2015年2月26日木曜日

NEJM Case7-2015



今週のNEJM Case Recordです。
本文はこちら


Case 7-2015
A 25-Year-Old Man with Oral Ulcers, Rash, and Odynophagia

【患者】25歳男性
【主訴】口腔内潰瘍、発疹、嚥下時痛

【現病歴】
18日前:副鼻腔が軽く詰まったような感じが出現
16日前:右股関節の手術をうけた。その後ナプロキセン処方
8日前:咽頭炎、嚥下時痛、発熱、戦慄、夜汗出現
5日前:外来受診。扁桃は腫大発赤、陰窩膿瘍と前頸部リンパ腫大あり。アモキシシリン処方。
4日前:体温38.6℃に症状
3日前:再受診。平熱に戻っていたが他の所見は変化なし。アモキシシリン継続も再び発熱。
2日前:再受診。扁桃より膿排泄あったが扁桃周囲膿瘍の所見なし。伝染性単核球症の検査は陰性。好中球優位のWBC上昇以外に血液検査異常なし。アモキシシリンクラブラン酸処方で帰宅。その後、口腔内病変と、顔面と体幹に散在する膿疱が出現
1日前:再受診。体温38.7℃。当院紹介受診。

【現症】
体温38.8℃、血圧147/82、脈拍110、呼吸数22、SpO2 97%r/a
陽性症状:嚥下時痛(8点/10点)、両下肢の筋痛、下腿の圧痛のある結節、肛門周囲の搔痒、3日前からの便秘、経過中に約3.5kgの体重減少
扁桃発赤。扁桃腫大発赤し陰窩膿瘍あり。頸部、頤下部、鼠径部リンパ節腫大あり。
下唇、顔面、口腔内、体幹、四肢に膿疱あり、手掌足底にはなし。各大きさ2mm以下。
圧痛のある結節が体幹、下腿、臀部に散在。
陰茎、陰嚢、肛門周囲に潰瘍あり。
迅速ストレップ陰性。血液検査値特に変化なし。尿検査異常なし。

【既往歴】
痤瘡、陰部びらん(自然治癒した)、好酸球性食道炎疑い



以下、議論です。

梅毒:2期梅毒は発熱、発疹、筋痛、リンパ節腫大、咽頭炎を起こすこともある。
ただ発疹の種類が違う。2期梅毒の発疹は斑状または斑状丘疹状となる。
また、2期梅毒の陰部病変は、浅い無痛性びらんと扁平コンジローマとなる。
他のSTIも、やはりこの患者の全身の皮膚症状を説明できない。

天疱瘡/類天疱瘡:口腔内病変だけでなく陰部病変をきたすこともある。
ただ、年齢が合わない。自然軽快している点も合わない。

Tリンパ球関連皮膚疾患:多形紅斑、びらん性扁平苔癬、TENなど。
NSAIDsや抗菌薬の曝露があり、口腔内と陰部に病変がある患者で疑う。
どれも患者の皮膚所見とは合わない。

クローン病:アフタ性潰瘍と結節性紅斑は合致するが、膿疱の存在と消化器症状の不在が合わない。



というわけで、やはりこの特異的な皮膚症状が曲者ですね。
最も可能性のある鑑別診断はベーチェット病だとおもいます。
皮膚症状だけを考えるならまずこれだろうと思います。
ただ、扁桃に膿がたまったりや嚥下時痛がおきたりするのかが私の知識外です。

口腔内アフタ、皮膚症状、眼症状、外陰部潰瘍の主症状のうち3つを満たしているので、厚生労働省ベーチェット病診断基準では不全型の診断ですね。
ちなみに副症状は、関節炎(変形や硬直がない)、副睾丸炎、消化器病変(回盲部潰瘍など)、血管病変、中枢神経病変です。

そういえば、「血管炎を疑ったら睾丸痛を調べる」というClinical Pearlを見たことがあります。
ベーチェット病のPearlでは、「若い日本人女性の脳梗塞をみたらベーチェット病を疑え」がありますね。

いろいろ調べてみたら、どうやら扁桃炎がベーチェット病発症の契機になるみたいです。
「喉風邪をひくと皮膚に発疹が出る」という病歴が聴取できることもあるみたいですね。

参考:扁桃炎を契機に増悪した完全型ベーチェット病の1症例


というわけで、嚥下時痛が初発となったベーチェット病の症例でした。


~Clinical Pearls~

ベーチェット病の発症初期は、扁桃炎や齲歯との合併が多い。

ベーチェット病の皮膚病変は、痤瘡様、丘疹‐小水疱‐膿疱、偽毛嚢炎、結節、結節性紅斑、表在性静脈炎、壊疽性膿皮症様、多形滲出性紅斑様、触知可能な紫斑。