2019年10月7日月曜日
camptocormia:これ名前あったんだ…
パーキンソン病の方で,
立位や歩行時に腰が顕著に曲がっており
だけど臥位になると伸びている
という症状を見た覚えがあります.
そのときはなにも考えずスルーしていましたが,
camptocormiaという名前がついているのですね.
パーキンソン以外にも,神経編成疾患や筋炎でみられることもあるようです.
傍脊柱筋のジストニアという説が有力らしいです.
名前(概念)をしらないと,見えていても見ていないのですね.
知識は大事です.
写真はwikipediaより
2019年9月30日月曜日
腓骨神経麻痺とその鑑別
外来で出会ったので,調べて見ました.
こういうコモンな疾患は,徹底的に特徴を覚えておく必要があります.
まず解剖から.
腓骨神経は膝関節後方で坐骨神経から分岐し,腓骨頭にまきつくようにして下腿外側を下降していきます.
なので,腓骨頭での圧迫で麻痺を生じます.
症状は,足部外側~足背・足趾にかけての感覚障害と,足関節背屈障害です.
小趾の感覚は保たれている点がポイントです.小趾は腓腹神経支配です.
主な鑑別はL5神経根症です.
感覚障害の部位は一致します.
鑑別点は,後脛骨筋(つまり足関節の底屈内反)です.
後脛骨筋はL5神経根由来ですが,腓骨神経ではなく脛骨神経が支配しているため
足関節の底屈内反が障害されていればL5神経根症
障害されていなければ腓骨神経障害の可能性があがります.
その他,上円錐症候群や中心前回の脳梗塞の除外も必要です.
中心前回の微小な梗塞は,末梢神経麻痺のように見えることがあります.
上肢の症状であっても同様ですね.
たとえば,突然発症の下垂手をみたら,橈骨神経麻痺ではなく,中心前回の脳梗塞を疑う必要があります.
身体所見では腱反射亢進の有無などが鑑別点でしょうか.
病歴がはっきりしていればそちらのほうが役に立つかもしれません.
ただ,寝ておきたら麻痺,というケースでは病歴では判断困難ですよね.
このあたりは,積極的に頭部画像検査を行ってもよいのかもしれません.
蛇足ですが,中心後回の脳梗塞でpure sensory palsyをきたすことも押さえておくべきですね.
外来で出会うと,ついつい見逃してしまいそうです.
上円錐症候群はL4-S2レベルの障害を呈します.
大半が慢性発症でしょうし,腱反射亢進や異常反射の出現で疑いたいです.
ということは,腓骨神経麻痺だと思っても,しっかり反射をとらなくてはいけませんね.
以上,頭に叩き込んでおきましょう.
2019年9月9日月曜日
症例報告:Wallenberg syndromeのpost-stroke pain syndrome
症例報告がAmerican Journal of Medicineに掲載されました.
https://doi.org/10.1016/j.amjmed.2019.06.042
眼周囲の刺すような痛みで来院した患者でした.
神経所見を丁寧にとることで
Wallenberg症候群によるpost-stroke pain syndromeと診断できました.
脳梗塞後の疼痛は視床で有名ですが,次に多いのはWallenberg症候群です.
温痛覚の低下している領域に疼痛が起こります.
発症後しばらくしてから出現することもありますが,
本例では初期症状として疼痛が出ていました.
顔面に出るタイプのpost-stroke painは,発症早期におおいことがわかっています.
眼が充血していないのに眼の周囲が痛い(periorbital pain in a quiet eye)ときには
群発頭痛や三叉神経痛,副鼻腔炎,巨細胞性動脈炎などを疑いますが
神経診察を怠るとこのようなケースを見逃してしまいます.
その意味で教訓的なケースだと思います.
ぜひご一読ください.
2019年4月12日金曜日
ぶどう膜炎を初発症状とするリンパ腫はあるのか
我ながらニッチですね.
故あって調べてみました.
ぶどう膜炎を初発症状とするリンパ腫にはどうやら3パターンありそうです.
