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2018年10月24日水曜日

肥大型心筋症に出会ったら:続き



(経験症例をもとに大幅な改変をしています)

近隣医療機関が閉院したため当院外来に転院した高齢患者.
診断名は「高血圧,心不全」だが,診察上Valsalva法で増強するsystolic murmurあり.
心尖拍動は前腋窩線上で触知する.CTRは60%を超えるが肺うっ血像はない.
心エコーでSAM,LVOT狭小あり.
他の所見も勘案し肥大型心筋症+軽度心不全と診断した.
自覚症状の乏しい高齢者.手術適応はおそらくないし,本人も希望なし.
さて,どのようにマネジメントすればよいだろうか.

前回はその場しのぎまで.
せっかくなのでもう少し詳しく勉強しておこうと思い,MKSAPのtextを開きます.

・HCMは500人に1人.しかし多くは無症候で経過する
・中には症状が出現し,突然死のリスクとなる場合がある
・心不全になる場合は,左室拡張障害やLVOT閉塞が関与しているかもしれない
・AFib合併はコモン.LVOT圧較差増悪を招く.
・VT→突然死の危険性あり
・ゆえにHCMを診断したらホルター心電図はしましょう.
・左室壁肥厚の主な鑑別は①高血圧②アスリート心③アミロイドーシス④Fabry病
・一親等での突然死の家族歴,最大左室壁厚30mm以上,最近の説明がつかない失神,VT3連発以上などあればICDの適応

・薬剤治療はLVOT閉塞,心不全,AFibに関連する症状に対する
・具体的には,息切れや(前)失神があれば治療考慮
・前負荷低下や血管拡張を起こすようなことは避ける(脱水,熱い風呂,アルコール過量摂取など)
・βブロッカーはα作用のないものを選ぶ(血管拡張させないため).ゆえにカルベジロール(アーチスト)は避けて,プロプラノロール(インデラル)やメトプロロール(セロケン),アテノロール(テノーミン)を使う.
・上述の理由のため,ニトロ製剤も避ける.
・薬剤治療をしても症状が強い時は手術検討を.
・心エコーは1-2年に1回しましょう.

いかにLVOTを保つか,というのが戦略になるのですね.


2018年10月18日木曜日

肥大型心筋症に出会ったら


(経験症例をもとに大幅な改変をしています)

近隣医療機関が閉院したため当院外来に転院した高齢患者.
診断名は「高血圧,心不全」だが,診察上Valsalva法で増強するsystolic murmurあり.
心尖拍動は前腋窩線上で触知する.CTRは60%を超えるが肺うっ血像はない.
心エコーでSAM,LVOT狭小あり.
他の所見も勘案し肥大型心筋症+軽度心不全と診断した.
自覚症状の乏しい高齢者.手術適応はおそらくないし,本人も希望なし.
さて,どのようにマネジメントすればよいだろうか.


まずUpToDateでその場しのぎを図ります.

Hypertropic cardiomyopathy: Medical therapy
→SUMMARY & RECOMMENDATIONS
とすすみ,以下の記述を得ました.

・HFとLVOT閉塞があれば,陰性変力作用のある薬剤の単剤使用を推奨(Grade 1B)
・そのなかでもβ blockerが第一選択(Grade 2C)
・血管拡張薬や利尿薬は,LVOT増悪のリスクがあり,あまり使わないほうがよさそう.
・単剤でもHF,LVOT閉塞が解消されなければ,非ジヒドロピリジン系CCB(ベラパミル等)を追加する(Grade 2C).それでもだめならジソピラミド追加.
・無症候性のHCMは経過観察.
・左室心尖部に瘤があれば経口抗凝固薬を.(Grade 2C)

というわけで,薬物治療はβblocker主体で行うことにしました.




2017年11月23日木曜日

ピットフォールその3:心筋梗塞


今回でピットフォールシリーズはいったん終了.

