2019年12月30日月曜日
特発性細菌性腹膜炎で記憶すべきこと(診断,予防,ピットフォール)
前回に引き続き,SBPについてまとめます.
臨床診断(どうやって疑うか)について.
プライマリケア医として最大の関心ごとの一つです.
腹水+発熱+腹痛なら,SBPの想起は容易ですが,最も頻度の高い臨床症状である発熱であっても,出現するのは最大80%とのことです.
腹痛などの腹腔内感染の所見が全くないこともあるようです.
嘔気嘔吐,下痢,低体温,低血圧,腎機能障害,脳症などで発症することがあります.
初診の腹水貯留は必ず腹水検査を行うというのは基本的なプラクティスだとおもいます.
あわせて,既知の肝硬変,腹水がある患者で,少しでもSBPを見落とさないようにするためにどうすればいいか考えてみました.
・発症の契機がわからない脳症で疑う
(以前から肝性脳症があって,排便コントロール不良で発症,とかいう状況では不要だとおもいますが,肝性脳症を起こす切っ掛けとしてSBPを鑑別に入れておく)
・原因不明の腎機能障害で疑う(SBPは肝腎症候群を起こす)
・低体温,低血圧で疑う(一般的な感染症診断と同様ですね)
・少しでも消化器症状があれば疑う(嘔気嘔吐,下痢など)
・消化管出血があれば疑う(SBPが静脈瘤出血の原因になることもある.上部消化管出血は20%でSBPを合併する)
・突然腹水が増えたら疑う
とにかく腹腔穿刺の閾値をさげるべきですね.
いまDICをおこしているとかなければ,血小板が低くてもPTが伸びていても,比較的安全に穿刺できます.血小板輸血などは不要というコンセンサスになっています.
あわせて,予防について.
こちらもプライマリケア医として関心が高いです.
一次性SBPは,消化管出血,PPI使用,腹水中蛋白低値(∵オプソニン活性低下)などが発症リスクです.
まず,上部消化管出血後7日間は,CTRX1g q24h divを行います.
経口摂取可能ならLVFXやCPFXでもいいとあります.
その他,腹水蛋白<1.5g/dlなら1次予防の利益があるかもしれません.
SBP発症後の2次予防はベネフィットがより高そうです.
投薬するなら,ST合剤を1日1錠,またはLVFX 250mg/day or CPFX 400mg/dayです.
ただし,予防については,現状エキスパートオピニオンであるようです.
(PMID: 31304804,23463403など参照)
併存症や予後などを考えながら,その都度判断するほかなさそうですね.
2019年12月23日月曜日
特発性細菌性腹膜炎で記憶すべきこと(治療)
最近出会ったのでまとめます.
「肝硬変による腹水がある患者の発熱は,そうでないとわかるまでSBPと思え(=腹水を採取せよ)」というクリニカルパールがあります.今回もこのパールに助けられました.
肝硬変患者の発熱の25%がSBPらしいです.
そしてアルコール性肝硬変+腹水で入院中の患者の10%で発症するそうです.
アルコール性を含め,肝硬変の患者さんを診る機会が多い環境なので,今一度勉強し直します.
こういうとき,日本語の良質な二次文献がたくさんあるので,有難いです.
まず,治療についてまとめます.
一次性SBPはほとんどが単一菌種で,60%がGNR(E.Coli, Klebsiellaなど),そのほかは腸内GPC(Streptococcus, S. pneumoniae, Enterococcus)です.
後述しますがGram染色で菌体が見えないことが多いので,エンピリックにはGNR+GPCをカバーします.教科書にはCTXやCTRXが1st choiceと書いています.キノロンの選択肢も記載がありますが,今の日本の耐性菌の状況や,万一の結核性を考えると,自分は使う気にはならないです.
入院患者などではESBL産生株や緑膿菌をカバーせよとありますが,よほど疑わしい状況か状態が悪いのでなければあまりに広域なのはどうかなと思います.ESBLカバーを考えるならCMZでいいのではとも思いますが記載はないですね.ABPC/SBTなどのβラクタマーゼ阻害薬配合薬は,耐性株のS.pneumoniaeに気をつけろと書いていますが,E.Coliの耐性も心配になります.
もちろん,培養が出ればde-escalationしますが,培養陰性もそこそこある(後述)ので悩ましいです.
適切な抗菌薬を使用すれば2-3日で臨床状況に反応がみられるとあります.
最近は短い投与期間が推奨されているからか,期間は5日間という記載が目立ちます.ただ,診療状況がしっかり改善していることが前提です.致死性の経過をたどることも多い疾患なので,すっきりいかない場合は従来の10-14日間投与がよいのではと思います.
ただ,再発が多い(再発率は1年で70%!)ので,あまり長々抗菌薬を投与すると,耐性菌のリスクが上がってしまいますね.
抗菌薬治療の他には,アルブミン投与に生存率改善効果が報告されています.
全例必要というわけではないようで,血液検査で適応を判断する推奨もありますが,そこはケースバイケースで判断すればよいように思います.
あとは,もしPPIを飲んでいたらやめる,とかでしょうか.
診断,予防,ピットフォールについては次回まとめます.
