2026年10月4日日曜日

若手女性家庭医の経験するマイクロアグレッション

 Byrd M, Filippi MK, Siddiqi A, Fleischer SE, Bazemore AW, Koempel A. The Impact of Biases for Early-Career Women in Medicine: “It’s the Little Day-to-Day Microaggressions”. J Am Board Fam Med. 2026;39(1):167190. doi:10.3122/jabfm.2025.250291R2. https://www.jabfm.org/content/39/1/167190


背景

女性医師は、臨床現場において、心身の健康を損なうさまざまな制度的・社会的バイアスに直面している。性別に基づく差別を経験したと報告した女性医師の割合は、キャリア初期では76%、中期では57%、後期では36%であった。これらの傾向は、キャリアを重ねるにつれてバイアスが減少する可能性を示唆しているものの、バイアスは女性医師のキャリアを通じて持続する負担となっている。本研究は、職場のバイアスに関する質的研究で十分に取り上げられてこなかった、キャリア初期の女性家庭医に焦点を当てた点に特徴がある。特に、女性医師が臨床現場で経験するマイクロアグレッションを取り上げ、直面するバイアスをより深く理解することを目指した。


方法

2021~2023年のAmerican Board of Family Medicine National Graduate Surveyに回答した、地理的・人種的に多様なキャリア初期の女性医師25名を、電子メールを通じて募集した。研修医から臨床現場で働く医師へと移行する時期の経験を理解するため、ライフヒストリー・アプローチに基づいた半構造化インタビューガイドを作成した。インタビューを逐語録にし、データを整理したうえで、NVivoを用いて帰納的内容分析を行った。分析は質的研究者によって実施された。


結果

データから、主に3つのテーマが特定された。

1. 臨床現場における偏見を含むコミュニケーション:臨床現場でのコミュニケーションに、性別に基づくバイアスのパターンが表れていた。

2. 外見や他者の認識による、医師としての立場の否定:患者が、女性医師の外見や自分自身の認識に基づいて、その医師の立場や専門性を認めない経験がみられた。

3. 感情的・心理的な労働への対処:女性医師は、職業上および社会的に求められる期待に応えるなかで、感情的・心理的な負担を抱え、それに対処していた。


結論

プライマリ・ケアの現場では、マイクロアグレッションに対して、直接的かつ意図的な介入が必要である。こうした経験に対処しなければ、公平性と医療従事者の持続可能な就労環境が損なわれるおそれがある。組織のリーダーには、個々の医師を支援するだけでなく、組織文化やプライマリ・ケア全体の使命を強化するために、マイクロアグレッションを認識し、それを中断させ、適切に対応する能力が求められる。こうした取り組みは、医療における公平性の実現という、より広い社会的要請にも関わるものである。


感想

具体的なテーマの説明は以下の通り。

1. 臨床現場における偏見を含むコミュニケーション:女性医師を、専門職としてではなく、性別に基づく役割や期待によって捉える言動。

採用時の質問: 男性面接官2名から、将来の出産・子育ての計画について質問された。

日常的な発言: 妊娠中の同僚が分娩シミュレーション用の骨盤模型を購入しようとした際、男性の責任者から「巣作り(nesting)をしているんだね」と言われた。

職場での関係: 男性の前任者とは意見が一致していたと繰り返し述べる上司との関係において、若さや性別が意見の対立に影響しているのではないかと感じた。

こうした何気ない発言が日常的に積み重なり、女性医師の専門性や能力を軽視する環境を形成している。


2. 外見に基づく医師としての立場の否定:若さ、性別、人種などに基づく患者の思い込みによって、医師としての専門性や立場を認めてもらえない経験。

医師であることへの疑念: 若く見える女性医師が、患者から「あなたが医師なの?」と疑うように尋ねられた。

医師であることを示す工夫: 医師であることを明記した名札をつけていても、「医師はどこにいるの?」と尋ねられた。

私生活への立ち入り: 患者から子どもの有無や次の出産予定について質問されたり、外見から話せる言語を決めつけられたりした。

こうした経験は、医師としての役割を否定するだけでなく、患者との専門的な関係や適切な境界を損なっている。


3. 臨床現場や社会の期待に伴う感情的・心理的労働:周囲の感情に配慮し、人間関係を円滑に保ち、ジェンダーや人種に基づく期待に対処するために、追加の心理的負担を引き受けること。

話し方への要求: 男性医師よりも女性医師のほうが、スタッフから話し方や言葉遣い、丁寧さを厳しく求められると感じていた。

社会的な性役割: 女性は医師として働いていても、家事や育児を担うべきだという社会的期待が残っていると語られた。

人種との交差: 黒人女性医師は、黒人患者を診療する際、白人男性医師には生じにくい感情的負担を経験していた。文化的配慮を意図した同僚の発言が、かえって不快感を与える場合にも、その状況に対処しなければならなかった。

過剰な警戒: 過去の経験から、将来も障壁に直面することを予期し、常に備えておかなければならないと感じていた。また、少数派の同僚に負担をかけたくないと考え、支援を求めることを控えた参加者もいた。

差別的な出来事そのものだけでなく、それを予測し、感情を調整し、周囲との関係を維持するために継続的な努力を求められる


非常に具体的かつ明確に記述されており、日本でも同様の現象は起こっているだろうと思いました。日本での追検証が必要だと思います。