2026年7月1日水曜日

家庭内暴力サバイバーの家庭医が、おなじくサバイバーの患者を診るとき

 Neil J, Delany C, McLindon E, hegarty K. GP survivors’ experiences working with family violence survivors: a qualitative study. Br J Gen Pract. 29 June 2026; BJGP.2026.0032. DOI: https://doi.org/10.3399/BJGP.2026.0032


背景:家庭内暴力(DFV)は世界中で蔓延しており、家庭医(GP)も例外ではない。DFVの被害者はプライマリ・ケアを受診することが多く、そこでDFVの被害者であるGPと遭遇する機会も少なくない。著者らの知る限り、こうした遭遇が被害者であるGPに及ぼす感情的および職業的な影響、特に被害者患者のケア能力への影響について検討した文献や質的研究は存在しない。


目的:DFVの被害者である患者を診察する際、自身も被害者であるGP医はどのような経験をしているのか?という問いに答えること。


研究デザインと設定:オーストラリアのGPでDFVの被害者である医師が、被害者患者と接する際の経験を深く理解することを目的とした現象学的質的研究。


方法:参加者は、あらゆる形態のDFVの被害者であることを自認するオーストラリアのGPであった。参加者は、オーストラリアのGPのオンライングループ2つから、目的サンプリングを用いて募集された。半構造化面接が実施され、音声録音され、逐語的に書き起こされた。内省的なテーマ分析が行われた。


結果:参加者(n = 20)は女性で、オーストラリア各地で働いていた。4つのテーマが特定された。「私の経験は私のスーパーパワーになり得る」(「第六感を持つ」と「期待以上のことをする」というサブテーマを含む)、「生存者の物語とつながる」、「マントを身に着ける」、「私の経験は私に目的意識を与えてくれる」。


結論:DFVの被害者であるGPは、被害者患者と接する際にしばしば困難な感情を経験するものの、自身のDFV経験からこの仕事に強い責任感を抱いていた。このことが、被害者への共感を高め、彼らの置かれた状況を深く理解することにつながり、被害者と力強く協力し、状況の改善を目指すことを可能にした。


感想

まだ全文読めない(すぐに読めるようになるはず)のですが、アブストを読んで思わず声が出た論文。間違いなく2026年ベスト論文の一つ。survivorであるということが診療現場でどのような振る舞いを起こすのか、という問いであり、家庭内暴力をテーマにした研究ですが、解釈はより普遍的になりうると思います。こういう、対象は焦点を絞って狭く(それでも20人集めているのはとんでもなく大変だったと思います)、ゆえに結果は普遍的、というのがいい質的研究だなと思います。