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2018年9月7日金曜日

患者を知ってノーと言えるように(part last)


長かったですが,ようやくラストです.


想定される患者の反応

 FAVERの技術は,初めは簡単ではないと感じるかもしれないが,実際は臨床をもっと容易にしてくれるものであり,患者受けの良さに驚くことになるかもしれない.大半の患者は,たとえがっかりしたとしても,あなたのノーを受け入れてくれるだろう.患者は自分の欲しいものや必要だと思っているものを得ずに終わり,自然と少し曇った気持ちになるだろう.怒りを表出することも,担当医を変えようとしたりクレームをつけたりすることもあるかもしれない.これは疾患による症状であることが多く,あなたやあなたの治療によりもたらされたものではない.
 数は少ないがより憂慮すべき事態として,患者が威嚇と取れる行動をする(罵声を浴びせる,ドアを強くたたく,悪口を言う,紙を投げつける),あるいは患者が明確にあなたやスタッフにたいし脅迫を行うことが挙げられる.もしあなたの診療が脅迫行動に向き合うだけのポリシーに欠けているなら,しっかりポリシーを持ったほうが良い.そうすることは,患者に退去を命じる,警察に来てもらうといった結末に関わってくるだろうし,医師が自分の身の安全を確保するために適切な警告を行う手助けとなってくれるだろう.
 やり取りの困難さを経てやがて医師患者関係が強化されることも多いが,それでも医師
の気持ちは落ち着かないままであるだろう.医師が最善を尽くしても,すっきりしない結末を迎えることもある.FAVERの戦略やアプローチは効果的でないと結論づけたり,将来のために捨て去りたいと願ったりすることもままあるだろう.実際,後味の悪さは避けられないことかもしれない.例えば,あなたには手が付けられない,そのときには手が付けられない患者だっているだろう.それが人間というものであり,医療というものである.そんな患者でも,いつか良くなるかもしれないし,別の医療従事者が何とかしてくれるかもしれない.信頼できる同僚とデブリーフィングをすることが,このような困難な診察場面において自分の役割を認識しながらも,患者の感情面,行動面での反応に責任があると思いこまずに済む一助となる.
 FAVERアプローチという,比較的よく遭遇する不愉快な臨床場面にアプローチする簡潔かつ標準化された方法を使うことで,医師が元気づけられ励まされることを願っている.関係性を保ちながらノーということはたやすいことではないが,実践可能なことであり努力する価値のあることである.


2017年10月11日水曜日

胸膜痛について


胸膜痛ではまず肺塞栓を除外せよという強いメッセージを感じます.

Pleuritic Chest Pain: Sorting Through the Differential Diagnosis
Am Fam Physician. 2017 Sep 1;96(5):306-312.

胸膜性胸痛の特徴は,呼吸時に生じる突然かつ強い胸痛で,鋭い,または刺すような,または焼けるような痛みと表現される.最も高頻度かつ重篤な原因は肺塞栓であり.胸膜性胸痛で救急を受診する患者の5-21%を占める.肺塞栓に関し妥当性が確認された臨床決断ルールを適応することで,Dダイマー測定,肺換気血流スキャン,CTアンギオグラフィーといった追加の検査を行うかどうかの参考となる.他の重篤な疾患としては,心筋梗塞,心膜炎,大動脈解離,肺炎,気胸があり,上記疾患以外の診断を下す前に,病歴と身体診察,心エコー,トロポニン測定,胸部レントゲンを用いて除外すべきである.冠動脈疾患を除外するのに有用な,妥当性が確認された臨床決断ルールを用いることができる.胸膜性胸痛を引き起こす最多の要因はウイルスである.病原としてよくみられるものに,コクサッキーウイルス,RSウイルス,インフルエンザ,パラインフルエンザ,ムンプス,アデノウイルス,サイトメガロウイルス,EBウイルスがある.胸膜性胸痛の治療は原因疾患の治療に準じる.ウイルス性または非特異的な胸膜性胸痛の場合は,疼痛コントロールとしてNSAIDsが適している.症状が持続する患者,喫煙者,肺炎のある50歳以上の患者では,初期治療から6週後に再度胸部レントゲンを撮影し,画像上の改善を確かめることが重要である.