1.網膜硝子体リンパ腫などの眼内リンパ腫が,最初ぶどう膜炎のように見える
このケースシリーズ研究によると,網膜硝子体リンパ腫は初発から診断がつくまでに平均25カ月かかっており,ぶどう膜炎だとしてステロイドを使うことで腫瘍がマスクされてしまうこともあるようです.
2. DLBCLの初発症状がぶどう膜炎
やはりぶどう膜炎が起こって1-2年後に全身性のリンパ腫が発覚するパターンです.
(参考文献はこちら)
3. 中枢神経原発悪性リンパ腫の初発症状がぶどう膜炎
中枢神経原発悪性リンパ腫の3.5%でぶどう膜炎が初発症状だったとのことです.
脳外科の中では有名な話なのでしょうか.いろんなサイトで言及されていました.
(参考文献はこちら)
2018年1月12日金曜日
突然の両側難聴
諸事情あり、記事を更新する時間がとれない日々が続いています。
e-portfolioとして、日々の学びを小さいものでも書きとめていきたいものです。
この前、突然の両側難聴を主訴に救急受診した高齢患者のケースを見聞しました。
なんと、脳幹梗塞だったようです。
脳幹梗塞で突然の両側難聴?
とおもいましたが、調べてみると和文献でもけっこうヒットします。
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jstroke1979/25/2/25_2_274/_pdf
https://www.jstage.jst.go.jp/article/otoljpn1991/1/5/1_5_19/_pdf
付随して、めまい+突然の片側性感音難聴は、まず突発性難聴を想起してしまいますが、
AICA梗塞でも同じ症状が起こるため、鑑別が必要ですね。
https://www.jstage.jst.go.jp/article/orltokyo/57/1/57_28/_pdf
突発性難聴と思ったら梗塞だった、というのはままあるピットフォールなのかもしれません。
Clinical Pearls
・突然の両側難聴は脳幹梗塞を想起する
・鑑別に突発性難聴を想起したら、かならず脳梗塞を除外する。
2017年11月16日木曜日
ピットフォールその2:くも膜下出血
ピットフォールシリーズ 第2弾はくも膜下出血
●どうして私たちはくも膜下出血を見逃すのか.
N Engl J Med 2000;342:29-36には以下の要因が挙げられている.
1.臨床像の幅広さを理解していない
〇警告出血の頭痛(急性,強い,いつもと違う)
〇頭痛が自然と治る,鎮痛薬でよくなる
〇ウイルス感染症,一次性頭痛,副鼻腔炎,頸部痛に似ている
〇頭部外傷に惑わされる(実際は失神による転倒)
〇ECG変化に惑わされる
〇高血圧に惑わされる
〇未破裂動脈瘤の臨床像を知らない
2.CTの限界を理解していない
〇頭痛開始から時間がたつと感度が低下していく
〇小出血で偽陰性となる
〇読影の問題
〇技術面の問題(スライスの薄さや動きによるアーチファクト)
〇Hct 30%以下で偽陰性
3.腰椎穿刺施行しない+所見を正確に解釈できない
〇CTで判断がつかないときに腰椎穿刺を施行しない
〇出血12時間以内なら陰性になることがある
〇視認は分光計より感度が劣る
●よくある迷信・神話
くも膜下出血の頭痛で,突然発症は半数のみにみられる.
ただし,大半は5分以内にピークに達する.
(J Neurol Neurosurg Psychiatry 1998;65:791‐3)
Trauma Tapを見分ける方法はない.別の椎間で穿刺するか他の方法を.
(Am J Neuroradiol 2005;26:820-4)
頭蓋内出血による頭痛もNSAIDsに反応する
(Am J Emerg Med 1995;13:43-5)
●オタワ基準やエメラルド基準は,そりゃそうだよなという印象を個人的に受けます.
それぞれJAMA 2015;310:1248-55,BMJ Open 2016;6:e010999を参照
●第5世代CTならSAHの見逃しは殆どない.(J Emerg Med 2005;29:23-7)
ただし,非専門医がパッと見て判断しても間違えない,なんて誰も言っていない.
やはり,少しでも疑わしければ腰椎穿刺の閾値を下げるのがよいか.
時間を空けて再度CTでもいいかも(BMJ 2006;333:235-40).
