2016年4月14日木曜日
非代償性アルコール肝障害の急性管理
これで入院してくる方、けっこういるように感じるので。
BMJ Clinical Review
Decompensated alcohol related liver diseas: acute management
BMJ 2016;352
・多飲患者の90-95%は脂肪肝に進展、20-40%が脂肪性肝炎+線維化まで進展、10-20%が肝硬変に。3-10%で肝細胞がんを発症する。
・肝不全を起こすと、黄疸、凝固異常、脳症が出現。
・門脈圧亢進を起こすと、静脈瘤、腹水、特発性細菌性腹膜炎に進行
・アルコール関連肝障害(ARLD)の平均寿命は59歳!!
・非代償性アルコール肝障害の短期死亡率は1カ月当たり10-20%と非常に高い。
・慢性肝不全急性増悪(acute-on-chronic liver failure)という概念が提唱されている、肝硬変のある患者に感染症などが重なって予後不良の肝不全になること。
・肝硬変患者に多い感染症は、SBP、UTI、肺炎、CD関連腸炎、蜂窩織炎
・発熱などの症状を呈さないこともある
・原因菌は腸内細菌と非腸球菌性球菌が多い
・SBPでは感染症状が起きないことがある。腹痛や発熱は見られることが多い。
・SBP患者ではアルブミン静注が推奨。初日1.5g/kgW、3日目1g/kgWで死亡率29%→10%に減少。
(・ERエラーブックによると、腹腔穿刺前にPTやpltを是正する必要はない、とのこと。)
・アルコール関連肝炎では、3カ月以内に黄疸出現。肝不全や全身炎症をきたす。
・有痛性肝腫大、発熱、腹水、脳症がみられる。
・AST,ALTは正常上限の2-6倍、AST/ALTは2以上となる。好中球増加、凝固異常がおこる。
・他の肝障害(敗血症など)との鑑別は困難なことが多い。
・重症度判定で最も普及しているのはMaddrey discriminant function。短期予後を予測する。32以上で重症、28日間で30%が死亡。
・計算できるサイトもあります。簡単に式をかけば、(PT-12)+T.Bilとなります。
・重症ならプレドニン40mg/day経口で4週間。短期死亡率は下げるかも。
・始める前に培養などとって感染症がないか確認を
・non-responderならステロイド中止:7日目でLille scoreが0.45以上。40%が該当する
・non-responderの次の手としては、NアセチルシステインやGCSなどが候補
・肝硬変の入院患者20%に急性腎障害が起こる
・SBPだとさらに高率
・Cre解釈に注意。アルコール患者は低栄養のためベースのCreが低い。0.3mg/dl上昇or50%上昇でAKIと判断
・原因は腎前性(脱水、消化管出血、利尿薬など)、腎性(NSAIDs、ATNなど)…
・初期治療に反応しなければ、肝腎症候群が考えられる。
・肝腎症候群は、尿所見が正常で、腹水があり、輸液に反応せず、他の原因が否定的なときに診断する。
・治療はterlipressinとアルブミン
・腹水あれば塩分制限を
・腎機能、ナトリウムみながら、スピロノラクトン100mg/dayとフロセミド40mg/dayから開始
・ARLDの60-70%で低栄養、サルコペニアがおきている
・VitB1欠乏に注意
・refeeding症候群に注意 栄養補正する場合は毎日電解質をチェックする
・アルコール離脱に注意。肝性脳症との鑑別を。