2017年9月30日土曜日

爪周囲炎の処置


ときどき出会うマイナートラブルですね.

Acute and Chronic Paronychia
Am Fam Physician. 2017 Jul 1;96(1):44-51.

爪周囲炎は,指趾の3つある爪縁のうち1つ以上に炎症が起きている状態である,急性爪周囲炎は爪の保護的なバリアが破られたことで複数の細菌感染が起きることによる.治療は温水浸漬であり,ブロー液や1%酢酸はあってもなくてもよい.浸漬だけで炎症が改善しないときは,局所の抗菌薬を使用する.局所ステロイドを併用することもある.膿瘍の有無を確認し,あればドレナージを行う.ドレナージには様々な選択肢があり,皮下注射針をつかうこともあれば,外科用メスで広く切開することもある.十分にドレナージできれば,免疫不全や重症感染がなければ経口抗菌薬はまず必要ない.治療は病原として可能性の高い菌と地域の感受性パターンに基づく.慢性爪周囲炎は症状が少なくとも6週間つづくもので,爪のバリアが破壊されたことで刺激物質による皮膚炎を呈する.刺激物質としては酸,アルカリなどの化学物質が多く,主婦,皿洗い,バーテンダー,花屋,パン屋,水泳選手がなることが多い.局所ステロイドやカルシニューリン阻害薬で炎症を抑えながら,刺激源を避けることが大事である.爪の保護的バリアを復元するにはより積極的な手技が必要なこともある.治療は数週から長くて数か月かかる.急性爪周囲炎,慢性爪周囲炎の再発を予防するには患者教育が最重要である.

2017年9月25日月曜日

Choosing Wisely優秀賞

AFP 8/15号に,2016年に掲載したPOEMSの優秀pearlsがまとまっています.
内科系分野のChoosing wiselyを訳出しました.

Top POEMs of 2016 Consistent with the Principles of the Choosing Wisely Campaign
Am Fam Physician. 2017 Aug 15;96(4):234-239.


心血管系
慢性の安定型狭心症があり,冠動脈の1つに70%以上の狭窄が見られる患者に,最適な薬剤治療単独に加えて,PCIの施行をあわせて推奨してはいけない.

冠動脈疾患に罹患しているかそのリスクが高い患者に,アスピリンに加えてクロピドグレル(プラビックス)も併用しても,死亡率が下がることはないため,併用してはいけない.

活動能力を下げ,副作用が増えるため,HFpEF患者に硝酸イソソルビドを処方してはいけない.

呼吸器系
市中肺炎では,最短5日間の抗菌薬投与後に臨床状態が安定していれば抗菌薬を中止するのが良い.

全身ステロイド投与が必要な喘息の急性増悪に対し,標準治療に加えてアジスロマイシン(ジスロマック)を処方してもアウトカムの改善は得られないため,処方してはいけない.

吸入ステロイド,長期間作動型β2刺激薬,ロイコトリエン受容体刺激薬を用いてもなお中等度の発作が持続する,10代で非喫煙の喘息患者に,チオトロピウム(スピリーバ)を追加してはいけない.

予防
平均的なリスクを有する女性に卵巣がんのスクリーニングを行うことは,死亡率の改善に資することはないと考えられるため,推奨されない.

低線量CTによる肺がんスクリーニングを受けようと考えているすべての患者に以下のことを伝え話し合いなさい.肺がんによる死亡を1つ防ぐために必要なスクリーニング数は非常に多く(308; 95%信頼区間は201-787),それに比べスクリーニングによる害の危険性は無視できない(スクリーニング後の侵襲的手技による死亡率は3%).

大腸がんが一親等内に1名いるが,55歳までに大腸がんにならなかった場合,その患者の大腸がんのリスクは一般集団とほぼ同じであると伝えなさい.