2017年6月5日月曜日
ミニレクチャー ラクナ梗塞
10分で調べ5分で発表するミニレクチャー
ラクナ梗塞について
5つの古典的サブタイプ
これらの症状がある患者では,まず間違いなくラクナ梗塞があると言える.
|
症候群名
|
部位
|
症状
|
|
純運動片麻痺(最多)
|
内包,放線冠,橋底部,内側延髄
|
顔面・上下肢の片麻痺
感覚障害は呈さない
|
|
純感覚症候群
|
視床,橋被蓋,放線冠
|
顔面・上下肢片側感覚障害
運動障害は呈さない
|
|
失行性片麻痺
|
内包~放線冠,橋底部,視床
|
片麻痺と四肢失行
|
|
感覚運動症候群
|
視床内包
時に橋底部,外側延髄
|
顔面・上下肢の片(不全)麻痺+同側の感覚障害
|
|
構音障害-手巧緻性低下症候群
|
橋底部,内包,放線冠
|
顔面片麻痺,構音障害,嚥下障害,軽度の手巧緻性低下
|
参照:UpToDate
ラクナ梗塞は,発症後に数日の単位で症状が変動する.
Branch atheromatous disease(BAD):1989年にCaplanが提唱(未確立の概念)
脳血管穿通枝入口部の微小アテロームによる閉塞から穿通枝領域全体が梗塞に陥る
治療抵抗性を示す進行性増悪の経過 生命予後良好だが機能予後不良
(Clin Neurol 2010;50:921-924)
2016年11月16日水曜日
2016年6月2日木曜日
脳梗塞、脳出血を高次医療機関に転送する判断基準
2次救急機関にいると、脳卒中を高次に救急搬送するか入院で保存的に見るかの判断をする機会が多いです。
ある程度評価項目を覚えていないとやってられないので、暗記項目を極力少なくしてまとめます。
●脳梗塞 血栓溶解療法の適応
禁忌をちゃんと覚えておく必要があります。
発症4.5時間超、出血がある:消化管や尿路は21日以内の既往で禁忌になる、解離やSAHがある、というのはわかりやすいです。
降圧後も185/110mmHg以上なら禁忌、広汎な早期虚血性変化やmidline shiftがあっても禁忌です。
既往歴では、1カ月以内の脳梗塞があると禁忌になるのが注意です。
血液検査で以下に当てはまらないことを確認しなくてはいけません。
重篤な肝障害、急性膵炎、血糖50以下or400以上、Plt 10万以下、PT-ING>1.7, aPTT>40秒
あわせて、NIHSSは26点以上だと慎重投与になりますが、
4点以下の軽症例でも慎重投与になることも覚えておく必要があります。
つまり、感覚障害だけ、軽度の片側麻痺だけとかだと、適応にはならなくなります。
詳しくはrt-PA静注療法適正治療指針(2012年)を。
●脳出血 手術適応
日本脳卒中学会のガイドラインには以下のようにあります。
さすがに覚えられないので、ROCKY NOTEの記載を参考にまとめます。
以下の場合は非適応となるのでこれをおさえる。
・血腫量10ml未満 予後が良いので
・神経学的所見が軽微 予後が良いので
・逆に、GCS4以下の昏睡例 ただし小脳出血→脳幹圧迫は手術適応あり
・脳幹出血
・視床出血 ただし脳室穿破・脳室拡大はドレナージ術考慮2016年5月27日金曜日
BPPVのピットフォール
BPPVは急性発症のめまいで救急搬送される方の大多数を占めます。
非常にcommonな病態では、稀なピットフォールもしっかり押さえておきたいです。
中枢性との鑑別はもちろん大事。その中でもみおとしそうなものを。
まず、背景知識から。
・後半規管型(60-70%)の所見
Dix-Hallpike test:座位から右(左)下懸垂頭位に変換して回旋性眼振が出現
眼振出現時に下になっている方向=回旋の方向が患側です
治療はEpley法。ただ、処置室では気分悪くてそれどころではないという方がとても多いです。
座位→患側下懸垂頭位→健側下懸垂頭位→健側臥位→座位 それぞれめまいが止まるまで保持
・外側半規管型(30%)の所見
Supine-roll test:仰臥位で右下頭位→左下頭位にすると方向交代性眼振が起こる
患者は自然に健側下頭位、健側臥位になっており、それがそのまま治療法になる(Vannucchi法)
・前半規管型(1%)は後半規管型と所見が似ていて、治療も同じなので、省略します。
そこで、pitfall。
外側半規管型に似た中枢性めまいがあります。小脳梗塞などが原因です。
Central paroxysmal positional nystagmus(CPPN)といいます。
鑑別点は以下の通り
・頸部進展(座位→仰臥位)で下方向性眼振
・頸部屈曲(仰臥位→座位)で上方向性眼振
じっと側臥位で寝ている→supine-roll testをして方向交代性眼振がある→じゃあ外側半規管型BPPVかな→まてよ、CPPNを除外しておこう→座位⇔臥位の変換で垂直性眼振がある!→小脳に病変があるぞ!