2019年9月2日月曜日
症例報告:Disappearing into the Drug Crowd
American Journal of Medicineにケースレポートがアクセプトされました!
https://doi.org/10.1016/j.amjmed.2019.05.052
意識障害の患者で,病歴が聴取できず困ったため,
家にある内服薬を持ってくるようお願いしたところ,
大量の残薬(8施設より47種類:マグミット1580錠,センノシド992錠など)が発覚し
下剤が大量に処方されている→それを飲んでいない→肝性脳症だ!
と診断にいたったというケースです.
ポリファーマシーが健康に影響を与える経路として
prescribing potentially inappropriate medications:不適切な薬剤が入っている
Potential Prescribing Omittions:適切な薬剤が入っていない
という2つが従来より提唱されています.
しかし,このケースは上の2つには当てはまりません.
キードラッグ(この場合は下剤)は処方されている
→他の薬が多すぎる
→多すぎて飲めない
→有害事象発生
本論文で,この経路をDisappearing into the Drug Crowdと名づけました.
衝撃的な残薬の写真を論文に載せることができただけでもうれしいです.
マグミットの数はうちの病院の在庫を超えていました.
(以下,論文より引用)
小病院でも,ありふれたケース(下剤のまずに肝性脳症発症)でも
国際誌にアクセプトされる,ということがわかり,非常に勉強になりました.
よろしければご一読ください.
2017年11月9日木曜日
ピットフォールその1:虫垂炎
軽症疾患と間違えてしまうピットフォールをいかに避けるか.
その1:虫垂炎
「ERでの非典型症状に騙されない 救急疾患の目利き術」によると…
①主訴が腹痛でない
②腹部所見がそれらしくない
③既存の疾患のために惑わされる
のときに,虫垂炎を見落としてしまいやすくなる.
たしかに,自験例でも腹部膨満や便秘,発熱のみを主訴に来院した虫垂炎は
診断がつくまで厄介だった記憶があります.
●高齢者は腹部所見がはっきりしないので要注意.
60歳以上の虫垂炎患者で
・古典的症状(右下腹部痛,嘔吐,発熱,白血球増加)は20%のみ
・⅓は入院が48時間以上遅れ,入院時点で虫垂炎の疑いがあったのは51%のみ
(以上,Am J Surg 1990;160:291-3)
・⅔以上が発熱なし
・30%が右下腹部痛なし
・¼が白血球正常
(以上,Am J Surg 2003;185:198-201)
●小児も注意
①半数以上が痛みの移動がない
②半数以上が嘔気がない
③半数以上が局所的な圧痛点がない
④半数以上が反跳痛がない
→胃腸炎,咽頭炎,中耳炎,敗血症,尿路感染,熱性けいれんなどと誤診される
(Emerg Med Clin N Am 2010;28:103-18)
↑の文献は必読です.
結局は,すべての腹痛患者で虫垂炎を念頭に置き,
医療面接と適切な誘発試験を行ったうえで,
迷ったら,子どもならエコー,高齢者ならCTかエコーをするしかないかと.
65歳以上の腹痛患者で
CT撮影で方針が変化した割合が,入院:26%,手術:12%,抗菌薬:21%
診断が変化した割合が45%
という報告もあります(Am J Emerg Med 2004; 44:270-2)
虫垂炎のCTは, 感度90-100%,特異度91-99%と診断能が良い(N Engl J Med 2003; 348:236-42)ですが,
非専門医が見落としなく読めるかというのは別問題だと理解しています.
2017年9月11日月曜日
プロバイオティクスについて
プロバイオティクスについての総説がAFPに掲載されていました.
臨床にじかに結びつく,AFPらしい総説です.
アブストラクトと,本文中のキーポイントを訳出しました.
Probiotics for Gastrointestinal Conditions: A Summary of the Evidence
Am Fam Physician. 2017 Aug 1;96(3):170-178.
要約
プロバイオティクスは微生物で構成され,ヒトの腸に常在する善玉菌に似た細菌が大半を占める.様々な消化器疾患で幅広くプロバイオティクスの効果が研究されている.最も研究が進んでいる菌種はLactobacillus, Bifidobacterium, Saccharomycesなどである.しかし,種々の消化器症状に対し,プロバイオティクスをいつ投与すべきか,最も効果的なプロバイオティクスはなにかについて,明確なガイドラインがないために,家庭医と患者は困惑する羽目になっている.プロバイオティクスは消化管の免疫平衡の維持に対し重要な役割を果たすが,それは免疫細胞に直接作用してなされる.プロバイオティクスの効果はおそらく菌種,用量,疾患に応じて定まり,治療期間は臨床上の指標で決まる.プロバイオティクスが効果的だという質の高いエビデンスが存在するものとして,急性の感染性下痢,抗菌薬関連下痢,クロストリジウム関連下痢,肝性脳症,潰瘍性大腸炎,過敏性腸症候群,機能性胃腸障害,壊死性腸炎がある.反対に,急性膵炎とクローン病は,プロバイオティクスの効果がないというエビデンスがある.プロバイオティクスは幼児,小児,成人,高齢者と幅広い世代で安全に使用できるが,免疫不全患者には注意が必要である.
KEY RECOMMENDATIONS FOR PRACTICE
小児,成人ともに抗菌薬関連下痢のリスクを減らす.(A)
C. difficile関連下痢の発生を減らすかもしれない.(B)
肝性脳症のリスクを劇的に下げるかもしれない.しかし,NAFLDとNASHに関するエビデンスは不十分である.(B)
成人UCの寛解率を上げる.(A)
小児,成人ともにIBSの腹痛と全身症状スコアを改善させる.(B)
早期産児の壊死性腸炎の発生と死亡率を減らす.(A)
急性膵炎とクローン病に対する効果はない(B)
他に…
細菌性の急性腸炎には効果あり.ウイルス性に関してはどっちつかず.
