが多い点.
服用1-2週で発現する.

副腎不全,特に一次性はどうか.
低ナトリウム血症に至る経路は,コルチゾール不足によるADH上昇とアルドステロン不足(原発性のみ)の2つ.体液量は低~正常.
副腎不全は低血圧を来す.コルチゾール不足による血管拡張または嘔吐やアルドステロン不足による体液量低下.

MDMA乱用もADH上昇による低Na血症を来す.
高体温になるので飲水も促される.
その他の徴候は,高血圧,頻脈,横紋筋誘拐,セロトニン症候群など.

このケースでは利尿薬乱用か副腎不全が考えられる.
利尿薬乱用はふつう,低K血症かつ高アルドステロン症による代謝性アルカローシス
副腎不全なら低アルドステロンによる高K血症と代謝性アシドーシス

原発性副腎不全なら色素沈着がほぼ必発だが頻繁に見逃される.
そう思って調べると,屈曲部位に色素沈着が見られた.

追加の病歴をとると,じつは数か月前から倦怠感があり,運動機能が低下していた.

というわけで,最終診断は原発性副腎不全でした.
低Na血症の鑑別はシステマティックに行うようにしましょう.

2016年11月16日水曜日

失神の鑑別



失神の鑑別についてまとめて発表する機会があったので,
スライドを挙げます.

内容は基本的なものですのであしからずご了承ください.




































2016年6月2日木曜日

脳梗塞、脳出血を高次医療機関に転送する判断基準



2次救急機関にいると、脳卒中を高次に救急搬送するか入院で保存的に見るかの判断をする機会が多いです。
ある程度評価項目を覚えていないとやってられないので、暗記項目を極力少なくしてまとめます。


●脳梗塞 血栓溶解療法の適応

禁忌をちゃんと覚えておく必要があります。
発症4.5時間超、出血がある:消化管や尿路は21日以内の既往で禁忌になる、解離やSAHがある、というのはわかりやすいです。

降圧後も185/110mmHg以上なら禁忌、広汎な早期虚血性変化やmidline shiftがあっても禁忌です。
既往歴では、1カ月以内の脳梗塞があると禁忌になるのが注意です。

血液検査で以下に当てはまらないことを確認しなくてはいけません。
重篤な肝障害、急性膵炎、血糖50以下or400以上、Plt 10万以下、PT-ING>1.7, aPTT>40秒

あわせて、NIHSSは26点以上だと慎重投与になりますが、
4点以下の軽症例でも慎重投与になることも覚えておく必要があります。
つまり、感覚障害だけ、軽度の片側麻痺だけとかだと、適応にはならなくなります。

詳しくはrt-PA静注療法適正治療指針(2012年)を。


●脳出血 手術適応

日本脳卒中学会のガイドラインには以下のようにあります。


さすがに覚えられないので、ROCKY NOTEの記載を参考にまとめます。


以下の場合は非適応となるのでこれをおさえる。

・血腫量10ml未満 予後が良いので
・神経学的所見が軽微 予後が良いので
・逆に、GCS4以下の昏睡例 ただし小脳出血→脳幹圧迫は手術適応あり
・脳幹出血
・視床出血 ただし脳室穿破・脳室拡大はドレナージ術考慮



2016年5月27日金曜日

BPPVのピットフォール



BPPVは急性発症のめまいで救急搬送される方の大多数を占めます。
非常にcommonな病態では、稀なピットフォールもしっかり押さえておきたいです。
中枢性との鑑別はもちろん大事。その中でもみおとしそうなものを。

まず、背景知識から。

・後半規管型(60-70%)の所見
Dix-Hallpike test:座位から右(左)下懸垂頭位に変換して回旋性眼振が出現
眼振出現時に下になっている方向=回旋の方向が患側です

治療はEpley法。ただ、処置室では気分悪くてそれどころではないという方がとても多いです。
座位→患側下懸垂頭位→健側下懸垂頭位→健側臥位→座位 それぞれめまいが止まるまで保持