というパターンでしょうか。
参考文献
Hospitalist~病院総合診療医~ 2015.6.3 Central paroxysmal positional nystagmus
救急外来ただいま診断中
2016年4月18日月曜日
糖尿病性末梢神経障害
糖尿病性末梢神経障害が疑われるが他の疾患の可能性もある方をマネジメントしていて
ちょうど今週のNEJMでレビューが出ていたのでさっそく読みましたが
大雑把な記載であまり参考になりませんでした…。
(メトホルミンでビタミンB12欠乏になるから鑑別に入れるようにとの指摘はなるほどと思いました。)
(抗てんかん薬、TCA、SSRIなどの薬剤は疼痛緩和目的なのですね。)
神経疾患に出会った際にいつもお世話になっている教科書に
詳しい記載がありましたので
まとめてみます。
①sensory or sensorimotor polyneuropathy
いわゆる手袋靴下型。最もなじみのあるタイプ。
感覚障害優位で、腱反射は低下する。
dysesthesiaが強い。進行すると下肢遠位部優位に筋力低下・筋委縮。
②autonomic neuropathy
見逃しやすいタイプ。下痢、胆嚢機能障害、勃起不全、起立性低血圧、直腸膀胱障害など
低血糖の症状が自覚できないのも症状の一つ。
③cranial mononeuropathy
典型例:外眼筋麻痺+瞳孔は正常、一側性、急性発症、1-2カ月で自然回復
外転神経障害をきたすことも。
顔面神経麻痺をみたらヘルペスウイルスの関与を疑う。
④symmetric proximal lower limb motor neuropathy
ここら辺からなじみのないタイプになってきます。
ただ、今私が出会っているのはこのタイプかもしれません。
50歳以上のコントロール不良患者
慢性・対称性の下肢近位の筋萎縮・筋力低下
①と合併していることが多い。
厳格な血糖コントロールで改善する。
⑤asymmetric lower limb motor neuropathy
50歳以上の長期罹病患者
突然発症、1-2日で症状完成
一側大腿四頭筋、大内転筋の筋力低下・筋萎縮
保存的加療で徐々に改善
④⑤を合わせてdiabetic amyotrophyという
⑥trunk and limb monomeuropathy
50歳以上の長期罹病患者
肋間神経や体幹・四肢の神経幹の障害
非常に強い痛み
狭心症、急性腹症と間違えられることも
予後良好だが数年症状が続くことも
また、インスリン治療で血糖コントロールが急速に改善した場合に末梢神経障害が起こることがあります。
こちらの本に症例が載っていました。
post-treatment neuropathyは、もともと神経障害が軽度の患者に起こりやすいそうです
有痛性で夜間に増悪、アロディニアも来しますが、1年以内に自然軽快するようです。
2016年1月20日水曜日
アシクロビル脳症/IgA血管炎による浮腫
出会った疾患を復習です。
アシクロビルの副作用は腎障害が有名です。
点滴の場合は、事前の輸液にくわえ、1-2時間かけてゆっくり投与することが必要です。
ときに中枢神経障害を招きます。
興奮、振戦、譫妄、幻覚、ミオクローヌスなどが出現します。
最初見たときは、アルコールの振戦譫妄かと思いました。
高齢者、腎障害患者で注意です。
そして何より適正使用です。
参照:UpToDate Acyclovir: An overview
IgA血管炎は、以前はアレルギー性紫斑病とかヘノッホシェーンライン紫斑病とか呼ばれていました。
紫斑はもちろん、関節痛を起こします。関節炎ではないため他動時痛はあまりないです。
特に3歳以下の小児に起こると、限局性の浮腫を起こすことがあります。
自験例では、6歳男児の両足関節痛と両下腿浮腫、片側前腕浮腫で来院し、経過で体幹背側の限局性浮腫が出現したケースがあります。
腹痛は有名ですが、患者の半数で見られます。便鮮血が要請になるのが56%ですが、大量出血は稀です。
消化器症状は紫斑出現後8日以内に起こるのが典型的ですが、数か月後に起こることもあり長期フォローが必要です。15-35%で紫斑出現前に起こります。ピットフォールですね。