典型的な多民族集団において,ACC/AHAのPooled cohort Equations calculatorで動脈硬化性の心血管疾患のイベント発生リスクを正確に推定できると考えてはいけない.

施設に入所している高齢女性に毎日のクランベリーカプセル内服を推奨してはいけない.

2017年9月11日月曜日

プロバイオティクスについて


プロバイオティクスについての総説がAFPに掲載されていました.
臨床にじかに結びつく,AFPらしい総説です.
アブストラクトと,本文中のキーポイントを訳出しました.


Probiotics for Gastrointestinal Conditions: A Summary of the Evidence
Am Fam Physician. 2017 Aug 1;96(3):170-178.

要約
プロバイオティクスは微生物で構成され,ヒトの腸に常在する善玉菌に似た細菌が大半を占める.様々な消化器疾患で幅広くプロバイオティクスの効果が研究されている.最も研究が進んでいる菌種はLactobacillus, Bifidobacterium, Saccharomycesなどである.しかし,種々の消化器症状に対し,プロバイオティクスをいつ投与すべきか,最も効果的なプロバイオティクスはなにかについて,明確なガイドラインがないために,家庭医と患者は困惑する羽目になっている.プロバイオティクスは消化管の免疫平衡の維持に対し重要な役割を果たすが,それは免疫細胞に直接作用してなされる.プロバイオティクスの効果はおそらく菌種,用量,疾患に応じて定まり,治療期間は臨床上の指標で決まる.プロバイオティクスが効果的だという質の高いエビデンスが存在するものとして,急性の感染性下痢,抗菌薬関連下痢,クロストリジウム関連下痢,肝性脳症,潰瘍性大腸炎,過敏性腸症候群,機能性胃腸障害,壊死性腸炎がある.反対に,急性膵炎とクローン病は,プロバイオティクスの効果がないというエビデンスがある.プロバイオティクスは幼児,小児,成人,高齢者と幅広い世代で安全に使用できるが,免疫不全患者には注意が必要である.


KEY RECOMMENDATIONS FOR PRACTICE
小児,成人ともに抗菌薬関連下痢のリスクを減らす.(A)
C. difficile関連下痢の発生を減らすかもしれない.(B)
肝性脳症のリスクを劇的に下げるかもしれない.しかし,NAFLDとNASHに関するエビデンスは不十分である.(B)
成人UCの寛解率を上げる.(A)
小児,成人ともにIBSの腹痛と全身症状スコアを改善させる.(B)
早期産児の壊死性腸炎の発生と死亡率を減らす.(A)
急性膵炎とクローン病に対する効果はない(B)

他に…
細菌性の急性腸炎には効果あり.ウイルス性に関してはどっちつかず.
H.pylori除菌に追加すると,NNT10で効果ありというメタアナリシスもあれば,OD=0.87-2.39というメタアナリシスもある.
慢性の特発性便秘に効果あり.


2017年9月8日金曜日

障害のある患者のケアの目標について



AFPのこの記事は,必読だと思います.
医療者が患者の意向を勝手に推測し,やさしさと見せかけて尊厳をうばうことになってはならないと思います.

Table 1の内容が非常に価値の高いものですので,以下に訳します.


Patients with Disabilities: Avoiding Unconscious Bias When Discussing Goals of Care
Am Fam Physician. 2017 Aug 1;96(3):192-195.


Table 1 障害のある患者の治療目標を議論する際によく陥りやすいコミュニケーションのピットフォール

【凡例】
〇無意識のバイアス→支持的コミュニケーション

「無意識のバイアスの例」
→支持的コミュニケーションの例


〇同情→尊敬

「このかわいそうで不運な患者はこんな病気になってしまって…」
→スミス氏は56歳の男性で,車いすに乗り,患者の声を届ける活動を行っています.

「家族のお荷物になって頼りっきりになるなんていやなんでしょ」
→機能制限が新しく起きた場合,それに慣れるには時間がかかります.障害がありながら生活している人の話を直接聞いてみるのはいかがでしょうか.