・外側半規管型(30%)の所見
Supine-roll test:仰臥位で右下頭位→左下頭位にすると方向交代性眼振が起こる
患者は自然に健側下頭位、健側臥位になっており、それがそのまま治療法になる(Vannucchi法)


・前半規管型(1%)は後半規管型と所見が似ていて、治療も同じなので、省略します。


そこで、pitfall。

外側半規管型に似た中枢性めまいがあります。小脳梗塞などが原因です。
Central paroxysmal positional nystagmus(CPPN)といいます。

鑑別点は以下の通り
・頸部進展(座位→仰臥位)で下方向性眼振
・頸部屈曲(仰臥位→座位)で上方向性眼振

じっと側臥位で寝ている→supine-roll testをして方向交代性眼振がある→じゃあ外側半規管型BPPVかな→まてよ、CPPNを除外しておこう→座位⇔臥位の変換で垂直性眼振がある!→小脳に病変があるぞ!
というパターンでしょうか。


参考文献
Hospitalist~病院総合診療医~ 2015.6.3 Central paroxysmal positional nystagmus
救急外来ただいま診断中


2016年3月23日水曜日

COPD急性増悪時の対応


以前、安定期COPDの治療についてまとめたので
教科書的な記載になりますが、急性増悪の治療もまとめてみます。
最近よく出会うのです。季節柄でしょうか。


COPDのある患者さんに、呼吸苦増悪、喀痰や咳嗽の増加、喘鳴などが出現し、
ほかの原因が考えにくいときに、急性増悪と判断します。
当たり前ですが、スパイロメトリーの結果で診断するわけではありません。あくまで臨床診断。

なので鑑別診断が重要です。
気胸、心不全、心筋虚血、肺塞栓といった鑑別が浮かんでくるかが大事そうですね。


第一選択はSABA吸入。SAMAを追加してもいいです。
多くの急性増悪患者は吸入手技がちゃんとできていないそうで。
言われてみれば、そりゃそうかもしれません。


全身ステロイド投与は入院日数短縮、肺機能、再発減少の効果があるそうで、入院患者では推奨されています。ただし死亡率低下まで強いエビデンスではないです。
コクランレビューはこちら

30mg/day程度を<7日間で投与するのがよさそうです。
コクランレビューはこちら

経口摂取ができれば第一選択はプレドニン錠です。


感染の関与が疑われるときは抗菌薬を用います。
当然ながら起因菌を同定する努力をしたうえで、エンピリックにはβラクタム+マクロライド(またはキノロン)でしょうか。
緑膿菌をカバーするかなどで変わってきますね。


SpO2は88-92%を目標に。

中等度以上の呼吸困難、急性呼吸性アシドーシス(pH<7.35またはPaCO2>45mmHg)、頻呼吸があり、気管確保の必要がなく患者さんが協力的なら、NPPVによるBi-level PAPの適応です。

はじめはIPAP 4cmH2O/ EPAP 8cmH2O程度から始めたのでよさそうです。
実際につけてみるとわかるのですが、結構大変です。圧を上げるのは慣れてから必要があればでよいと思います。
つけてみて本人の症状が改善すればOKです。
あとは、PaO2(モニターではSpO2)をみながらFiO2の値を変えます。
S/Tで設定する最低呼吸回数は10/min程度と低くします。呼吸数を早く設定してしまうと、呼気が終わる前に吸気が来てしまいます。
モニターの値はみますが、最も鋭敏かつ信頼できる指標は「本人の自覚症状」です。


挿管+人工呼吸管理に至った場合の設定について。
どうせモニター見ながら調整するので、思い切ってわかりやすい数字にしてみました。
キーワードはpermissive hypercapniaです。

まずはA/Cで。VCVなら一回換気量は6ml/kg(理想体重)程度が良いと思います。
身長170cmの男性で400ml程度ですね。

呼吸回数は10/min程度。
早すぎると呼気が終わる前に吸気がきて、肺が過膨張してしまいます。
ミストリガーの原因ともなるので、呼気で流量波形がしっかり基線まで戻っていることを確認です。
PaCO2の正常値は目指しません。pH>7.15ならばPaCO2高値は許容します。
これをpermissive hypercapniaといいます。肺損傷を防ぐためですね。

