2015年7月26日日曜日

62歳男性:無痛性黄疸、低ナトリウム血症(Mayo Residents' Clinic)



2013年6月のMayo Clinic Proceedingsより、Residents' Clinicです。


患者:62歳男性
主訴:1週間の進行性黄疸、倦怠感
     腹痛、嘔気嘔吐、下痢便秘、発熱はなし。尿の色が濃い。

既往歴:糖尿病、脂質異常症
内服薬:プラバスタチン、インスリン、ナプロキセン頓用
     一週間前まで蜂窩織炎に対しST合剤2週間内服

診察:状態落ち着いている。黄疸あり。腹部圧痛や肝脾腫はない。肝硬変の徴候なし。

検査:T.Bil 25.8mg/dl, D.Bil 18.9mg/dl, ALP 1515U/l, ALT 425U/l, AST 211U/l
        plt, alb, PT, APTTは正常。
    HAV, HBV, HCV, 抗平滑筋抗体、抗ミトコンドリア抗体は陰性

腹部エコー:肝実質エコー不整。胆管拡張、腹水、胆嚢壁肥厚、腫瘤はない。


ST合剤は肝障害を起こしうる。これが最も怪しい。
Drug-induced hepatic injury(DILI)が第一の鑑別疾患となる。


血液検査:Na 114, Osm 290, BUN 9, Cre 0.6, Glu 260
尿検査:Osm 564, Na 66, Cre 36
体液過剰・減少所見はない。

低ナトリウム血症の原因は何であろうか。
血清浸透圧が290と正常てある。いわゆる本当の低ナトリウム血症であればOsm↓のはず。
脂質の異常高値による偽性低ナトリウム血症を疑う。

測定してみると、T.Chol 1663, TG 584であった。これもDILI(胆道系障害パターン)によるものであろう。
慌てて治療をする必要はない。


DILIには肝細胞が障害されるパターンと、胆道系が障害されるパターンがある。
後者の方が慢性肝障害に進展する可能性が高い。