〇放棄→つながりを保ち,深めていく

「私たちにできることは何もありません」
→あなたの場合,この治療はリスクの方が高いです.しかし,私は定期的にあなたを診察し,ケアを提供していきたいと思っています.あなたの望みは何でしょうか.必要なことは?恐れていることは?

「痛みが我慢できなくなったら呼んでください」
→痛みをチェックするためにお呼びしますね.その前に,緩和ケアチームにあなたを紹介します.支援団体とマインドフルネスを基盤としたストレス軽減教室があり,あなたも興味を持つと思います.


〇予後の誤り→専門知識と不確実性を共有する

「あと6か月以内の命です」
→あとどれくらいかはっきり分かる人はいません.障害がある場合,予後を正確に予測することはとりわけ難しいのです.ただ,あなたの状態だと,おそらくあと数年ではなくてあと数か月でしょう.


〇制度にがんじがらめ→家や地域を基盤としたサービス

「状態が悪化すれば,施設入所が必要になるでしょう」
→ソーシャルワーカーに相談しますね.あなたの時間を友達や家族と楽しむために必要な援助や在宅サービスを使えるように手助けしてくれます.


〇文脈なき介入→その人ごとの目標,リスク,利点の情報を提供する

「人工呼吸がないと死んでしまうとなったら,つけることを望みますか.」
「経管栄養で生命を長らえたいと思いますか.」
→筋力が衰えており,飲み込んだり息をしたりすることが難しくなります.誤嚥性肺炎の危険性を下げ,栄養状態を改善し,より元気になるために,経管栄養や在宅人工呼吸器を使うことができます.神経筋障害があり,在宅人工呼吸器を使って生活している人の話を聞いてみるのはどうでしょうか.


〇脱人格化→包摂

「アルツハイマー病はあなたの母親の記憶と尊厳を徐々に奪っていくでしょう」
→アルツハイマー病があってもよい友人または家族の一員でいるためのヒントをお伝えしますね.


〇弱っている患者の生命を低く評価する→能力を最大化するよう支援する

「障害が治らなくてもこの手術,治療を受けたいのですか」
→体力や移動能力がこれ以上損なわれないよう手術を行い,その直後から,あなたの回復に合わせて理学療法のスタッフが関わるようにします.入院あるいは在宅での日常生活動作を上手に行うためにできることをしていきましょう.


〇希望を奪う→希望と現実的なプランを共有する

「それは非現実的だ」
→そうなればよいですね!なんて素敵でしょう!その目標を心にとめたうえで,なんとかなりそうなことから計画を立てていきましょう.


〇自律性を尊重しない→意思決定を支援する

「誰が医療上の決定を行うの?」
→医療上の決定を行うのを手助けしてくれる信頼のおける支援者を指名したいですか.

「痛みを感じているのだろうか?」
→どのようなコミュニケーションが最善ですか.あなたのためにどんなことが私にできますか.


2017年8月23日水曜日

小児の発達遅滞スクリーニング


遅れていますが,AFPのレビューまとめです.

Developmental Delay: When and How to Screen
Am Fam Physician. 2017 Jul 1;96(1):36-43.


米国では,小児の15%が発達の遅れを少なくとも1つ有していると指定される.しかし,このうち3歳未満の早期介入サービスを受けているのは1/5にも満たない.初期スクリーニングと紹介を実施するには多くの障壁があるが,準備さえすればプライマリケアの現場の流れのなかで簡単に使えるスクリーニングツールがある.妥当性のあるスクリーニングツールを,健常児の検診にとどまらず,定期的に繰り返し用いることで,早期に見つけ出しやすくなる.高リスクの子どもにとって早期介入は有効であり,認知面の向上にも勉強面の向上にもつながる.時間の節約になるので,直接評価を行うツールより親だけで施行できるツールのほうがプライマリケアの現場では望まれる.親だけで最もしっかり評価できるツールは, Ages and Stages Questionnaire と Parents' Evaluation of Developmental Statusである.家庭医は,現在利用可能なスクリーニングツールとその限界・強みを知っておくべきである.スクリーニングにより発達の遅れが疑われる場合は,追加の評価と紹介が推奨される.