FiO2は40%程度から開始。COPD単独で重度苦の低酸素血症を招くことはありません。
PaO2をみながら、上げ下げするのが良いと思います。

吸気流量(VCV)は75L/min程度と多めに。吸気時間も短くなっていい感じです。

抜管できるかの評価は、SBTで行いますが、
COPDの場合は、抜管直後にNPPVにするのも良いとのことです。


以上、のべつまくなしに書き並べてみました。


~参考文献~
レジデントのための感染症診療マニュアル
Washington Manual
病態で考える人工呼吸管理
http://ameblo.jp/bfgkh628/entry-11369520272.html





2016年3月21日月曜日

ストレス潰瘍の予防


重症患者の急性期に出血性胃潰瘍→予防しておけばよかった
という経験があるので、以下の文献をまとめてみます。

Prevention of stress-related ulcer bleeding at the intensive care unit: Risks and benefits of stress ulcer prophylaxis
World J Crit Care Med. Feb 4, 2016; 5(1): 57-64


・PPIやH2RAは胃粘膜からの出血を予防できる
・ただ、ICU患者の薬剤によるストレス潰瘍予防は、全体の死亡率減少には寄与しない

・ICUで胃出血が起こると死亡率は49%。胃出血がない場合は9%。
・多変量解析をすると胃出血が死亡率を上げない。

・出血のリスク因子:人工呼吸(OR 15.6)、凝固障害(OR 4.3)、3つ以上の併存疾患(OR 8.9)、肝障害(OR 7.6)、腎代替療法(OR 6.9)

・使用する薬剤はPPIの方が最も出血予防できる。
・ICUでのストレス潰瘍予防のフローチャート(毎日評価すること)




・なぜ全員に予防しないのか。有害事象があるから。

・クロストリジウム腸炎や肺炎のリスクが高くなる可能性がある。
・肝硬変患者ではPPI使用は独立した死亡リスク因子となる(SBP増やしてしまうからか)。

・薬物相互作用も注意。たとえばクロピドグレルを阻害して心血管イベントが増える。
・重症患者では肝毒性、骨髄毒性、低マグネシウム血症の可能性もある。

・ストレス潰瘍の予防策はなにもPPIだけじゃない。経腸栄養ができればそれがベスト。




2015年12月1日火曜日

急性冠症候群のprediction score


胸痛の救急患者さんに出会うと

「急性冠症候群じゃないよね」と常に不安が付きまといます。

もちろん、6時間おきに心電図とデータフォローというのが王道なのですが

もうちょっと自らの診断性能を高めたいと思っています。


JAMAのClinical Rational Examinationでこの話題があったので(JAMA. 2015;314(18):1955-1965.)
目を通したところどうやらTIMI scoreとHEART scoreが有用とのことだったので、調べてみました。


TIMI score (Thrombolysis in Myocardial Infarction Score)

・65歳以上
・リスクファクターが3つ以上
  (冠動脈疾患の家族歴、高血圧、脂質異常症、糖尿病、喫煙)
・冠動脈狭窄の既往(50%以上)
・7日間以内のアスピリン使用
・24時間以内に2回以上の狭心痛
・0.5mm以上のST変化あり
・心筋マーカー(CKMB, TropT)陽性

TIMI scoreが5-7点でLR+:5.2-8.9
0-1点でLR-:0.23-0.43となっています


HEART score

【病歴】非常に疑わしい:2点 そこそこ疑わしい:1点 あまり疑わしくない:0点
【心電図】著明なST低下:2点 非特異的再分極:1点 正常:0点
【年齢】65歳以上:2点 45-65歳:1点 45歳以下:0点
【リスクファクター】3以上:2点 1-2:1点 0:0点
【トロポニン】3倍以上:2点 1-3倍:1点 正常:0点