●心筋梗塞は,非典型なのが典型

心筋梗塞患者434877人を解析した研究では,33%が胸痛なし
高齢者,女性,糖尿病,心不全の既往で多い.
(JAMA 2000;283:3223-9)

急性冠症候群で入院した20881例を解析した研究では,
8.4%に胸痛がなく,23.8%は初期診断が違っていた. 
呼吸困難が約半数.次いで発汗 26.2%,悪心・嘔吐24.3%,(前)失神19.1%.
(Chest 2004;126:461-9)

非典型的な症状の方が死亡率が高い.HR 1.30-1.97(多因子調整済)
30日後の死亡率 典型例17.9% 非典型例49.2%
1年後の死亡率  典型例26.2% 非典型例61.0% 
(Heart 2001;86:494-8)


●心筋梗塞をいかに除外するか

症状と身体所見だけでは診断も除外もできない.
(Br J Gen Pract 2008;58(547):e1-e8)

血清マーカーの組み合わせ(CK, CK-MB, ミオグロビン,トロポニンI/T)はどうか.
初回測定だけでは感度37-49%, 特異度87-97%とイマイチ.
(Ann Emerg Med 2001;37:478-94)


●TIMI score 0点で感度97.9-99.8%(Lancet 2011;377:1077-84)

個人的には,このスコアは絶対に覚えられない自信があります.
TIMI scoreを眺めると,大事な点がいくつか見つかります.
こうまとめる方が実践的かも.

①心電図の「変化」をみること
②時間を空けて再度血液検査行うこと
③生活歴をしっかり聞くこと
④65歳以上の胸痛はそれだけでリスクが高いと認識すること


2017年10月11日水曜日

胸膜痛について


胸膜痛ではまず肺塞栓を除外せよという強いメッセージを感じます.

Pleuritic Chest Pain: Sorting Through the Differential Diagnosis
Am Fam Physician. 2017 Sep 1;96(5):306-312.

胸膜性胸痛の特徴は,呼吸時に生じる突然かつ強い胸痛で,鋭い,または刺すような,または焼けるような痛みと表現される.最も高頻度かつ重篤な原因は肺塞栓であり.胸膜性胸痛で救急を受診する患者の5-21%を占める.肺塞栓に関し妥当性が確認された臨床決断ルールを適応することで,Dダイマー測定,肺換気血流スキャン,CTアンギオグラフィーといった追加の検査を行うかどうかの参考となる.他の重篤な疾患としては,心筋梗塞,心膜炎,大動脈解離,肺炎,気胸があり,上記疾患以外の診断を下す前に,病歴と身体診察,心エコー,トロポニン測定,胸部レントゲンを用いて除外すべきである.冠動脈疾患を除外するのに有用な,妥当性が確認された臨床決断ルールを用いることができる.胸膜性胸痛を引き起こす最多の要因はウイルスである.病原としてよくみられるものに,コクサッキーウイルス,RSウイルス,インフルエンザ,パラインフルエンザ,ムンプス,アデノウイルス,サイトメガロウイルス,EBウイルスがある.胸膜性胸痛の治療は原因疾患の治療に準じる.ウイルス性または非特異的な胸膜性胸痛の場合は,疼痛コントロールとしてNSAIDsが適している.症状が持続する患者,喫煙者,肺炎のある50歳以上の患者では,初期治療から6週後に再度胸部レントゲンを撮影し,画像上の改善を確かめることが重要である.


2016年11月16日水曜日

失神の鑑別



失神の鑑別についてまとめて発表する機会があったので,
スライドを挙げます.

内容は基本的なものですのであしからずご了承ください.




































2016年10月3日月曜日

胸痛をきたす良性疾患



ようやく更新が再開できそうです.

明らかに非心臓性で,帯状疱疹や逆流性食道炎もなく
「まぁ・・・様子見ましょうか」で終わらせてしまう胸痛ってあるよなと思います.

Bornholm病(流行性胸痛症),Straight back syndromeは遭遇したことがあります.
また,Precordial catch syndromeは私自身がなった経験があります(たぶん).

あまり知られていない,けど知っているとそこそこ外来で引っ掛けられるのでは,
という疾患をまとめてみました.

●Straight back syndrome

・若年者の一過性の軽度胸痛,動悸
・胸郭が扁平で胸椎が直線状→心臓が圧迫されて胸痛出現?
・胸部側面X線で,T4-T12を結ぶ直線からT8までの距離が1.2cm未満
・胸痛は体動時や胸郭圧迫時に多い
・67%に僧房弁逸脱症候群の特徴あり.

参考:Q.J.Med(196),Cardiol(5),日本医事新報 (4759)

画像はリンク先より引用.



●Precordial catch syndrome

・小児の筋骨格性胸痛
・数秒から数分の鋭い胸痛
・胸骨左縁肋間あるいは心尖部の非常に狭い部位に局在
・突然発症,安静時あるいは軽い運動時に起こる
・吸気で増悪

参考:UpToDate Causes of nontraumatic chest pain in children and adolescents


●Slipping rib syndrome

・肋軟骨を介して胸骨に固定されていない第8,9,10肋骨で,結合組織がゆるんだり外傷により断裂したりすることで起こる
・結合組織の脆弱化により,肋間神経が挟まれ,胸痛をきたす
・Hooking maneuverで疼痛誘発

参考:UpToDate Causes of nontraumatic chest pain in children and adolescents
画像はHooking maneuver.リンク先より引用.