Ages and Stages Questionnaireの日本語版はこちら
https://www.nise.go.jp/kenshuka/josa/kankobutsu/pub_b/b-184/b-184_03.pdf


2016年5月22日日曜日

家庭医療について学生がよく抱く疑問とその回答 part2


今月のAmerican Family Physicianに

Responses to Medical Students' Frequently Asked Questions About Family Medicine

という題のレビューが掲載されていました。

前回の投稿からだいぶ時間が空いてしまいました。part2です。
Tableは訳出していません。原文がフリーで読めるのでそちらをどうぞ。



診療の射程はどうか、どんなキャリアを得る機会があるか

家庭医を目指すと、家庭医として特徴的な研修を受けることになる。急性疾患も慢性疾患も扱い包括的なケアを提供する、健康増進と疾患予防を行う、他の専門家と協同して治療を取りまとめるといった内容が含まれる。幅広い射程をもった研修を行い、家族や地域社会という文脈で患者中心の医療を実践し、ヘルスケアシステムの機能について理解を深めることで、どんな場所でも、どのようなセッティングでも対応できるようになる。家庭医が「多分化幹細胞」と評される所以である。
 大半の家庭医は臨床の最前線におり、救急対応や病棟でも医療を行っている。このようなセッティングでは、教育家リサーチの様々なキャリアを得る機会に恵まれている。教育は家庭医にとって重要なことであり、多くの家庭医が日常的に臨床の中で学生や研修医を教育している。また、レジデンシープログラムや大規模な学術機関といったアカデミックな場でのキャリアを選ぶ家庭医もいる。研究科学者になる人もいれば、臨床基盤型研究に参加して重要な®サーチクエスチョンにこたえるためのデータを提供する人もいる。家庭医療のキャリアの選択肢は幅広く、老年医学、思春期医学、緩和ケア、疼痛ケア、睡眠医学、救急医療、病院総合医、スポーツ医学、公衆衛生、国際医療、野外・災害救急など多岐にわたる。家庭医として得られる様々な機会についてまとめた短いビデオは、このサイトでみられる。http://vimeo.com/25152825


家庭医療の研修はグローバルヘルスを実践する足掛かりとなるか

 最高の健康を享受する権利は国境を超えた基本的人権である。その実現には、プライマリケアへのアクセスを確保するのが最善策である。エボラのような疾病のアウトブレイクは非常に目につくニュースであるが、いま大きな問題となっている疾患群は、発展途上国においても先進国においても、感染症から慢性疾患に移り変わってきている。しっかり研修を受けた家庭医は、小児、思春期、成人、産婦とあらゆる層に対応し、幅広い手技をみにつけているため、地球上のあらゆる場所で診療を行うのに最適である。これとまったく同じ能力が合衆国の中でも求められており、移民や難民を診療する際に必要となる。


家庭医療の研修について何を知っておく必要があるか

 家庭医療レジデンシー研修の目標は、卒業するころには包括的かつ継続的なケアをあらゆる年齢層の患者に提供できるようになることである。このような教育での肝腎なポイントは、診療のその場その場で最良のエビデンスに当たり、情報を上手に患者に適応し、資源を効率的に活用する方法を教えることである。
 多くの場合、家庭医療レジデンシープログラムの研修期間は3年間であり、内科や小児科の研修と同じである。家庭医療プログラムの卒業生は、臨床現場に非常によく適応できる。少数ではあるが、研修の最適な期間を調べる長期間の国家的パイロットプログラムに参加しているレジデンシープログラムもある。このばあい、期間は4年間であり、特別なコースや上位の資格を得ることができる。