7点以上でLR+ 7.0-24
3点以下でLR- 0.13-0.30です。


救急の場で、しっかりリスク因子(冠動脈疾患の家族歴、高血圧、脂質異常症、糖尿病、喫煙)を聴取しないといけないのですね。



2015年1月29日木曜日

NEJM Case 4-2015



今週のNEJM Case Recordです。

本文はこちら

Case 4-2015
A 49-Year-Old Man with Obtundation Followed by Agitation and Acidosis


自殺目的で何かを服用した患者。
アニオンギャップ開大代謝性アシドーシスから何を考えるか、というケースでした。

アニオンギャップ開大代謝性アシドーシスの鑑別ですが
私はKUSSMALで覚えています。
(Kussmaulの大呼吸が見られることからの語呂合わせ)

Ketoacidosis(diabetic, alcoholic)
Uremia
Sepsis
Salicylate
Methanol
Aspirin
Lactic acidosis


これだとマニアックな中毒はカバーできないです。
そんなときはMUDPILES-CARTです。
こっちはさすがに暗記していません。

Methanol
Uremia
Diabetic ketoacidosis
Propylene glycol
Infection/Isoniazid
Lactic acidosis
Ethylene glycol
Salitylate
Cyanide
Alcoholic ketoacidosis
Rhabdomyolysis
Toluene


個人的には、アニオンギャップ開大代謝性アシドーシスをみると
ケトアシドーシス、乳酸アシドーシス、アスピリン中毒、不揮発アルコール中毒
がこの順番で思い浮かびます。

尿毒症と敗血症がどうしても鑑別から抜け落ちてしまいます。
この二つをアニオンギャップ開大代謝性アシドーシスからみつけるという経験がないからでしょうか。
ピットフォールにならないように、この際、しっかり頭に叩き込んでおこうと思います。
尿毒症と敗血症、尿毒症と敗血症、尿毒症と敗血症…


今回のケースでは、浸透圧ギャップが開いていたことが手掛かりとなりました。
アニオンギャップ開大代謝性アシドーシス+浸透圧ギャップ開大ときたら
不揮発アルコール中毒で決まりですね。
プロピレングリコールかエチレングリコールです。

治療は重炭酸ナトリウム→ホメピゾールです。
ホメピゾールは2日前に日本でも発売開始になりました。なんという偶然。


浸透圧ギャップ開大が分かれば診断は容易ですので
アニオンギャップ開大代謝性アシドーシスをみたときに浸透圧ギャップを測定できるかがカギだと思います。


意識障害をみたら、3つのギャップをさがせ
という言葉があるみたいです(出典はこちら)

アニオンギャップ
サチュレーションギャップ(CO中毒ではSpO2正常でもPaO2低下)
浸透圧ギャップ

に気を付ける必要があるとのことです。


アイスノンなどの保冷剤にもエチレングリコールは入っているみたいなので
自殺企図がないからといって安易に除外はできないですね。

また、プロピレングリコールはロラゼパム製剤に入っているそうです。
アルコール離脱譫妄だと思ってロラゼパムたくさん使っていたら、じつはプロピレングリコール中毒による譫妄だったという症例報告が2003年のthe Lancetにありました。

Agitation by sedation
Tuohy, Kathryn A et al.
The Lancet , Volume 361 , Issue 9354 , 308


~Clinical pearl~
アニオンギャップ開大代謝性アシドーシスをみたら浸透圧ギャップを測定する。


2015年1月22日木曜日

NEJM Case3-2015



今週のNEJM Case Records of the Massachusetts General Hospitalです。

記事が長いといわれたので、簡潔さを心掛けます。
時系列など大幅に端折ったので、全文を読みたい方はこちらへ。


Case 2-2015
A 60-Year-Old Woman with Abdominal Pain, Dyspnea, and Diplopia

【患者】真冬に救急受診した60歳女性

【主訴】腹痛、呼吸困難、複視

【現病歴】
1日前に、声が嗄れて太くなり、唾液が増えた。
その日の晩に以下の症状が出現。
 嘔気、嘔吐、腹痛(鋭い、持続する、びまん性)、喘息発作(既往あり)に似た息切れ、喉が締め付けられる感じ、嚥下困難