H.pylori除菌に追加すると,NNT10で効果ありというメタアナリシスもあれば,OD=0.87-2.39というメタアナリシスもある.
慢性の特発性便秘に効果あり.
2017年4月26日水曜日
胃前庭部毛細血管拡張症
入院患者の突然の貧血→上部消化管内視鏡でwatermelon appearance
というのを経験したので,復習します.
胃前庭部毛細血管拡張症(GAVE: gastric antral vascular ectasia)
・じわじわ出血→鉄欠乏性貧血のパターンが多い
・肝硬変,強皮症と合併することもあるが,たいていは特発性
・31%で門脈圧亢進
・高齢女性に多い
・内視鏡で凝固したりバンドで結紮したり
・内科的治療はあまり奏功しない
・ちょくちょく輸血する必要が出ることも
以前の記事もご参照ください.
2017年4月4日火曜日
骨軟化症について
高齢者の全身痛で、診断して治療することで、劇的に改善するもの。PMRとOsteomalacia(低リン血症性骨軟化症)。 #residentday— 清田実穂 (@miho_kk) 2017年3月16日
高齢者の骨軟化症,全くイメージがわかなかったので調べてみました.
原因(後天性のみ)
・ビタミンD不足:日光不足,食餌性,胃切後など
脂溶ビタミンなので肝機能障害・膵機能障害・胆汁鬱滞にも注意
(胃切→https://www.jstage.jst.go.jp/article/juoeh/35/1/35_25/_pdf)
(PD→https://www.jstage.jst.go.jp/article/naika1913/71/11/71_11_1566/_article/-char/ja/)
・慢性腎障害,尿細管性アシドーシス(2型)
(RTA→https://www.jstage.jst.go.jp/article/nishiseisai1951/31/1/31_1_160/_article/-char/ja/)
・ビスホスホネート,アルミニウム製剤,鉄剤,長期の抗てんかん薬など
(鉄剤→https://www.jstage.jst.go.jp/article/juoeh/35/1/35_25/_pdf
https://www.jstage.jst.go.jp/article/naika1913/71/11/71_11_1566/_article/-char/ja/)
・腫瘍性:FGF23分泌性腫瘍
(https://www.jstage.jst.go.jp/article/clinicalneurol/48/2/48_2_120/_pdf)
症状
・骨痛:特に下位脊椎,骨盤,下肢.骨折を起こすことも
・筋力低下:遠位から進行.筋緊張低下,運動時不快感の合併も
・歩行困難
・低カルシウム血症による筋スパズム等の症状
検査
・ALP高値(ほぼ100%)
・Ca/P低値(1/3程度でのみ)
・25[OH]D低地,PTH低値
鑑別疾患(というより以下の病気と誤診されやすい)
・リウマチ性多発筋痛症
・線維筋痛症
・骨粗鬆症
・変形性関節症
・頸椎/腰椎ヘルニア
全身の疼痛を訴える場合は,滑液包炎か?神経痛か?関節痛か?等を確認し,
「全身の骨痛」というキーワードで骨軟化症を疑い
病歴とCa, P, ALPで診断に迫る,という流れでしょうか.
参考文献:UpToDate Epidemiology and etiology of osteomalacia
UpToDate Clinical manifestations, diagnosis, and treatment of osteomalacia
2016年5月17日火曜日
旅行者下痢症について
BMJ Clinical Reviewをまとめます。
僕自身が、ほぼ必ずと言っていいくらい罹患するので、興味深い勉強になりました。
BMJ 2016;353:i1937
Travellers’ diarrhoea
これだけは押さえておく
・最も多い原因はETEC
・14日以上続く慢性の下痢は、細菌性の可能性が低い
・人工肛門や免疫抑制のある場合のみ抗菌薬予防の適応
・下痢開始時に1-3日間抗菌薬服用すると、有症状期間が3日間→1.5日間に短縮
・慢性下痢で、体重減少などの付随症状があれば、専門家に紹介を。
・危険地域は以下の通り
超高リスク:南・東南アジア、中央アメリカ、西・北アフリカ
高リスク:南アメリカ、東アフリカ
中リスク:ロシア、中国、カリブ海、南アフリカ
・バックパッカーはビジネス旅行者と比べて発症率2倍
・サラダ、貝、生焼けの肉は避ける
・野菜、果物の皮はしっかり剥きましょう
・石鹸での手洗いで発症を30-40%減らすことができる
・原因がはっきり見つかることは少ない
・細菌、ウイルスのほかにも、ランブル鞭毛虫は14日以上の慢性下痢を呈する
・Cyclospora catayenisは、メキシコ帰りの旅行者下痢症として最近注目されている。
・旅行開始一週間以内(特に到着してから2-3日後)に発症
・ETEC:水様、多量、腹部疝痛・嘔気・倦怠感後
・腹部膨満、吃逆など上部消化管症状があればランブル鞭毛虫をより疑う
・排便切迫、血便、クランプなど疝痛症状があればカンピロバクターやシゲラをより疑う
・症状はたいてい1週以内に収まるが、超える場合も10%ある
・上記の通り、適応ある場合のみ予防内服
・シプロフロキサシン500mg/dayで予防率80-100%
・自己内服は以下の通り
軽症なら、ロペラミド4mg頓用+軟便出るたびに2mgずつ内服 計16mg/dayまで
中等度なら、南米、中央アメリカ、アフリカならシプロフロキサシン500mg2回を3日間
南アジア、東南アジアならアジスロマイシン1gまたは500mg/dayを3日間
高熱、重度腹痛、血便があれば病院受診を
・ただし、治療のメインは経口補液。
2016年4月14日木曜日
非代償性アルコール肝障害の急性管理
これで入院してくる方、けっこういるように感じるので。
BMJ Clinical Review
Decompensated alcohol related liver diseas: acute management
BMJ 2016;352
・多飲患者の90-95%は脂肪肝に進展、20-40%が脂肪性肝炎+線維化まで進展、10-20%が肝硬変に。3-10%で肝細胞がんを発症する。
・肝不全を起こすと、黄疸、凝固異常、脳症が出現。
・門脈圧亢進を起こすと、静脈瘤、腹水、特発性細菌性腹膜炎に進行
・アルコール関連肝障害(ARLD)の平均寿命は59歳!!