専門的関心を追求したい家庭医療レジデントは、どのような複合型レジデンシーやさらなるフェローシップ研修を受けることができるか

 家庭医療教育の目標は、プライマリケアを患者、家族、地域社会に提供できるように最適な研修をすることである。家庭医はそれぞれ特有の興味を持っていて、ジェネラリストの研修の一環として、あるいは追加する形で、その分野をさらに学ぶこともできる。複合型レジデンシーにおいて深く体験できたり、レジデンシー終了後にフェローシップを選択したりすることを望む場合もあるだろう。(Table 1)
 複合型レジデンシーのトレーニングプログラムは、異なった二つの専門医プログラムの要素をつなぎ合わせたハイブリッドである。しかし、全く別の専門が二つあるわけではなく、どちらの専門もより広く認定できるように制度設計されている。現在、家庭医とのダブルボードが可能な専門分野は4つある:家庭医療/精神科、家庭医療/救急科、家庭医療/内科、家庭医療/予防医療。これらの複合型レジデンシーの期間はたいてい4-5年である。
 内科/小児科プログラムは、家庭医療とは異なる。このプログラムは、内科と小児科を4年間のレジデンシーにまとめたものである。最近のレビューによれば、内科/小児科プログラムの大半は、分娩、婦人科、外科、皮膚科、整形領域の訓練を必要としていない。内科/小児科プログラム卒業生のおよそ1/3はサブスペシャリティ志向であり、これはプライマリケアとは異なるところである。
 アメリカ家庭医療学会(AAFP)が家庭医療のレジデントが卒業する際におこなった2013年の調査によると、約14%のレジデントがフェローシップやさらに上の学位を含めた追加研修を計画している。
 (以下、アメリカでの家庭医療研修の詳細な議論が続く。読みたい方は本文を。)


家庭医が行う手技にはどのようなものがあるか。

 家庭医は様々な手技を行うことがある(Table 2)。心負荷試験の7.5%、分娩の9.9%、筋骨格系手技の64%、皮膚系手技の79%は家庭医が行っている。家庭医は、診療の幅が多岐にわたっているほど、ヘルスケアの4つの目標をより達成できるようになる。



2015年4月27日月曜日

閉経前の異常子宮出血(AFP)



前回の投稿に関連して、2012年のAFPに載った閉経前の異常子宮出血のレビューについてまとめます。

Evaluation and Management of Abnormal Uterine Bleeding in Premenopausal Women
Am Fam Physician. 2012 Jan 1;85(1):35-43.


・罹患率は9~14%。
まずは妊娠を除外。
排卵性出血無排卵性出血の2つに大別できる。


・無排卵性出血は、不整でありかつ頻繁でない周期で訪れる。
・出血量は軽いものから非常に重いものまでさまざま。
・無排卵性出血に内包される用語は以下の通り
  無月経(3周期以上なし)
  稀発月経(周期が35日以上)
  不正出血(大量出血または月経期が7日以上であり、周期が不整)
  機能不全性子宮出血(原因疾患が除外されている無排卵性出血とここでは定義)

排卵性出血は月経過多ともいう。
周期は整であるが、出血量が多いまたは月経期が7日以上ある。
・出血量の推定には、シートを何枚変えたかを聴くといいかも。


【無排卵性出血】
初経から2,3年または閉経まで8年間では生理的に見られる。
・一方、上記の期間以外の無排卵性出血は異常である。
・無排卵→黄体できない→プロゲステロン作られない→子宮内膜成長しすぎる→破綻出血

・無排卵性出血の6~10%はPCOSである。
未コントロールの糖尿病、甲状腺機能亢進/低下症、高プロラクチン血症、摂食障害も原因となる。
抗てんかん薬(特にバルブロ酸)は体重増加、男性化、無排卵の原因となる。
定型抗精神病薬と非定型抗精神病薬の一部(クロザピンやリスペリドンなど)も高プロラクチン→無排卵を起こしうる。

・無排卵が2~3年続くと子宮体癌のリスクとなる。
・無排卵を繰り返す閉経前の女性の約14%で、子宮体癌またはその前駆病変がある。
子宮体癌のリスク:高齢、肥満、出産歴なし、不妊、糖尿病、大腸がんの家族歴、長期間のエストロゲン療法、タモキシフェン使用
・異常子宮出血患者にスクリーニングを行い前癌病変~癌を検出するときのNNS(number needed to screen)
  45歳以上かつ閉経前だとNNS 13
    体重90kg以上だとNNS 8
    どちらもだとNNS 5