ここで他院に救急受診。体温36.8℃、血圧138/79、脈拍117、呼吸数18、SpO2 96%r/a。
CTで小腸閉塞あり、経鼻胃管挿入。
ここで、水平性の複視が2時間前から続いているとの訴えあり。
その後すぐ、しゃべることが難しくなっていった。
他院到着してから9時間後に当院到着。
そのころには患者は筆談でコミュニケーションをとるようになった。

【身体診察】
意識清明。体温36.8℃、血圧125/77、脈拍122、呼吸数18、SpO2 96%r/a
複視が進行。両側完全眼瞼下垂、眼球運動麻痺、瞳孔不同にまで至った。
語音不明瞭。舌突出不能。顔面神経麻痺も出現してきた。
喉頭鏡で両側声帯麻痺あり、浮腫なし →挿管に。
四肢近位筋力低下あり。腱反射低下。バビンスキー反射は陰性。
感覚障害はなし。



以下、解説篇です。



Problem listはこんな感じかな。

# 脳神経障害
両側動眼神経、顔面神経、迷走神経、舌下神経麻痺は少なくともある

# 自律神経障害(副交感神経障害)
頻脈、低血圧?、消化管運動低下→嘔気嘔吐腹痛

# 運動神経障害
近位筋力低下、もしかしたら呼吸筋麻痺あるかも、腱反射消失

# 感覚神経は障害されていない
# 上位運動ニューロンは障害されていない
# 失調なし

# 発熱なし、筋痛なし、先行する感染症状なし


障害部位に共通するのは、神経伝達物質がAChである、ということ。
重症筋無力症は、急速な進行と、自律神経障害があることから否定的。

筋電図検査やPCRなどで確定診断がつきました。
【診断】原因物質不明のボツリヌス中毒


ボツリヌス中毒の典型症状は、眼のかすみ、眼瞼下垂、複視です。
運動神経障害は下行性におこり、両側で近位→遠位へと思いります。
自律神経障害も良くみられる症状で、神経学的症状の前に消化器症状が出ることもあります。
感覚は正常、発熱もなく、画像検査では異常は見つかりません。

私は最初、喉頭浮腫+中枢神経症状で橋本病かなと考えました。
しかし、頻脈の説明ができず、アレ?という感じに。
両側声帯麻痺あたりから、何か違うぞと思いはじめました。
脳神経motor neuronの障害、それに加え麻痺性イレウス→自律神経障害?
というところまではたどり着けたのですが
ピッタリくる疾患が思い浮かばず、マニアックな自己免疫疾患かなとうたぐるハメに。
ボツリヌスという鑑別が完全に抜け落ちていました。


~Clinical Pearl~
ボツリヌス中毒=眼と球麻痺を中心とする脳運動神経麻痺+自律神経障害+感覚神経intact(+近位からの末梢運動神経障害)



2015年1月15日木曜日

解説篇:NEJM Case2-2015



問題篇がまだの方は、先にこちらを読んでくださいね。


Case 2-2015
A 25-Year-Old Man with Abdominal Pain, Syncope, and Hypotension


急激な腹痛と低血圧をみて、最初は
肝がん破裂、腹部大動脈解離、腹部大動脈瘤破裂
などを想起しましたが、その後の経過が合わないです。

腹腔内でなにかが「破れた」のは間違いないだろうとおもいます。
あとは、このような急激な症状を引き起こすような「なにか」が分かればいいのです。
破れたものの内容物がこの病態を引き起こしているのでしょうが…。

うーん、ヒスタミンなら血圧低下・脈拍数増加と皮膚所見を説明できるかな。
肝臓のカルチノイド腫瘍が破裂した?原発は虫垂?
でも、本当にそんなこと起こるのでしょうか…。
25歳という年齢も合わないです。

失神の鑑別は
心原性、痙攣、神経性(血管迷走神経反射など)、血液循環(貧血など)
があがりますが
なんらかの物質により急激に血管拡張・透過性亢進が起きた
として間違いないとは思います。
問題は「何らかの物質」が全く思いつかないこと。なんだろう…。

と、ここまで考えて続きを読みました。


…あー、なんで思いつかなかったんだろう。
エキノコックスはアナフィラキシーショックを起こすじゃないか!