・非代償性アルコール肝障害の短期死亡率は1カ月当たり10-20%と非常に高い。
・慢性肝不全急性増悪(acute-on-chronic liver failure)という概念が提唱されている、肝硬変のある患者に感染症などが重なって予後不良の肝不全になること。
・肝硬変患者に多い感染症は、SBP、UTI、肺炎、CD関連腸炎、蜂窩織炎
・発熱などの症状を呈さないこともある
・原因菌は腸内細菌と非腸球菌性球菌が多い
・SBPでは感染症状が起きないことがある。腹痛や発熱は見られることが多い。
・SBP患者ではアルブミン静注が推奨。初日1.5g/kgW、3日目1g/kgWで死亡率29%→10%に減少。
(・ERエラーブックによると、腹腔穿刺前にPTやpltを是正する必要はない、とのこと。)
・アルコール関連肝炎では、3カ月以内に黄疸出現。肝不全や全身炎症をきたす。
・有痛性肝腫大、発熱、腹水、脳症がみられる。
・AST,ALTは正常上限の2-6倍、AST/ALTは2以上となる。好中球増加、凝固異常がおこる。
・他の肝障害(敗血症など)との鑑別は困難なことが多い。
・重症度判定で最も普及しているのはMaddrey discriminant function。短期予後を予測する。32以上で重症、28日間で30%が死亡。
・計算できるサイトもあります。簡単に式をかけば、(PT-12)+T.Bilとなります。
・重症ならプレドニン40mg/day経口で4週間。短期死亡率は下げるかも。
・始める前に培養などとって感染症がないか確認を
・non-responderならステロイド中止:7日目でLille scoreが0.45以上。40%が該当する
・non-responderの次の手としては、NアセチルシステインやGCSなどが候補
・肝硬変の入院患者20%に急性腎障害が起こる
・SBPだとさらに高率
・Cre解釈に注意。アルコール患者は低栄養のためベースのCreが低い。0.3mg/dl上昇or50%上昇でAKIと判断
・原因は腎前性(脱水、消化管出血、利尿薬など)、腎性(NSAIDs、ATNなど)…
・初期治療に反応しなければ、肝腎症候群が考えられる。
・肝腎症候群は、尿所見が正常で、腹水があり、輸液に反応せず、他の原因が否定的なときに診断する。
・治療はterlipressinとアルブミン
・腹水あれば塩分制限を
・腎機能、ナトリウムみながら、スピロノラクトン100mg/dayとフロセミド40mg/dayから開始
・ARLDの60-70%で低栄養、サルコペニアがおきている
・VitB1欠乏に注意
・refeeding症候群に注意 栄養補正する場合は毎日電解質をチェックする
・アルコール離脱に注意。肝性脳症との鑑別を。
2016年3月21日月曜日
ストレス潰瘍の予防
重症患者の急性期に出血性胃潰瘍→予防しておけばよかった
という経験があるので、以下の文献をまとめてみます。
Prevention of stress-related ulcer bleeding at the intensive care unit: Risks and benefits of stress ulcer prophylaxis
World J Crit Care Med. Feb 4, 2016; 5(1): 57-64
・PPIやH2RAは胃粘膜からの出血を予防できる
・ただ、ICU患者の薬剤によるストレス潰瘍予防は、全体の死亡率減少には寄与しない
・ICUで胃出血が起こると死亡率は49%。胃出血がない場合は9%。
・多変量解析をすると胃出血が死亡率を上げない。
・出血のリスク因子:人工呼吸(OR 15.6)、凝固障害(OR 4.3)、3つ以上の併存疾患(OR 8.9)、肝障害(OR 7.6)、腎代替療法(OR 6.9)
・使用する薬剤はPPIの方が最も出血予防できる。
・ICUでのストレス潰瘍予防のフローチャート(毎日評価すること)
・なぜ全員に予防しないのか。有害事象があるから。
・クロストリジウム腸炎や肺炎のリスクが高くなる可能性がある。
・肝硬変患者ではPPI使用は独立した死亡リスク因子となる(SBP増やしてしまうからか)。
・薬物相互作用も注意。たとえばクロピドグレルを阻害して心血管イベントが増える。
・重症患者では肝毒性、骨髄毒性、低マグネシウム血症の可能性もある。
・ストレス潰瘍の予防策はなにもPPIだけじゃない。経腸栄養ができればそれがベスト。
2015年12月19日土曜日
SMA症候群について
糖尿病→急激な減量→嘔気・嘔吐→SMA症候群
の疑いがあるケースを経験したので、SMA症候群について調べてみます。
基本的には近位小腸閉塞と一致した病状を呈します。
軽症だと食後心窩部痛や早期満腹感のみですが
進行すると嘔気、胆汁性嘔吐、体重減少を来します。
逆流性食道炎の症状が出ることもあります。
症状は腹臥位、左側臥位、膝胸位で軽快することもあります。
身体的ないし精神的疾患や手術後による体重の急激な減少が最も多いリスク因子です。
悪性腫瘍、吸収不良症候群、AIDS、外傷、熱傷が契機となることが多いです。
しかし、体重減少がなくてもSMA症候群を来すことがあります。
例えば側弯症の手術後(これをCast症候群といいます)などです。
診断が遅れると、嘔吐→電解質異常、胃穿孔、気腹症、門脈内ガス、十二指腸内石の原因となります。
鑑別疾患は以下の通り。
糖尿病などによる蠕動運動低下、膠原病、強皮症、慢性特発性腸偽閉塞
食道裂孔ヘルニアなど良くある消化不良、逆流の原因を検索する必要がります。