腎障害は年長児や成人例で多いです。血尿が最多です。
他の症状としては、陰嚢痛/腫大、中枢神経症状(頭痛、けいれん、脳症、失調など)、末梢神経障害、ぶどう膜炎などがあるそうです。初めて知りました。
急性多関節痛でIgA血管炎を想起した時の鑑別は、反応性関節炎、一過性滑膜炎、若年性特発性関節炎などですかね。
参照:UpToDate Henoch-Schönlein purpura (immunoglobulin A vasculitis): Clinical manifestations and diagnosis
2016年1月13日水曜日
Panayiotopoulos症候群について
疑う機会があったので、しっかり勉強します。
1-14歳で発症します。平均年齢は5歳です。
自律神経てんかんです。てんかん発作が自律神経症状になることが特徴的です。
具体的には、嘔吐(70-85%)、悪心、retching(吐きそうになる)の症状が現れます。
他の自律神経症状は、顔面蒼白、縮瞳、唾液増加、咳嗽などです。
突然の脱力発作も半数の患者でみられます。
発作の多くで、意識を徐々に失っていき、頭位や眼位の偏位がみられます。
嘔吐、嘔気→眼球偏位と意識障害が出現→片側けいれん
というタイムコースが典型的みたいです。
夜間に起こることが多く、5分以上続きます。
発作のうち1/3~1/2は、30分以上続く、非痙攣性てんかん重責状態になります。
これを「てんかん」だと認識するのが難しいみたいで、脳炎・脳症とみなされてしまうことが多いです。
診断は脳波で行います。
非発作時でも75%のケースで後頭部のスパイクが見られます。
予後は良好で、たいていは2-3年で自然治癒します。
小児の発作的嘔吐の鑑別としてPanayiotopoulos症候群を挙げて
嘔吐の原因を胃腸炎と簡単に決めてしまわないようにしたいです。
参考文献
UpToDate Benign focal epilepsies of childhood
Panayiotopoulos症候群 -underdiagnosed and underrecognized epileptic syndrome-
2015年11月11日水曜日
熱性けいれん(BMJ Clinical Review)
熱性けいれんのレビューがBMJにあったので要点をまとめます。
http://www.bmj.com/content/bmj/351/bmj.h4240.full.pdf
15分以内、全身性の強直間代性発作、24時間以内の再発なし、トッド麻痺なし、異常四つを満たすと単純熱性けいれんです。安心です。そうでなければ複雑性です。
単純熱性けいれんがてんかんに移行する率は低く1/40程度。結構高いと思ってしまいますが。
抗てんかん薬予防投与のベネフィットに関するエビデンスはないです。
以下のリスク因子を持ち再発が疑われる場合は、ベンゾジアゼピンをあらかじめ処方しておくことがあります。その場合、強直間代性発作が5分以上続けば親が服用させます。
・18か月以下で初発、一親等に家族歴あり、体温39℃以下で出現、発熱から発作まで1時間以内、同一の発熱疾患のエピソードで複数回、保育所に行っている
脳炎や髄膜炎を示唆するレッドフラッグは以下の通り
・ぐずつき、食事量低下、ぐたっとしているという病歴
・複雑性の基準を満たす
・大泉門膨隆、項部硬直、羞明、神経学的巣症状がある
・痙攣後の意識変容や神経学的以上が1時間以上遷延する
・あやしてもあまり反応しないのが1時間以上遷延する
・抗菌薬の投与歴がある
・ヒブワクチン、肺炎球菌ワクチンをちゃんと接種していない
・2歳以下では、髄膜炎でも髄膜刺激症状が出ないことがままあるので、疑ったら髄液採取。
一般的には痙攣が五分以上続けばベンゾジアゼピンの投与を考慮します。
呼吸抑制の副作用がコワイですが、挿管の必要性を増やさなかったとの報告もあり、特に重積状態になれば積極的に使う必要があります。
親へのアドバイスは以下の通り
・けがを防ぐために、周りのものをどける
・体を抑える、口にモノをいれるのはダメ。
・けいれんがおさまったら気道確保と回復位を。
・けいれんが五分以上続けば救急車を。
基本的には予後良好の疾患なので、