●肋軟骨炎

・胸骨縁の肋軟骨の局所的な圧痛
・重い荷物を持ち上げたり肩にかけたりすることが契機となりうる
・左側が多い
・Horizontal arm traction maneuver,Crowing rooster maneuverで疼痛誘発

参考:UpToDate Causes of nontraumatic chest pain in children and adolescents
上がCrowing rooster maneuver,下がHorizontal arm traction maneuver.
引用はUpToDateより.





 
●SAPHO症候群

・胸鎖関節炎による胸痛をきたしうる.
・皮膚症状が先行する症例が39%,関節症状が先行する症例が29%
・皮膚症状は84%にみられる.内訳は掌蹠膿疱症32%,重症ざ瘡18%,尋常性乾癬10%

参考:藤田保健衛生大学サイト


ほかにも,Mondor病やTiezte症候群など,いろいろあります.
当然,狭心痛や肺塞栓症など重篤な疾患の除外が優先ですけどね.



2016年8月1日月曜日

高血圧の非薬物療法のエビデンス

 
BMJの10-minute consultationより
患者さんへの説明に使えそうだったので抜粋します。

・40-69歳の高血圧患者では、収縮期血圧が2mmHg上がるごとに、虚血性心疾患による死亡リスクが7%上がり、脳卒中による死亡リスクが10%上がる。

・具体的なリスク計算はQRISKでおこなう。
このサイトに項目を入れていけば、10年後の虚血性心疾患、脳卒中死亡リスクなどが計算できる。大変便利。初めて知りました。


・食塩摂取を4.4g/day減らせば、血圧は5/3mmHg下がる。

・肥満患者は、体重を0.45kg落とせば血圧が1mmHg下がる。

・DASH食を食べるとアメリカの典型的な食事と比べて血圧が6/4mmHg下がる。


引用
Poor adherence to antihypertensive drugs
BMJ 2016;353:i3268

2016年7月3日日曜日

QT延長と関連する薬剤


一カ月ぶりです。
ブログ再始動です。

いかなる主訴、病態を見ても
「薬剤性」を常に鑑別に上げるようにしています。

BMJ Clinical ReviewでQT延長が扱われていたので勉強しましょう。


BMJ 2016;353:i2732
Clinical Review From Drug and Therapeutics Bulletin
QT interval and drug therapy


薬剤性のQT延長とそれによるTdPは非常にまれであるとのことです。
しかし、死に至る状態ですので、やはりしっかり押さえておく必要があります。

よく見る薬剤を抽出してあげます。
・抗不整脈薬:アミオダロン(アンカロン)、ジソピラミド(リスモダン)
・抗菌薬:マクロライド(クラリス、ジスロマックなど)、キノロン(クラビット、アベロックスなど)、アゾール
・消化器:ドンペリドン(ナウゼリン)、オンダンセトロン(ゾフラン)
・抗ヒ薬:ヒドロキシジン(アタラックス)
・抗精神病薬
・抗うつ薬

ナウゼリンやアタラックスは、恥ずかしながらQT延長のリスクという認識を持っていませんでした。

こういう患者には注意です
・女性、高齢
・電解質異常(低K血症など)
・肝障害、腎障害
・心不全、左室肥大、心筋梗塞、徐脈など
・利尿薬、ジゴキシン投与中


心房細動を伴う心不全で、ジゴキシンとアンカロンが出されてて、利尿薬で低K血症になっている高齢女性が、尿路感染症で処方されたクラビットを飲んでいて、心肺停止というのがthe worst scenarioでしょうか。気を付けましょう。

2016年4月6日水曜日

安定している狭心症


NEJMのレビューをまとめます。

Chronic Stable Angina
E. Magnus Ohman, M.B.
N Engl J Med 2016; 374:1167-1176


狭心症のポイントは「予後の評価」です。

・症状の重症度はCanadian Cardiovascular Society Grading Scale of Angina (CCSスケール)で評価する
Class 1:通常の身体活動では症状なし
Class 2:通常の身体活動がわずかに制限される
Class 3:通常の身体活動が著明に制限される
Class 4:僅かな身体活動でも症状が出現する

