2015年3月28日土曜日

NEJM Case10-2015



先ほど旅行から帰ってまいりました。
遅くなりましたがNEJM Case Recordです。
本文はこちら


Case 10-2015
A 15-Year-Old Girl with Graves' Disease and Psychotic Symptoms

【患者】グレーブス病がある15歳女児
【主訴】精神病症状

3か月前、甲状腺機能亢進症状出現し、TSH低値とシンチによりグレーブス病と診断され、アテノロールとメチマゾールが開始となった。
5週前、身体の見た目についてイライラすることが増え、友達がいなくなった。
3週前、どこにいても声が追いかけてきて、悪魔に狙われていると妹に訴えた。自傷や自傷未遂を繰り返し腹部と手首に痕あり。毎朝3時には目が覚める。不安を訴え、食事をとらなくなった。

身長166cm、体重85.6kg、BMI 31.1
血圧137/81、心拍110整、呼吸数28、体温とSpO2は正常。見当識正常。
涙を流しさびしそうでそわそわしているが協力的。
血算、電解質、糖、腎機能正常。鉄、VitB12、フェリチン、甲状腺以外のホルモン正常。
毒物スクリーニング陰性。妊娠反応陰性。TSH<0.01。
メチマゾール増量。オランザピンとロラゼパム開始。6日目で精神病症状落ち着き、気分も明るくなった。

2週間前に退院。過度に信心深くなり、突然教会を変えたりした。
8日前、ネットで知り合った男性に会うために家を出て、翌日警察が保護、病院へ搬送。抑うつ気分とエネルギーのなさを感じているが、希死念慮と幻覚はなし。



3か月前から重症のグレーブス病に罹患している15歳女児に現れた精神病症状の原因は何でしょうか。
最初に答えを言ってしまうと、この症状はグレーブス病によって引き起こされたものであると考えられるそうです。

甲状腺機能亢進症は、イライラや心配などの精神症状は有名ですが、本症例のような躁症状や精神病症状は稀とのことです。どちらかというと甲状腺機能低下症で見られることが多いです(myxedema madness, myxedema psychosis)。

しかし、双極性障害や精神病の家族歴のある患者では特に、甲状腺機能亢進でも躁症状や精神病症状がみられることがあるそうです。治療開始後するに症状が出ることが多く、甲状腺の機能が亢進から正常に移行するときに起きやすいのではと考えられています。


私なら、このような患者さんに出会ったら、まず薬物と譫妄を除外したいと考えます。
いわゆるtreatable dementiaに内包する各種疾患やAIUEOTIPSが鑑別疾患に含まれるのではないでしょうか。


甲状腺機能亢進症の治療開始直後に発症した精神病症状の症例でした。


~Clinical Pearls~

甲状腺機能亢進症の治療開始直後に精神病症状が発症することがある