腸管アンジーナも似た症状を呈するので注意です。
画像検査では、十二指腸の閉塞、腹腔動脈とSMAの分岐角が25°以下、Treitz靭帯の異常、SMA起始部が低位などの所見に留意します。
治療は、胃管挿入(全例挿入と記載してあります)、電解質補正、栄養療法(鼻-十二指腸管やCVを考慮することも)です。ダメなら手術適応です。といっても効果はまちまちみたいですが。
参照:UpToDate Superior mesenteric artery syndrome
2015年12月6日日曜日
CEA産生腫瘍/胆嚢摘出術後の総胆管結石
研修で生じた疑問をサクッと解決しちゃいましょうのコーナーです。
UpToDateに頼りきりですが、パパッとまとめます。
①大腸癌でCEAが高いと予後が悪いのか。
CEAが5.0ng/ml以上であると予後不良です。これはステージとは独立しています。
J Natl Cancer Inst. 2011;103(8):689によれば、27ヶ月間のフォローでCEA高値群の死亡率がHR 1.46-1.76で高値でした。
この傾向はどのステージでも見られました。
そして、リンパ節転移なしでCEA高値の群が、リンパ節転移ありでCEA正常の群と比べて死亡率が同じもしくは高い傾向が見られました。(HRで比較すると前者が1.48-2.09、後者が1.30-1.91)。
(以上、Pathology and prognostic determinants of colorectal cancerを参照)
なお、CEAは胃潰瘍や喫煙、加齢などでも上昇することがあります。
感度、特異度ともに高くないので、CEAのみを根拠に診断を行うのは無理です。
当然、大腸がん検診をCEAで行うのもアウトです。
話はそれますが、大腸がんの健診におけるUSPSTFの推奨は以下の通りです。
対象:50-75歳
方法
①便潜血検査を年1回
②10年ごとの大腸内視鏡
③5年ごとのS状結腸鏡+3年ごとの便潜血検査
大腸ポリープ診療ガイドライン2014では、6mm以上の大腸ポリープは切除適応で3年後フォローアップとなっています。
上の2つは、国内外の様々なガイドラインで推奨が異なります。
(参照:Hospitalist 外来における予防医療)
②胆嚢摘出術後の総胆管結石について
発生率は10%程度とのことです。結構多いのですね。
エコーは使えない(そもそも摘出術後は胆管拡張している)ので
胆石様の腹痛や肝酵素異常などで疑ったら、CTなどの検査をもちいます。
胆嚢摘出術後症候群(postcholecystectomy syndrome PCS)という概念があります。
症状としては、繰り返す持続的腹痛と消化不良です。
晩期に起こることもあり、結石再発、胆道狭窄、胆嚢遺残の炎症、胆道ジスキネジアなどが原因となります。
(以上、UpToDate Laparoscopic cholecystectomyを参照)
2015年11月16日月曜日
酸化マグネシウム製剤について
酸化マグネシウム製剤による高マグネシウム血症が最近トピックになっています。
今年10月に再度の注意喚起を促す文書もだされました。
https://www.pmda.go.jp/files/000207871.pdf
UpToDateによれば、血中濃度2-2.5mEq/lで低血圧と徐脈が出現、
2-3mEq/lで深部腱反射減弱が生じるとあります。
7.5mEq/lを超えると完全房室ブロックが起こる可能性があるともあります。
腎不全患者が高リスク群であるとされていますが、
活性化ビタミンD製剤との併用も、腸管や腎臓でのマグネシウム吸収が亢進するため、高マグネシウム血症を引き起こす危険性を高くします。
また、飲み合わせで注意すべきものとしては、
カルシウム製剤や大量の乳製品との併用があります。
ミルク・アルカリ症候群は
①高カルシウム血症、②腎機能障害、③代謝性アルカローシスを3徴候とする病態です。
歴史的には胃潰瘍の治療として牛乳と重炭酸ナトリウムを同時に服用することで生じていましたが
骨粗鬆症薬の増加やポリファーマシーにより
新たに問題になるようになりました。
(古くて新しいミルク・アルカリ症候群 第6回日本プライマリケア連合学会学術大会)
加えて、ビスフォスフォネート、テトラサイクリン、ニューキノロン、鉄剤など、
同時服用により薬剤の吸収に影響を及ぼす薬剤も多いです。
レボドパ・カルビドパ製剤との飲み合わせについては、以前記事にまとめました。
レボドパ・カルビドパと酸化マグネシウムの併用
2015年9月6日日曜日
高アンモニア血症にどう気づくか
ウレアーゼ産生菌の尿路感染症による高アンモニア血症の報告を最近よく目にする気がするので、纏めてみました。
意識障害をきたす高アンモニア血症の原因としては、やはり第1に肝性脳症が挙げられます。
他には、先天性の尿路回路酵素欠損(OTC欠損症など)、ウレアーゼ産生菌感染、薬剤(バルブロ酸など)があります。
肝性脳症の診断にアンモニア測定は必要ありません。
血清アンモニア値は様々な要因の影響を受けるため、変動が強いためです。
あえて言うなら、正常値の2倍以上となってはじめて診断的価値があるみたいです。
基本的には臨床診断です。
文献上の肝性脳症の定義は、"the development of clinically overt neuropsychiatric symptoms in patients with cirrhosis"とあり、肝硬変患者に神経精神症状が出れば肝性脳症です。