・リスクファクターを同定し介入することで予後を改善させることができる
喫煙、脂質異常症、高血圧、高血糖

・重大な冠動脈疾患のリスク因子は以下の通り
胸痛の正常、年齢、性別、喫煙状態、糖尿病・脂質異常症の存在・心電図変化

・first lineは負荷心電図

・診断したら、すぐにアスピリン投与開始
・血圧は120/85以下に
・スタチンも開始
・当然、生活指導も
・有症状時のニトロを渡しておく。3回飲んでも症状がおさまらなければ病院受診。

・脈拍60以下、血圧100/80以下は緊急処置が必要。
・安定時の治療はβブロッカー、Caチャネルブロッカー、長期間作動型硝酸薬となる。
・2剤以上組み合わせるのがよい。第一選択はβブロッカー
・ただし、RCTだとβブロッカー単剤より効果的に症状を減らす組み合わせはない
・副作用・禁忌は以下の通り

硝酸薬
頭痛、ほてり、低血圧、失神、起立性低血圧、反跳性頻脈、メトヘモグロビン血症
禁忌:閉塞性肥大型心筋症

βブロッカー
疲労、抑うつ、徐脈、房室ブロック、気管支攣縮、末梢血管収縮、起立性低血圧、勃起障害、低血糖症状がでにくい
禁忌:徐脈、心伝導障害、喘息、末梢血管障害 COPDには注意して処方

Caチャネルブロッカー
徐脈、房室ブロック、心機能低下、便秘、歯肉腫脹、頭痛、浮腫、紅潮、反跳性頻脈
禁忌:重度AS、閉塞性心筋症、徐脈、心機能低下


・カテで造影するかと、再開通するかは、別のものとして考える
・内服で十分に症状がコントロール的ないor副作用で続けられないなら、再開通を。
・患者全体の半数は再開通が適していることになる。


2016年3月4日金曜日

不整脈原性右室異形成について



失神→じつは心室性不整脈をきたす疾患として、最近になって初めて知ったので、まとめます。

不整脈原性右室異形成(AVRD: arrhythmogenic right ventricular cardiomyopathy)

・有病率は1/2000~1/5000
・心臓突然死の原因となる

・症状:動悸(67%)、失神(32%)、胸痛(27%)、呼吸困難(11%)など
・多くは無症状(40%)

・30%は家族性
・10-50歳でみられ、診断がつく平均年齢は30歳

・心室性不整脈は、心室期外収縮の多発や、心室頻拍など。これが動悸の原因。
・最も多いのは単源性心室頻拍(左脚ブロックパターン)
・心室頻拍や心臓突然死は運動で誘発されうる

・まれに家族性のAVRDがあり、手掌足底の角化症ともじゃもじゃな頭髪が特徴となる。


・心電図異常で疑ったり、AVRDを疑って心電図をとったりするが、半数近くの患者は正常心電図となる。
・胸部誘導でQRS延長:右室活動の延長を意味する。V1でQRS>110msecだと感度24-70%。
・S波の上りが遅い(>55msec):右脚ブロックを伴っていなければ感度91-95%。V1-V3で。
・ε波(QRSとTの間に見られる波):感度30%。右室の一部の活動が遷延することによる。
・V1-V3でT波陰転化

・運動心電図で心室性期外収縮が増えるのを確認することもある

・エコーは疑ったら行う。
・右室拡大、右室収縮機能低下、余計な肉柱形成などが所見




失神をみたら、心原性を疑うRed flagをきちんと聴取する。
Red flagがあれば、AVRDも考慮して検査する。


参考:UpToDate Clinical manifestations and diagnosis of arrhythmogenic right ventricular cardiomyopathy


2016年2月14日日曜日

CO2ナルコーシスを疑うとき



心不全で入院中に意識低下→CO2ナルコーシスと判明というケースに出会ったので
どういうときに疑えばよいかを中心にまとめます。


CO2ナルコーシスの身体所見は以下の通り

中等度まで:そわそわ、なんとなく息苦しい、日中にのろのろしている、朝の頭痛、寝てしまう

重度または急激に悪化:意識変容、譫妄、妄想、抑うつ、混乱 進行すれば昏睡に
重度のときはほかに…羽ばたき震戦、ミオクローヌス、けいれん、入刀浮腫、表在静脈の怒張


では、どんな患者さんがCO2ナルコーシスになりうるのでしょうか。

○換気量(一回換気量×呼吸数)の減少

・「呼吸しない」
例:鎮静薬、脳症、大きな脳梗塞、中心性無呼吸、閉塞性無呼吸、脳幹障害、代謝性アルカローシス、甲状腺機能低下症、低体温などなど

・「呼吸できない」特に感染症、脱水などのストレス下で顕在化する
例:横隔膜麻痺、薬剤、中毒、胸郭異常(側彎、強直性脊椎炎など)