脳炎・髄膜炎をみのがさないことと、親への教育が大事なポイントだと思います。
2015年10月5日月曜日
レボドパ・カルビドパと酸化マグネシウムの併用
舌が黒くなっているパーキンソン病の方に出会いました。
レボドパ・カルビドパと酸化マグネシウム散剤を同時に服用していたことによるものと考えました。
レボドパはアルカリ下で分解されてしまい、黒色を呈するようになります。
ゆえに、一緒にお湯で溶かしたり、散剤を混ぜたりすると失活してしまいます。
また、カルビドパはアルカリ下で瞬間的に失活します。
パーキンソン病により便秘が起こるため、薬剤の服用のタイミングには注意です。
他に、鉄剤や抗精神病薬などとの併用も注意です。
また、レボドパ・カルビドパを急に中止すると、悪性症候群が起こることがあります。こちらも注意です。
参考:http://bit.ly/1OekoH7
混ぜ合わせた時の黒くなる動画もあります。参考にしてください。
2015年9月14日月曜日
ギランバレー症候群の亜型
ここ2週間で、Bickerstaff型脳炎についての記載を続けてみたので
理解を深める機会だと思いまとめてみます。
ギランバレー症候群にはさまざまな亜型があります。
圧倒的に多いのがAcute inflammatory demyelinating polyradiculoneuropathy(AIDP)で、一般的にギランバレー症候群といったらこれを意味します。
進行性・対称性の筋力低下に加え、腱反射消失がみられます。
Acute motor axonal neuropathyは、AIDPと似ているところも多いですが、特徴は腱反射が消失しないこと、感覚神経が障害されないこと、運動神経が選択的に障害されること、生理検査で脱髄障害ではなくて軸索障害のパターンをとることです。
日本の若者で多く、大抵の場合はC. jejuniの感染が先行します。
進行すると、Acute motor and sensory axonal neuropathyとなります。
Miller Fisher syndromeは、外眼筋麻痺、失調、腱反射消失を三徴とします。
Bickerstaff encephalitisはMiller Fisher syndrome + 脳症を伴う脳幹炎 + 腱反射亢進です。
Pharyngeal-cervical-brachial weaknessは、口咽頭、頸部、肩の筋力が急性に低下し、嚥下困難を伴います。下肢筋力や下肢腱反射は保たれています。
この3つは、GQ1b抗体が陽性となり、IVIGが有効となります。
臨床では当然、ギランバレー症候群とそれ以外の疾患の鑑別のほうが大事だとは思うのですが
少なくともAIDPとAcute motor axonal neuropathyのイメージは持っておいた方がいいと感じました。
参考:UpToDate Clinical features and diagnosis of Guillain-Barré syndrome in adults
2015年8月31日月曜日
起立性低血圧の原因
座位で血圧が急激に低下するという方がいらしたので
起立性低血圧(prthostatic hypotension)の原因についてまとめてみます。
起立性低血圧は65歳以上だと20%くらいに見られる、良くある状態です。
ただし、症状があるのは2%です。やはり症状があれば一度立ち止まる必要があります。
定義は、5分以上臥位になった後、2~5分直立して、sBP低下20mmHg以上またはdBP低下10mmHg以上、となります。
また、高齢者では、食後15~90分で血圧が下がることも良くあります。
知っておくと余計な心配をする必要がなくなるかもしれません。
原因は、自律神経障害、循環血液量低下、薬剤、その他と大別できます。
原因が分からない場合が1/3を占めるところに注意です。
まずは循環血液量低下がないか判断します。
最近の嘔吐、下痢、発熱、水分制限がないか聴取します。
血液検査と心電図は必要です。
合わせて、心不全、悪性腫瘍、糖尿病、アルコール依存症の既往歴と、以下に挙げるような薬剤歴も確認します。
自律神経障害を疑う場合は、パーキンソニズム、失調、末梢神経障害があるか、他の自律神経障害症状があるか(縮瞳/散瞳の異常、便秘の有無、勃起障害の有無など)を確認します。