アルゴリズムでは、MMSEで24点未満ならその時点で肝性脳症として扱うことになっています。
肝性脳症の症状は、以下の図がすごくわかりやすいので掲載します。
問題は、肝硬変のない患者の高アンモニア血症にどう気づくかです。
特にウレアーゼ産生菌の尿路感染の場合、感染症そのものでも意識障害が起こりえます。
感染症の治療をすれば当然高アンモニア血症も是正されるので
臨床上どうしても鑑別したいというものではないのかもしれませんが
やはり目の前の意識障害患者の原因が分かっているとこちらとしても気持ちが楽です。
思いつきで恐縮ですが、呼吸性アルカローシスがあるときにアンモニアを測定する、というのは銅でしょうか。
UpToDate: Urea cycle disorder: Clinical features and diagnosisには以下の記載があります。
"Hyperventilation is thought to result from cerebral edema caused by the accumulation of ammonia and other metabolites."
感染症(特に尿路感染)が疑わしくて意識障害がある場合、とくに呼吸数20/min以上の場合は
全例血液ガスをとると思いますので、あながち無理のないプラクティスかとも思います。
尿路感染症の場合は、アルカリ尿や尿中結石の存在も傍証になると考えられます。
アルカリ尿がもっともわかりやすい所見でしょう。
参考:UpToDate: Hepatic encephalopathy in adults: Clinical manifestations and diagnosis
~Clinical Pealrs~
意識障害のある尿路感染患者で、呼吸性アルカローシスまたはアルカリ尿をみたら、血清アンモニア値を調べてもいいかもしれない。
肝性脳症の診断は臨床所見に基づいて行う。
2015年8月18日火曜日
各種感染症検査の感度と特異度
各種感染症迅速検査について、日ごろの疑問をまとめてみました。
【ピロリ菌検査】
選択肢としては、尿素呼気試験、血清抗体検査、便抗原検査、内視鏡検査があります。
感度・特異度はどれも比較的良いみたいです。
注意点は以下の通りです。
・PPI・抗菌薬では、血清抗体検査以外の検査で偽陰性率が高くなる。
→なので検査の2週前にPPIは中止すること。
抗菌薬は4週前に中止すること。
・最近の消化管出血の既往があると、迅速ウレアーゼ検査と鏡検で偽陰性率が高くなる。
除菌判定は、除菌後4週間以降で行います。
血清抗体検査は陰性化に1年くらいかかるので使えません。
1種の検査で陰性の時に限り、追加でもう1種検査を行うことができます。
【レジオネラ尿中抗原検査】
Legionella pneumophila1型のみを検出します。
日本ではレジオネラ感染症の50%を占めるのみなので、陰性すなわちレジオネラではないとは言えません。
重症度と関連して感度もあがるみたいです。
【肺炎球菌尿中抗原検査】
これも重症度に応じて感度が上がります。
この検査を提出するときは、肺炎の診断は付いていて、でも良質喀痰がとれないときになると思いますが、そのセッティングでの特異度は良くわからないです。
小児では特異度が低くなるみたいです。
【マイコプラズマ抗体検査】
文献的にはイムノカードマイコプラズマ抗体の感度、特異度は48%と79%で、計算すると陽性尤度比2程度です。これだけみるとあまり有用ではないのかもしれません。しかも対象は発症6日以降の検体なので、もっと早期のタイミングではさらに検査特性は悪くなるかもしれません。
なお、近くの病院の臨床検査科のデータだと、感度57%、特異度92%とのことです。これだといい感じですね。
参考:総合内科999の謎、感染症999の謎
2015年7月26日日曜日
62歳男性:無痛性黄疸、低ナトリウム血症(Mayo Residents' Clinic)
2013年6月のMayo Clinic Proceedingsより、Residents' Clinicです。
患者:62歳男性
主訴:1週間の進行性黄疸、倦怠感
腹痛、嘔気嘔吐、下痢便秘、発熱はなし。尿の色が濃い。
既往歴:糖尿病、脂質異常症
内服薬:プラバスタチン、インスリン、ナプロキセン頓用
一週間前まで蜂窩織炎に対しST合剤2週間内服
診察:状態落ち着いている。黄疸あり。腹部圧痛や肝脾腫はない。肝硬変の徴候なし。
検査:T.Bil 25.8mg/dl, D.Bil 18.9mg/dl, ALP 1515U/l, ALT 425U/l, AST 211U/l
plt, alb, PT, APTTは正常。
HAV, HBV, HCV, 抗平滑筋抗体、抗ミトコンドリア抗体は陰性
腹部エコー:肝実質エコー不整。胆管拡張、腹水、胆嚢壁肥厚、腫瘤はない。
ST合剤は肝障害を起こしうる。これが最も怪しい。
Drug-induced hepatic injury(DILI)が第一の鑑別疾患となる。
血液検査:Na 114, Osm 290, BUN 9, Cre 0.6, Glu 260
尿検査:Osm 564, Na 66, Cre 36
体液過剰・減少所見はない。
低ナトリウム血症の原因は何であろうか。
血清浸透圧が290と正常てある。いわゆる本当の低ナトリウム血症であればOsm↓のはず。
脂質の異常高値による偽性低ナトリウム血症を疑う。
測定してみると、T.Chol 1663, TG 584であった。これもDILI(胆道系障害パターン)によるものであろう。