○死腔増加:COPD、肺炎、肺線維症など


今回体験したケースでは
心不全→中枢性低換気(Cheyne-Stokes呼吸)→CO2ナルコーシス
または利尿薬・低カリウム血症→代謝性アルカローシス→低換気→CO2ナルコーシス
が考えられます。

参考
UpToDate The evaluation, diagnosis, and treatment of the adult patient with acute hypercapnic respiratory failure
UpToDate Mechanisms, causes, and effects of hypercapnia

2016年2月4日木曜日

冠攣縮性狭心症について



疑わしいけど心電図変化が捕まらないケースに出会ったので
冠攣縮性狭心症の診断と治療に関するガイドライン(2013年改訂版)に従ってまとめます。


診断アルゴリズム


特に、参考項目は問診で明らかにするために記憶すべき事項だと思います。


自覚症状では抑えるべき事項はほかに以下の通り

・持続時間は数分~15分で、しばしば放散する
・器質性凶作と比べ持続時間が長い
・過換気のほか飲酒でも誘発されうる
・発作に伴いしばしば不整脈が出現する
・毎日数回頻発することもあれば、数年生じないこともある
・夜間から早朝の安静時に出現するが午後は激しい労作によっても誘発されない(著名な日内変動)


治療は、生活習慣の改善、高血圧・耐糖能異常・脂質異常症などの是正のほかに

・発作時硝酸薬
・予防目的の長時間作用型硝酸薬(耐性を避けるため休薬が必要)
・カルシウム拮抗薬
などが推奨されています。

冠狭窄併存例でβ遮断薬を用いる場合は長時間型カルシウム拮抗薬を併用するよう書かれています。




2016年2月2日火曜日

心不全の落穂拾い



最近、心不全の患者さんを担当することが多いので、
患者さんに関連して勉強したトピックスを羅列します。

【心臓再同期療法(CRT)の適応】
・βブロッカー、ACE阻害薬orARBを含む最適な薬物治療を受けている
・LVEF<35%
・QRS>120msec
・NYHAⅢorⅣ
・洞調律
→CRTでQOL改善、心不全の入院減少、全死亡率低下

症状改善はCRT埋め込み後1カ月以内に出現。
ただし1/3は改善見られず。

CRTで効果高い群
・特発性非虚血性拡張型心筋症
・左脚ブロック
・QRS>150msec

NYHAⅠorⅡ群でも心機能改善期待できる。しかし死亡率減少はイマイチ。


【急性非代償性心不全の原因】
・原病の悪化:特に高血圧→左室収縮障害に注意
・虚血
・不整脈
・ペースメーカー異常
・不摂生、怠薬
・アルコール
・薬物:特にNSAIDsに注意。カルシウム拮抗薬も引き起こすことある。


【心房細動+心不全】
心不全→体液貯留+左房圧上昇→心房細動というケースもあれば
心房細動→頻脈性心筋症→心不全ともなりうる

心房細動単体なら心拍数<110bpm程度のレートコントロールでいいよという流れですが
心不全合併例でレートコントロールがいいかリズムコントローrがいいかは明確にわかっていないようです。
心不全合併例のリズムコントロール第一選択はアミオダロン。
レートコントロールならβ遮断薬が第一選択で、
心機能が比較的保たれているならカルシウム拮抗薬、
心機能低下しているならジキタリスが選択肢としてあがります。

もちろんカテーテルアブレーションなど非薬物的治療の適応も考えます。


参考:「症例でつかむ心不全」 2015 MEDSi
        「循環器治療薬ファイル第2版」 2012 MEDSi

2015年12月1日火曜日

急性冠症候群のprediction score


胸痛の救急患者さんに出会うと

「急性冠症候群じゃないよね」と常に不安が付きまといます。

もちろん、6時間おきに心電図とデータフォローというのが王道なのですが

もうちょっと自らの診断性能を高めたいと思っています。


JAMAのClinical Rational Examinationでこの話題があったので(JAMA. 2015;314(18):1955-1965.)
目を通したところどうやらTIMI scoreとHEART scoreが有用とのことだったので、調べてみました。