感覚障害や腱反射の有無はすぐ確認できるので確認します。
バルサルバ手技で脈拍が変わるか、なども有用な診察です。
自律神経障害を起こす疾患は以下の通り。
●神経変性疾患
・パーキンソン病/症候群(レビー小体型認知症など)
・多系統委縮症
・真性自律神経不全
真性自律神経不全はPAFとかBradbuy-Eggleston症候群と呼ばれます。
特発的に自律神経のみ機能しなくなります。予後良好です。
●神経障害
・糖尿病
・アミロイド―シス・サルコイドーシス
・シェーグレン症候群などの膠原病
・腎不全
…などなど、典型的には遠位部の疼痛や感覚消失、勃起障害、尿路や消化管の症状と合わせて起こります。
また、ギランバレー症候群は強い自律神経障害を起こしうるので注意です。
自律神経のみを侵す疾患もあります。
nAChRに対する自己抗体ができる場合は、強い交感神経優位状態になります。
また、傍腫瘍性自律神経障害というものもあります。
家族性のものもあるみたいですが…あまりにマニアックなのでやめておきましょう。
●その他
大動脈弁狭窄症、心膜炎、不整脈、褐色細胞腫、副腎不全なんかも原因となります。
●薬剤
代表的な薬剤は以下の通り。
・アルコール
・α/βブロッカー
・利尿薬
・血管拡張薬(硝酸薬、Ca拮抗薬など)
・PDE阻害薬(バイアグラ)
・抗うつ薬、睡眠薬
・オピオイド
・抗精神病薬
・抗パーキンソン病薬
言われてみればなるほどと思う薬剤群です。
アルコールや精神科系の薬剤の見落としに注意ですね。
起立性低血圧は、将来の心血管系イベント発生のリスクとなります(HR 2.6)。
頸動脈雑音は全例で確認しておいた方がいいでしょう。
もちろん、転倒には注意です。
参考:UpToDate Mechanisms, causes, and evaluation of orthostatic hypotension
2015年8月6日木曜日
ビタミンB1欠乏症
・拒食がある高齢者の認知機能低下の原因評価
・貧困状態で食事できていなかった方の末梢神経障害
というケースに出会いました。
どちらもビタミンB1を測定、低値であったため補充療法開始しましたが、症状は良くならず、結局別の診断がなされました。
ビタミンB1欠乏症による症状が疑わしくて、実際にビタミンB1低値でも、ビタミンB1欠乏症であるとは限らない、ということでしょうか。
ビタミンB1の生物学的半減期は10-20日。欠乏すると以下の状態を招きます。
・脚気
成人の脚気はdry beriberiとwet beriberiに分けられます。
dry beriberiでは、対称性末梢神経障害が起きます。運動と感覚どちらの神経も侵します。
多くは四肢遠位を障害します。
wet beriberiは心肥大、心筋症、心不全、末梢浮腫、頻脈も呈します。
・Wernicke-Korsakoff症候群
アルコール関連死の29-59%を占めます。
3徴は脳症、外眼筋麻痺、歩行失調です。
しかし、すべてそろうのは1/3にすぎません。
精神状態の異常だけが出ることがそこそこあるみたいですね。
生前に診断されていたのが26/131だけであったという報告もあります。
歩行障害が他の症状に先行することもあります。
血清ビタミンB1値による判断の感度、特異度が不明であり、血清値が正常でも本症を除外できなません。
・Leigh症候群
progressive subacute necrotizing encephalomyopathyともいいます。
乳幼児に発症する神経変性疾患です。
Leigh症候群の患者でビタミンB1欠乏がよくみられます。
ただ、原因はミトコンドリア異常なので、いわゆる「欠乏症」ではないです。
参考:UpToDate
Overview of water-soluble vitamins
Wernicke encephalopathy
Hereditary neuropathies associated with generalized disorders
2015年8月5日水曜日
CIDPの亜型について
sensory dominant CIDPと診断された方がいましたので