慌てて治療をする必要はない。
DILIには肝細胞が障害されるパターンと、胆道系が障害されるパターンがある。
後者の方が慢性肝障害に進展する可能性が高い。
2015年7月19日日曜日
shock liverについて
shock liverに出会う機会があったので、UpToDateで調べてみました。
Ischemic hepatitis, hepatic infarction, and ischemic cholangiopathy
shock liverは虚血性肝炎とも言います。
名前に反して、shock liverの半数はショック状態ではありません。
肝臓への血流が急速に減少することで、AST・ALTが著明に高値になります(1000IU/lを超えることも)が、肝臓の症状は通常見られません。LDHも著明に上昇します。
原因は、低血圧(ショック状態)の他に、肝局所の血流低下、重症呼吸不全、低酸素血症、閉塞性睡眠時無呼吸、急性下肢虚血などでも起こります。
鑑別は、ウイルス性肝炎、薬剤性肝障害です。
鑑別のポイントは以下の通りです。
・ウイルス性肝炎ではLDKが早期に急激に上昇することはあまりない。
・発症早期でALT/LDHが1.5以下であれば、ウイルス性肝炎よりshock liverが疑わしい。
・AST・ALTが上昇後急激に下がれば、shock liverが疑わしい。
・腎障害の急激な進行があればshock liverが疑わしい。
予後は、結構状態が改善すれば良好です。
肝の基礎疾患がある患者さんでなりやすいみたいです。
2015年7月4日土曜日
膵炎について
膵炎は、お腹が痛いけど、腹部所見があまりないことが多いです。
痛みの部位も上腹部だけというわけにはいかないのが難しいところです。
「胆と膵 Vol.35 膵炎大全」をざっと読んだので、気になったところをまとめておきます。
治療は絶食+輸液。重症度判定を繰り返し行って、重症と判断したら高次医療機関に転送です。
判定で必要なのは、バイタルサイン、血液ガス、血算、BUN/Cre、LDH、Ca、CRPです。
検査項目だけは暗記しておいた方があわてなくていいなという実感です。
輸液量は平均血圧65mmHg以上、尿量0.5ml/kg/h以上を目標にします。
普通だと、初日に4000ml位入れて、二日目から1500~2000mlに減らします。
実は重症でも48~72時間以内に経腸栄養を始めたほうがいいみたいです。
ここら辺のチェック項目をまとめてあるのがpancreatitis bundlesです。わかりやすいです。
(下図は難病総合センターより引用)
原因は、アルコールと胆石が二大巨塔です。
他には、ERCP後、薬剤性(コデインなど)、膵腫瘍(膵炎合併のIPMNは悪性のリスクあり)、自己免疫性などがあります。
高脂血症、高カルシウム、ウイルス(ムンプスやアデノなど)、外傷なんかも原因となります。
マニアックなところでは、虚血性膵炎、Groove膵炎、Hemosuccus pancreaticusというものもあるみたいです。
流石に日本で嚢胞性線維症をみる機会は少ないと思います。
繰り返す上腹部痛→最近痛みがないと思ったら糖尿病、脂肪便が出現→膵機能荒廃という経過をとるのが慢性膵炎です。
早期発見のために内視鏡エコーが有用なのだとか。
「繰り返す上腹部痛」というキーワードでうまく鑑別に挙げられるかが大事ですね。
※Groove膵炎
非常にざっくりいえば「膵頭部に限局する膵炎」のこと。
アルコール多飲してBrunner腺が過形成してしまうことによる生じるとのこと。
画像はこちらが分かりやすいです。
膵頭部癌との鑑別が大事かつ難しいらしいです。
※Hemosuccus pancreaticus
血液が膵管を通りVater乳頭から出血する病態。慢性膵炎を背景とする。死亡率が高い。
内視鏡で出血があれば確定だが見られないことが多い。
動脈→膵仮性嚢胞→主膵管、膵仮性膿疱壁から出血→主膵管、膵周囲の動脈瘤→主膵管といった経路がある。
症状は消化管出血(7割程度、間欠的が多い)、心窩部痛(時に)、膵炎症状(時に)
(以前、「クリニカル・リーズニング・ラーニング」でこの疾患について読んだ記憶があります。索引には載っていませんでしたが。)
2015年4月16日木曜日
クロストリジウムディフィシル感染症(NEJM Review)
今週のNEJM Case Recordは胎便吸引症候群の原因についてでした。
今回はCase Recordのまとめはパス。そのかわり、Review Articleで知らなかったこと、へぇ~となったことを中心に箇条書きします。本文はこちら。
Clostridium difficile Infection
・高齢、抗がん剤、重篤な基礎疾患は、毒素への対抗力を弱める。
・新生児の大多数はC. difficileのコロニーがあるが、毒素が結合する受容体が発現していないため発症しない。
・B1/NAP1/027という群が薬剤耐性が強く毒素も強い。
・ほぼすべての抗菌薬がリスクとなりうる。
・C. difficileの市中感染も問題になっている。比較的若年者に多く、抗菌薬曝露などのリスクファクターに乏しい。程度は比較的軽いが40%は入院を要する。
・PPIはC. difficile感染のリスクを上げるという意見もあるが実のところははっきりしない。
(すくなくともC. difficile感染の診断後は不必要なPPIは中断した方がいいと思います。doi:10.1001/jamainternmed.2015.42.)