TIMI score (Thrombolysis in Myocardial Infarction Score)

・65歳以上
・リスクファクターが3つ以上
  (冠動脈疾患の家族歴、高血圧、脂質異常症、糖尿病、喫煙)
・冠動脈狭窄の既往(50%以上)
・7日間以内のアスピリン使用
・24時間以内に2回以上の狭心痛
・0.5mm以上のST変化あり
・心筋マーカー(CKMB, TropT)陽性

TIMI scoreが5-7点でLR+:5.2-8.9
0-1点でLR-:0.23-0.43となっています


HEART score

【病歴】非常に疑わしい:2点 そこそこ疑わしい:1点 あまり疑わしくない:0点
【心電図】著明なST低下:2点 非特異的再分極:1点 正常:0点
【年齢】65歳以上:2点 45-65歳:1点 45歳以下:0点
【リスクファクター】3以上:2点 1-2:1点 0:0点
【トロポニン】3倍以上:2点 1-3倍:1点 正常:0点

7点以上でLR+ 7.0-24
3点以下でLR- 0.13-0.30です。


救急の場で、しっかりリスク因子(冠動脈疾患の家族歴、高血圧、脂質異常症、糖尿病、喫煙)を聴取しないといけないのですね。



2015年9月14日月曜日

呼吸困難感を細分化して考える


労作時呼吸困難感で受診し、完全房室ブロックの診断となったケースを受け持ちました。
詳しく聞いたら「運動して数分で、どれだけ息を吸っても酸素が体に入っていかない感じになる」とのことでした。

心不全やCOPDの時の労作時呼吸困難感とはちがう訴えだなと思ったので、考察してみます。


そもそも、呼吸困難感とはなにか。
American thoracic societyでは、dyspneaをこのように定義しています。

“a subjective experience of breathing discomfort that consists of qualitatively distinct sensations that vary in intensity”(Am J Respir Crit Care Med 159:321–40)

大事なのは呼吸困難感は主観的な症状に過ぎない、
言い換えれば、呼吸困難感とは、末梢から呼吸感覚中枢に「もっと呼吸しなさい」という情報が異常に入力されることである、というところです。


というわけで、脳に情報を送る末梢の受容体毎に考えます。

①頸動脈小体や延髄に存在する化学受容体
動脈中の酸素・二酸化炭素・pHを感知する

低酸素血症や高二酸化炭素血症、アシドーシスで異常を感知
Air hunger(「もっと息がしたい」「酸素が足りない」)


②肺内に存在する迷走神経受容体
肺組織の膨張や収縮・肺血管のうっ血などを感知する

気管支狭窄、心不全などで異常を感知
Tightness(「息が詰まる」「胸が締め付けられる」)


③胸郭に存在する機械受容体
張力や振動を感知

COPDなど呼吸仕事量の増加で異常を感知
Work/Effort(「呼吸がつかれる」「息が切れる」)


以上のように、患者の訴える表現により呼吸困難感の原因をある程度追究できるみたいです(Chronic Respiratory Disease 3:117-22)。
もちろんそれだけに頼るのではなく、増悪因子や身体所見を総合的に判断するわけです。

「息が苦しい」→「じゃあSpO2を測ろう」→「正常値だね、気のせいだよ」というmalpracticeをしないためにも
しっかり患者さんの言葉を聞いて、SpO2に反映されない異常を感知していきたいです。


参考:JIM Vol.23 No.9 2013 「息苦しい」が主訴の時


2015年8月31日月曜日

起立性低血圧の原因



座位で血圧が急激に低下するという方がいらしたので
起立性低血圧(prthostatic hypotension)の原因についてまとめてみます。


起立性低血圧は65歳以上だと20%くらいに見られる、良くある状態です。
ただし、症状があるのは2%です。やはり症状があれば一度立ち止まる必要があります。

定義は、5分以上臥位になった後、2~5分直立して、sBP低下20mmHg以上またはdBP低下10mmHg以上、となります。

また、高齢者では、食後15~90分で血圧が下がることも良くあります。
知っておくと余計な心配をする必要がなくなるかもしれません。


原因は、自律神経障害、循環血液量低下、薬剤、その他と大別できます。
原因が分からない場合が1/3を占めるところに注意です。

まずは循環血液量低下がないか判断します。
最近の嘔吐、下痢、発熱、水分制限がないか聴取します。
血液検査と心電図は必要です。

合わせて、心不全、悪性腫瘍、糖尿病、アルコール依存症の既往歴と、以下に挙げるような薬剤歴も確認します。

自律神経障害を疑う場合は、パーキンソニズム、失調、末梢神経障害があるか、他の自律神経障害症状があるか(縮瞳/散瞳の異常、便秘の有無、勃起障害の有無など)を確認します。
感覚障害や腱反射の有無はすぐ確認できるので確認します。
バルサルバ手技で脈拍が変わるか、なども有用な診察です。