良い機会だと思い勉強してみました。
典型的なCIDPは、比較的緩徐に進行する対称性かつ運動神経優位の末梢神経障害を呈します。腱反射が消失します。とはいえ突然悪化することもあるみたいです。
遠位筋も近位筋も筋力低下が起こるというパターンが脱髄性ポリニューロパチーの特徴です。
一方、感覚神経は遠位から近位へと障害が進行します。
CIDPはヘテロな疾患群である可能性が示唆されています。
CIDPの亜型としては以下の通り。
・Lewis-Sumner症候群
multifocal acquired demyelinating sensory and motor neuropathy(MADSAM)ともいいます。
運動神経、感覚神経の両方を傷害する多発性単神経炎を呈します。
・Sensory-predominant CIDP
感覚神経が優位に障害されます。温痛覚より振動覚、位置覚が強く障害されます。(太い神経から障害される)
平衡感覚障害、疼痛、感覚異常が出現します。
筋力低下がなくても、検査をすると伝導速度は低下しています。
・Distal acquired demyelinating sensory neruopathy(DADS)
典型的なCIDPより進行が緩徐。
IgMパラプロテインが見られることが多い。その場合、通常のCIDPの治療に抵抗性となる。
・CIDP with CNS involvement
10-20%の患者で、脳神経障害、球麻痺症状が起こる。
視神経障害、腱反射亢進、バビンスキー陽性、MRIにて中枢神経の脱髄所見などがみられる。
まとめると、古典的なCIDPの特徴は以下の通り。
Progression over at least two months
Weakness more than sensory symptoms
Symmetric involvement of arms and legs
Proximal muscles involved along with distal muscles
Reduced deep tendon reflexes throughout
Increased cerebrospinal fluid protein without pleocytosis
Nerve conduction evidence of a demyelinating neuropathy
Nerve biopsy evidence of segmental demyelination with or without inflammation
一方、これにあれはまらないものもあるということを認識しておきましょう。
もちろん、除外診断が基本になります。
2015年8月3日月曜日
三叉神経・自律神経系頭痛とその分類
群発頭痛は知っているけど、他にも似た様な疾患があると知ったのでまとめます。
総称してTrigeminal Autonomic Cephalalgia(TAC)といいます。
片側性の三叉神経領域の疼痛+同側頭部の自律神経症状(結膜充血、流涙など)を呈します。
・群発頭痛(cluster headache)
発作の持続時間:数分~数時間 頻度:8回/日
・発作性片側頭痛(paroxymal hemicrania)
持続時間:数分 頻度:40回/日
・SUNCT(short-lasting unilateral neuralgiform pain with conjunctival injection and tearing)
持続時間:数秒~数分 頻度:200回/日
他のTACで有効な酸素投与やトリプタンは効きにくい。リドカイン持続静注が有効。
・持続性片側頭痛(hemicrania continua)
持続的に数週~数か月続く
ポイントとしては、
自律神経症状があるところ
SUNCTのみ治療が異なるので鑑別が必要なところ
でしょうか。
自殺頭痛といわれるほど痛みが激しく、診断されていないことも多いので
出会ったら漏らさずすくいたいですね。
参考:UpToDate Pathophysiology of the trigeminal autonomic cephalalgias
登録:
投稿 (Atom)
