2019年12月23日月曜日

特発性細菌性腹膜炎で記憶すべきこと(治療)


最近出会ったのでまとめます.
「肝硬変による腹水がある患者の発熱は,そうでないとわかるまでSBPと思え(=腹水を採取せよ)」というクリニカルパールがあります.今回もこのパールに助けられました.

肝硬変患者の発熱の25%がSBPらしいです.
そしてアルコール性肝硬変+腹水で入院中の患者の10%で発症するそうです.
アルコール性を含め,肝硬変の患者さんを診る機会が多い環境なので,今一度勉強し直します.

こういうとき,日本語の良質な二次文献がたくさんあるので,有難いです.



まず,治療についてまとめます.

一次性SBPはほとんどが単一菌種で,60%がGNR(E.Coli, Klebsiellaなど),そのほかは腸内GPC(Streptococcus, S. pneumoniae, Enterococcus)です.
後述しますがGram染色で菌体が見えないことが多いので,エンピリックにはGNR+GPCをカバーします.教科書にはCTXやCTRXが1st choiceと書いています.キノロンの選択肢も記載がありますが,今の日本の耐性菌の状況や,万一の結核性を考えると,自分は使う気にはならないです.
入院患者などではESBL産生株や緑膿菌をカバーせよとありますが,よほど疑わしい状況か状態が悪いのでなければあまりに広域なのはどうかなと思います.ESBLカバーを考えるならCMZでいいのではとも思いますが記載はないですね.ABPC/SBTなどのβラクタマーゼ阻害薬配合薬は,耐性株のS.pneumoniaeに気をつけろと書いていますが,E.Coliの耐性も心配になります.
もちろん,培養が出ればde-escalationしますが,培養陰性もそこそこある(後述)ので悩ましいです.

適切な抗菌薬を使用すれば2-3日で臨床状況に反応がみられるとあります.
最近は短い投与期間が推奨されているからか,期間は5日間という記載が目立ちます.ただ,診療状況がしっかり改善していることが前提です.致死性の経過をたどることも多い疾患なので,すっきりいかない場合は従来の10-14日間投与がよいのではと思います.
ただ,再発が多い(再発率は1年で70%!)ので,あまり長々抗菌薬を投与すると,耐性菌のリスクが上がってしまいますね.

抗菌薬治療の他には,アルブミン投与に生存率改善効果が報告されています.
全例必要というわけではないようで,血液検査で適応を判断する推奨もありますが,そこはケースバイケースで判断すればよいように思います.
あとは,もしPPIを飲んでいたらやめる,とかでしょうか.


診断,予防,ピットフォールについては次回まとめます.