自律神経障害を起こす疾患は以下の通り。

●神経変性疾患
 ・パーキンソン病/症候群(レビー小体型認知症など)
 ・多系統委縮症
 ・真性自律神経不全

真性自律神経不全はPAFとかBradbuy-Eggleston症候群と呼ばれます。
特発的に自律神経のみ機能しなくなります。予後良好です。

●神経障害
 ・糖尿病
 ・アミロイド―シス・サルコイドーシス
 ・シェーグレン症候群などの膠原病
 ・腎不全
…などなど、典型的には遠位部の疼痛や感覚消失、勃起障害、尿路や消化管の症状と合わせて起こります。
また、ギランバレー症候群は強い自律神経障害を起こしうるので注意です。

自律神経のみを侵す疾患もあります。
nAChRに対する自己抗体ができる場合は、強い交感神経優位状態になります。
また、傍腫瘍性自律神経障害というものもあります。
家族性のものもあるみたいですが…あまりにマニアックなのでやめておきましょう。


●その他
大動脈弁狭窄症、心膜炎、不整脈、褐色細胞腫、副腎不全なんかも原因となります。


●薬剤
代表的な薬剤は以下の通り。

・アルコール

・α/βブロッカー
・利尿薬
・血管拡張薬(硝酸薬、Ca拮抗薬など)
・PDE阻害薬(バイアグラ)

・抗うつ薬、睡眠薬
・オピオイド

・抗精神病薬
・抗パーキンソン病薬

言われてみればなるほどと思う薬剤群です。
アルコールや精神科系の薬剤の見落としに注意ですね。



起立性低血圧は、将来の心血管系イベント発生のリスクとなります(HR 2.6)。
頸動脈雑音は全例で確認しておいた方がいいでしょう。
もちろん、転倒には注意です。


参考:UpToDate Mechanisms, causes, and evaluation of orthostatic hypotension


2015年8月6日木曜日

ビタミンB1欠乏症



・拒食がある高齢者の認知機能低下の原因評価
・貧困状態で食事できていなかった方の末梢神経障害

というケースに出会いました。

どちらもビタミンB1を測定、低値であったため補充療法開始しましたが、症状は良くならず、結局別の診断がなされました。

ビタミンB1欠乏症による症状が疑わしくて、実際にビタミンB1低値でも、ビタミンB1欠乏症であるとは限らない、ということでしょうか。

ビタミンB1の生物学的半減期は10-20日。欠乏すると以下の状態を招きます。


・脚気
成人の脚気はdry beriberiとwet beriberiに分けられます。
dry beriberiでは、対称性末梢神経障害が起きます。運動と感覚どちらの神経も侵します。
多くは四肢遠位を障害します。
wet beriberiは心肥大、心筋症、心不全、末梢浮腫、頻脈も呈します。


・Wernicke-Korsakoff症候群
アルコール関連死の29-59%を占めます。
3徴は脳症、外眼筋麻痺、歩行失調です。
しかし、すべてそろうのは1/3にすぎません。
精神状態の異常だけが出ることがそこそこあるみたいですね。
生前に診断されていたのが26/131だけであったという報告もあります。
歩行障害が他の症状に先行することもあります。
血清ビタミンB1値による判断の感度、特異度が不明であり、血清値が正常でも本症を除外できなません。


・Leigh症候群
 progressive subacute necrotizing encephalomyopathyともいいます。
乳幼児に発症する神経変性疾患です。
Leigh症候群の患者でビタミンB1欠乏がよくみられます。
ただ、原因はミトコンドリア異常なので、いわゆる「欠乏症」ではないです。


参考:UpToDate
Overview of water-soluble vitamins
Wernicke encephalopathy
Hereditary neuropathies associated with generalized disorders

2015年8月5日水曜日

降圧薬、利尿薬の禁忌、慎重投与


良く使う薬は、いまのうちにしっかり勉強しておきたいです。
降圧薬、利尿薬の禁忌、慎重投与をまとめてみました。
考えたらあたりまえのことばかりですが、腎動脈狭窄疑いの人にACE阻害薬とかは踏んじゃいそうですね。