なぜここまで考えておいてエキノコックスを想起できなかったのか。
自分の理解、記憶の仕方が中途半端だったのでしょう。
「エキノコックスの嚢胞の生検は播種とアナフィラキシーを起こすため禁忌」
としか理解しておらず
エキノコックスの嚢胞が破裂してアナフィラキシー
というエキノコックスの自然史を十分理解していませんでした。


Wikipediaの記載が最も分かりやすかったので引用します。

患者の98%が肝臓に病巣を形成される。感染初期の嚢胞が小さい内は無症状だが、やがて肝臓腫大を惹き起こして右上部の腹痛胆管を閉塞して黄疸を呈して皮膚の激しい痒み、腹水をもたらす事もある。次に侵され易いのは肺で、咳、血痰、胸痛、発熱などの結核類似症状を引き起こす。経過は成人で10年、小児で5年以上かかるといわれている。そのほかにも、脳、骨、心臓などに寄生して重篤な症状をもたらす事がある。また、嚢胞が体内で破れ、包虫が散布されて転移を来たす事もしばしばある。内容物が漏出するとアナフィラキシーショックとなる。本虫の引き起こす症状は大型の条虫よりも重篤である。


~Clinical pearl~
エキノコックス嚢胞の破裂はアナフィラキシーショックを引き起こす。


2015年1月6日火曜日

46歳男性:腹痛と低血圧/60歳男性:慢性下痢と胃潰瘍(Mayo Residents' Clinic)



今月のMayo Clinic ProceedingsのResidents' Clinicはこの2つでした。

46-Year-Old Man With Abdominal Pain and Hypotension

60-Year-Old Man With Chronic Diarrhea and Peptic Ulcer Disease



1例目は、ヒスタミン中毒によるショックでした。
最初から食事摂取歴が提示されているので診断は簡単ですが
ヒスタミン中毒でショックが起こりうるとこが盲点になりそうだなと思いました。

皮疹+ショックできたらまずアナフィラキシーを思い浮かべるだろうし。

日々是よろずER診療のこの記事にも、アナフィラキシーと間違えやすいヒスタミン中毒の例について載っています。


~Clinical Pearl~
アドレナリンの反応が悪いアナフィラキシーをみたら、内服薬(βブロッカー)と食事(直前にサバやマグロを食べているか)を聴取する。



2例目はゾリンジャーエリソン症候群。
タイトルだけで診断も可能ですね。

Stool osmolar gapは、日本で測定しているところを見たことがないのですが
海外の文献だと非常に多用されている印象があります。

290 – 2 ([Na+] + [K+]) が50以下ならSecretory diarrhea, 100以上ならOsmolar diarrheaです。


最重要点がケースの最後に書いてありましたので、引用してパールにしたいと思います。

~Clinical Pearl~
Although chronic diarrhea is common, a methodical and thorough approach is important to not overlook rare but potentially serious, yet curable, conditions.


2014年12月29日月曜日

無症候性蛋白尿/透析受容/Reticulocyte Index/オタワCTルール



先日参加したカンファランスで話題になった事項を纏めます。


・成人の無症候性蛋白尿のアプローチ

透析導入時の患者・家族の受容や、紹介元が果たすべき役割についての議論がありました。
議論したケースの患者さん(80歳代)は、20歳代で蛋白尿のみを指摘されていました。
おそらく今回の透析導入とは関係ありませんが、無症候性蛋白尿の鑑別について調べてみました。

いつものようにUpToDateを。proteinuriaで検索し以下の記事を見つけました。
Assessment of urinary protein excretion and evaluation of isolated non-nephrotic proteinuria in adults

