Hall S, Code D, Dyck D, Rabari D, Hubbard Murdoch N. What Healthcare Professionals Need to Understand About Queer Older Adult Care Experiences: A Double Diamond Design Study. J Gen Intern Med. 2026 Sep 25. doi: 10.1007/s11606-026-10800-0. https://link.springer.com/article/10.1007/s11606-026-10800-0
背景
two-spirit、レズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダー、クィア(2SLGBTQ+)の人々が高齢化するなか、多くの人々が異性愛規範的(heteronormative)な医療システムへのアクセスにおいて困難に直面している。医療専門職(HCP)は、包摂的で、アイデンティティを肯定するケアを提供するための、対象を明確にした教育を必要としている。本研究の目的は、クィアな高齢者へのケアにおけるHCPの能力向上を目的とした教育ツールキットに含めるべき主要な内容領域を明らかにすることであった。
方法
Double Diamondデザインモデルは、4つの段階――discover(発見)、define(定義)、develop(開発)、deliver(提供)――からなる人間中心設計(human-centred design)の枠組みである。
本研究ではDouble Diamondデザインモデルを用い、カナダ・サスカチュワン州において、クィアな高齢者とHCPを対象とした2回の共同創造ワークショップを実施した。ワークショップでは、ストーリーテリング、障壁の特定、解決策の創出といった活動を行った。逐語録、フィールドノート、参加者が作成した資料のデータを帰納的に分析し、その後、コードを先行研究で記述されている現象と関連づけ、既存の用語に沿うように名称を変更した。
結果
3つのテーマが同定された。
Relational ontologies(関係の中で浮かび上がる存在):クィアな高齢者の健康経験が、人間関係、包摂的な言語、可視性、そして「選択した家族(chosen family)」の認識によってどのように形づくられるかを示す概念である。
Institutionalized othering(制度による他者化):異性愛規範的な方針、前提、教育上の不足によって、医療システムのなかでクィアなアイデンティティや人間関係が周縁化されることを示す概念である。
Self-protective behaviours(自己防衛的行動):クィアな高齢者が、カミングアウトや自身の情報開示をどの程度行うかを判断し、安全性を評価し、予想される差別から自分自身を守るために用いる方略を示す概念である。
これらのテーマは、現在開発中の教育ツールキットの中核的な内容領域を構成するものとなっている。
結論
これらの結果は、HCP教育において、積極的な信頼関係の構築(proactive trust building)と包摂的なケア方針(inclusive care policies)を優先する必要があることを示している。
具体的には、
relational ontologies:包摂的なコミュニケーション、「選択した家族」の認識、肯定的な対人ケア
institutionalized othering:構造的スティグマ、異性愛規範的な制度・方針への批判的検討、システムレベルでの包摂
self-protective behaviours:情報開示に配慮した診療、信頼関係の構築、安全に医療へ参加するための障壁の軽減
という形で、ツールキットの内容に反映される。
生きられた経験とデザイン研究の原則に基づいて開発されるこのツールキットは、クィアな高齢者をケアするHCPの準備性を高め、医療における公平性の向上を目指すものである。
感想
研究デザインもトピックも結果も、どれをとっても質の高い研究だと思います。
chosen familyとは、血縁や法律上の家族ではなくても、本人が「自分の家族」と認識し、家族のような親密さや相互扶助を持つ人々をさします。
単にニーズを記述するのではなく、当事者と医療者がco-designのプロセスに参加し、その経験を医療者教育の具体的なコンテンツへ変換しようとしている点が評価すべき点だと思いました。