2026年9月6日日曜日

英国の終末期ケアのフレームワークをブルネイに適用する

 Chong JX, Teo SP, Husaini A, Venkatasalu MR. Gold Standards Framework to identify palliative care needs in primary care: a qualitative study of implementation in Brunei Darussalam. Korean J Fam Med. 2026 Aug 25. doi:10.4082/kjfm.26.0170. https://kjfm.or.kr/journal/view.php?number=4905


背景

プライマリ・ケアにおいて、緩和的アプローチから恩恵を受ける可能性のある患者を早期に特定することは、依然として困難である。Gold Standards Framework(GSF)は、人生の最終段階に近づいている可能性のある患者を特定するための体系的なアプローチを提供する。しかし、英国以外のプライマリ・ケアの現場においてGSFがどのように実装されているかについては、十分に明らかになっていない。

本研究では、ブルネイ・ダルサラームのプライマリ・ケアにおいて、GPがGSFの予後指標ガイダンスを用いて緩和ケアニーズのある患者を特定した経験を明らかにすることを目的とした。


方法

本研究は、プライマリ・ケアにおけるGSFの使用を評価した、より大規模な混合研究法プロジェクトの一部として実施された質的研究である。

構造化された研修ワークショップを受講した後、日常診療でGSFを適用したGPを対象として、フォーカスグループディスカッションおよび少人数グループでのインタビューを実施した。データは録音し、逐語録を作成したうえで、帰納的アプローチによるテーマ分析を行った。


結果

10名のGPが研究に参加した。以下の4つの包括的テーマが明らかになった。

GSFをプライマリ・ケアの診療に適応させること

プライマリ・ケアにおける構造的制約

予後の不確実性と役割に対する戸惑い

緩和的アプローチを統合するためのシステム上の促進要因

GSFは有用な枠組みとして認識されていた一方で、その実際の適用には地域・診療環境に応じた調整(contextual adaptation)が必要であり、医療者レベルとシステムレベルの双方の要因から影響を受けていた。


結論

GSFは、プライマリ・ケアにおいて緩和ケアのニーズを有する患者を特定することを支援できる。しかし、効果的に実装するためには、地域の診療ワークフローとの整合、診療の継続性の改善、そしてシステムレベルでの支援が必要である。特に、明確な紹介経路(referral pathways)と統合されたケア・プランニング(integrated care planning)が重要である。


感想

GSFは、Surprise Question → general indicators → disease-specific indicatorsの3段階で、「この患者は今後、緩和的アプローチを考えるべき状態にあるか」を臨床的に判断するためのフレームワークです。

英国で開発されたGSFをブルネイで使用する際にどのような調整が必要かを議論しています。

まず、取り扱われている疾病と指標がブルネイでは合わないという点があるようで、特にCOPD、喘息、フレイル、多疾患併存、複雑な糖尿病などがブルネイではより重視されるべきだとのことです、

また、ブルネイでは患者が毎回同じGPを受診するとは限らず、GPが患者の長期的な病状の経過を把握しにくいため、英国のような「長期的に患者を知っているGPが、少しずつ悪化している患者を認識する」は必ずしも成り立たず、そのため電子カルテの活用や情報共有の必要性が高いとのことです。

あわせて、進行患者の管理が病院、スペシャリスト中心となっているため、ブルネイのGPは「自分が予後を判断して緩和ケアを開始してよいのか?」と感じており、referral pathwayやshared-care systemを整える必要があるとのことです。


英国のGSFをブルネイに導入するにあたり、コンテキスト上の様々な差異はどこにあるのか、それをどのように調整したらいいのかを明らかにしており、とても実践的で家庭医らしい研究だなと思いました。日本の現状もどちらかというと英国よりブルネイに近いように思います。日本でも、横のものを縦にして満足するだけでなく、コンテキストに合わせた調整をどうするかを考える必要があると感じました。