蛋白尿があって、尿沈渣(血尿など)に異常がなく、GFR低下がなく、高血圧や糖尿病もない場合を、isolated proteinuriaというとのことです。
蛋白排出は3.5g/day以下で、低アルブミンがなく、浮腫などの症状がないのが特徴です。

isolated proteinuriaをみたら、まず一過性蛋白尿でないかを確認します。
発熱や運動などで惹起されることが多く、多くは尿蛋白1g/day以下です。
18歳以下の蛋白尿の8-12%を占めるそうです。

次に起立性蛋白尿を鑑別します。
大事なのは、30歳以上では稀であること、仰臥位で尿蛋白が正常になることです。
立位より臥位で尿蛋白が減るのは当たり前だそうです。

この2つでない、つまり生理的でない蛋白尿のアルゴリズムは以下の通りです。
尿蛋白が3mg/day以上、またはアルブミンが大部分を占める場合は、糸球体性蛋白尿を考え腎生検を行います。
尿蛋白3mg/day以下でアルブミンの割合が小さいなら、骨髄腫を考えて、モノクローナル軽鎖を測定します。
それでもなければ、尿細管障害(薬剤、自己免疫など)を考えます。β2ミクロアルブミンなど低分子蛋白を測定します。

腎後性蛋白尿、つまりUTI、結石、腫瘍でも蛋白尿が起こるので注意です。1g/day以下が多いみたいです。
あとは、溶血や横紋筋融解症も蛋白尿をきたします。



・透析導入の受容過程

ディスカッションでは、紹介元医師による透析の説明の有無や、家族の支援、本人の病状の理解などが大事なのではとなりました。
透析施設=墓場みたいなイメージを持つ患者さんもいるらしく、事前にビデオを見せたり見学をしてもらったりしているみたいです。

私は、週3回の通院の負担を考え、タクシー代などの通院費や、施設へのアクセス、家族の協力が需要に関係するのではという意見を述べました。
私は研修を行う病院のある自治体では、障害者手帳でタクシー運賃の割引があるそうですが、詳しい数字は福祉課そなえつけのしおりにしか載っていないらしく、調べられませんでした。

透析需要に影響を与える要因について質的に分析した看護論文(J. Jpn. Acad. Nurs. Sci. 23; 1-13, 2003)によると、「ス トレスの認知状態」「友人の手段的支援」「年齢」「精神健康状態」「導入時 どの程度納得していたか」が心理的適応に影響しており、ストレスの積極的な介入と透析に至る前の患者教育が重要であると結論しています。

また、糖尿病性腎症による透析導入の患者では、視力障害などで就業率や社会参加が低いという患者背景があり、障害を負い目と感じ、その障害と対峙できないことが、自尊心の低下をもたらすという研究もありました。(J. Jpn. Acad. Nurs. Sci. 34; 31-38, 2011)



・貧血における網赤血球の評価

貧血では網赤血球の増減が大事だけど、Retの数値をみるだけでは騙されるよという話でした。
RI(Reticulocyte Index)を計算して、2以上なら溶血性貧血を考えます。




上表は週刊医学界新聞のこの記事より引用しました。



・頭痛を訴える救急患者にCTを撮るべきか

作業服を着た30歳男性が、頭痛を訴えて救急受診というケースでした。
続発性を除外しないと、工場勤務だから中毒か…ということでCT撮影までしましたが
実際は作業着来てるけど仕事は事務、ブラック企業で睡眠時間も3時間程度で、診断は緊張性頭痛でした。

頭痛患者のCT撮影については
JAMAで2013年にpublishされた以下の論文があります。
Clinical decision rules to rule out subarachnoid hemorrhage for acute headache.

カナダで3次救急を受診した頭痛患者(ピークが1時間以内、神経学的所見なし)2131人を対象に
SAHがあった群(6.2%)とそうでない群を比較して、decision ruleを作成したものです。

作成されたオタワSAHルールは以下の通り。




これで感度100%(98.6-100%)、特異度17.8%(16.6-19.1%)です。

…そりゃそうだろっていう感じですかね。
病歴聴取でこのあたりを落とさないようにするのが大事ということでしょうか。
でもこれだと、40歳以上の患者は全例ひっかかりますよね。