2017年11月16日木曜日

ピットフォールその2:くも膜下出血


ピットフォールシリーズ 第2弾はくも膜下出血

●どうして私たちはくも膜下出血を見逃すのか.
N Engl J Med 2000;342:29-36には以下の要因が挙げられている.

1.臨床像の幅広さを理解していない
〇警告出血の頭痛(急性,強い,いつもと違う)
〇頭痛が自然と治る,鎮痛薬でよくなる
〇ウイルス感染症,一次性頭痛,副鼻腔炎,頸部痛に似ている
〇頭部外傷に惑わされる(実際は失神による転倒)
〇ECG変化に惑わされる
〇高血圧に惑わされる 
〇未破裂動脈瘤の臨床像を知らない

2.CTの限界を理解していない
〇頭痛開始から時間がたつと感度が低下していく
〇小出血で偽陰性となる
〇読影の問題
〇技術面の問題(スライスの薄さや動きによるアーチファクト)
〇Hct 30%以下で偽陰性

3.腰椎穿刺施行しない+所見を正確に解釈できない
〇CTで判断がつかないときに腰椎穿刺を施行しない
〇出血12時間以内なら陰性になることがある
〇視認は分光計より感度が劣る

●よくある迷信・神話

くも膜下出血の頭痛で,突然発症は半数のみにみられる.
ただし,大半は5分以内にピークに達する.
(J Neurol Neurosurg Psychiatry 1998;65:791‐3)

Trauma Tapを見分ける方法はない.別の椎間で穿刺するか他の方法を.
(Am J Neuroradiol 2005;26:820-4)

頭蓋内出血による頭痛もNSAIDsに反応する
(Am J Emerg Med 1995;13:43-5)

●オタワ基準やエメラルド基準は,そりゃそうだよなという印象を個人的に受けます.
それぞれJAMA 2015;310:1248-55,BMJ Open 2016;6:e010999を参照

●第5世代CTならSAHの見逃しは殆どない.(J Emerg Med 2005;29:23-7)
ただし,非専門医がパッと見て判断しても間違えない,なんて誰も言っていない.
やはり,少しでも疑わしければ腰椎穿刺の閾値を下げるのがよいか.
時間を空けて再度CTでもいいかも(BMJ 2006;333:235-40).