病院の採用薬中心です。簡単のため網羅性は多少犠牲にしています。


アーチスト (カルベジロール)
禁忌:喘息、アシドーシス、高度徐脈(SSS, 2-3°AV block)、非代償性心不全、肺高血圧、褐色細胞腫、妊娠
慎重投与:低血糖、コントロール不十分な糖尿病、絶食状態、栄養状態不良、糖尿病合併の慢性心不全、重篤な肝腎機能障害、1°AV block、徐脈、末梢循環障害、高齢車


エナラプリル
禁忌:血管浮腫の既往、妊娠
慎重投与:両側性腎動脈狭窄又は片腎で腎動脈狭窄、高カリウム血症、重篤な腎機能障害、脳血管障害、高齢者
※ARBも同様


カルブロック(アゼルニジピン)
禁忌:妊娠、アゾール系投与中
慎重投与:重篤な肝腎機能障害、高齢者


スピロノラクトン
禁忌:無尿、急性腎障害、高カリウム、アジソン病、エプレレノン投与中
慎重投与:心疾患のある高齢者、重篤な冠/脳動脈硬化、肝障害、高齢者
用量:50~100mg


フロセミド
禁忌:無尿、肝性昏睡、低Na・K、スルホンアミド誘導体過敏症
慎重投与:進行した肝硬変、重篤な冠/脳動脈硬化、重篤な腎障害、肝障害、嘔吐下痢、痛風・糖尿病の家族歴、ジギタリス・ステロイドの投与、高齢者


フルイトラン(トリクロルメチアジド)
禁忌:無尿、急性腎不全、低Na・K、スルホンアミド誘導体過敏症
慎重投与:進行した肝硬変、重篤な冠/脳動脈硬化、重篤な腎障害、肝障害、痛風・糖尿病の家族歴、高Ca血症、ジギタリス・ステロイドの投与、高齢者


ペルジピン注
禁忌:急性心不全において、高度な大動脈弁狭窄・僧帽弁狭窄、肥大型閉塞性心筋症、低血圧(収縮期血圧 90mmHg 未満)、心原性ショックがある、発症直後で病態が安定していない重篤な急性心筋梗塞患者
慎重投与:脳出血急性期、脳卒中急性期で頭蓋内圧亢進、肝・腎機能障害、大動脈弁狭窄症、急性心不全において重篤不整脈、急性心不全において低血圧



2015年6月23日火曜日

高拍出性心不全



研修ってこんなに書類作業多いんですね。
ブログを書く時間がなかなかとれないですが
学んだことを形にしていく作業として優先順位を高く設定していこうと思います。


高拍出性心不全を疑う機会があったので、UpToDateの記載をまとめておきます。

・四肢温感、脈圧増大、反跳脈、触診で心拍強い、収縮期雑音、頸静脈コマ音などがあれば、心拍出量増大のサインとなる。

純粋に心拍出量増大のみで心不全になるのは稀。何らかの心疾患が背景にあるのではと探すこと。

・原因となりうるのは以下の通り
 動静脈瘻
 甲状腺機能亢進症
 貧血
 脚気
 皮膚疾患(乾癬、剥離性皮膚炎、カポシ肉腫など)
 腎疾患(透析シャント、腎性貧血、浮腫等による)
 肝硬変
 骨疾患(骨Paget病、多発性骨髄腫)
 敗血症
 その他もろもろ・・・

原因として有名なものもあれば、そうでないものもありますね。


2015年5月13日水曜日

78歳女性:労作時呼吸困難(Mayo residents' Clinic)



Mayo Clinic Proceedings 2014年11月のResidents' Clinicを読みました。

78-Year-Old-Woman With Dyspnea on Exertion


患者は78歳女性、数カ月前から進行する労作時呼吸困難。
既往は高血圧、脂質異常症、PAF、HFPEF。
聴診でASあり、経胸壁エコーでは大動脈弁口面積1.25cm2、圧較差28mmHgで中程度と評価。
しかし症状は重度AS。この食い違いをどうするか。

経胸壁心エコーはASの重症度を過小評価してしまうことがある。
その場合は心カテ。今回は弁口面積0.85cm2、圧較差48mmHgと重度との評価が出た。

軽度~中等度ASはACEIやβブロッカー。しかしASの進行を遅くしてはくれない。
重度ASは手術適応になる。その場合、以下のスコアなどを用い術式を決定する。

Online STS Adult Cardiac Surgery Risk Calculator
euroSCORE II