・感染に関連した死亡率は5%、すべての原因を合わせた死亡率は15-20%。
・WBC>15000、低Alb、急性腎不全があれば、Severe C. difficile infectionである。
・下痢患者で、酵素免疫アッセイかPCRアッセイのどちらかでも陽性なら治療開始。どちらも陰性なら、平均的なリスク集団においてNPV>95%。
・治癒患者でも症状治まってから数週~数月は試験は陽性に出る。
(The Society for Post-Acute and Long-Term Care Medicine(AMDA)が発表したChoosing Wiselyの10項目のうちの1つに、「治癒確認のためのC. difficile検査はしてはいけない」とあります)
・予防は感染防御と不必要な抗菌薬投与の削減
・治療はバンコマイシン経口が最も良いと考えられる。
2015年4月15日水曜日
64歳女性:下痢と腹部膨満(Mayo Residents' Clinic)
4月号のMayo Clinic Proceedings Residents' Clinicです。
なぜか3月号が見れません。どうしてでしょうか。
4月のResidents' Clinicは2つ記事がありますが、1つは嚢胞性線維症が題材で、日本にはまず見ない疾患だったので本ブログでは紹介しません。
64-Year-Old Woman With Diarrhea and Increased Abdominal Girth
64歳女性が、1か月前からの食後の水溶性下痢と、腹回りが大きくなってきたことを主訴に来院しました。
血圧136/83、心拍96、SpO2 95%r/a、呼吸数18、体温36.9℃です。どうやら腹水がたまっている様子。
新規発症の腹水をみたら、いの一番に特発性細菌性腹膜炎(SBP)を除外しなくてはいけないそうです。腹水をとって、好中球>250/uLか培養(+)だとSBPの診断になり、抗菌薬治療開始です。
また、血清Albと腹水Albの差が1.1g/dL以上だと、門脈圧亢進を疑うそうです。
本例では、腹水所見によりSBPは除外、門脈圧亢進が疑われました。
血液検査では、Hb 9.8, MCV 100.3, WBC 18600, Plt 11.8万, INR 1.4。
また、ALP 589で、T.Bil, AST, ALT, Albは正常値。
画像検査では腹水、肝左葉腫大、臍静脈開大、脾腫がありましたが胆道は正常。
骨、とくに椎体にびまん性の硬化がありました。
ウイルスや自己免疫性肝炎などで肝細胞がやられるとAST,ALTがより上がるはずです。
NASHでは、AST,ALTは上昇したとして正常最大値の2倍から5倍、ALPもせいぜい最大値の2から3倍にとどまります。アルコール性ではAST>ALTです。
本例のようにALPが著明に高値であれば、胆汁鬱滞を考えます。
原因は肝内性と肝外性に大別できます。
各種血清学的検査では異常は見つからず。心エコーで肝心症候群は否定的。
というわけで生検を施行。
肝臓と消化管を巻き込んだ全身性肥満細胞症の診断となりました。
全身性肥満細胞症では~49%の患者にアナフィラキシーが起きます。
なので、本性を診断したらすぐに抗ヒスタミン薬を処方する必要があります。
腹水については利尿薬でコントロールします。
というわけで、全身性肥満細胞症による肝障害→腹水と消化管障害→下痢というケースでした。
下痢は全身性肥満細胞症の34%で見られる症状みたいです。
最後に、全身性肥満細胞症の皮膚以外の症状をまとめておきます。(UpToDateを参照)
・消化管(嘔気嘔吐、慢性下痢、潰瘍など)
・筋骨格系(筋痛、骨痛など)
・循環器(血管拡張→低血圧、頻脈)
・リンパ系(脾腫、リンパ節腫大)
・骨髄(貧血、血小板低下、好酸球増加など)
・神経系(うつ、気分変化など)
~Clinical Pearls~
・新規発症の腹水をみたら、いの一番に特発性細菌性腹膜炎(SBP)を除外!
・ALPが500以上なら胆汁鬱滞をまず考える。
・全身性肥満細胞症は、肝障害→浮腫の原因となりうる。
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