2015年1月29日木曜日

NEJM Case 4-2015



今週のNEJM Case Recordです。

本文はこちら

Case 4-2015
A 49-Year-Old Man with Obtundation Followed by Agitation and Acidosis


自殺目的で何かを服用した患者。
アニオンギャップ開大代謝性アシドーシスから何を考えるか、というケースでした。

アニオンギャップ開大代謝性アシドーシスの鑑別ですが
私はKUSSMALで覚えています。
(Kussmaulの大呼吸が見られることからの語呂合わせ)

Ketoacidosis(diabetic, alcoholic)
Uremia
Sepsis
Salicylate
Methanol
Aspirin
Lactic acidosis


これだとマニアックな中毒はカバーできないです。
そんなときはMUDPILES-CARTです。
こっちはさすがに暗記していません。

Methanol
Uremia
Diabetic ketoacidosis
Propylene glycol
Infection/Isoniazid
Lactic acidosis
Ethylene glycol
Salitylate
Cyanide
Alcoholic ketoacidosis
Rhabdomyolysis
Toluene


個人的には、アニオンギャップ開大代謝性アシドーシスをみると
ケトアシドーシス、乳酸アシドーシス、アスピリン中毒、不揮発アルコール中毒
がこの順番で思い浮かびます。

尿毒症と敗血症がどうしても鑑別から抜け落ちてしまいます。
この二つをアニオンギャップ開大代謝性アシドーシスからみつけるという経験がないからでしょうか。
ピットフォールにならないように、この際、しっかり頭に叩き込んでおこうと思います。
尿毒症と敗血症、尿毒症と敗血症、尿毒症と敗血症…


今回のケースでは、浸透圧ギャップが開いていたことが手掛かりとなりました。
アニオンギャップ開大代謝性アシドーシス+浸透圧ギャップ開大ときたら
不揮発アルコール中毒で決まりですね。
プロピレングリコールかエチレングリコールです。

治療は重炭酸ナトリウム→ホメピゾールです。
ホメピゾールは2日前に日本でも発売開始になりました。なんという偶然。


浸透圧ギャップ開大が分かれば診断は容易ですので
アニオンギャップ開大代謝性アシドーシスをみたときに浸透圧ギャップを測定できるかがカギだと思います。


意識障害をみたら、3つのギャップをさがせ
という言葉があるみたいです(出典はこちら)

アニオンギャップ
サチュレーションギャップ(CO中毒ではSpO2正常でもPaO2低下)
浸透圧ギャップ

に気を付ける必要があるとのことです。


アイスノンなどの保冷剤にもエチレングリコールは入っているみたいなので
自殺企図がないからといって安易に除外はできないですね。

また、プロピレングリコールはロラゼパム製剤に入っているそうです。
アルコール離脱譫妄だと思ってロラゼパムたくさん使っていたら、じつはプロピレングリコール中毒による譫妄だったという症例報告が2003年のthe Lancetにありました。

Agitation by sedation
Tuohy, Kathryn A et al.
The Lancet , Volume 361 , Issue 9354 , 308


~Clinical pearl~
アニオンギャップ開大代謝性アシドーシスをみたら浸透圧ギャップを測定する。