・異型性のない過形成が癌に進行するのは5%以下。
・一方、異型性のある過形成は30%が癌に進行し、また42.6%の患者で診断されていない腺癌が既に存在している。

・まずは病歴と身体診察。そして妊娠検査とTSH、プロラクチン測定。
思春期、または35歳以下で上述の子宮体癌リスク因子がなければ、ピルを試してみる。症状が続けば子宮内膜生検→経膣エコー→子宮鏡の順番で検査。
・上記に当てはまらない場合はまず内膜生検。異型性のない過形成ならばプロゲステロンなどを試しながら3~6か月後に再検。それ以上であれば婦人科紹介。


【排卵性出血】
・原因:甲状腺機能低下症、末期肝障害、出血異常、粘膜下筋腫など。
von Willebrand病は原因の13%を占める。若年者で多い。
出血異常(血友病、白血病、血小板異常、von Willebrand病など)のリスク:家族歴、月経期が7日以上で生活に支障をきたす、貧血の治療歴、抜歯や手術、出産などで出血多量
・半数で原因が同定できない。
・癌のリスクにはならない。

・まずは病歴と身体診察。そして妊娠検査とTSH、血算測定。
思春期または上述の出血以上リスク因子があれば、出血異常の検査。
・上記に当てはまらない場合は画像検査(エコーなど)、それでも異常がなければプロゲステロンやNSAIDs、トラネキサミン酸などを使って3~6か月経過観察。


量が多くなったので、特に大切だと思うところを抜き出します。

~Clinical Pearls~

・異常子宮出血をみたら、まず妊娠を除外する。

・次に、周期が整か不整かで、無排卵性か排卵性かに大別する。

・無排卵性なら子宮体癌のリスクを考慮して検査計画を立てる。

・排卵性なら出血以上のリスクを考慮して検査計画を立てる。



2015年4月26日日曜日

月経困難症について(AFP)



今週のNEJMのClinical Practiceが子宮筋腫についてだったので
いまいち理解しきれてない月経困難症について調べてみました。

Ameican Family Physician(AFP)に載ったレビューをまとめます。

Diagnosis and Initial Management of Dysmenorrhea
Am Fam Physician. 2014 Mar 1;89(5):341-346.



・原因疾患があれば続発性、なければ原発性

・典型的な原発性は、初経後6-12か月で発症し、有病率のピークは10代後半~20代前半
・原発性の特徴的な症状は、下腹部痛もしくは骨盤痛。背中や下肢に放散することもある。
・疼痛は月経開始時に起き、8-72時間持続。
・腰痛、頭痛、下痢、疲労感、嘔気嘔吐を伴うこともある。

既往のない中年以降の月経困難症は続発性を考える。
・続発性の付随症状:月経過多、月経間期の出血、痛みが周期的でない、性交時疼痛、性交後の出血、不妊

・思春期~若年の月経困難症の約10%が続発性。
・続発性の最多原因は子宮内膜症。25-29歳で多い。
・一親等における子宮内膜症の家族歴があれば、患者は続発性の可能性が強くなる。
疼痛の時機や程度の変化や、もしくは性交時痛があれば子宮内膜症を疑う。
・子宮圧痛、付属器圧痛、頸部他動時痛のうち1つ以上あればPIDを疑う。

・性交歴のある思春期患者には内診を行うべきである。全員に行う必要はない。
・子宮内膜症に対する内診:感度76%、特異度74%、PPV 67%、NPV 81%。
・続発性を疑えば経膣エコーを行うべきである。
・腸管子宮内膜症に対する経膣エコー:感度91%、特異度98%、LR+ 30, LR- 0.09

・原発性にはNSAIDsを強く推奨。月経開始予定日の1~2日前から始めて、2~3日服用を続ける。
・原発性にはピルも勧められる。しかしエビデンスは限定的。
・原発性では骨盤を温めるのもいいかも。
・子宮内膜症にはピルが第一選択。