2015年2月17日火曜日

NEJM Case5-2015



ようやくオンライン環境に身を置くことができました。
書き溜めていた記事を投稿することができます。



NEJM Case Recordです。
Case 5-2015は以下の症例でした。

【患者】未分化大細胞型リンパ腫治療後の69歳女性
【主訴】繰り返し出現する丘疹



皮膚リンパ系悪性腫瘍についての専門的な議論がされていました。
診断はリンパ腫様丘疹症(Lymphomatoid papulosis)でした。


聞いたことのない病名だったのでUpToDateなどで調べてみました。
皮膚科と病理部にお任せする疾患だとは思います。

リンパ腫様丘疹症では中心に壊死や痂皮を伴う丘疹や結節ができますが、3-8週で自然に消えます。その際、色素沈着や瘢痕を残します。
出ては消えてを結構長い間繰り返すみたいで、新旧の皮疹が混在していることも多いそうです。

予後良好なので美容の問題がなければ経過観察がいいです。ただし、菌状息肉腫、未分化大細胞型リンパ腫、ホジキンリンパ腫など他の悪性疾患の発症リスクがあるので長期フォローが必要です。発症の順番は問わないみたいです。


調べてみたら初診では帯状疱疹疑いだった例などが出てきました。
私の医師人生でこの疾患に出会う日は来るのでしょうか。



皮膚のT細胞系悪性腫瘍だとATLや菌状息肉腫、Sezary症候群が有名ですよね。

ATLは日本にいる限りは勉強する必要がある疾患だと思います。
沖縄や九州の一部ではHTLV-1キャリア率が約5%とのことです。こんなに多いんだとびっくりです。長崎県では発症・死亡が年間で70件あるそうですが、納得の多さですね。ですが、妊婦のスクリーニングが功を奏しているみたいで、B型肝炎ウイルスと同じくそのうち駆逐されそうな雰囲気です。

宮城征四郎先生の本で、頑固な便秘→高Ca血症→ATLという症例があったと記憶しています。
たしか「Dr.宮城の白熱カンファレンス」だったと思います。沖縄らしいなーと納得しました。





高Ca血症の鑑別としては、薬剤性、副甲状腺機能亢進症、悪性腫瘍の三大柱がまず想起されます。腎不全もCa高値となりますが、そもそもCrやBUNの値で気付くかと思います。マニアックなところだと肉芽腫性疾患や家族性ナンタラカンタラとかでしょうか。

高Ca血症の症状としては、多飲多尿、中枢神経症状、食欲低下、嘔気嘔吐、便秘、尿路結石などが頭の中にでてきます。高齢者が全身状態悪化して譫妄みたいになってる、というイメージがぱっと出てくるのですが、これだと若年者の高Ca血症を見落としてしまいそうですね。
UpToDateで調べると、他には膵炎、胃潰瘍、筋力低下、骨痛、徐脈、高血圧などがあるそうです。


全体の60%を占めるacute variantでは、治療しても予後は1年以内で、非常に恐ろしいという印象があります。
高Ca血症などでATLを疑ったら、全身のリンパ節腫脹(ほぼ100%でみられる)、肝脾腫(50%)、皮膚病変(50%)に注意して診察する必要がありそうです。感染に弱くなるのにも注意です。

今回勉強して一番意外だったのは、lymphamotous variant(20%を占める、血球異常が出ない)も予後はacute variantと同じだということです。acute variantと同じくCaやLDHは高値になります。

全体の15%をしめるchronic variantの予後は2-5年程度です。
しかし、Alb低値、LDH高値、BUN高値で特徴づけられるunfavorable chronic-typeの予後はacute variantと同じだそうです。



菌状息肉腫とSezary症候群は、私にとっては名前はよく聴くけどいまいち患者さんを想像できない疾患です。こちらの疾患はそのうち出会う気がします。

USMLEでは「乾癬と思っていたけど難治性で生検したら異型リンパ球が上皮内に集簇していて(Pautrier微小膿瘍)、菌状息肉腫と診断しました」という流れでよく問われている印象です。

ステージはpatch→plaque→systemicと進行します。
systemicまで進行して紅皮症やリンパ節腫大、血液中異型Tリンパ球(Sezary細胞)があるとSezary症候群、というイメージで理解しているのですが、これで正しいのでしょうか。


~Clinical Pearls~

リンパ腫様丘疹症では、中心に壊死や痂皮を伴う丘疹が、色素沈着を残しながら出ては消える。

高Ca血症の三大柱は、薬剤性、副甲状腺機能亢進症、悪性腫瘍(ATLを含む)。全身リンパ節、肝脾腫、皮疹に注意。