2015年8月31日月曜日
起立性低血圧の原因
座位で血圧が急激に低下するという方がいらしたので
起立性低血圧(prthostatic hypotension)の原因についてまとめてみます。
起立性低血圧は65歳以上だと20%くらいに見られる、良くある状態です。
ただし、症状があるのは2%です。やはり症状があれば一度立ち止まる必要があります。
定義は、5分以上臥位になった後、2~5分直立して、sBP低下20mmHg以上またはdBP低下10mmHg以上、となります。
また、高齢者では、食後15~90分で血圧が下がることも良くあります。
知っておくと余計な心配をする必要がなくなるかもしれません。
原因は、自律神経障害、循環血液量低下、薬剤、その他と大別できます。
原因が分からない場合が1/3を占めるところに注意です。
まずは循環血液量低下がないか判断します。
最近の嘔吐、下痢、発熱、水分制限がないか聴取します。
血液検査と心電図は必要です。
合わせて、心不全、悪性腫瘍、糖尿病、アルコール依存症の既往歴と、以下に挙げるような薬剤歴も確認します。
自律神経障害を疑う場合は、パーキンソニズム、失調、末梢神経障害があるか、他の自律神経障害症状があるか(縮瞳/散瞳の異常、便秘の有無、勃起障害の有無など)を確認します。
感覚障害や腱反射の有無はすぐ確認できるので確認します。
バルサルバ手技で脈拍が変わるか、なども有用な診察です。
自律神経障害を起こす疾患は以下の通り。
●神経変性疾患
・パーキンソン病/症候群(レビー小体型認知症など)
・多系統委縮症
・真性自律神経不全
真性自律神経不全はPAFとかBradbuy-Eggleston症候群と呼ばれます。
特発的に自律神経のみ機能しなくなります。予後良好です。
●神経障害
・糖尿病
・アミロイド―シス・サルコイドーシス
・シェーグレン症候群などの膠原病
・腎不全
…などなど、典型的には遠位部の疼痛や感覚消失、勃起障害、尿路や消化管の症状と合わせて起こります。
また、ギランバレー症候群は強い自律神経障害を起こしうるので注意です。
自律神経のみを侵す疾患もあります。
nAChRに対する自己抗体ができる場合は、強い交感神経優位状態になります。
また、傍腫瘍性自律神経障害というものもあります。
家族性のものもあるみたいですが…あまりにマニアックなのでやめておきましょう。
●その他
大動脈弁狭窄症、心膜炎、不整脈、褐色細胞腫、副腎不全なんかも原因となります。
●薬剤
代表的な薬剤は以下の通り。
・アルコール
・α/βブロッカー
・利尿薬
・血管拡張薬(硝酸薬、Ca拮抗薬など)
・PDE阻害薬(バイアグラ)
・抗うつ薬、睡眠薬
・オピオイド
・抗精神病薬
・抗パーキンソン病薬
言われてみればなるほどと思う薬剤群です。
アルコールや精神科系の薬剤の見落としに注意ですね。
起立性低血圧は、将来の心血管系イベント発生のリスクとなります(HR 2.6)。
頸動脈雑音は全例で確認しておいた方がいいでしょう。
もちろん、転倒には注意です。
参考:UpToDate Mechanisms, causes, and evaluation of orthostatic hypotension